黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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18話 事件を乗り越えて

あの事件から二ヶ月が経ち、季節はすっかり春となる。

 

街は急速に復旧作業が行われて、人々が溢れる賑やかな元の街戻る。

だが、素直に喜んでいられる場合でもなかった。死亡者と負傷者は甚大な数が出ており、死亡者はヒーローでは九十三名、一般市民では百十五名。怪我人はヒーローで百二十八名、一般市民では百三十六名と悲惨な結果が残っていた。今なお病院で入院中の者もいる。

 

とはいえ、解決出来た事実には素直に喜んで良いだろうと、今日は街の復興記念のパーティーが行われるのであった。

 

 

パーティー会場はエンデヴァーの事務所の最上階。

 

ガラス張りから見える景色は、復興された街に明かりが灯され、宝石箱の様にキラキラと輝いていた。会場にいる人達はジュースや食べ物を片手に取って、感慨深そうに眺めている。

会場には色々な食べ物や飲み物が用意されていた。

食べ物は寿司、ピザ、唐揚げやポテトなどの揚げ物、片手で食べられるものを中心に、和洋折衷関係なく用意されていた。飲み物はソフトドリンクやノンアルコールドリンクで、アルコールはなかった。今日はパーティーの日とはいえ、何かあった時の際の為に備えているからだ。

 

「やったー!ご馳走だにゃ!」

 

「食べ物は逃げないから、落ち着いて食べようね」

 

はしゃぐウィズを制する魔法使い。

魔法使いが飲み物としてメロンソーダを選ぶと、丁度ヒーローコスチューム姿のエンデヴァーが、壇上に上がってくる。この場にいる全員は誰かに言われるまでもなく、自主的に黙ってエンデヴァーを見詰める。

 

檀上の中央に立つとエンデヴァーは、マイクの調子を確かめてからゆっくりと話し出した。

 

「本日はお忙しいなか、お集まり頂き、誠に有り難うございます。司会は、不肖ながらもこのエンデヴァーがさせて頂きます」

 

いつもとは違った丁寧な口調で語るエンデヴァー。

その姿に魔法使いは新鮮に感じた。

 

「皆様も知って通りことなのですが...二月十日の月曜日に、ヒーロー史上に名を残す、最悪な事件が発生してしまいました。ですが、皆様のご活躍により、無事に事件を解決するまでに至ることが出来ました。ここにいる皆様が、誰か一人でも欠けてしまったら、解決出来なかったと思います。そのことを、私、エンデヴァーが、代表してお礼を述べたいと思い、このパーティーを開かせて頂きました。皆様、本当に有り難うございます」

 

エンデヴァーの言葉に、ヒーロー達は胸を張って前を見る。

 

「ですが!守れなかった人達のことを!力及ばずに死んでしまったヒーロー達のことを!今なお苦しめられている人達のことを!忘れてはなりません!!」

 

自分達を誉め称える言葉から、戒めを垂れる言葉となる。

ヒーロー達の晴れやかな表情から、奈落の底へと落とされる。魔法使いとウィズもそのことに奥歯を噛み締める。彼らの気分がどれだけ落とされようとも、この事実には目を逸らしてはいけないのだ。

 

「そんな彼らの為に、今一度、祈る時間を下さい」

 

各々、飲み物や食べ物を自分の近くのテーブルに置いて。

 

「黙祷」

 

エンデヴァーの合図により、目をつぶり手と手を合わせ、全員の気持ちがひとつとなる。

黙祷は一分間程続いたのであった。

 

「皆様、有り難うございます。二度とこの様な事件が起きないように、切磋琢磨に頑張っていきましょう。色々と厳しい話となりましたが、本日限りは、事件を解決したことに素直に喜んでいきましょう。それでは...乾杯!」

 

「「「「「乾杯!!!」」」」」

 

コップは上に持ち上げられ、その声には喜びで満ち溢れるのであった。

 

 

「おう!黒猫の魔法使いじゃねぇか!久し振りだな!元気にしておったか?」

 

「あんたのお陰で生きていられたよ。ありがとな!」

 

「ヒヒーン」

 

「黒猫の魔法使い、ウィズ、ちゃんと食べてるか?」

 

魔法使いとウィズが食べたり飲んだりしていると、あの時一緒に戦ってくれたバーニンや馬の人、他の事務所のヒーロー達が魔法使いの元ににやって来る。魔法使いは笑顔で対応していたのだが、その心は複雑な気分であった。

 

事件が起きる前は魔法使いは酷い扱いであった。

だが仲悪いのは魔法使いだけではない。他のヒーロー同士も仲はあまり良くはない。理由は簡単だ。貰える給料が減るからだ。互いに牽制し合い、手を取り合うことはそうそうにない。しかし、事件を切っ掛けに、仲良くなり手を取り合うことを覚える。こんな風に仲良くなれるなら、事件が起きる前に仲良くなりたかったと、魔法使いはどうしてもそう思ってしまうのだ。そうすれば、事件の被害がもっと抑えられた筈だから。

 

実際に今日開かれているパーティーも、ヒーロー同士のコミュニケーションも目的である。

 

「いや~。あの事件は最悪でしたね」

 

「そうですねぇ。私の事務所のところなんて、半分ぐらい犠牲者が出てしまいましたもん」

 

「私のところなんかは、ほぼ全滅ですよ!...一番被害が少かったのは、エンデヴァーさんのところでしたっけ?」

 

「そうね。私達のところかしらね。でも、入ったばかりの新人五人は、死んでしまったわ....」

 

やはり一番最初の話題は事件のことだ。

各自、どれだけ被害に遭ったのかの話始める。バーニンも語っていたが、亡くなった仲間を思い出して辛そうになる。他のヒーロー達は同情の目線で見詰めたり、バーニンを慰めたりしていた。

 

「俺のところもそうですよ。結局、新人で生き残ったのは黒猫の魔法使いだけ。...しかし...新人ヒーロー達の勇姿はとても凄かった。実は...俺...。こんな見た目なんですが、あの化け物と戦っていた時、何度も逃げたくなってしまいました...。だけど!俺のところに来たヒーローパロットは、恐れることもなく戦い、最後は....。化け物の攻撃から子供を守る為に...自分の身を犠牲にして...」

 

「あの時のヒーロー達は皆、格好良かった!いつもは、張り合っていて、鬱陶しいと思う時があったのに、あの時ばかりは、有り難い存在だった!」

 

「私のところもですよ...。一般市民の誘導中に殺されて...。しかし、あの化け物と戦って更に実感したのですが...オールマイトが敵(ヴィラン)でなくて、本当に良かった!」

 

「あー!分かりますそれ!オールマイトの頼もしさと、恐ろしさを同時に感じましたもん!」

 

「あの化け物は...やはりと言いますが...人工的に造られたことにひどく納得しますよね?」

 

「そうかぁ?俺はまだ納得できねぇぞ。命がそうそう簡単に造られてたまるか」

 

「でも、"個性"が複数あるのですよ。基本的に一人一個の筈なのに......」

 

「そんなこと、黒猫の魔法使いに聞けば良いじゃないか!複数"個性"持ちみたいだろう!」

 

「いや...。ボクの"個性"は一つだよ」

 

「まあまあ。信じられない話ですが、喧嘩するのはやめましょうよ。せっかく、こんな素晴らしいパーティーが開かれているのですから、楽しみましょう」

 

「そうだにゃ。私達が喧嘩しても意味ないにゃ。せっかくのご飯が台無しにゃ!」

 

亡くなったヒーロー達の話から段々と変わっていき、黒い怪物の話になる。

あの事件の後黒い怪物は、警察に捕縛され、詳しく調べられることになった。その結果、造られた人工生命体であると判明する。衝撃の結果に魔法使いとウィズは多少驚き、それ以外の人達は茫然自失になってしまった。今も半数以上が信じていなかった。因みにこの件については機密事項となっていて、警察とヒーロー関係者しか知らされていない。

 

喧嘩気味になっていた二人は謝る。

気まずい雰囲気になってしまったが、人工生命体を信じていた方から話し出す。

 

「あの怪物だけでも大変でしたが...まさか、ヒーロー殺しも同じタイミングで、暴れていたとは思いませんでした..」

 

「それな!良くもなぁ、生きて帰ってこれたよなあ!バーニン、黒猫の魔法使い」

 

「ボク達だけではないよ。グラントリノというヒーローも手伝ってくれたよ」

 

「ええ、そうね」

 

「グラントリノ?聞いたことねぇな。この中で知っている奴はいるか?」

 

「ヒヒン!」

 

「私はない」

 

「俺もない」

 

「私は...聞いたことが...あるような気がします...」

 

「微妙な割合だな...。いっそ、叫んで呼んじまうか?この事件に関わっているんなら、いる筈だし...」

 

「急に叫んだら周りに迷惑にゃ。私が探しに...」

 

「待って、私が呼びに行くわ。ウィズも足元チョロチョロ彷徨かれていたら困らせると思うわよ。それに、エンデヴァーさんに聞けば分かるでしょ」

 

グラントリノの知名度はかなり低いようだ。

だからこそ、知らない人達にとってはかなり気になるのだ。あの事件を生き残った猛者として。そこで、バーニンが聞きに行って魔法使い達の側から離れる。待っている間も話題はヒーロー殺しのステインのことだ。

 

「ヒーロー殺しとか、かなり厄介な相手だったんだろ!どうやって倒したんだ?あいつの"個性"って何だったんだ?」

 

少年の様に目を輝かせて早口で訊ねてくるヒーロー。

その様子に魔法使いは、ちょっと気まずくなってしまう。答えられない部分が多いからだ。

 

「簡単に言えば、炎の中に閉じ込めるようにして倒したよ。ステインの"個性"はよく分からないなあ...。"個性"を使わせる前に倒したし...。ウィズから聞いた話だと、ステインの"個性"は血に関するものらしいよ」

 

「へぇ~。そうだったのですね。...やっぱり、色々な"個性"を使える方は、とても有利になれますよね。素直に言うと、羨ましいです...」

 

「ああ、ほんと羨ましいな。...ところで、グラントリノはどんな人なんだ?」

 

「グラントリノは小柄なお爺さんだよ。..."個性"は...足の裏から空気を出すものだった」

 

「そうなのか...。小柄で、しかも爺さん。目立って分かりやすい割には見つからんな...。来ていないのか?」

 

「そう言えば見ていないにゃ」

 

(いや...ウィズの場合はご飯に夢中なだけだったよね)

 

魔法使いはウィズに呆れていたが、せっかくのパーティーだったので黙っていた。

グラントリノ本人がいないことを良いことに、話のネタにされ、どんどんと会話が盛り上がっていく。

 

「小柄な爺さんですか...。よく生き残れましたね。そもそも歳を取ってもヒーロー活動をしているのとは...中々凄い方ですね」

 

「でも、知名度がねえよな。長くやっていれば、それなりに知名度があっても可笑しくねぇのに...」

 

「もしかして...。お爺さんになってからヒーロー免許を取ったとか?」

 

「それはねえな。もしそうだとしたら、逆に話題になってもっと知名度がある筈や!」

 

「あー。確かに」

 

「エンデヴァーさんに聞きに行ったけど、用事があって来れないそうよ」

 

「あ...そうなんだ...」

 

話が丁度盛り上がっていたところにバーニンが戻ってくる。

グラントリノは来ていなかった。お礼を伝えようと思っていた魔法使いは、少し残念な気分になった。そんな時だった──

 

 

ピピッ♪

 

魔法使いに支給された携帯が鳴る。

音に驚いて戸惑ってしまう魔法使い。他のヒーロー達はその光景に苦笑いで見ていた。そんなことを気にする余裕はない魔法使いは、慌てて番号を確認をする。驚きの番号に頭が一瞬フリーズしてしまうが、首を振って気を取り直す。

 

「ちょっと...電話に行ってきます」

 

「ああ、行っておいで」

 

魔法使いとウィズは電話しに部屋を出るのであった。

 

 

 

「もしもし」

 

『やあー!久し振りだね!元気にしていたかい?上手くやっていけてるかな?黒猫の魔法使い、ウィズ』

 

電話の相手はなんとオールマイトだ。

数ヶ月ぶりの会話がとても懐かしく感じる。感慨深くなっている魔法使いの耳に、溢れんばかりの元気いっぱいの声が鳴り響く。

 

「うん、元気だよ」

 

「オールマイト久し振りだにゃ!私達は元気に過ごしているし、何とかやってこれたにゃ!」

 

『それは良かった!...急な話で悪いのだが...君達に、大事な話があるんだ...』

 

和気あいあいとしていたが、一転して真面目な雰囲気に呑まれる。

にこやかな表情だった魔法使いとウィズも、背筋を伸ばして気を引き締める。

 

「...どうかしたのにゃ?」

 

『いや...実はね...。ほら、東京に黒い怪物が襲った、あの事件を覚えているかい?』

 

「覚えているも何も、今エンデヴァーの事務所で、事件から立ち直った街の復興パーティーを行っているところにゃ。そもそもあんな大きな事件、そうそう忘れることは出来ないにゃ」

 

『そうだよね...。実は...。あの黒い怪物二人まとめて戦ったのだけど...。そのせいで、制限時間が短くなってしまって....』

 

「えっ!?」

 

「にゃにゃ!?」

 

オールマイトの衝撃の告白に、誰かが駆け付けて来ても可笑しくない程の大音量で叫んでしまう二人。

 

『こらこら、そんなに叫んでいたら聞かれてしまうよ』

 

「ごめん...」

 

「ごめんにゃ...」

 

『静かにしてくれれば別に良いさ。叫んでしまう気持ちも分かるしね』

 

「どれぐらい時間が短くなってしまったのにゃ?」

 

『...約一時間半、半分まで...短くなってしまったね...』

 

「半分.....」

 

「そんな....」

 

絶望的な現実に絶句する二人。

だが、一番嘆きたいのであろうオールマイトは、何でもない様に笑う。でもその行為は逆に痛々しさを増す。空気を読み取ったオールマイトは空咳をしてから話し出す。

 

『まあ...色々と思うことはあるだろうが、君達が気にする必要はない!全くだ!寧ろ、君達がいてくれたお陰で被害を抑えることが出来たのだ!誇っても良いところさ!...さて、そんな君達に一つ、お願いがある』

 

「お願い?」

 

『そうお願い。それは....今までの経験を活かして、私の後継者を一緒に鍛えてほしい!』

 

「にゃ!?」

 

「ちょっと待って!ボクはまだ修行中の身。人に教える程の実力ではない」

 

「と言うか...オールマイトの後継者って、弟子のことかにゃ?それにしては...随分と仰々しい言い方だにゃ。何か特別なことがあるのかにゃ?」

 

魔法使いは自信がなくて拒否をし、ウィズは当然の疑問を尋ねる。数秒間沈黙が続いた後、決心のついたオールマイトは重そうに語り出す。

 

『それは...順に追って説明をするよ。私の"個性"......ワン・フォー・オールは...他の人に渡せる"個性"でね...代々、その力を受け継いで来たのだよ』

 

黙って聞く二人。オールマイトが何かを飲む音しか聞こえなくなる。

喉を潤してからまた語り出す。

 

『しかし...。この力を悪用されないように、与える人は慎重に選ばないといけないものだ。だから、今まで、後継者を見付けることはできなかった。ただでさえ私には、時間が少なく、焦るばかりであったが......。そんな時!彼と出会う!』

 

オールマイトのテンションが一気に上がる。

 

『彼は"無個性"であった。だが!ヴィランに襲われた友人を助ける為に、走り出す!その行動は無謀であったが、私の心を揺さぶる!』

 

『そんな彼に、私は相応しいと思った!!』

 

「そうなんだね...」

 

「気持ちの話か...。...まあ、誰を選ぶのはオールマイトの自由にゃ。ただ!オールマイトの力を受け継がせるということは、彼にも同じ責任を負わせるということにゃ!彼はそのことを分かっているのかにゃ?覚悟はちゃんとあるのかにゃ?そういうところはちゃんと話しているのかにゃ?」

 

魔法使いはオールマイトの気迫に押されて大人しくなり、ウィズは逆に弟子を慎重に選んでいた経験から、オールマイトに問続ける。

ウィズの勢いは、先程までテンションマックスだったオールマイトを怯ませる。

 

『う、うん!ちゃんと話してあるさ!』

 

「そう?それなら良いけどにゃ...。でも、彼とキキの戦い方は絶対に違うから、あまり教えることはないにゃ。それに...私達の話を信じてくれないと思うけどにゃ」

 

『ワハハハ!それなら大丈夫さ!私も一緒に彼を説得するから。戦い方に関しても、私が教えるから心配ない。ただ、アドバイスをしてくれたり、模擬戦の相手になってくれれば良いんだよ』

 

オールマイト並みの能力を持った黒い怪物との戦いで、恐ろしさを身を以て知っている魔法使いは、まだ模擬戦するとは決まっていないのに話だけで嫌になる。

 

ずっと嬉しそうに語るオールマイトの声を聞いているうちに魔法使いは、後継者となる”彼”のことがかなり気になり始めた。

 

「彼ってどんな人?」

 

『彼はね"無個性"だけどね。ヒーローを目指していてね...』

 

「"無個性"?それって"個性"を持っていない人のこと?」

 

『うん。そうだけど...』

 

「だからどうしたの?....もしかしてこの世界では、"個性"を持っていないと、ヒーローにはなってはいけないの?」

 

オールマイトの"無個性"と言う言い方に、やけに気になった魔法使いは質問をする。

その質問は地雷なのか、オールマイトは黙ってしまう。黙っている姿に魔法使いはやきもきをする。早く答えてくれなければ、嫌な方向で魔法使いの感が当たってしまうからだ。

 

『君に言っても理解できないと思うけど...。...."無個性"がヒーローを目指すということは...この世界では...自殺志願者と同じみたいなもの何だよ...』

 

「そう?不思議な力を持っていなくても、強い人は強いよ。まあ...力を持っていた方が優位なのは分かるけど...」

 

「キキ。これ以上、この話はやめるのにゃ」

 

真面目な表情で魔法使いを止めるウィズ。

でもその声には多少の苛立ちが入っていた。やはりウィズにも馬鹿にしたような感じで聞こえたのだ。

 

だけど、オールマイトの意見も何も間違っていないのだ。人類の八割が"個性"という不思議な力を持った世界で、何も力を持っていない人はかなり不利なのも事実。そんな世界で戦える者がいたとしても、かなり少ないのであろう。この世界でトップクラスのオールマイトが言うからには間違いない。それでも、強い人を知っている魔法使いとウィズには不平に感じる。

 

魔法使いとウィズが怒っていることを察したオールマイトは、慌てながら話を変える。

 

『か、彼の話は、実際に会ってから話をしよう!そうしよう!君達には悪いのだけど、エンデヴァーの事務所を辞めてもらうね。上からも話をつけてくれるから大丈夫!じゃあ切るね!バイバイ!』

 

魔法使いの返事を待たずに、オールマイトは電話を切ってしまう。

その様子にため息をつきたくなった魔法使いだったが、ウィズが首を振って止める。

 

「私達が文句を言う権利はないにゃ」

 

「けど...。そうだよね...。ここはそういう世界だもんね...。しかし、あのオールマイトもかあ...」

 

「馬鹿にはしていない筈にゃ。ただ、彼はあくまでも、この世界の常識にしたがっているだけにゃ」

 

この世界の考えはオールマイトの考えの方が正しい。

寧ろ、異世界の話をごちゃ混ぜにするな、と文句を言われても可笑しくはないのだ。だが、魔法使いの記憶を見て心を打たれたオールマイトは反論をすることはしなかった。

 

いくらこの世界の常識と言われようとも、魔法使いの心は腑に落ちることはなかった。逆に、心の隅では、この件について絶対に忘れてはいけないと想っていた。何故なのかは自分でも分からないが、心に留めることを誓う魔法使い。

 

「ここで考えていても仕方ないにゃ。...それよりも...なんて言って辞めればいいのにゃ...」

 

「そうだね...。せっかく仲良くなれたのにね...」

 

憂鬱になりながらも魔法使いとウィズは、オールマイトとその後継者の為に次の準備をするのであった。

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