黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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まだまだ途中ですが、とあるコラボ楽しかったです。

それではどうぞ。


3話 個性と魔法

キキとウィズは話をする為にとある場所に連れられる。

その場所は赤と青と黄色の棒でできた少し高めのよく解らないもの、片方は階段でもう片方は坂になっている大きめな台みたいなもの、二本の鎖に繋がれた不安定な椅子がある公園と呼ばれる場所だった。

 

三人かけの長い茶色の椅子に男性とキキは座った。

男性はキキを座らせると立ち上がり、自動販売機でブラックコーヒーとスポーツドリンクを買ってきて、スポーツドリンクをキキに渡した。

 

男性はプルタブを開けて一口飲む。

 

「...全く...。君は一体何やってんだ。...とはいえ、君のお陰であの娘は助かった。それに自分がこれから説教されるのに気を使えるなんて偉いぞ」

 

男性はそう言うと、立ち上がって豪快に笑うとキキの頭を撫でた。

 

キキは頭を撫でられて少し照れてしまい顔が赤くする。見られたくないキキは顔を俯いた。

 

(...こうやって、褒められるの初めてだ。感謝されることはよくあるけど...と言うか、敵倒していないけど。なんか...照れくさいな)

 

「さて、褒めるところは終わったから。...次は本題に入ろうかね」

 

男性はズイッと前に出て顔を近づけた。

その顔からは笑顔が消え、井形がハッキリと浮かび上がる。

 

「君は何で戦っていたのかな?何でそんな敵(ヴィラン)みたいな格好をしているのかな?何でさっき逃げたのかな?全部説明してもらおうかね」

 

男性はただただ静かに言う。

それが逆に恐怖を伝わりやすくなる。

 

「...それと敵(ヴィラン)と戦ったのは、今日が初めてではないでしょ?君」

 

「...その前に質問をして良いですか?」

 

「別に構わないが、説教はするぞ」

 

 

キキはこれからの事を考えると頭が痛くなった。

覚悟を決める為にゆっくりと深呼吸をする。

 

 

「何で敵と戦かうことはいけないことですか?」

 

「....はい?」

 

質問の内容に手鼻をくじかられる男性。

男性はキキの顔をまじまじと見るが、キキは嘘をついているわけではないので真剣な表情だ。男性はキキが常識を知らないことに頭が痛くなり、思わず、これから飲もうと思っていた缶を落とした。

 

まだ缶の中にはブラックコーヒーがたくさん残っており、地面へと染み込んでいく。

 

ウィズも一呼吸入れて話し出す。

 

「そもそも"個性"って何なのにゃ?何で不思議な力を個性と呼んでいるのにゃ?それに、キキの使う力は"個性じゃなくて魔法にゃ。...私達はこの世界の者ではなくて、違う世界から来た者にゃ」

 

「そう言うこと。だから、この世界のルールなんて解らない。因みに戦って怒られたのはこの世界が初めてです」

 

因みにアレイシア達がいる世界でも魔法を使ったことに怒られかけたが、防衛手段として認めれお咎めはなかった。寧ろ正直に話したことにより、馬鹿にされたと勘違いされて牢屋行きになってしまった。

男性は驚きのあまりに声が出なくなり、鳩が豆鉄砲食らったような顔をする。キキはスポーツドリンクを飲みながら、男性が元の状態に戻るのを待った。

 

 

 

三分後ーー

 

 

微動だにしなかった男性が、首をブンブンと痛くなるまで振ってからやっとのことで喋り出す。

 

「...............何、常談を、言っているのかな?そんな嘘ついたって、説教は止めないし余計に長引くだけだ」

 

かなり動揺をしており、男性は腕を組んで威圧感を出そうとするが、全然感じられなかった。

 

ただ、キキはウィズが喋ったことに驚かないことについて、あぁ、この世界も動物は喋るんだ。と、一人場違いなことを考えていた。

 

「なら、実際に見てみると良いにゃ。ちょうど怪我をしているみたいだにゃ」

 

「えっ!?」

 

「気付いていたのか!?」

 

男性は怪我をしていることがバレ、キキは相手が怪我していること自体に驚いた。

 

「にゃははは。猫の嗅覚も中々鋭いものにゃ。血の匂いがそこまでしていないとは言え、治してもらった方が良いにゃ」

 

ウィズは得意げに言う。

 

「怪我した場所はどこ?」

 

「右腕と両足にゃ」

 

「そうなんだ。分かった。...でも見た限り、大丈夫そうだけど...。ちょっと腕捲ってもらおうか」

 

キキはきょとんとしている男性に袖を捲るように指示をする。それでも、やろうとしないもんだから、キキは

立ち上がって男性の右腕を掴もうとする。

 

「...いやいや、ちょっと!ちょっと!待ちなさい!何、個性を使おうとしているんだ。それに!そこまで怪我していないから...ほら!」

 

男性は慌ててキキを止める。

男性は右袖を捲ると固く引き締まっていた筋肉が青紫色に腫れている。

 

「あれ?ウィズ。血が出ているんじゃなかったの?」

 

「それは足だ。後、そんな簡単に気安く触るのではない」

 

「あ、ごめん。てっきり痛くて出来ないと思ったから。後、何でそんなに気にしているの?」

 

「そう言う問題ではない。あまり人の身体を触ってはいけないよ」

 

「えっ、でも、怪我をしていたし....」

 

「そうだけど、そこまでの怪我をしていないから。女性が見ず知らずの男性の身体を気軽に触ってはいけないよ」

 

「そう?気にした事はないけど...。何か理由があるの?」

 

「.........そうか...。何か起きてからだと、遅いんだが....」

 

「何かあるの?」

 

「そういうことは親とか学校とかから、学ばなかったのかい?」

 

「?」

 

首を傾げるキキと呆れて溜め息を吐く男性。

キキは男性とのやり取りをした後に、返事を聞かずに怪我を治す準備を取り掛かる。

カードを見せつけるように取り出し、魔力を込めて回復魔法を掛けた。淡い緑色の光が男性の身体を包み込んだ。

 

右腕の腫れはすっかりと消えた。

この分なら両足の怪我も確認しなくとも、ちゃんと治っているだろうと、経験から基づいて判断をする。

 

「......!?回復系の"個性"か....かなり珍しいな。.................いやいや!?なに、"個性"を使っているんだ?!公共の場で"個性"の使用は禁止だ!」

 

「あれ?納得してくれないのにゃ?」

 

「当たり前だ。そのカードも"個性"で作り出したんだろう?」

 

「....納得してくれないんだね...」

 

キキは男性が信じてくれないことに困り果てた。

腕組みをして考え込んでいると...。

 

「......まあ、話してみてみなさい。それから、考えてみるからさ。その"個性"......いや、魔法とやらを。...具体的にはどんな事が出来るんだ」

 

胡散臭そうにしていた男性は、このままだと切りがないと察し話を促した。

キキとウィズは少し嬉しそうに話し出した。

 

「けっこう色々なことが出来るよ」

 

「勿論にゃ。今みたいに怪我を治したり、火、氷、雷、光、闇で攻撃したり、防御障壁で身を守ったり、精霊強化魔法で身体を強くしたりすることも出来るにゃ」

 

「.........そんなに出来るのか......ちょっと、これ、かなりまずいな。...今から説明する」

 

男性は辺りをキョロキョロと確認をする。

念のために人が自動自販機の後ろや周りに誰かいないかと念入り深く確認した。

 

「にゃにゃ!?そこまでするのにゃ?!」

 

男性の異常とも言える確認行動にウィズがかなり驚いた。

 

「...当たり前だ。もしその話が本当なら、相当ヤバイんだぞ。......全く、"個性"はそんなに便利なものではない。...それに最悪敵(ヴィラン)に目をつけられて、誘拐される恐れもあるんだ」

 

一通り確認終えると男性はキキの隣に座って、大きな溜め息をつくと話し出した。

 

「......"個性"とは、自然界の物理法則を無視する特殊な能力だ。そしてその力は身体能力の延長である。早ければ産まれた直後に発見し、遅くても四歳までには発見する。例外もあるが...。強力なものでは、辺りを簡単に火の海に出来るほどの火力を持つ者。自分の肉体からあらゆる道具を造り出す者などがいる。弱いものでは、目玉が飛び出すだけの者。指が伸びるだけの者などがいる。そして、"個性"には必ずデメリットがある。私ではこの力を使う度に怪我を負うことだ。だが、訓練すれば、デメリットを弱くすることが出来るし、鍛えれば鍛える程強くなる。分類的には三つに別れている。一つ目は発動型。二つ目は変異型。三つ目は...異形型...ただ、この言い方には気を付けてくれ、差別的な表現でもあるから」

 

「えっ!?何で差別用語って解っているのに言い方を変えないの?」

 

「そこは私でも解らない。一応、私の所属先では言い方を変えたりして、言わないようにしている」

 

キキの怒りに男性も溜め息で同意をする。

 

「じゃあ、何て呼んでいるのにゃ?」

 

「...色々な形があって定められていないから不定型と呼んでいる」

 

「ふーん、そうなんだにゃ。じゃあ何でその力を"個性"って呼び方をしているのにゃ?随分と変わった呼び方だにゃ」

 

「......ずっと昔の話。まだ"個性"が、マイノリティだった時代。"個性"を持った子供を産まれたんだが、民衆から差別されたんだ。その時に母親が、この力もこの子の個性ですって言ったのが始まりらしい」

 

ウィズの疑問に男性は、目を閉じて険しい表情で頭を絞って思い出す。

 

「....じゃあ、今度は、こちらから質問をする。君は戦ったことがあるだろう?」

 

「うん、あるよ」

 

キキは何も間違いないと言わんばかりに堂々と言う。

 

「.........そう言うことは堂々と言うな!!...で、どうして戦ったんだ?」

 

男性はキキを叱ると呆れ気味で質問を催促する。

 

「それは簡単だよ。困っている誰かを助ける為だ」

 

キキは屈託の無い笑顔で言う。

 

男性はキキの笑顔に一瞬見とれるが、頬を叩いて強制的に考えを変える。

 

「...確かに人助けをするのは素晴らしいが、そういった事には役割がある。君の出番はないよ」

 

「悪いけどそうは思わないよ」

 

キキは力強く言い返す。

事情を知らないとはいえ、面と向かって言われると、今までの出来事を全て否定された気分となる。キキは自分でも気付かぬうちに男性を睨んでしまう。

 

男性はぶつぶつと何かを呟く。

キキとウィズは男性の行動についていけなくなっていると、突如男性はキキの腕を掴む。

 

「えっ!?」

 

「にゃあ!?」

 

驚く一人と一匹を尻目に男性はどんどんと行動を進める。

 

「方針は決まった。これから君達はある場所に来てもらう」

 

男性は話をどんどんと進めていくものだから、キキとウィズは驚いてついていけなくなる。

 

「行くってどこへ?」

 

困惑した表情で聞くキキ。

男性はチラッて少しだけ見ると力強く宣言する。

 

 

「“児童養護施設オアシス”だ!」

 

そう言われたキキは無理やり走らされて、急がされるのであった。




少し短めですが、きりが良いのでこの辺りで終わります。

※11月24日内容を少し変更しました。

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