黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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30話 激戦

暗闇が晴れたと思った瞬間、見知らぬ場所に連れて来られたキキと緑谷の母親。

 

「ここは...一体...おばさん!?」

 

急に緑谷の母親が意識を失い倒れてしまう。

完全に地面に倒れ込む前にキキは、緑谷の母親を抱き抱える。抱き抱えた途端、意識を失った原因が明らかとなる。

 

頬や腕の骨が丸見えな白部が、目の前に立っていたからだ。

 

「......えっ............?」

 

衝撃的な光景にキキは言葉を失う。

普通の人なら痛くて騒いでも可笑しくないどころか、すぐにでも気絶を可笑しくないのに平然と立っている。しかも隣には敵(ヴィラン)と思われる黒い霧、更に少し離れた場所には、オールマイト級の身体能力と複数の"個性"持ちの脳無が突っ立っていた。

 

しかも...

 

脳無を見た際にキキの目に映る。

血にまみれ、足や腕が人形みたいに折れてはいけない方に折れ、地面に崩れ倒れる緑谷のクラスメイト達。地獄絵図のようであった。

その中でも立っているのは緑谷、爆豪、轟の三人だけだ。その三人も傷だらけで、いつ倒れても可笑しくなかった。

 

「みんな!」

 

「オールさん...!それにお母さん!?」

 

「...ダークシャドウ!」

 

「アイヨ!」

 

緑谷の叫び声が聞こえた常闇が察し、力を振り絞ってダークシャドウを呼び出し、キキと緑谷の母親の体にダークシャドウが蛇のように巻き付いて、自分達のところに引き寄せる。

倒れていた人達も事態に気が付き、気力だけで立ち上がり、キキと緑谷の母親を守るかのように集まる。全員怪我は大分酷いが、何とか生きていた。

 

キキは一先ず安心をし、みんなの様子を確認をする。確認を終えてからもう一度白部の様子を伺う。

 

白部の瞳には、例え自分が燃え尽きても、やり遂げようとする強い意思が宿っていた。その意思はどす黒い負の感情の交じり合い、身を焦がす焔となって、辺りを焼き尽くす程の勢いになる。

 

(.........白部は...まさか......!?)

 

キキが覚悟を決めて白部の目を睨んだ瞬間...

 

 

 

涙を流し、あれ程の強い意思が嘘のように消えて無くなる。

 

(!?!?えっ!?何で!?どういうこと?!)

 

キキは声が出なくなる程困惑をする。

キキは異世界での経験で、強い意思は何が合っても消えることがない、揺るぎないものであるが故に、会話では止められずに戦うことでしか止められなかった。しかし今の白部は、キキと目が合っただけで、焔ように燃えていた強い意思が跡形もなく消える。初めてのパターンにキキは出鼻を挫く。

 

「.........な、何で......オールさん達を勝手に連れて来たのですか!!?あの人達を連れて来なくても、私は彼らをちゃんと殺しますのに!どうして...!!どうして!こんなことをするのですか!!?」

 

「そう言われましても...。あの少年の言う通り、オールマイトの"個性"を奪えていないことは事実です。彼の話を聞かなければなりません」

 

「だったら!半殺しにして先生様に送れば良いだけのことじゃない!!」

 

「ですが、彼の言う条件によっては、あまり傷を付けてはいけないものかもしれませんし...下手に動かれてしまうくらいなら、はじめから人質をつけて大人しくしてもらい...」

 

「人質なんて要らない!それに!傷付けても先生様の"個性"で治せば良いじゃない!」

 

「あのですね、回復系の"個性"は珍しいものですから、そうそうにありませんよ」

 

子供のように泣きじゃくって文句を言う白部。

それを母親のように優しく、諭すように説得をする黒霧。何ともいえない空間が出来上がっていた。

キキは白部の様子を見てふと思う。

 

(白部は...間違いなく...敵(ヴィラン)だ...。会話を聞いただけでもやったと言っている...。だけど...)

 

 

(彼女は本当に悪人だろうか?)

 

白部との思い出が甦る。

初めて出逢いは狂乱する程喜ばれ、勝手に"個性"を使って昔のトラウマで倒れる。もうこの時点で怪しいといえば怪しかった。それでも、敵だらけの世界で数少ない味方になってくれたことが嬉しかった。

レイチェル・オールになってからは、嫌がらせを受ける心配はなくなり、彼女と仲良くすることが出来るようになった。

 

二度目の出逢いはオールマイト目当てだった。

ゴミだらけの海出逢い、初対面なのに心配をしてくれたのが印象的であった。緑谷の長く一方的な話にも笑顔で聞き、訓練の終わりにはスポーツドリンクを渡す。気遣いが上手い女性。その反面、ヒーローを嫌っているのではないか?と、思わせる素振りをみせる。その後の日々は特に問題は起きることなく、訓練を見ながら、話をしたりする日々。

 

合格後開いたパーティーでは、キキは緑谷に怒って話さなくなる。その間を必死に仲を取り持ったのが白部。

気まずい立場でありながらも、キキとの連絡を取り、連絡出来て嬉し泣きをする彼女の声は、この先も忘れないと確信をする程強く印象に残る。

 

二回目もそうであった。

上手く言い訳が出来なかったキキは、緑谷のクラスメイト達から逃げるようにして会わなくなる。そこでも彼女は必死に仲を取り持つ。一度目の時よりも連絡を取って関係を保ち、キキの様子を伺う。キキの様子を探りながら、日々の出来事を嬉しそうに白部は語る。

 

キキや緑谷、緑谷のクラスメイトと過ごしたあの時の笑顔は本物であった。

キキを心配をして泣く姿は嘘ではなかった。

 

 

なのに...

何故敵(ヴィラン)になった?

 

(いくら考えても駄目だ...。敵(ヴィラン)になった理由が分からない...。やっぱり...トラウマが治っていなくて、今もその件が続いていたのか...?だとしたら...)

 

「と言う訳で、そこの少年、緑谷出久の"個性"ワン・フォー・オールで件で貴女方二人は、人質とさせていただきます。緑谷出久の対応次第ですが、貴女方二人には手を出さないと約束いたしましょう」

 

「だ~か~ら!黒霧さん!そんなことは人質を使わなくても、先生様の"個性"ですぐに分かります!人質なんて要りません!すぐに家に帰して上げて!今すぐに!」

 

「いやいや、奪えなかったことは本当のことですし、念には念を入れた方がよろしいかと...あ、そこの人、連絡を入れようとしても無駄ですよ。ここは圏外ですから...」

 

(いや、何この状況!!?)

 

一心不乱に交渉を続ける白部と躱し続ける黒霧。

真面目に状況を整理していたキキを拍子抜けさせる。あまりにも異様な光景に、緑谷とクラスメイト達も呆然としていた。

キキに何もしないのは、一般人だと勘違いをしているのと白部が一生懸命に抵抗をしているからだ。

 

(.....何だろう...。白部の扱いが...仲間というよりも...丁寧過ぎて...お客様みたいだ...)

 

黒霧は嫌な顔を一つもせずに丁寧に対応をしていく。

そこには対等な関係はなく、黒霧が少しへりくだっているようにみえる。

一通り観察を終えたキキは、もう一度緑谷達の方を振り返る。

 

「みんな、大丈夫!?」

 

「うん...何とか...」

 

「ああ...」

 

「...ケッ!!心配される程落ちぶれてねぇわ!」

 

「爆豪君!そんな言い方はないだろう!!...大丈夫!と、言いたいところですが...。今は言い切れる自信は...守るべき市民を前にして!僕は何て情けないんだ!」

 

「俺は硬化のお陰でなんとかいけるが...長くは...いや!ここで諦めたら漢が廃る!任せろ!」

 

「ぼ...僕だって、た、たたた戦ってみせるさ☆」

 

「青山...気持ちは分かるけど、全然大丈夫じゃねえぞ」

 

「オイラはもう嫌だあああぁぁぁあああ!!お家に帰りだいぃぃ~!!」

 

「俺ももう嫌だ~~!!」

 

「こっちの二人の方が重症だな...」

 

「それでも...やるしかないだろう...」

 

落ち着いているのは緑谷と轟だけだ。

他の人達は悪態をついたり、愚痴を溢したり、泣き言を言っていたりしていた。だが、怪我よりも心の傷の方が深かった。特に心の傷が深かったのは女子メンバーは何も言えず、辛うじて立っているだけだ。

 

白部の事情を知りたかったキキだが、緑谷達は酷い怪我を負っており、悠長に話をしている時間はなかった。

回復の魔法を唱えただけでも敵に正体がバレてしまい、戦闘は避けられない。いつ戦闘が起きても大丈夫なように今の状況に適したカードの準備を速やかに行う。

 

キキはカードを取り出して唱える。

 

『3周年サンクチュアリ』

 

「三度の飯より3周年」

 

美しい妖精のような羽を生やし、煌びやかな衣装を着た女性の姿が映し出される。

魔方陣で描かれた時計がぐるぐると回り、十二時を示す場所で止まると白部、脳無の動きが止まる。

 

直ぐ様癒しの魔法を唱えて緑谷達の傷を癒す。

淡い緑色の光が緑谷達を包み込む。怪我は完全に治すことは出来なかったが、骨折などの酷い傷はほぼ良くなる。

 

「回復系の"個性"...だと!?」

 

「いや!敵の動きを止めたぞ!」

 

「すげえ"個性"だな!!」

 

「何だよ!?その"個性"!チートじゃん!」

 

障子、砂藤、上鳴、瀬呂が驚嘆の声を上げる。

キキはそれらを無視して電撃、炎、光弾を一番厄介である脳無に動き出すまでぶつけ続ける。

 

「これはこれは、脳無がいなければどうなっていたことやら...。どうやら貴女が黒猫の魔法使いですか...。これはこれは...せっかくのチャンスを無駄には出来ませんね...。この機会に貴女を倒させて頂けます!」

 

いち早く危険を察知して脳無を盾にし、キキの正体に気付いた黒霧が倒すと宣言をする。

黒霧が宣言している最中に、呪文の効果が切れた白部は戦いたくないのか戦場から離れていたが、黒霧は離れていく白部を気にせず戦闘態勢に入る。

 

脳無は自慢の再生能力で、何事もなかったかのように無傷で立っていた。

そのことに緑谷達は顔を青ざめていたが、キキにとっては予想通りのことであった為、何も反応はせずに淡々とカードを持ち直して構える。

 

「脳無、本気で殺しに行きなさい!」

 

黒霧の命令で脳無が動き出す。

脳無は言葉に出来ない叫び声を上げると、一瞬にしてキキの目の前に現れる。

 

目が捉えられないスピードで殴り掛かってくるが、キキは右に避けて素早く電撃を浴びせる。

電撃で痺れさせ、少しでも動きを鈍くさせるのが目的だ。

 

それでも脳無のスピードは衰える気配はない。

キキは急いで防御障壁を展開して次の攻撃に備える。破壊されると分かっていても、致命傷を避ける為に展開をする。

 

一秒コンマが、やけに長く感じる間、キキは吹き飛ばされた後のことを考える。

その時だった──

 

 

「スッッマアアァァァシュュッッツ!!」

 

緑谷がキキと脳無の間に割り込む。

"個性"を使った弊害で治りかけた腕は折れて、見るも無惨な姿にまた戻る。けど、そのお陰で脳無の動きが止まる。

 

「緑谷!一体何やってんだ!?」

 

「何って...脳無の動きを止めているんだよ!!」

 

「そんなことしなくたって、黒猫の魔法使いが...」

 

「あんな、チマチマした攻撃で殺せねぇよ。...ケッ、見たところ...色んな攻撃手段があるみてぇが...どの攻撃も...あの化け物の足止めしかなんねぇよ。それに、あの糞野郎どもには借りがある...。直接ぶっ殺さねぇと!俺の気が収まねぇんだよ!!」

 

緑谷と切島が口論をしている間に、爆豪が掌を爆発を起こしながら空を飛んでいく。緑谷も爆豪の意見に賛成をする。

 

「かっちゃんの言う通り、僕達も戦わないと間に合わないよ!黒猫の魔法使いは色々なことが出来るところは長所だけど、その代わり攻撃が少し遅いんだ。だから、僕達の援護も必要だ!」

 

「そうなのか...しかし...僕達はまだ免許を持っていない!緑谷君は"個性"を使えば体がボロボロになる!そんな状態で戦いに参加してはいけないだろ!!」

 

「そうだとしても!今はみんなで戦わないと生きて帰れない!それに!いざという時はオールさんから回復をしてもらえば良い!」

 

「俺も緑谷の言う通りだと思う。相手はあのオールマイト急の強さだ。人手は多いことに越したことはない」

 

「そう言えば...黒猫の魔法使いって...確か...あっ!みんなを守れないって、言っていた人だろ?!」

 

「な、何だと!?」

 

緑谷の意見に飯田は反論をするが、轟は緑谷の意見に同意をする。

それでも飯田は、まだ戦うことを許されていない点や、緑谷の"個性"制御不能の点から反対意見を述べる。しかも、あの動画を観ていた上鳴が余計なことを言い、みんなを動揺させる。

 

こうしている間にも緑谷は殴り続ける。

もう腕はボロボロで動かさない筈なのに、殴り続ける姿は狂気でありキキを困惑させる。言いたいことが山程増えたが、今は戦いに集中をするしかなかった。

 

『エナジャイズオーケストラ』

 

床まで届きそうな程長い緑色の髪をツインテールにした女性の姿が映し出されると、緑谷の周りに淡い緑色の光が包み込む。怪我は完治していないが、ある程度良くなる。

 

「ほほう...借りている相手の姿を映し出すのも"個性"の効果ですか...」

 

「何、悠長なことを言ってんだあぁ!?てめぇもぶっ殺し対象だおらぁ!あの時の借りを返してやるよ!!」

 

飛んでいた爆豪は平然をしている黒霧に掌を向ける。

今まで大量にかいた汗ニトロが猛威を振るう。

 

「榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!」

 

特大火力の爆発が黒霧を襲う。

煙が晴れ、そこには──

 

黒霧の姿はなかった。

 

「...!」

 

「させるかよ!!」

 

「ああ!」

 

キキの真後ろに現れた黒霧。

黒霧は襲い掛かるが、切島が硬化した腕で殴り掛かり、尾白は太い尻尾で叩き付ける。二人が黒霧の相手となる。

 

「緑谷!」

 

瀬呂がボロボロに緑谷の身体にセロテープを巻き付け、こちら側に引き寄せる。入れ替わるかのように電撃、炎、光弾を脳無にぶつかる。

 

「レシプロバースト!!」

 

脳無が痺れて動きが遅くなった隙に、飯田が脹脛のエンジンを吹かし、スピードを上げて脳無を蹴り上げる。けれど大したダメージにはならず、軽い一振で吹き飛ばされてしまう。

 

「飯田!ダークシャドウ!」

 

「アイヨ!」

 

吹き飛ばされた飯田をダークシャドウが回収をする。

 

「行くぞ、障子」

 

「分かってる」

 

今度は肉弾戦に自信がある砂藤、障子が脳無に立ち向かう。今のやり取りの間に怪我人の回復を済ませ、キキは新たな呪文を唱える。

 

『いつまでも上達しないゲロイシュ』

 

ホルンを吹いている男性の姿が浮かび上がる。彼の姿が消える前に直ぐ様違う呪文を唱える。

 

『フローラル・ダウンプア』

 

「香りで気分を整えましょうか」

「この香水はどうですか?」

 

花と一緒に二人の仲良い少女達の姿が、ほんわかした声ともに映し出される。この間にも脳無が立ち上がり、キキの邪魔をしようとするが、"個性"を使って足止めしようとしたり、男子達中心に捨て身の覚悟で脳無に立ち向かう。

生徒達が傷付く姿に、キキは不甲斐ないと思いながらも準備を整えさせる。

 

「脳無から引き離して!」

 

「おう!」

 

「ケロ!」

 

瀬呂がセロテープで障子、切島を引き寄せ、少しだけ立ち直った蛙吹が舌を伸ばして砂藤、緑谷を引き寄せる。

脳無から生徒達が離れてからキキは攻撃系のSSを唱える。

 

『ミーティアリックブレイク』

 

「Tiiiit for Taaaaaaaat!」

 

夜の空に舞う、大剣を持った少女が叫ぶ。

叫ぶのと同時に、黄色の魔方陣が敵の周りに現れては爆発を起こし、追撃として赤色の魔方陣も爆発を起こす。普通の敵だったらここで倒れているが、相手は底無しの回復力を持つ脳無だと分かっている以上攻撃はまだ終わらない。

 

『アペルピスィア・アイギス』

 

「アイギスの盾よ、真価を示せ!」

 

剣と盾を持った女性が威厳に満ちた声で叫ぶ。

また黄色の魔方陣が現れて爆発を起こし、今度は赤色の魔方陣ではなく、白色の魔方陣が爆発を起こす。

 

二つのSSを受けてもなお脳無は立っていた。

脳無はこちらに向かい出す。キキは電撃、轟は氷、峰田は粘着性のあるボンボンを足元に投げ、青山はネビルレーザーで、芦戸は酸を撒き、それぞれの魔法や"個性"で脳無の動きを止めようとする。

 

四人の攻撃を受けても止まらない脳無。だが、厄介なのは脳無だけではなく黒霧もだ。けれども、前回の襲撃事件で攻略法を見付けた爆豪を中心に、尾白などの数名よ生徒達が黒霧の相手をしていた。生徒達の活躍、SSの余波もあってか、黒霧は脳無の加勢が出来なくなっていた。

動きを止められなくても、与えたダメージが回復されても、次のSSを撃てる時間は稼げた。

 

『ミーティアリックブレイク』『アペルピスィア・アイギス』

 

先程よりも少し威力が上がったSSが脳無を襲う。

それなりに攻撃を受けたのにも関わらず、嫌な方向に予測していた通りに脳無は立ち続けている。再生能力も衰えていなかった。

 

「嘘だろ!おい!いつまで続くんだよ!!」

 

頭皮から血を流している峰田が弱音を吐く。

脳無がキキ達の目の前に迫る。キキは急いで防御障壁を展開をし、轟は盾の代わりに氷壁を出現させる。

 

「やれやれ、面倒ですね...こうなったら──」

 

 

「脳無。黒猫の魔法使いを狙うのは止めて...爆豪を狙いなさい!」

 

猛スピードでキキに突進しようとしていた脳無が、一度動きを止めて爆豪に狙いを定める。あまりのスピードに爆豪は身構えることも出来ないまま、何本かの木をへし折りながら遠くまで吹き飛ばされてしまう。

 

「爆豪!!」

 

みんなが爆豪の心配をして動きを止めた瞬間、チャンスを逃さないと言わんばかりに黒霧が止めの命令を出す。

 

「脳無!今度こそ魔法使いを殺しなさい!」

 

命令を終えて止まっていた脳無が、目にも止まらぬ速さで襲い掛かる。

いくら事前に防御障壁を展開していたと言えども、相手はあのオールマイトを想定して造られた脳無。

呆気なく脳無の突進で防御障壁は壊され、キキとウィズもまた遥か遠くに吹き飛ばされる。

 

「黒猫の魔法使い!」

 

キキが容易くやられて生徒達に絶望をして気力を失い、逆に厄介な敵を減らせたことが出来た黒霧は喜び、有利な内に脳無に新たな指示を出す。

 

「脳無、よくやりました。さてと次は...緑谷以外の生徒全員殺しましょう。黒猫の魔法使いの止めを指すのはそれからです。では...やれ脳無!」

 

黒霧の命令で悪夢のような続きが再開される。

倒す術もなく、みんなが敵の攻撃に身構えていた時──

 

 

「HAHAHA!!」

 

オールマイトが脳無の拳を受け止め、パンチで遠くまで吹き飛ばす。途中でキキに会ったのか、オールマイトの側に立っていた。防御障壁のお陰で特に目立った怪我はなさそうだった。

 

「オールマイト!!黒猫の魔法使い、生きていたのか!!」

 

緑谷は感激の声を上げる。爆豪以外の緑谷のクラスメイトも喜びに包まれ、特に峰田は喜びのあまり泣いていた。

 

「オールマイト、どうしてここに?」

 

教える手段は無かった筈なのに、オールマイトがここまで来れ、活動をしていることに疑問を感じた緑谷は質問をする。

 

「ああ...それはね、漁師から、ここら辺で騒がしい音がするから見てきてほしいと通報があって...一番速く様子を見に行ける私が見に来た訳だよ。さあ...敵(ヴィラン)ども覚悟を決めるが良い...何故って?それは...」

 

 

「私が来た!」

 

相変わらずの笑顔で敵(ヴィラン)の前に立ち塞がる。

キキも補助系SSのカードに構えて、迎撃の準備をしていたのだが......

 

 

「オールマイト!!貴方もいずれ殺さなければいけませんが...今は相手にする余裕はありませんので、この辺で失礼させて頂きます」

 

「逃がすか!」

 

オールマイトが黒霧に掴み掛かる前に、脳無を連れて消えてしまう。

敵(ヴィラン)の襲撃事件はオールマイトの登場により、呆気なく終わるのであった。

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