黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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予め書いておきます。緑谷アンチになっております。緑谷ファンの方は申し訳ございません。○○アンチとかでタグを作りません。原作でなんでここは、こうなんだろう?と、全体的に突っ込みを入れてしまうので....。

皆々様の考えは分かりませんが、私の考えでこうなりました。それでも良ければ、どうぞ。


19話 緑谷出久

冷蔵庫、洗濯機、テレビ、ソファー、車のタイヤなど、どこかの誰かに使われていた物が、勝手に捨てられ、遠い国の物も海から流れ着く。ここ、多古場海浜公園は、それらの理由でゴミが大量に放置されている場所だ。そんな場所に、朝早くから少年が一人でゴミ拾いを頑張っていた。

 

もさもさした緑色の髪とそばかすが特徴的で、今まであまり運動をしてこなかったのか、動きはひょろひょろしており、重たい物を持つのに苦労をしていた。

 

そんな少年を見守る影が一つ。

骸骨の様にガリガリに痩せている金髪の男性。彼は少年の動きを観察していたが、何か思いにふけると、少年を呼び出して作業を一時中断させる。

 

「緑谷少年、ちょっとこっちに来て」

 

「はい!一体、なんの用ですか?」

 

少年は持っていた物をその場に置いて、急いで男性の側に駆け寄り、汗を拭いてから件を訊ねる。

男性は聞かれても黙っていたが、意を決すると口を重たそうに開いて話し出す。

 

「緑谷少年...。実は、君に会わせたい人物がいる...。...しかし....ウィズとレイラドル少女には....この前喧嘩別れをしたようなものだからなあ...会いづらい...。...しかも...説明はかなり難しい...けど...緑谷少年を強くするのに必要なことだし...。...ああ!価値観が違いすぎるけど!緑谷少年と仲良く出来るのだろうか!?」

 

「僕に会わせたい人物ですか?その人は一体誰ですか?...って!オールマイト!?」

 

緑谷という名の少年は骸骨の様な男性、トゥルーフォームのオールマイトの態度に首を傾げる。

オールマイトはゴニョゴニョと、口をもごつかせていた。

 

「オールマイト...。...うん?レイラドル少女...?レイラドルって...どこかで聞いたことがあるような...?...あ!思い出したぞ!他人の力を借りる"個性"を持っているヒーロー、黒猫の魔法使いの名字だ!あの人が...僕に会わせたい人?何故あの人?それは他人の力を借りる"個性"と引き継ぐ"個性"ワン・フォー・オールに共通点があるから?...正直に言って...あの人こと、苦手なんだよなあ...。なんでヒーローと敵(ヴィラン)の戦いを見てはいけないのであろうか?あそこまで怒るのことなのか?それに...あの時...ヒーローなら、なんで他のヒーローから逃げたのだろうか?しかし...あの"個性"はかなり羨ましい...。エンデヴァー並みの火力、強烈な敵の攻撃から守る盾、人を回復させたり、力を与え。敵の動きを止める...。しかも、火だけではなく、氷、雷など色々操れていたなあ...。そういえば、五枚までしか操れなかったけど、やっぱり制限があるのかな?...ああ、それでも、本当に羨ましい!あれだけあれば、幅広い選択肢があるだろうな。僕だったら...」

 

緑谷もオールマイトと同じくぶつぶつ呟くのであった。

 

 

 

「コホン...。話が大分それてしまったが、本題に入ろうか」

 

我に戻ったオールマイトは、恥ずかしそうに空咳をしてから話を切り出す。

緑谷もオールマイトに注意されて元の状態に戻る。

 

「緑谷少年、君も察しの通り、会わせたい人物は黒猫の魔法使いだ」

 

「それは引き継ぐワン・フォー・オール"個性"と、他人の力を借りる"個性"に、何か共通点があるからですよね?...それって!誰かの力であったけど、自分の力になったというところですか!?」

 

「そうさ!素晴らしい洞察力だ緑谷少年!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

憧れのヒーロー、それもNo.1のヒーローオールマイトに誉められて、緑谷は満面の笑みを浮かべる。

オールマイトも微笑ましく見ていたが、言わなければいけないことを思い出して、仕事時と同じくらい真剣な顔付きとなる。

 

「緑谷少年、率直的に問おう。君は、黒猫の魔法使いについてどう思っているんだい?」

 

真剣に問う姿に緑谷は戸惑っていた。

緑谷はなんて答えようか迷っていたが、偽りのない気持ちで答えることにする。

 

「僕は...やっぱり、正直に言って、苦手です」

 

「ほう...。それはどうしてかね?」

 

先程の様子でなんとなく分かっていたが、知らないふりをしてオールマイトは質問をする。

 

「だって...!ヒーローの活躍はいつだって、人々の心に夢と希望を与えるものなのに!それを一個人の身勝手な意見で禁止するなんて...!許せない!それに、ヒーローなら人々を守るのは当たり前なのに、守れないなんてそんなの、ヒーロー失格だ!だいたい、黒猫の魔法使いの"個性"は僕が今まで見てきた"個性"の中でも、類を見ない程強力な"個性"なのに、誰よりも強い"個性"なのに、ヒーローの仕事が全うすることが出来ないなんて.....はっきり言って...力を貸してくれる人に対して裏切っているし、情けないよ!...だったら、僕のような"無個性"にあげた方が、救いになるよ!」

 

緑谷は小さい頃からヒーローを目指していた。

だが、四歳の時に"無個性"と判明されてから、ほぼほぼヒーローの夢を諦めかけていた。それでも執着心から、ヒーローについての研究ノートを書いていた。

 

そういった影響で、緑谷はヒーローと"個性"に凄く執着心が湧いていた。

だから、ヒーローについて文句を言っていると、怒りが芽生えた。そのうえ、誰よりも強い"個性"を持っているのに弱気な意見を言うその姿は、この世界で一番って言っていい程腹が立っていた。緑谷はその思いをオールマイトに全力でぶつける。言い終えた彼の顔は、真っ赤に染め上げていた。

 

「そうか...。それが緑谷少年の正直な気持ちなんだね...。君の気持ちを知った上でも、私は、緑谷少年を強くする為に、黒猫の魔法使いと会わせるよ」

 

オールマイトの返答に緑谷は俯いて黙る。

緑谷の様子にオールマイトは心の中で溜め息をつくしか出来なかった。

 

 

 

 

オールマイトは緑谷が自分から離れる前に、弟子である緑谷の気持ちが不快にならないように、そして、黒猫の魔法使いに興味を示すような話の内容を考えていた。

この難しい問題にオールマイトは頭を抱える。

 

実は黒猫の魔法使いの考えに、全部が全部、賛同している訳ではない。オールマイトも自分の行っている仕事、ヒーローに誇りを持っているから、緑谷と同じ考えのところもある。ただ、オールマイトはとあることに疑問を感じていた。それは....

 

 

皆、大袈裟に怒りすぎていない?

 

あくまでも黒猫の魔法使いが怒っている理由は、ヒーローと敵(ヴィラン)同士の戦いを直接見に行くことで、危なくなるから怒っているだけだ。市民も守れないって言ったのも、わざわざ危ないところに行くから文句を言ったのであって、怪我をしていたり、怖がってパニックになったりとか、そういった時には文句は一ミリたりとも出ないし、自分よりも強い人がいることを知っているからこそ慎重になって言っているだけである。

 

(緑谷少年とレイラドル少女は、明らかに相性が良くなさそうだなあ...。けど、私の引退は近い。それに...私の"個性"ワン・フォー・オール並みに強い黒い怪物、因縁のオール・フォー・ワンとの決着がつかない限り。そして、この世界の平和の為に!異世界の体験談は必要だ!悪いが緑谷少年。その気持ちを我慢してくれ...)

 

「緑谷少年...君の気持ちはこっちが痛くなる程伝わったよ。だけど、君が強くなるには彼女達の力が必要だ!...この経験も、これからのヒーロー活動で絶対に!役に立つだろう!だから、頑張るのだ少年!...それと...彼女達と話す時は、”今までの常識を捨てなさい”でないと...頭がついていけないぞ!」

 

オールマイトは熱く語ったが、緑谷の反応は何も変わっていなかった。それでもオールマイトは話を続けようとするが、緑谷から「僕....作業に戻りますね....」と、暗い返事を一方的にされて言ってしまう。

オールマイトが引き留めようとしても、聞く耳を持たなかった。

 

結局、黒猫の魔法使いとウィズが来るまで、一言も話をできなかったのであった。

 

 

 

「おーい!」

 

緑谷の耳に黒猫のウィズの呼ぶ声が聞こえてくる。

オールマイトは嬉しそうに振り向き、緑谷は一度、魔法使いとウィズの方を見るがそっぽを向く。

 

あれから三十分は経ったけど、二人の空気は気まずいままであった。

 

「久し振りオールマイト。オールマイト、あの時の怪我は大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫さ!見ての通り!」

 

「そのガリガリな姿で大丈夫って言われても信用ないにゃ!」

 

「HAHAHA!これまた手厳しい!そんなことよりも...君達の方こそ、大丈夫だったかね?」

 

「私達は皆がいたから無事にゃ。オールマイトの方こそ大変だったにゃ。あの黒い怪物を一人で相手をしていたなんて...」

 

「私は大丈夫!何せNo.1ヒーローだからね!」

 

「けど...時間が減ってしまったにゃ...」

 

「まあ...それは仕方ない...。けど!私の時間を引き換えに!あの街は無事だった!それで良いではないか!」

 

「あまり良くないにゃ!」

 

オールマイトとウィズと黒猫の魔法使いは、久方ぶりの再開で話がどんどんと進んでいく。

その様子を緑谷は面白くなさそうに、チラチラと横目で見ていた。

 

「彼が...オールマイトの後継者?」

 

緑谷と黒猫の魔法使いの目が合う。

気まずくなった緑谷は急いで下を向く。下を向いたのいいが、相手の様子が気になった緑谷は何気なく探る。黒猫の魔法使いはこちらをじーーっと見詰めている。気分が悪くなった緑谷は心の中で愚痴る。

 

(なんだろうこの人は...。ずっと見てきて...。僕が嫌がっているのを、分かっていないのか?!黒猫の方も同じくらい見てくるし!ヒーローは人の嫌がることをしてはいけないのに!)

 

緑谷が愚痴っていてもなお、黒猫の魔法使いの観察は終わらない。

それどころか、ウィズも一緒になって観察をする。ますますイライラする緑谷。

 

「二人共、観察するのはよそうか。彼が私の後継者の緑谷出久だ..よ!?!?」

 

オールマイトが嫌がっている緑谷を気遣って、黒猫の魔法使いとウィズを止めるが、急に黒猫の魔法使いがオールマイトの胸ぐらを力いっぱいに掴む。

バブルピンク色の瞳には怒りで満ちていた。ウィズも怒っていたので、黒猫の魔法使いの行動を止めなかった。寧ろもっとやれ!と、雰囲気で助長させていた。

 

「な、なんだい!?急に!どうして、そんなに怒っているのかい!?」

 

「どうして......」

 

黒猫の魔法使いは困惑したオールマイトの声を聞いておらず、ただボソボソと呟く。

いきなりの展開に緑谷はボーッとすることしか出来なかった。黒猫の魔法使いは周囲の雰囲気を気にせず呟き続ける。

 

「どうして.........」

 

「どうして............」

 

 

「......本当にボクの記憶を見て共感したの?」

 

「う、うん!そうだ」

 

「だったら!なんで!彼を選んだの!?ボクの記憶を見ていたら、知っているよね!!身に余る力を持ったらどうなることを!!...彼を!彼を殺したいのか!!」

 

「えっ!?なんで知っているの!?訓練してから二日後に、僕の今の体では耐えられなくて、四肢が捥げ、爆散してしまうて言われたことを!」

 

「やっぱりにゃ!」

 

黒猫の魔法使いとウィズが怒っている理由を知って緑谷は、驚きのあまり口から心臓が飛び出てしまうのではないかと、勘違いする程驚く。

たじたじになったオールマイトは、なんとか黒猫の魔法使いを落ち着かせようとする。

 

「レイラドル少女にそういった経験があったから、怒ってしまう気持ちになるのをちゃんと理解しているよ。それでも私は!分かっている上で、彼に"個性"を渡すことにしたのさ!」

 

「分かっているなら!どうして!!」

 

黒猫の魔法使いは親の仇を見るような形相で睨む。

普通の人ならすぐ目をそらしても可笑しくない。だがオールマイトは、黒猫の魔法使いの視線を全部受け止める。胸ぐらを掴まれて苦しい筈なのに、何事もなかったように、優しく、子供に言い聞かせるように語り掛ける。

 

「ワン・フォー・オールは体を鍛えれば、宿主を傷付けることはないからね。私が先代からこの"個性"を受け取った時は、鍛えてあったから無傷で使えたんだ。だから...彼も鍛えれば、安全に使えるようになるさ。...ごめんね。私が電話で先に話しとけば良かったね。色々と、思うことがあったのに...」

 

「えっ!?オールマイトは初めからワン・フォー・オールを使いこなせていたのですか!?先代って、どんな人ですか!?その人も初めから使いこなせていたのですか!?」

 

置いとけぼりにされていた緑谷が訊ねる。

その様子に今度はウィズが激怒する。

 

「オールマイト!私は言ったよね?!後継者にする彼にはちゃんと話すって!彼、分からないことだらけみたいだにゃ!そんなんで、責任とか伝わらないにゃ!!」

 

「なっ!?何勝手に言っているんだよ!僕は!オールマイトがどれだけ大変なのはとか!オールマイトがどれだけ平和に貢献しているとか!僕は分かっているよ!大体!オールマイトに迷惑を掛けている君達が!責任ならなんやらを言う資格はないんだ!」

 

緑谷は大のオールマイトファンだ。

それはどのくらいかと言うと、四歳になる前からオールマイトの動画を観て、ヒーローを目指す程だ。その動画では、災害に巻き込まれた人々をオールマイトが救うものだった。恐怖でパニックに陥っている最中、オールマイトだけは高らかに笑い、人々を安心させようとするその姿は、幼い緑谷の心にずっと印象に残る程であった。

そんな尊敬していた人物で、一番初めに好きになったヒーローに文句を言う黒猫の魔法使いとウィズに、緑谷は生きてきた人生最大の怒りに、あっという間に呑まれて、緑谷自身でも出したことのない音量で叫ぶ。

 

三人の様子にストレスが溜まったオールマイトは、一旦血を吐きにどこかに行ってしまう。黒猫の魔法使いとウィズは緑谷を冷めた目付きで睨み、言いたいことを言えた緑谷は、荒く息を吐いて整えようとしながらも、黒猫の魔法使いとウィズを睨み付ける。

 

怒りに捕らわれていた三人は、オールマイトの体調の悪化にも気付けず、両者睨み合う。睨み合いでは終わらず、先にウィズが口を開く。

 

「ふ~ん...。君は分かっているって、言っているみたいだけど、全然分かっていないにゃ!」

 

「はぁああ!?何でそんなことを、勝手に決め付けるんだ!!」

 

「なら!なんで君は体を鍛えなかったのにゃ!戦うことは分かっていたなのに、なんで体を鍛えていないのにゃ!そんな貧弱な体で何が守れるのにゃ!誰も守れないどころか、自分自身すらも守れないにゃ!その状態でヒーローを目指していたら、死ぬだけにゃ!」

 

「体を鍛えたって、"無個性"だから無理なんだよ!!それに、鍛えろ鍛えろって、さっきから言っているけど!オールマイトに指導されて鍛え始めているんだから、良いじゃないか!君達には分からないだろうね!"無個性"の苦しみを!"無個性"って言うだけで、何やっても無駄って言われ!"無個性"なだけで、常に馬鹿にされる僕の気持ちを!君達なんかには分からないだろうね!特に黒猫の魔法使い!君は!類い稀な"個性を持っている!そんな君には、僕のような"無個性"の苦しみなんか分からないね!!」

 

緑谷の心の叫びに黒猫の魔法使いとウィズは呆放心していた。

そのことが更に緑谷を腹立たせる。

 

「話では聞いていたけど...。"無個性"ってそんなに苦しめられていたんだね...」

 

「黙れ!」

 

黒猫の魔法使いの同情が緑谷の神経に触る。

さっきまでは自分は関係ありませんと、呆けていた癖に!と、緑谷は生まれて初めて殺意が湧く。緑谷は怒りのままに怒鳴り続けようとしたが、黒猫の魔法使いが口を開いて中断させた。

 

「じゃあなんで君は、あの時の事件を見ていられたんだ?」

 

「えっ?あの時の事件?...って!今はその話をしていない!僕は"無個性"の苦しみを...」

 

「質問にはちゃんと答えて」

 

黒猫の魔法使いは緑谷の話を遮る。

静かな口調だったが有無を言わせない。なんとも言えない迫力に緑谷は渋々従うことにする。

 

「あの時の事件って...黒猫の魔法使いが初めてプロデビュー戦のことですか?」

 

「そうだ」

 

「理由を聞かれても...。僕はプロヒーローの活動を見るのは趣味のことだし...」

 

「随分と趣味が悪いんだね」

 

「なっ!!?なんで君にそこまで言われないといけないんだ!!」

 

「ヒーローが戦っているってことは、困っている誰かがいるということ。しかも君の場合...人質のことを気にも止めず、ボクの力にしか興味がなかった!」

 

緑谷は盲点を突かれ黙る。

黒猫の魔法使いの感情は高まり、話はヒートアップする。

 

「君はさっきから"無個性"の苦しみを知れ!と、言っていたけど、ボクから言わせれば!あの時泣いていた女の子の気持ちを考えろ!いつ死んでも可笑しくなくて!恐怖に体を震えることしかできなかった姿を!周りには人もヒーローもいるのに、助けてもらえず、ただ見ることしかしない!いくら泣いて叫んでも!君のようにお遊び感覚で見る....!君は散々"無個性"で苦しめられていたんだよね?それなのに、なんで君は、他人の痛みが分からないんだ?」

 

「女の子の苦しみを気にするどころか、興味すら持たない君は...」

 

 

 

「ヒーローに向いていない」

 

「........ッ!?」

 

静かに告げる黒猫の魔法使い。

反論したいのに言葉が出ない緑谷。

 

(僕は...オールマイトに認められたのに!ヒーローに向いていない!?オールマイトは......僕の行動はヒーローに向いているって認めてくれたのに!?...なんで、デビューをして間もない奴が、僕を否定してくるんだ?!皆を不愉快にさせている、こいつが...!!許さ...)

 

「待て待て!ストッーーーーープ!!」

 

緑谷が暗い感情に堕ちている時に、やっとオールマイトが戻ってくる。

オールマイトの登場で場が少し収まる。

 

「君達、喧嘩は駄目だ!」

 

「でも!こいつは!こいつだけは!」

 

「緑谷少年!ここは少し気持ちを落ち着かせなさい!レイラドル少女!ウィズ!先に彼と話したいのだが、良いかね?」

 

黒猫の魔法使いとウィズは黙って首を縦に振る。

オールマイトは、緑谷と同じ目線の高さまで腰を下げて向き合う。その姿に少しは緑谷の怒りが収まる。

 

「良いかね?緑谷少年。レイラドル少女とウィズは...実は...異世界から来たんだ」

 

「...........................はい?」

 

驚きのカミングアウトに、緑谷の怒りは遥か彼方まで飛んでいく。

困惑が彼の頭の働きを鈍くする。

 

「...えっ?異世界って......」

 

「緑谷少年が驚くのも凄く分かる!しかし私は、彼女の記憶を見たんだ」

 

「記憶を...?」

 

「そう記憶を。記憶に関する"個性"を持っている人物を経由して知ったんだ。そこで私は驚愕の事実を知る!なんと彼女は!"無個性"だ!」

 

「えーーーーーーーーーーーー!!!?黒猫の魔法使いが”無個性”!?!?」

 

緑谷の大絶叫が空に広がる。

オールマイトと黒猫の魔法使いは耳を塞ぎ、ウィズは文句を言い、近場にいた鳩は逃げるように飛び立つ。幸いにして、この近くに他の人がいなかったから、聞かれることはなかった。

 

「そう!レイラドル少女、通称黒猫の魔法使いは、異世界クエス=アリアスから来た魔法使いだ!彼女の力は"個性"ではなく、魔法」

 

「"個性"ではなく...魔法?」

 

「そう魔法!」

 

「...クエス=アリアスの魔法は、どんな魔法なんですか?」

 

憧れのオールマイトが認めていたことにより、緑谷はなんの疑問を感じずに、黒猫の魔法使いとウィズが異世界から来た存在だと受け入れる。

認めたことで好奇心が芽生えた緑谷は尋ねる。今までオールマイトが答えていたが、魔法に一番詳しいウィズが代わりに答える。

 

「クエス=アリアスの魔法...それは...108の異界の住む人達ー精霊から、力を借りる魔法にゃ」

 

「108って...異世界って...そんなにあるのですね...。そっかあ...魔法かあ...。だから"個性"と違って、なんでもできるのかあ...。本当に羨ましい...。...うん?ちょっと待ってよ!なんで僕の体が爆散することと、クエス=アリアスの魔法に、なんの関係があるんだ!」

 

「ちゃんと関係あるにゃ。魔法も、自分のレベル以上のものを使うと...召喚した先の化け物に喰われたり、人間から異形の姿に成り果てるにゃ。...クエス=アリアスだけではない。他の世界でもそうだったにゃ」

 

「だから、彼女達は怒っていたんだ。緑谷少年の身を心配してね。本当に私が先にちゃんと説明をしておけば、喧嘩にならずにすんでいたんだ。緑谷少年、彼女達を受け入れてくれるかい?」

 

事情を知った緑谷はいたたまれなくなる。

喧嘩の原因が自分の身を案じていただけだったことに。緑谷は素直に謝ることにする。

 

「そ、その!色々と言い過ぎてごめんなさい!」

 

緑谷は勢いよく頭を下げる。

その様子に黒猫の魔法使いとウィズはたじろぎ、オールマイトはほっと胸を撫で下ろす。もうこれで喧嘩しなくて済むのだと。

 

「だから......」

 

 

「黒猫の魔法使いとウィズの考え方が可笑しかったのですね」

 

「「...えっ?」」

 

「あ...!違います!違います!考え方が可笑しいって言うのは、悪口ではなくて!異世界から来たから、仕方のないことだったなあっと!」

 

緑谷の変な言い方に、黒猫の魔法使いとウィズは驚く。緑谷は気分を悪くさせたと、勘違いをして弁解をする。雲行きが怪しくなっていく。

 

「だって!ヒーローの格好良さが全然分かっていなかったじゃないですか!」

 

「.....」

 

「ヒーローはね凄く格好良いんだよ!敵(ヴィラン)に勇敢に立ち向かう姿は、人々の心に勇気を与えて!ヒーローが勝つ姿は希望を与えてくれる!だってそうでしょ。悪は負けて、正義が勝つから、人々は真っ直ぐと前に歩ける。皆の憧れの職業!しかし...魔法は良いね!ヒーロー向けの力で!僕は"無個性"だったから、ヒーローになれなくて、ずっと...諦め気味だったんだ。でも!オールマイトに出会えたから、やっとヒーローになれた!だけど...君が羨ましいんだ!」

 

「羨ましい?」

 

「そうなんだよ!それだけ強い力があれば!絶対に勝てるじゃないか!」

 

「勝てる?自分よりも強い人間は結構いるよ」

 

「えっ?そうなんですか!?とても強い力なのに!?」

 

「うん負けるよ。...ところで、なんで君はヒーローに成りたいの?」

 

「僕がヒーローになりたい理由?それは...僕が"無個性"だったから...。黒猫の魔法使いは知らないと思うけど...この世界は"無個性"だけで馬鹿にされます。だから...人を助けている姿を見て、凄く格好良いと思ったのです。僕もそんな風になりたくて、ヒーローを目指しています」

 

黒猫の魔法使いの問に緑谷は想いを込めて語る。

黒猫の魔法使いとウィズはそんな緑谷を...

 

 

 

先程以上の冷たい目付きで見詰めていた。

 

「えっ..........?」

 

あまりの変わりように緑谷はたじろく。

自分が何か変なことを言ってしまったのか?でも、相手は異世界人だから考え方はあまりにも違いすぎるし...と、緑谷は考えを煮詰めている間にも、黒猫の魔法使いとウィズは、 氷山の様な冷たい雰囲気を漂わせて睨み続ける。

 

けど、ずっとは睨み続けることはなかった。黒猫の魔法使いはつまらなそうにため息を吐いた。

 

「あ、そう。それが君のヒーローになりたい理由なんだね。......今日はもう疲れたから帰っていい?」

 

「え!?今日はまだ始まったばっかりだよ!時間は短くても良いから!今日のトレーニングを付き合ってよ!ねえ!」

 

オールマイトが必死に頼み込んでいるが、黒猫の魔法使いとウィズはそれでも帰ろうとする。

必死なオールマイトは黒猫の魔法使いに肩を掴む。その瞬間...

 

「じゃあ、言い方を変えます。...とてもイライラしているので、頭を冷やしに帰ります!」

 

そう言って黒猫の魔法使いはウィズを連れて帰っていく。

緑谷とオールマイトは蔑んだ目付きで睨み付ける。

 

彼らはそのことを、一生忘れることはなかったのであった。




次の話でオリ主視点の話を書きたいと思います。

こんな文なのですが、気になった方は次もよろしくお願いいたします。
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