黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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24話 訓練その三と入試

訓練が日課になってきた秋。

秋になると、オールマイト目当ての人は白部以外来なくなる。

 

訓練の内容はまた変わり、泳ぐのは止めて、体に五キロ程の重りをつけて砂浜を走る練習に変わる。因みに重りは、白部が来ていない日は一日中ずっとつけていた。

ゴミの山は順調に減っており、ゴミを担ぐ量が増えて、運ぶスピードが速くなったと、緑谷自身でも成長を実感出来る程であった。模擬戦でも成長が表れてた。

 

「模擬戦開始にゃ!」

 

ウィズの叫びで模擬戦が始まる。

戦闘に慣れてきた緑谷は、ジャブを放ったり、隙を見て蹴りを入れようとする。

 

バシッ

 

緑谷のパンチがキキに受け止められる。

今までは避けられるだけであったが、秋に入る頃には攻撃が当たるようになってきたのだ。

 

攻撃を初めて防がれた時緑谷は、その場で飛び上がってしまう程喜んだのだ。対戦相手のキキは手加減はしても、相手が"無個性"だから、無力だからと、馬鹿にするような人はではなく、真剣に相手をするだからだ。

 

三分間程跳び跳ねて、ウィズにたしなめられたぐらいだ。けど、喜んでいられるのも束の間だ。

攻撃を防がれることなく、ダメージが入るように、ちゃんと当てなければならないのだ。防がれては意味はないのだ。

しかも、攻撃を当てる為に動きを見極めようとしても無駄であった。何故ならば、キキは武道の達人ではないため、動きが決まっていなかった。素人の緑谷には難易度が跳ね上がっていた。

 

模擬戦の他にもまだ問題があった。それは、ゴミ山の上を歩く、不安定な場所での移動訓練だ。

キキがゴミを山の上に更に乗っけたせいで、山は一段と不安定な状態になってしまった。慣れてきても、落ちてしまうことが多くなっていた。最初の方は風の魔法で受け止めてくれたが、今では滑り落ちることも、受け身の練習として自力で立ち上がらなければならなくなる。

 

その結果、緑谷の身体は痣、擦り傷だらけとなった。

体は傷だらけ、ジャージもボロボロになってしまったけど、彼は夢のヒーローを目指して、生き生きと頑張っていたのであった。

 

 

 

「こんにちは!」

 

白部は週に二日程、スポーツドリンクなどを持ってきて遊びに来るのようになっていた。

 

「あ、湖井さん。こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「こんにちは」

 

笑顔で挨拶をする白部に三人は挨拶を返す。

白部は三人の元に駆け寄る。

 

「今日も訓練ですよね」

 

「うん、そうだよ」

 

「そうですか、お疲れ様です」

 

緑谷とオールマイトは挨拶を返すとすぐに訓練に戻り、キキと白部は腰を掛けて男二人組の様子を見守る。

初めはオールマイトと緑谷目的で会いに来ていたのだが、夏の期間を経て、キキと白部は会話する量が増え、ゆっくりと仲良くなっていた。

 

「そういえば...あのゴミの山...なんだか高くなっているような...。毎日掃除をしている筈なのに...」

 

白部はゴミ山の変化に気が付く。

不思議がる白部にキキはなんともないように言う。

 

「うん、高くなっているよ。だって私がゴミを積み上げているからね」

 

「な、何故!?積み上げているのですか?!」

 

「不安定な場所でも歩けるようにね」

 

「元の状態でも充分不安定でしたよ!...そもそも、このゴミ山で練習をする必要がありますか?!」

 

驚いたり、ツッコミを入れる白部。

出会った頃は事務的な会話ばかりであったが、最近はリアクションが大きくなってきた。

話の内容に驚いているだけかもしれない。

けど、キキにとっては慣れてきた兆しに見えた。この調子で仲良くなっていければ良いなと、キキは思いながら答える。

 

「この山じゃないといけないことはないけど、他に練習が出来る場所が思い付かないし、移動をする時間がもったいないから、ここでやっているだけだよ」

 

「他にも練習出来る場所はいっぱいありますよ...」

 

キキの答えに白部は呆れ返りを小さく呟く。

 

「そうなの?じゃあ、どこだったら出来る?」

 

「う~ん...そうですねぇ...。スポーツジム、アスレチック施設、ボクシングや空手などを習うとか...。まあ、これらをする場合はお金がかかりますが...」

 

「お金か...。お金が必要になるなら、親御さんに説明をしないといけなくなるな...」

 

いくら一緒に鍛えると約束したとはいえ、お金を出す義理は無い。

だから、どうやって親に説得をしようかと、顎に手を当てて考え込むキキ。そんなキキを見て白部はやれやれと溜め息を吐いた。

 

「あのですねぇ...お金の説得は、オールさんが考えるのではありません。そこは緑谷君が考えるところですよ。オールさんはお金のことよりも、緑谷君の体を心配してあげて下さい。いつも体がボロボロです。端から見れば、虐めに遭ったようにしか見えませんよ」

 

「うん...。本当はもっと穏便に訓練をやりたかったけど...もう時間がないんだ」

 

「時間?...雄英の入試のことですか?確かにそれなら時間はありません。ですが、ここまでやる必要があるのですか?」

 

白部が緑谷のことを心配するのは当然のことであった。白部の目の前で、緑谷がゴミと共に崩れ落ちたのだ。

ゴミの雪崩は緑谷の姿を掻き消し、キキは急いでバレないように防御障壁を展開をして緑谷を守る。その甲斐あって緑谷は無傷で済んだが、荒事に慣れているキキ、ウィズ、オールマイトでさえも、背筋に冷や汗を流して肝を冷やす。一般人の白部には精神的にきつかったらしく、その場に呆然と立ち止まっていた。

 

それ以降、白部は訓練のやり方に疑問を感じている。

 

「ヒーローって、命懸けでしょ?どんな荒事にも対応出来るように、今のうちに色々なことをやらせておきたいんだ。それに、出久がこうして訓練をやっているのは、ちゃんと親御さんに説明をしたから、説得が出来たと思うよ」

 

「...それは...そうですね...」

 

キキの説得に渋々納得をする白部。

けれど、また新たな疑問が生まれる。

 

「しかし...。オールさんと八木さんは結構厳しいのですね。お二方は、ヒーローに関する仕事をしていたのですか?」

 

「していないよ。命懸けの仕事だと分かっているから、厳しくなっているだけだよ」

 

訓練のやり方も、バレる原因なのか!?と、思ったキキは少し焦り、いつもよりも少し早めの口調で答えてしまう。

けど、白部はキキの変化に全然気が付いていなかった。

 

「そうですよね。ヒーローはいつも命懸けですものね」

 

笑顔で納得をしてくれた白部にキキはほっと息をつく。仲良くなりながらも、バレないように気を付けようと、心に刻むのであった。

 

 

 

訓練をするのが当たり前になってきた冬。

冬の厳しい寒さが人々を凍えさせる。だけど、常に体を動かしている緑谷には関係なかった。寒さを吹き飛ばすかのように、今日も緑谷は走り続ける。

 

緑谷とキキが対峙する。

ゴミの山は着々と減っている為、その分冷たい風を浴びることになったが、緑谷は気にしていられる余裕は無い。これから模擬戦は本格的になるのだから。

 

 

「ぐっ....!!」

 

緑谷は思い切り殴られる。その痛みに倒れそうになるが、なんとか持ち堪える。緑谷は戦闘力の差に絶望しそうになる。

動画とかでプロヒーローの動きを見ている緑谷。そんな彼でも、キキの動は不規則故に、見切ることは出来ず、体につけている重りのせいにしても、キキも緑谷と同じ重さの重りをつけているから言い訳は通用しない。

 

避けるにも重りと痛みで上手く動けず、痛みに堪えるしかできない自分に腹を立てる緑谷。

模擬戦は緑谷がボコホゴになるまで続いたのであった。

 

 

 

「あはは...またボロボロですね。緑谷君」

 

緑谷とキキが休憩していると、白部がいつものようにやって来る。

ボロボロ緑谷の姿を見て白部は苦笑いを浮かべる。

 

「はい...。負けてしまって...」

 

「...?負けたの?今までは、一方的に殴っていたりしていませんでしたか?」

 

緑谷は悔しそうに語るが、模擬戦の内容を知っている白部には疑問でしかない。

 

「今日からの模擬戦は私も戦うことになったんだ。出久も避ける練習をしていた方がいいからね。敵が黙って攻撃を受ける訳ないし、少しは反撃の練習をしないといけないからね」

 

「それは...まあ...そうですけど...。だからって、ここまでやる必要はないと思いますが...」

 

「ううん、ここまでやらないといけないんだ!ただでさえ、始めるのが遅かった僕は、皆の倍頑張らないといけないんだ!湖井さん、オールさんは悪くないよ。避けられなかった僕が悪いんだ」

 

「そうなのですね...」

 

緑谷の熱い叫びに白部は引き下がる。

普段大人しめの緑谷の叫び声に何も言えず戸惑っていた。だが、戸惑っているのも短い間だけだった。

 

「しかし...緑谷君って、戦闘が苦手なのですね。こんな調子だと、先が思いやられますよ」

 

「いや...これは...!!そう!重りをつけていたから、こんな結果になったんだ!」

 

白部の言い方に癪に障った緑谷は必死に反論をする。

 

「慣れてもいないのに、なんで重りをつけたまま戦うのですか?」

 

緑谷の反論は更に呆れさせるだけであった。

 

「そ、それは...オールさんも...重りをつけていたから...」

 

白部が呆れ返っていても、緑谷の言い訳は続き、白部は長い溜め息を吐く。

 

「......オールさんは強いからいいですのよ。それよりも...なんでオールさんはそんなに強いのですか?」

 

「鍛えているからだよ。世の中敵(ヴィラン)が多くて物騒だから、厄介事に巻き込まれても対処出来るようにしているんだ」

 

「まあ...。確かに物騒な世の中ですものね。それとオールさん、対処出来るように頑張るのではなく、巻き込まれないようにすることはお考えならないのですか?」

 

「勿論、巻き込まれないように考えて行動しているよ。ただそれだけだと、いざという時何もできなくなるから、困ると思うんだ」

 

「オールさんは、昔、何か事件に巻き込まれたことがあるのですか?」

 

「......うん......」

 

敵(ヴィラン)の多さを言い訳に強さの理由を語るのだが、普通の人は逃げることを第一に考えていたことをすっかりと忘れたキキは、改めて普通の人を演じる難しさを実感をする。

これ以上聞かれたくないキキは、大袈裟に辛そうな表情を浮かべる。その表情を見た白部は、辛そうに、申し訳なさそうにキキの表情を伺いながら謝る。

 

「大変失礼なことを聞いてしまい、本当にすみません」

 

「気にしなくていいよ。もう過去のことだから」

 

キキが気にしなくても、白部は他人の嫌な過去を踏み込んだ自分を許せないようだ。

自分を責めている白部にキキは心を痛め付けられる。

 

そんな姿を見たくないキキは、急いで話を変えることを提案をする。

 

「もう過ぎたことだから、全然気にしていないから平気だよ。だから、白部は自分を責めないで。これ以上この話を続けても、互いに嫌な思いをするから、別の話をしよう!」

 

「えぇ...そうですね...。お気遣いありがとうございます。オールさん」

 

気にしていないという言葉に、安堵した白部は笑顔で頷く。

白部もこの話はしたくないようで喜んで話を変える。

 

「緑谷君は、今年の春からヒーローを目指しているようですが...」

 

「えっ!?僕の話!?」

 

今までの流れで自分の話題になると思わなかった緑谷は、驚いてすっとんきょうに叫んでしまう。

 

「はい、そうです。個人的に気になることがあって...」

 

驚いている緑谷を面白そうに見詰めながら、話し掛ける白部。

 

「気になること?」

 

「はい、とても気になることがあります。緑谷君は何故、今頃になって、ヒーローを目指しているのですか?」

 

「えっ...?それが、気になることですか?」

 

「えぇ、とても気になることですよ。だって、ヒーローは、緑谷君の知っての通り、命懸けのお仕事です。夢を追い掛けるのに遅いも早いもありませんが、命を懸けるのなら別です。少しでも早く鍛えなければなりません。しかも、緑谷君が目指す学校は、あの雄英。はっきり言ってしまえば、とても無謀な状態で挑むものです。それでも、目指すということは、何かヒーローを目指したい、大きな出来事があったのかと思って、とても気になります」

 

白部は真剣に尋ねる。

あまりの気迫に緑谷は押され気味だ。助けを求めた緑谷は、オールマイトやキキに視線を送るが、誰も目線は合わせず自分でなんとかするしかなかった。

 

「それは...僕とかっちゃんがオールマイトに救われたから...」

 

「かっちゃん?救われた?どういうことですか?」

 

「あの...ヘドロに襲われた事件で....」

 

「えっ!?緑谷君とお友達は、あのヘドロ事件の被害者だったのですか!?」

 

「ヘドロ事件?それはどういうこと?」

 

聞き慣れない単語にキキは首を傾げる。

 

「オールさんはヘドロ事件をご存知ないのですか?」

 

「うん、知らない」

 

ヘドロ事件を知らないことに、緑谷と白部は信じられないと、全身で驚きを表現していた。

そんなに知らないといけないのか?と、キキは内心不満を感じていると白部が説明をする。

 

「今年の春に起きた事件で、一人の少年がヘドロ敵(ヴィラン)に捕まって人質にされていました。現場に居たヒーロー達は、敵(ヴィラン)と相性が悪く、手を出すことができず見ているだけでした。そんな時にオールマイトが颯爽と現れて、ヘドロ敵(ヴィラン)を一撃で吹き飛ばしました。ここまでが、表向きの話です」

 

「また...相性が悪くて見殺しか...。本当にこの世界のヒーローはどうなっているんだ?」

 

キキが愚痴る。

二人には聞かれてはいなかったみたいで話は続く。

 

「これはあまり語られていないのですが...ヘドロ敵(ヴィラン)に立ち向かった一般人がいるのですよ」

 

「それが出久?」

 

「うん!そうなんだ!かっちゃんの顔を見ていたら、いても立ってもいられなくて!」

 

嬉しそうに誇らしげに語る緑谷。

その様子を見てキキは、オールマイトが選んだ理由を思い出す。

 

「成る程...だから...認めたのか...。けど、なんで、表向きに語られていないんだ?」

 

「それは...ヒーローの威厳が廃るからです」

 

「相性が悪くて立ち向かわない時点で廃れると思うけど...」

 

「......そうですね...。ま、まあ!ここで緑谷君を褒め称えたら、危ない行動を認めるようなものですから...!!救われたから、緑谷君はヒーローを目指すのですね!」

 

凄く慌てた様子で話を振る白部。

変貌ぶりに驚くキキと緑谷だったが、特に追求することなく緑谷は質問に答える。

 

「いや、ちょっと違うかな...」

 

「えっ?そうなのですか?」

 

「なんて言うか...。オールマイトだけが僕を認めてくれたんだ」

 

「認めてくれた?」

 

「うん。あの日帰り道に、オールマイトがやって来て、ヒーローに成れるかどうか悩んでいた僕に君はヒーローに成れるって、言ってくれたんだ。...だから、その言葉に応えられるように、今からでも頑張りたいんだ!」

 

「そうだったのですね...。オールマイトの期待に応えられると良いですね」

 

「うん!頑張るよ!」

 

緑谷は眩しい笑顔で頷き、入試の日まで全力で鍛えるのであった。

 

 

 

入試本番の日。

キキと緑谷と白部は歩いて雄英高校に向かう。

 

「あの海岸綺麗にしたのですね。まさか、入試の日まで頑張るとは思いもよりませんでした。...ところで、緑谷君、気持ち悪そうにしているようですが、大丈夫ですか?」

 

「うぅ...気持ち悪...」

 

キキと白部に会うとすぐに、緑谷は海岸のゴミ掃除の報告を喜んでしていたが、緊張のあまり吐き気に襲われていた。

 

「緊張をするのは分かるけど、これぐらいの緊張は乗り越えられないとヒーローには成れないよ」

 

「オールさんは意外と厳しいのですね」

 

「そう?」

 

「ええ、こういう時は励ますものですよ」

 

「励ますと言われても...。出久は今まで頑張ってきたし、強くなったのだと胸を張って言える。だから、励ます必要はないと思うんだ」

 

キキは緑谷の頑張っている姿を見ていた故に、言うことは特にないと思っていた。

 

「へぇ...。とても格好良いことを言うのですね」

 

感心する白部にキキは照れ臭くなる。

照れ臭くなったキキは何気なく周囲を見渡すと、他の受験生がこちらをまじまじと見ていた。

 

「なんで、皆こっちを見ているんだ?」

 

「あ...それはですね...。緑谷君以外、大人を連れてきていないからですよ」

 

「そういえば、なんで、二人は着いて来てくれたの?」

 

「私は雄英を見てみたかったからです」

 

「私は受験生を見てみたかったから」

 

緑谷の疑問に白部はウキウキしながら答え、キキは周囲を見渡しながら答える。

緑谷の訓練が始まった日、"無個性"という酷く下らない理由で、虐めたをしていた人達がヒーローを目指しているのを納得をしていないキキは、そいつがどんな奴か一目見てみたかったからだ。

 

「オールさん...なんだか怖いのですが...」

 

「ひぃ..!!何を急に怒っているんだ...?」

 

「....あ、ごめん。二人には怒っていないけど、ちょっとムカついたことを思い出して...」

 

自分が怖がらせたことに気が付いたキキは急いで謝り、表に出さないように気を付けるのであった。

 

 

話ながら歩いているうちに三人は雄英に辿り着く。

雄英は学校とは思えない程、とても大きくて立派な建物だ。

 

雄英に近付く程受験生が多くなる。

その分じろじろと見られるが、キキは気にせず緑谷を励ます。

 

「じゃあ、頑張ってね」

 

「う、うううん!頑張るよ!」

 

「...あんな状態で、大丈夫でしょうか...」

 

心配そうに見詰める白部にキキは何も言わなかった。

緑谷が建物に入るまで見守ることになったが、歩いている最中にもふらふらしており、足をもたつかせていた。終には転びそうになっていたが、茶髪の少女に助けられていた。緑谷は「女の子と喋っちゃった」と、嬉しそうに大きく言う。だけど、キキと白部からすれば、それは会話に入っていないぞ。と、呆れ果てさせるのであった。

 

「出久......。私と白部は女性でなかったのか?」

 

「きっと...同世代の女の子と話せて...嬉しいのでしょう...。...彼はどうやら平気そうなので、私は仕事に行きますが、オールさんはどうしますか?」

 

「私も帰...!!」

 

キキが返事をしようとすると、後ろから殺気にも似た視線を感じて振り向く。そこには...

 

並みの子供よりも小さい受験生が緑谷を睨んでいた。

彼の頭には紫色のボンボンを付けており、彼の瞳から血の涙を流していた。

 

「オイラの目の前で...!!イチャイチャしやがって...!!絶対に!絶対に!許さねえぞ!!」

 

これ以上は叫ぶと迷惑になると分かっているのか、ハンカチを噛んで走り去る。

その様子を呆気なくキキと白部は見詰めることしか出来なかった。

 

「イチャイチャ...?どういうこと?」

 

「さあ...何を言っているのかはさっぱり分かりませんが、彼も受験生みたいですね」

 

「そうみたいだね。....とても濃い人みたいだ」

 

「あはは....そうですね」

 

キキと白部と苦笑いを浮かべながら帰る。

 

 

キキは歩きながら願う。

誰かに嫌がらせをしたり、傷付けることに躊躇しない人は受かりませんようにと、何度も学校の方を振り向きながら、強く願うことしか出来ないキキであった。

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