黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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17話 黒い怪物とヒーロー殺し 後編

粛清すると言ったわりには動きの無いステイン。

互いに様子を探り合い、視線で牽制しながら睨み合う。戦闘が始まる前に魔法使いはウィズに訊ねる。

 

「ウィズ、相手の"個性"とか知ってる?戦い方とかはなんとなく分かるけど...」

 

「確か...血に関する"個性"だったにゃ。...それが、自分の血なのか、相手の血をどうかするのかは、分からないにゃ」

 

「そうなのか...。だとしたら...自分達も、相手にも、出来るだけ血を流さない方がいいね。...相手の血が毒かもしれないから、一応状態異常を防ぐ魔法を掛ける準備を..」

 

魔法使いは懐から、目的に用いたカードを取り出そうとした瞬間─

 

 

ヒュン

ステインが一本のナイフを投げる。ナイフは魔法使いのカードを持った手を狙うが、カードでナイフを叩き落とす。静寂の中ナイフが落ちる音だけが、耳にこびりつく様に響く。ステインの行動に警戒態勢を高めるが、当の本人はつまらなそうに溜め息を吐く。

 

「ハァ...。敵を目の前にして、お喋りとは...いい度胸だな...。こんな奴が、オールマイトに選ばれるとは...ハァ...何を考えたものか...」

 

ステインが一歩歩くと、グラントリノは足腰に力を入れ、バーニンは拳を握り構える。魔法使いも他のカードを準備をしながら質問を投げ掛ける。

 

「オールマイトに選ばれた?何の話?それに...何故ヒーローを殺すの?」

 

それは魔法使いがずっと気になっていることだ。

たかが、オールマイトと一緒に戦っているだけで、選ばれたとか言われる意味が分からなかったのだ。更に言えば、ステインと同じ扱いをされたことが嫌だった。彼の信念と言うものが何なのかは魔法使いは知らなかったが、少なくともヒーローというだけで殺す人と同じ扱いをされたくはない。

 

ステインはもう一度大きな溜め息を吐く。

日本刀やナイフを手に取る訳でもなく、ただ突っ立っている姿だけでも、悪夢から出てきて殺しに来る怪人の様なおぞましさを感じさせる。

 

「ハァ...。お前...そんなことも分からないのか...。ハァ...これだから、静粛対象は...。冥土の土産として、聞かせてやる...。オールマイトは...常に独りで戦い、平和を維持している...」

 

「だから、それがなんだって言うにゃ」

 

「ハァ......。ど素人は......」

 

ウィズの口出しに、ステインは長い溜め息の後舌打ちをする。

それでも刃物には手を取らずまた語り始める。

 

「良いか...今の俗物どもは、オールマイトのように、平和の為に考えている奴は、誰一人としていやしない......。金か、名誉かだけだ...。皆自分のことしか、考えておらん...。そんな俗物は、生きているだけでも社会の癌だ...。だから、俺が粛清する...」

 

金か名誉。それのどこが悪いのだろうか?とキキとウィズは首を傾げる。

"個性"の相性で逃げるヒーローなら責められていても分かるが、名誉やお金を欲しがっただけで人を殺すことは理解出来ない。だってそれ自体は悪いことではないからだ。不純な動機でもそれで人を助けられるから問題なんてない。

 

益々理解出来なくなる魔法使いとウィズ。

魔法使いは思わず本音を溢れてしまった。

 

「お金や名誉を求めて何が悪い?」

 

その言葉を口に出した瞬間空気が凍る。

ステインは動いていないのにも関わらず、喉元に刀を突き付けられた様な圧迫感と緊張感が走り、気が弱い人であればショック死してしまう程だった。

 

「ハァ......オールマイト贔屓でお前に話し掛けた...俺が愚かだった...!」

 

いきなり音もなくステインが襲い掛かる。

あまりにも動きが速すぎて防御障壁を張るのに精一杯だった。斬りまくるステイン。今は防御障壁は耐えられているが長くは続かない。このままではジリ貧だ。そこでウィズが話し掛けて隙を作ろうとする。

 

「お前は一体何をそんなに怒っているのにゃ?!」

 

ステインはウィズの言葉に反応せず無視をする。

防御障壁が耐えている間に急いで作戦会議を始める。

 

「どうするのよこれ!?」

 

「攻め入る隙がないぞ!それに、攻撃出来たとしても...こやつが張ってあるバリアーに攻撃が当たってしまうかもしれん!このバリアーは残しておきたいものじゃろ?」

 

「そうだね。防御障壁は残しておきたい。これだけ速いと唱えることが出来なくなるし」

 

「怒りでこんなに強くなるとは思わなかったにゃ」

 

「怒りでこんだけ速くなるのならいっそのこと...もっと怒らして疲れさせてみる?」

 

その作戦は単純だった。一か八かの賭けだった。

でも、意外と、人を怒らせて冷静さを欠けさせて動きを単調にさせる方法はよくあること。他の作戦が思い付かないのでバーニンの作戦に乗るしかなかった。四人は息を限界まで吸い込んで叫ぶ。

 

「勝手に決めつけて!勝手に絶望をして!人殺しをしているだけなんだね!!」

 

「平和を維持を目指す人間が!人を殺してどうするにゃ!そんなにオールマイトのようになりたいのなら、オールマイトと同じような行動をすればいいだけの話しにゃ!」

 

「そうじゃ!お前さんはヒーローではない!ただの人殺しじゃ!!」

 

「あんたなんかにヒーローを語れたくないわね!!オールマイトさんを見習うのなら!!文句を言わずに人を助けなさい!!この根性なしが!!オールマイトさんはね!あんたみたく!絶望しないで!笑顔で人を助けるものよ!!!!」

 

「黙れ!!」

 

怒らせすぎた結果、ステインは距離を取りこちらの様子を伺う様になる。

完全に動きが止まるステイン。両者睨み合っているとステインの口が動き出した。

 

「ハァ......黒猫の魔法使い...。お前は...馬鹿か?」

 

何故か今度は魔法使いだけ標的にされる。

防御障壁が厄介だったのか、口撃で精神的に攻撃する様だ。魔法使いは相手の作戦に乗らずに平然と言い返す。

 

「馬鹿?人殺しに言われたくないけど」

 

平然としている魔法使いに、ステインは怒ることもなく冷静に語り掛ける。

 

「お前だって...ずっと...自分の意見を言っていただろう...誰にも聞いてくれない虚しさは、お前には分かる筈だろう...」

 

「別に虚しくはないけど」

 

魔法使いの言葉は嘘ではない、本心だ。

この世界の住民が話を聞いてくれないことに激怒をしたことはある。だが、虚しくはなったこはない。異世界だって話し合いが出来ずに戦うことがよくあるからだ。寧ろ戦いで本音をぶつけるパターンが多い。

 

悲しいことに、人間と言う生き物は通じる言語を持っていたとしても、想いを通じる言葉は持っていないと言われる程、話を聞くことさえも出来ない残念な生き物である。

でも、だからと言って、諦めてはいけない。言葉は通じなくても行動で変えることは出来る。

 

「な...なんだと...!?」

 

最初から聞いてもらえないことを、分かっていた魔法使いにステインは愕然とする。驚きすぎたステインは素に戻っていた。

 

「だって...言葉だけで変わるとは思っていないからね」

 

「分かっていながらも...何故...やっているんだ....?」

 

「変わらなくても、続けることに意味があると思っているから。それに...やめてしまったら、本当に伝わらなくなってしまうよ」

 

魔法使いはステインに多少同情出来るところがあった。

 

ステインの言う通り、この世界のヒーローは碌でもないと思っている。全員がそうではないと分かっていても、初めて見た時の行動が酷すぎて、そのイメージが住み着いてしまっているのだ。だからといって殺すという愚かな行為には呆れ果てていた。

自分自身もヒーローを勝手に役立たずと、そう思っていた魔法使いはオールマイトに愚痴っていたが、端から見れば同じ様に見えたのだろう?と、魔法使いはあの日の自分に嫌気が差す。

 

そんな考えことを振り払って魔法使いは話を続ける。

 

「大体、何故そこで人を殺すという発想になる?自分がみんなのお手本になろうとか考えないの?」

 

「ハァン...!!何を言うかと思えば...。世間を知らん奴が...。始めは...言葉で伝えようとは思った...。だが、誰も聞きやしない...。所詮、力で示さなければ、ならんのだ...!!」

 

「だからって、人を殺しても意味はないよ!!」

 

「殺すことには、意味がある...。あの様な俗物どもの生き方は、簡単に伝染する.....。あやつらの様になる前に......誰かが間引きをして、やらなくてはならんのだ...」

 

「間引きって...。随分と上から目線なんだね。結局は、自分の考えが通じなくて、我が儘になっているだけじゃないか!確かに、言葉では人を変えられないけど!でも!行動なら、変えられる!自分自身で、手本になろうとしてから、言えよ!」

 

ステインと話し合っている内に、魔法使いはかつてのことを思い出す。

出会った人達は皆、何か強い想いを持っていて、変わることはないけれど、想いを持てる数は一つだけとは限らない。伝えたい想いが、相手の元の想いに阻害しない形で共有出来ることを知っている。

一人一人、誰もが違う考えを持っていることを身に染て感じていたのに、この世界のヒーローにはイメージで勝手に組み込んだ。例え、自分が知らないどこかで、命を懸けて戦っていても。

 

諦めたくなる気持ちは魔法使いとウィズは理解していた。人の話を聞こうとしないで馬鹿にし、あまつさえ苦しんでいる人を見物するヒーローと一般市民。特に苦しんでいる人を笑い物にするところには吐き気を感じていた。

だからと言って、全員が全員、"個性"の相性が悪くて逃げ出したり、敵(ヴィラン)との戦闘を見世物にした訳でもない。相手を咎めるのなら、きちんと証拠を集めた上でやらなければならない。ヒーローだからと決め付けて殺すのは以ての外。人殺しの意見など尚更聞かなくなる。

 

絶望していた時ヒーローはみんなそんな奴らだと思っていた魔法使いとウィズ。そんな無礼なことをしていた自分を無くしたい魔法使いは、吐き出すようにありったけの想いを叫んだ。

 

ステインは日本刀を持ち直す。

日本刀は月に照らされ、銀色に鈍く光っていた。先程まで人を殺していた様にはとても見えなかった。

 

「ハァ...。お前達と話す決断をした俺が馬鹿だった...」

 

言い切る前にステインは魔法使いに斬りかかる。

まるで瞬間移動をしたかの様に目の前に現れ、張り直しておいた防御障壁とぶつかる。ステインは防御障壁に斬りかかるのは止めて一旦距離を取る。

 

『大地が割れる咆哮』

 

「盗みを邪魔されるのが...一番許せねぇ」

 

ステインが離れた瞬間魔法使いは呪文を唱える。

狼男の姿が映し出され、野性味溢れる声が聞こえてくる。このSSは状態異常を防ぐ魔法。ステインの血が毒かもしれないと用心をした魔法使いは、グラントリノ、バーニンに魔法を掛ける。

 

グラントリノが早速蹴りかかるが、ステインはあっさりと避ける。

ステインが反撃でナイフを投げ付ける。けれども、グラントリノは足の裏から空気を出してナイフを弾き返す。グラントリノは足から出した空気の勢いで、距離を取り相手の出方を探る。

 

両者睨み合っている時、バーニンはポケットから何かを取り出し、ステインに向かって投げ付ける。バーニンが

投げた物は空中で燃えて火の玉になる。ステインは驚きもせず、軽々と避けたが、突如火の玉は大きくなり、人を容易く飲み込める程の球体になる。

 

「....!!」

 

ステインは慌てて壁などを蹴って跳躍をし、巨大な火の玉の上を飛び越えて避ける。火の玉はステインから離れると徐々に小さくなって、最終的には燃え尽きて消える。

 

「これが...バーニンの"個性"...」

 

「そうよ。これが、私の"個性"燃え立つよ!」

 

「燃え立つ...。何が出来るのにゃ?」

 

「弱い火でも強い火に変えることが出来ることよ!...ただ、私自身から炎は出せないし、ある程度離れてしまうと、元の大きさに戻ったり消えてしまうのよ」

 

「そうなんだにゃ。...だとすると、火属性の方が良いみたいだにゃ。丁度、今使ったカードも火属性だしにゃ」

 

「火属性?何よそれ?...まあ、炎を出せるなら、出してくれた方がありがたいわ」

 

ウィズがバーニンの"個性"を確認をする。

連携が上手く出来ていなかった為、敵の前でも詳しく説明しかなかった。

 

「ハァ...。味方の情報すらちゃんと把握していないのか...。やはり、ヒーローは、碌でもない...」

 

その様子をステインは呆れながら見ていた。

 

「そう?現地で確認するのもありだよ。その時の状態によっては、出来ることも出来なくなるし、出来ないことも出来るようになるからね。確認は大事だよ」

 

「君は否定しか出来ないみたいだにゃ」

 

ステインの言っていたこは間違ってはいないが、魔法使いとウィズは開き直って反論をする。今度こそステインは、言葉で反論をしないで行動で応える。

 

ステインは諦めることもなく、何度も防御障壁に日本刀を振りかざす。日本刀がぶつかる度にキィーンと金属音が鳴り、ハンマーでぶつけた様な衝撃が伝わる。先程から日本刀をずっと振りかざしているのに、疲れを感じさせずに、素早く力強く振りかざす姿は魔法使い達に畏怖を感じさせた。

魔法使いばかり狙うステインに対して、グラントリノは足蹴りで攻撃をし、バーニンは道具を使って火球を作り、当てようとするが簡単に避けられてしまう。

 

怒らせたことによる私怨なのか、それとも魔法使いの能力を知って厄介な存在として認識したからか、理由は分からなかったが、魔法使いは執拗に標的にされていた。

理由を解明出来ないまま魔法使いは、火球を繰り出してステインを引き離そうとする。ステインは魔法使いの願い通り火球を避けて距離を取る。

 

狙い通りにいったとはいえ、このままでは埒が明かないと思った魔法使いは、近くまで戻っていたグラントリノとバーニンに話し掛ける。

 

「グラントリノ、バーニン、お願いがある」

 

「何よ?」

 

「どうかした?何か、打開策が思い付いたのか?」

 

「打開策とははっきり言えないけど、炎を出すからバーニン、火を強くしてくれないか?」

 

「分かったわ!」

 

「で、わしは、それに気付けろと」

 

「うん。そう言うこと」

 

伝えたいことを伝えた魔法使いは、頃合いを見計らって呪文を唱える。

 

『炎彗騎士 イグニス・ヴォルガノン』

 

紅色の鎧を着た騎士の姿が浮かび上がり、蛇の様にくねらせる炎がステインの周りをぐるぐると囲む。

 

「はっああ!」

 

バーニンが力むと弱々しい火が大きくなり、ステインを追い詰める。だが...

 

「ふん...!」

 

日本刀で炎が斬られてしまう。

 

「させるもんか!」

 

グラントリノは"個性"で炎をけしかけて、閉じ込めようとする。けど、日本刀で道を切り開き、高い身体能力を活かして飛び越える。避け続けられていても、焦って見落とすことはなかった。

魔法使いは火を追尾させ、バーニンはただ火を強くするだけではなく、所々弱い場所を作って誘き寄せる。グラントリノは直接蹴ったり、炎をけしかけて攻撃をする。

 

「こいつ...やけにしつこいなあ!」

 

「そうだにゃ。...あんなに火傷をしているのに...」

 

いくら避けているとはいえ、ステインの体は火傷が多数あった。それでもステインの勢いは止まることはなかった。

 

「どうして...。彼をここまで奮い立たせるものは何なのにゃ!?」

 

「俺は...俺は...!!俗物を...絶対に...この世から......一人残らず...粛清させてやる...!!」

 

ウィズの疑問を応えるようなタイミングで、ステインの口から想いが零れる。

あまりにもタイミングが良すぎて、疑問を応えたように見えたが、時折足がフラッとしているところから、意識が朦朧(もうろう)としていることを推測する。

 

「もうしつこいわね!さっさと終わらせるわよ!」

 

痺れを切らしたバーニンが叫ぶ。

その叫びに魔法使い、ウィズ、グラントリノは頷く。速くこの戦いを終わらせて、エンデヴァーの元に行かなければならないのだ。了承を得たバーニンは、火の勢いを更に強くする。ステインは日本刀を薙ぎ払って切り抜けようとするが、火の勢いに負けていた。

 

『光の聖女 サーシャ・スターライト』

 

更に魔法使いは魔法で止めを刺す。

呪文を唱えるのと、踊り子の様な衣装を着た美しい女性の姿が映し出され、囲んでいる炎ごと凍らせる。炎と氷の極端な温度差が水蒸気を発生させ、暫くの間姿が隠れていたが、風が吹いてステインの姿を露にさせる。

 

ステインは初めて会った時の様に突っ立っていた。

一瞬無傷なのかと勘違いしてしまう程であったが、流石に敵を目の前にして、微動だに動かない姿は可笑しいと疑問を抱かせる。

 

グラントリノが代表をして彼に近付く。

今まで動いていなかったステインが、近付いてきたグラントリノに気が付いて、ナイフを投げようとしてきたが力が足りずに地面に落ちる。

 

「俺を...捕まえて...良いのは...オールマイトだけだ!」

 

最後の悪足掻きとして、死神の様な気迫で追い払おうとする。その気迫にグラントリノ、バーニンの動きが止まってしまう。

魔法使いとウィズだけは気迫に負けずにステインを縄で拘束をする。グラントリノとバーニンは、信じられないものを見るような目をする。だが魔法使いは、それらを無視さて作業を続ける。

 

「持っている武器は全部没収したし、縄できっちりと結んだにゃ。...さあ、行くにゃ!」

 

「お、おう...」

 

「そ、そうね...」

 

魔法使いの代わりにウィズが指揮をし、顔を引きつらせながらもグラントリノとバーニンはウィズに従うのであった。

 

 

 

現場は想像以上に荒れていた。

消火活動は間に合っておらず、炎は建物を燃やし続ける。怪我人は攻撃の余波が届かないところで、横たわっていたり、自分自身で応急手当をしないといけない状態であった。また、長引く戦闘により、ガラスの破片が飛び散り、瓦礫が常に落ちてくる。

 

「本当に来たのか...」

 

一同は、安堵と呆れが混じったエンデヴァーに出迎えられた。エンデヴァーは彼らをじっと見詰めていたが、直ぐ様敵の方に視線を戻す。

 

黒い怪物は今もなお暴れており、手当たり次第殴り体当たりをしてくる。

この黒い怪物も、先程魔法使い達が倒した者とそっくりであることから、同じ能力であると予測する。しかもそれが三人もいることに、絶望をして膝から崩れ落ちそうになる。

 

「うっうわわあああああーーーー」

 

エンデヴァーと話をしている間にも、一人のヒーローが、遠くの方にあるビルまで吹き飛ばされてしまう。

全滅するのは時間の問題であると、改めて認識させられる。魔法使いはカードを強く握り締めて、呪文を叫んで唱える。

 

『オーナーのイニシアチブ』

 

「フモーフちゃん、やっちゃうのです」

 

「フモモ」

 

フリルやリボンをあしらった着緑色のドレスを着た少女と、五匹の白い綿毛の様な生き物の姿が浮かび上がる。少女と生き物の可愛らしい声が響き渡る。

魔法使いの呪文はまだ続く。

 

『双刃奥義「狼々銘湯」』

 

「入れよ。温まるぜ」

 

火と水の剣を振るう白髪の少年の姿が浮かび上がる。お風呂を勧める少年の声が聞こえてくる。

 

二つの呪文の効果が、この場にいるヒーロー全員に力を与える。

 

「これは...」

 

「すげえな!」

 

「力が湧いてくる...!!」

 

「よっしゃあ!やってやるぜ!」

 

新たな力にヒーロー達はやる気を出す。

魔法使いは戦闘に参戦せずに、怪我人の手当てにあたり、他のヒーロー達は一斉に反撃をする。

 

「うおら!」

 

ヒーローの一人が敵に殴りかかる。

けど敵は何かにぶつかったくらいにしか思っておらず、うざそうにどこかに放り投げる。放り投げられたヒーローは別のヒーローの"個性"によって救われていた。力が強くなっても力負けをしている事実にヒーロー達は、やる気を急速に失われていく。

 

「怯むなあ!この程度の攻撃で、ヒーローが脅えてどうする!!」

 

戦闘音にも負けないエンデヴァーの叱責が響き渡り、挫けそうになったヒーロー達を支える。

そんなやり取りの最中に、最低限の手当てを終わらせた魔法使いが参戦する。

 

『双刃奥義「狼々銘湯」』

 

「入れよ。温まるぜ」

 

魔法使いがもう一度同じ呪文を唱えてから、エンデヴァーの隣に立つ。

 

「手当ては終わらせたのか?」

 

「最低限はね」

 

「本来は...貴様達の助けなどはいらんと言いたいところだが...そうも言ってられんな...。行くぞ!黒猫の魔法使い!」

 

言い終わるやなエンデヴァーは、巨大な炎を敵にぶつけて閉じ込める。

敵は燃えているが、まるでダメージには入ってないと言わんばかりに、超スピードでこちらに向かってくる。

 

『社会を変える魔道玉』

 

「いろいろ混ざったやべえ玉をくらえー!!」

 

敵が向かってくることを分かっていた魔法使いは、炎をぶつけた時と同時に予め呪文を唱えていた。

 

ピンク色の服を着た少女の姿が映し出されると、空には剣、ハート、盾の紋章が浮かび上がり、敵の真上から巨体な光線が降り注ぐ。破壊音にも負けないくらい、少女の叫び声が響き渡る。

 

エンデヴァーの強烈な炎、魔法使いの水属性の強力な攻撃魔法により敵の動きが止まる。

これには他のヒーロー達は驚く。また、ステイン戦の時よりも水蒸気が凄くなっていた。水蒸気が晴れると敵の姿が露になる。敵は動かなくなっていた。

 

自分達を散々苦しめてきた敵が、動かなくなった姿を見て他のヒーロー達の戦意が高まる。

 

「うおおおおおーーー!!」

 

一人が駆け出せば、後は自然に流れに乗るだけであった。

高ぶった感情に身を任せ、敵二人を一斉に襲い掛かって動きを止める。感情というのは凄まじく、不可能だと思われていたことを、やり遂げられる力になり得られるのだ。

 

「お前ら!敵(ヴィラン)を上に上げろ!!」

 

何か案を思い付いたエンデヴァーが叫ぶ。

全員がその案に乗る。力自慢のヒーローは拳で敵の体を浮かし、浮いた体を風や念力などを使って、空高く持ち上げる。

 

「「「いっけえええええぇぇぇーーーーー!!」」」

 

敵が天高く打ち上げられ、エンデヴァーが炎を噴出してその後を追い掛ける。

みんなの期待を乗せて彼は大技を放つ。

 

「プロミネンス...バーーン!!」

 

エンデヴァーは両腕を十字にクロスにし、両手両足を大の字に開いて、全身全霊の辺りを燃やし尽くす炎を繰り出した。敵は何の抵抗できずに燃えていく。

 

その圧倒的な火力は、この激しい戦いの幕を閉じるのに相応しいものだった。




ステインを自分なりに考えてみました。後、エンデヴァーと合流をした際、グラントリノがステインの身を他の人に預けに行っていました。

バーニンの”個性”も本名である上路 萌の萌なのですが、萌の意味で草木が芽生えるという意味があり、また見た目は炎系なので、火力を強くするに、勝手に推測しました。
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