黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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26話 クラスメイト

あれから、緑谷と一方的に仲違いをしていたキキは話をするどころか訓練にも来なくなっていた。

オールマイトが必死にキキに頼み込んでも、考え方が違うから無理だとか、教えることはないと言って、緑谷とオールマイトから離れていった。

 

キキとウィズは気持ちを整理する為、人気のない海岸で海をボーッと見詰める。

 

「ねえ、ウィズ」

 

「何にゃ?」

 

「ボクの考えてそんなに可笑しいのか?」

 

「自分の考え方に自信を無くしてしまったのにゃ?」

 

キキの質問に質問を返すウィズ。

キキは首を横に振って否定をする。

 

「間違っているとは思ってはない。ただ...」

 

 

 

「この先彼らとやっていける自信が無くて...」

 

間を空けてキキは弱音を吐く。

 

「そもそも出久に"個性"を受け渡しを反対しているのは危ないからであって、体が充分にできていれば文句は言わないとあれ程言ったのに...。なんで話を聞いてくれないのかな?命に関わることなのに...。それに...」

 

 

「あれだけ話し合っても理解してもらえなれない。そんな状態でこの世界の問題に立ち向かってくれるのだろうか?...いや...彼らにとっては...」

 

 

「こんな世界の方が良いかもね」

 

キキは嘲るように吐き捨てる。

 

「それは違うと...思うにゃ...」

 

ウィズは自信なさげに反論をするが、キキは溜め息を吐くだけだった。

 

「そうかな?彼らって、"無個性"で嫌がらせを受けた割には、この世界の考え方に疑問を持っていないよね。それで良いから変えようとしないのでしょ」

 

「なんで急にそう思い始めたのにゃ?」

 

キキの暗い雰囲気に戸惑いながらも、ウィズは質問をする。

 

「だって...」

 

 

「"個性"がなくても!頑張ろうとしないじゃないか!」

 

キキはありったけの声量で叫ぶ。

喉が潰れても可笑しくはない程叫んだのにも関わらず、まだ想いが止まらないキキは叫び続ける。

 

「自分達が一度!頑張っていかないと意味がない!諦めてしまっている人の言葉なんか!誰が聞いてくれるんだ!」

 

「そもそも...!出久が"個性"を受け取ったら!説得が出来なくなってしまうじゃないか!!!」

 

キキの叫びを聞いてウィズはハッと気が付く。

キキがどんなに"無個性"の人を想っていても、絶対に伝わらないことを。

キキは異世界で"無個性"に当たる人物に負けたことがあり、なんの力が無くても強いことをその身で染みている。しかし...

 

キキがそのことを伝えようしても無駄だ。何故ならば、説得力が皆無にも等しいからだ。

キキがどれだけ"無個性"は強い存在だ!と訴え続けたところで、"個性"が無くて苦しんでいる人にとっては馬鹿にしているようにしか感じられなく、余計な反感を買うだけだと緑谷の態度で散々知ることになった。

 

例えるのならば、お金が無くて食べ物が買えず、明日飢えて死んでしまうような子供にお金を使いきらない程持っている大金持ちが、お金が無くても幸せに生きていけるんだよと、笑顔で態々嫌みなことを説教をしてくる最悪な人物みたいなものだ。

 

だが...

 

"無個性"の時の緑谷だけは違う。

 

緑谷が頑張るだけでも、"無個性"が無力ではないことを証明が出来る。

彼が頑張るだけで"無個性"に希望を与え、少しでも良い結果を残せばそれだけで励みとなる。説得力を感じた"無個性"の人達は話をすんなりと聞いてくれるようになる。

 

けど...

 

もう遅い。

 

オールマイトの"個性"を受け取ってしまったからには、彼はただの強い"個性"持ちの人間でしかない。かつては"無個性"だったと言ってはいけないし、ハナから信じてはもらえない。

 

本当にやってくれたな...とキキは頭を抱える。

自分が"無個性"は無力な存在ではない!と言っても聞かなかったくせに、"個性"を受け取った瞬間、同じ失敗を繰り返すことになるのになんで気が付かないの!?とキキは嘆く。

 

緑谷が卒業してから"個性"を継承するのなら全く問題はないのだ。

オールマイトの"個性"は強力過ぎる。体を作っていないと危ないもの。けれど、だからこそ言い訳が出来る。この"個性"は諦めずに体を鍛えたから"個性"が発現したのだと。"無個性"の地位向上は上がらないが頑張る気力は出てくる筈だ。

 

 

キキは乱暴に溜め息を吐いて、気持ちを落ち着かせようとしていると携帯電話が鳴る。

キキは出るか出ないか迷っていたが、電話をかけてきた相手が白部だったので電話に出ることにする。

 

「もしもし?」

 

『もしもし、オールさんでございますでしょうか?』

 

仲良くなったてきたのに、電話では結構他人行儀だなとキキは白部の態度の変わりように吃驚をする。

 

「そうですけど...」

 

『良かった...。電話に出てくれて...』

 

安堵の溜め息が聞こえてくる。

キキがなんで安心をしているのだろうか?と、考え込んでいると、電話越し分かる程白部の雰囲気が一気に柔らかくなる。

 

『グス...本当に...本当に...グス...無事で良かった...。心配をしていたのですからね...。ヒック...』

 

泣きながら安堵する白部にキキは困惑をする。

 

(えっ!?なんで白部は泣く程心配をしているの!?吃驚したり、ドン引きをするのなら分かるけど、何故そんなに心配をしてくれるのだろうか?...そういえば...白部は"無個性"と昔何かあったみたいで、トラウマになっていたのようなのに...どういうことだ?)

 

『オールさん!大丈夫ですか!?』

 

白部の切羽詰まった声でキキは現実に戻る。

取り敢えずキキは平静に取り繕うことにする。

 

「全然平気だよ。出久に対して怒っていただけだから」

 

『そう...良かった...』

 

何故か一安心をする白部。

白部の様子にキキは思考の海に沈んでいく。

 

(出久と白部はそれなり仲良い筈なのに...喧嘩していたら、それはそれで気まずいのじゃないか?なんか...白部のことが余計に分からなくなってきた...)

 

キキはまた考え込もうとしたが、長く考えていると白部に余計な心配を掛けてしまうので、本題に入ることにする。

 

「白部はなんで電話をかけてきたの?」

 

『えっ?...ああ、緑谷君のクラスメイトが、オールさんと私の話を聞いてどうやら興味を持ったらしく、私達に会いたいようです。喧嘩をして気まずいですけど...会っていただきませんか?』

 

「出久のクラスメイト...」

 

なんで自分に興味を持ったのだろうか?と、キキが首を傾げて黙っていると...

 

『嫌だったら、私が説明をしときますが...』

 

白部が気遣い始める。

 

「別に嫌じゃないよ!会いに行くよ。いつ会いに行けば良いの?」

 

『本当ですか!?では...今週の日曜日の午前十時に、緑谷君が訓練に使っているあの海岸で待っています!』

 

相手の顔が見えないのに、花が開いたような柔和な笑みが思い浮かんでくる。

キキは行くと約束をし、それを聞いた白部は喜んで電話を切る。

 

「会いに行くのはいいけど、キキの気持ちは大丈夫なのにゃ?」

 

「まあ...まだ色々と思うところはあるけど...。白部が心配していたし、出久を放っておいて最悪の場合になってしまったら目覚め悪いから放っておけないよ」

 

ウィズの気遣いをキキは笑顔で問題ない振りをする。

けど、その笑顔は岩石のように硬く、笑顔と呼べるものではなかった。

誰から見ても大丈夫ではないのは容易に伝わるが、ウィズもキキと同じ意見故に黙って見詰めていた。

 

せめてこれ以上何も問題が起きなければいいにゃと、ウィズは願うことしか出来なかった。

 

 

 

緑谷のクラスメイトに会いに行く当日。

 

ピーー!!

 

「皆!整列!」

 

笛の甲高い音が鳴るのと同時に男性の大喝が響く。

のんびり歩いていたキキは吃驚をして、急いで音の方へと走って向かう。音が鳴った先に走っていくと待ち合わせの海岸に辿り着く。

 

待ち合わせの海岸には、二十名近くの少年少女が整列をして集まっていた。

一人の少年が少し高めの台に乗って命令を下すが、残りの人達は文句あるようで各自不満を言っていた。

 

「飯田!休日にまでこんなことする必要はないだろ!」

 

「何を言っているんだ上鳴君!ヒーローは如何なる時も規律が大事ではないか!」

 

「飯田ちゃん、言っていることは正しいけど、これ、後から来た人を吃驚させるわよ。ケロッ」

 

「そうだな。これじゃあ近付けねえわ」

 

「そうだよ!せっかくの休日が台無しになっちゃうじゃん!」

 

「少なくとも楽しい気分にはなれないね☆」

 

「飯田!余計なことをして、出会いイベントを台無しにさせるなよ!このイベントがうまくいけば!次のステージに進み、次々と現れるイベントをこなすと、最終的にはあんなことやこんなことが...ギャーーー!!」

 

「うっさい、黙れ」

 

遠くから見ても分かる程、とても賑やかな空間になっていた。話し声の中には聞き覚えのある声が混じっていた。

キキが見とれていると背後に誰かが忍び寄る。

 

「わっあ!!」

 

「うわあぁ!?」

 

思わず叫んでしまうキキ。

誰がやったのか確認をする為後ろを振り替えると、服が浮いていた。

 

「ドッキリ大成功!」

 

「.........えっ......?」

 

驚かせてきたであろうと思われる人物は、楽しそうに言ってはしゃぐ。

キキはあまりの光景になんにも言えなくなる。

声や体つきで若い女性と判断出来たのだが、それ以外は何も分からなかった。敵意は無いから黙って様子見をしていられるが、それ故にどうすればいいのか分からずにキキは反応に困っていた。

 

「ねえねえ!あなたが湖井さん?それともオールさん?」

 

「えっ...?確かに、私の名前はレイチェル・オールだけど...」

 

ハイテンションで訊ねてくる女性?が、自分の名字を当てたものだから吃驚するキキだったが、この人は緑谷と同じクラスメイトではないか?と察する。

 

「もしかして...君は...出久のクラスメイト?」

 

「うん!そうだよ!」

 

キキの予測通りこの女性?は出久のクラスメイトであった。女性?はハイテンションのまま自己紹介を始めた。

 

「私の名前は葉隠 透【はがくれ とおる】!よろしくね!」

 

「宜しく」

 

葉隠はキキの手を握って握手をする。

葉隠のテンションについていけないキキは、されるがままにされていた。握手を終えた葉隠は皆がいるところに向かって叫ぶ。

 

「みんなー!オールさんが来ていたよ!」

 

葉隠の叫び声に集まっていた少年少女が、一斉にこちらの方を視線を向ける。

キキは緑谷との喧嘩の件で行きづらかったのだが、事情を知らない葉隠は引っ張って皆の元に連れていく。

 

「皆!元気良く挨拶をしよう!」

 

「そんなこと言われなくたって、ちゃんとやるよ」

 

「こんにちはーーー」

 

若者らしい元気いっぱいの挨拶がキキを迎える。

 

「こんにちは」

 

勢いに押されながらもキキは挨拶を返す。

 

「緑谷君の師匠に当たるオールさんですよね?初めまして、俺の名前は飯田 天哉【いいだ てんや】。緑谷君とは、同じクラスメイトであり、友人として、共に切磋琢磨をしていきたいと思います!本日はお忙しい中、来ていただき...」

 

(し、師匠!?確かにそういう立場になるけど...)

 

キキが緑谷のクラスメイトが自分はどの様になっているだろうか?と気になっていると、黒髪に眼鏡を掛けた少年が礼儀正しく挨拶をする。

礼儀正しいを越えて堅苦しい挨拶をする飯田に、赤いツンツンヘアーの少年が止める。

 

「おい、飯田。後がつっかえるからほどほどにしとけよ」

 

「ムッ!済まない!切島君!」

 

「別に気にすんなって」

 

飯田が赤いツンツンヘアーの少年に謝る。

会話を終えると、赤いツンツンヘアーの少年の自己紹介が始まった。

 

「俺の名前は切島 鋭児朗【きりしま えいじろう】だ。緑谷が鍛えられたって言っていたけどよ...マジ!?すげえよ!あの入試一位の爆豪に"個性"なしで立ち向かってよお」

 

「オールさんが指導したって、緑谷から聞いたけど、俺にも教えてくれないか?あ、俺の名前は尾白 猿夫【おじろ ましらお】。よろしく」

 

「俺の名前は障子 目蔵【しょうじ めぞう】だ。出来ればも教えてほしいのだが...」

 

「俺の名前は砂藤 力道【さとう りきどう】。俺も近接戦で強くなりたいから、教えてほしいなあ...」

 

キキにお願いをしながら、三人の少年が自己紹介をしてくる。

尻尾が生えている少年が尾白、両肩から触手のようなものを生やした長身の少年が障子、大柄でたらこ唇が特徴的な少年が砂藤。

 

「次は俺の番だな。俺の名前は上鳴 電気【かみなり でんき 】。よろしくな!なあ、緑谷とはどうやって知り合ったんだ?連絡先を交換しようぜ!」

 

「上鳴!抜け駆けはズリイぞ!オイラの名前は峰田 実【みねた みのる】!」

 

金髪に稲妻のような黒のメッシュが入った少年が上鳴、頭に紫色のボンボンを付けた、小さな子供のような体型をした少年が峰田。

 

(実?そういえば...確か...実は...入試の日に変なことを叫んで、血の涙を流しながら走り去って行った人だ...)

 

キキが峰田のことを思い出していたところ、黒のショートカットに耳たぶが異常に長い少女と、黒髪の痩せ気味の少年がキキに話し掛ける。

 

「初めまして、ウチの名前は耳朗 響香【じろう きょうか】。さっきの二人は馬鹿だから、気にしない方が良いよ」

 

「耳朗、結構ひでぇこと言うなあ。俺の名前は瀬呂 範太【せろ はんた】。よろしく」

 

耳朗と瀬呂の自己紹介が終えると、触角が生えた全身ピンク色の黒目の少女と、金髪に輝く瞳が特徴的な少年が語り出した。

 

「初めまして!私の名前は芦戸 三奈【あしど みな】!これからよろしくねー!」

 

「僕の名前は青山 優雅【あおやま ゆうが】。よろしく☆」

 

元気いっぱいな芦戸の声が、青山の話をほぼかき消していた。次に緑かかった長い黒髪の少し猫背気味の少女、黒髪をポニーテールにした少女、入試に日に緑谷を助けてくれた茶色の髪の少女が自己紹介を始めた。

 

「初めまして、私の名前は蛙吹 梅雨【あすい つゆ】よ。ケロッ。梅雨ちゃんと呼んで」

 

「私の名前は八百万 百【やおよろず もも】と申します。以後、お見知りおきを」

 

「私の名前は麗日 お茶子【うららか おちゃこ】と言います。その...出来れば...デク君と、仲直りをしてください...」

 

「デク?もしかして...出久のこと?」

 

キキの疑問に麗日がこくりと頷く。

麗日はキキに近付いて小声で控えめにお願いをするものの、キキはそのお願いを叶えさせる気はなかった。

そもそも、碌に体ができていないのに、"個性"を受け継ぐからいけないのだ。特にオールマイトに関してはキキの記憶を見たのにも関わらず、無断で"個性"を渡したのだ。許せと言われても許すことは出来ない。

 

それでも周りに関係ない人がいれば、普通に仲良い風には装うつもりだ。

 

麗日がキキから離れると、岩のような少年と烏の頭の

少年がキキの元にやって来る。

 

「僕の名前は口田 甲司【こうだ こうじ】です。よろしくお願いします」

 

「俺の名前は常闇 踏陰【とこやみ ふみかげ】だ。で、こいつは....」

 

「アイヨ!オレノナマエハ、ダークシャドウダ!ヨロシク!」

 

口田は喋れないのか、身振り手振りやメモに字を書いて自己紹介をする。常闇は自分の紹介共に"個性"である影のようなモンスターを呼び出して自己紹介をさせる。キキは"個性"にも人格があることに多少驚いた。

 

「全員、挨拶が終わったようだな」

 

頃合いを見計らっていた飯田が話を進める。その時だった...

 

「遅れて来てしまって、ごめんなさい!」

 

白部が息切れをしながらやって来た。

相当走ってきたのか汗でぐっしょりと濡れていた。

 

「大丈夫よ。もしかして...貴女が湖井さん?ケロッ」

 

「はい、そうです」

 

白部が来たことにより、もう一度自己紹介をするのであった。

 

 

 

「ところで、皆はなんで私達に会いたいって思ったの?」

 

自己紹介が終えるとキキは疑問を尋ねる。答えは人によって色々と違っていた。

蛙吹、飯田、八百万は緑谷のゴミ掃除に感銘をして手伝いをしに。尾白、切島、砂藤、障子はキキに教えてもらう為に。皆が集まるなら面白そう!と芦戸、葉隠が声を掛けて回り、外部の女性であるキキと白部に興味を持っていた上鳴、峰田は邪な気持ちで会いに、そんな二人を見張る為に耳朗も付いてくことになった。単純に興味を持って会いに来ていたのは青山、口田、瀬呂、常闇。キキと緑谷が仲直りしてもらう為に麗日が説得をしに。

 

緑谷は...

 

気まずそうにキキのことをちらちらと見ていた。

 

「では!皆!ゴミ拾いをしようではないか!」

 

飯田が張り切って進めようとするが...

 

「それも大事だけどよお、俺はオールさんに教えてもらいたいんだけど...」

 

「俺もその時間はほしいなあ」

 

切島と尾白が申し訳なさそうに言う。

 

「えーー!ほぼ皆集まったんだから!少しは遊ぼうよー!」

 

「そうだよ!せっかくの休日が台無しじゃん!」

 

葉隠と芦戸が飯田の案を嫌がる。

 

「そうですねぇ...。今日は各自、自由に行動をするのが良いと思います。また...都合の良い日に皆さんで集まれば、良いと思いますし...」

 

白部が提案をする。

 

「うむ...その通りだな」

 

白部の意見に飯田は素直に受け入れる。

 

「と言う訳で、各自、自分の判断で行動をしよう!」

 

「なんで、休日なのに飯田が取り仕切っているんだ?」

 

「ここは学校じゃねえぞ」

 

「オイラは早速...」

 

「オールさん!ちょっと...良いかな...」

 

皆が行動をする前に、意を決した麗日がキキに話し掛ける。

 

「どうかしたの?」

 

キキは麗日の言いたいことが分かっていたが、敢えて気が付かないフリをする。

 

「少し...お話をしませんか?」

 

 

 

麗日はキキを誰も来なそうな場所に連れて行く。

そこは海岸の中でも一番ゴミが多く、誰もが近寄らなそう場所であった。

 

「あの...話が長くなるから...どこかに座った方がええよ...!ゴミしかないけど...!」

 

麗日は緊張のあまり変な風になってしまっていた。

キキは適当にどこかに座り、麗日も対面出来る位置に座る。

 

「単刀直入に言うね。...デク君と仲直りをしてください!お願いします!」

 

「どうして、お茶子が出久と私の仲を気にするの?」

 

麗日の必死に頭を下げる。

キキの疑問に麗日は、しどろもどろになりながらも答える。

 

「私、入試の日にデク君に助けてもらって、デク君が合格できていたかずっと気になっていたんだ...」

 

「入学した日にデク君に会って、嬉しかった。けど、デク君は、ずっと浮かない顔をしてたの」

 

「どうしたの?って聞いても、なんでもないしか言わないし...」

 

「失礼だと分かっていたけど、デク君のことが心配で、しつこく聞いたら教えてくれたんや...」

 

「オールさんと喧嘩をしたって」

 

「デク君はオールさんのことを、厳しくて、価値観が変わっているけど、とても強くて頼れる人って言っていたの!」

 

「戦闘訓練のデク君の動き凄かった!入試一位の爆豪君と、"個性"なしで戦えていたの!皆がどうして?そんなに強いの?と聞きに行ったんやけど、その時、デク君はなんて言ったと思う?」

 

麗日はキキの目をじっと見詰めるが、キキは何も応えなかった。

 

「オールさんのお陰だよって、言っていたんだ」

 

「だから!オールさんのことももっと気になったから、質問をしたの!オールさんはどういう人?なんで喧嘩をしているの?って、そしたら...」

 

「オールさんは"無個性"だって」

 

「私には"無個性"がどんなに辛いのかは分からない...だけど!」

 

「オールさんは強いから!もっと胸を張って生きていけば良いと思います!」

 

「デク君の様に、遅咲きの"個性"はないけど、だからって、オールさんはオールさんの、独自の魅力があると思います!」

 

「"個性"持ちを羨む気持ちは分かるけど、いつまでも怒らないでください!」

 

「お願いします!」

 

麗日は立ち上がってお辞儀をする。

とても真摯にお願いしていることは分かっているのだが...

 

(別に、"無個性"のこと全然気にしていないけど...)

 

キキには困惑しかなかった。

キキの怒っている理由は体が出来ていないのに"個性"を受け継いだこと。けど、このことは、オールマイトの秘密にも関わるので、絶対に他の人には説明はできない。だから緑谷の言い訳が、嫉妬で終わらせるのは至極当然のことだ。

 

麗日の誠意に動かされて、緑谷と仲直りするのもありだろう。

しかし、キキはこの件を許す気はなかった。

 

(今の緑谷とは仲直りしたくないなあ...。特にオールマイトは...。なんて言い訳をしよう...思い付かない...やはり、言い訳はできないか...。頭を下げたお茶子には悪いけど、許さない態でいくしかない。ずっと許さないままでいくなら出久のクラスメイトには会わない方が良さそうだ。本当に彼らには悪いけど、喧嘩別れの態でいくしかない)

 

キキは素早く立ち上がる。

麗日はキキの行動に吃驚するが、直ぐ様目線をキキの方に戻す。

 

「お茶子...その願い...」

 

麗日が唾を飲み込む。

キキはその様子に罪悪感を覚える。

 

(ごめん...。本当にごめんなさい。恨んでも構わない...。...だけど...それでも...本当にあの二人の行動は許せないんだ!)

 

「聞き入れられない」

 

「...えっ......?」

 

キキの決断にお茶子は放心状態になってしまう。

 

「お茶子。君が、どんなに彼を大事に思っているのは凄く分かる。だけど...」

 

 

「一年前までヒョロガリの、碌に鍛えもしなかった奴が、あんな"個性"を持っているのが許さない!」

 

「ずっと体を鍛えていた私ではなくて!何故、碌に頑張っていなかったあいつが"個性"が持っているんだ!"個性"が遅咲きするのならば、ずっと頑張ってきた私の方が相応しい筈だ!!」

 

「この世界はなんなんだ!?頑張ったって、報われはしない!"無個性"だけで馬鹿にされる!」

 

「出久を見ているとイライラする!私が惨めになる!」

 

「出久とはもう会いたくはない!」

 

「さようなら!」

 

キキは緑谷の言い訳通りに嫉妬に狂った女性を演じる。

麗日のことを見ることなく、勢いに乗って海岸から走り去っていく。

 

そんなキキの後ろ姿を。

 

白部が、出久が、出久のクラスメイトが、全員見ていたことを。

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