緑谷が元の日常に戻ってからも、黒猫の魔法使いはずっと敵(ヴィラン)連合を追い掛けていた。
しかし敵(ヴィラン)連合のアジトは見付かることはなく、三度目の襲撃事件が起きてしまった。
敵(ヴィラン)連合を調べ尽くした三日間。
アジトは複数あることが判明される。だが、どの場所に爆豪がいるのかは分からなかった。また、誘拐された日に戻ってきた緑谷に話を聞いてみても、詳しい場所を特定をすることは出来なかった。
誰もが頭を抱える中、事態は進展をする。
雄英の記者会見が始まった途端、ヒーロー達が集まっている場所に一通の手紙が届く。
『ヒーロー達へ
こんばんは。
君達に大事な話がある。それは...爆豪君についてだ。君達が心配をしているのであろう爆豪君は、こちらで大切に扱っているから、安心をするといい。
爆豪君の身柄についてだが...君達が僕の要求を呑んでくれた次第、無傷で返してあげよう。
アジトまでは二人の案内人が君達を案内するよ。彼らにも手を出さないことも、僕の要求の一つだからね。では...君達が来てくれることを待っているよ。
では...また後で...』
「なんだ!?この手紙は!」
「あからさまに罠ですよ。これ...」
「でも、行くしかないにゃ!」
「行ったところで、本当に爆豪君は居るのか!?居なかったら時間の無駄だ!」
「そもそも...敵(ヴィラン)の要求は一体なんだ?」
手紙にざわめくヒーロー達。
手紙に従おうとする者は一割、罠だと反対をする者は九割と、反対派の意見が勝っていた。だけど、一名だけ、まだ何も言っていない人がいる。それは...
オールマイトだ。
彼の一言で決まると言っても過言ではなかった。オールマイトは腕を組んで考え込む。数十秒間考えた結果...
「敵の罠かもしれないが...私は行くぞ!」
オールマイトが拳を振り上げて宣言をする。
No.1の一言により、敵の誘いに乗ることになったのであった。
ヒーロー達が外に出ると、二人の男女が建物の前で待ち構えていた。
二人ともバーテンダーのような格好をしており、どちらとも一目見た感じでは、二十代後半ぐらいの若い人であった。鉛色の髪の男性はとても背が高く、鍛えて上げられた筋肉はプロヒーローにも通用するものであった。スレンダー体型の女性は、水色の長い髪を一つ結びにしており、柔らかな笑顔を浮かべている。けれども、本心が隠しきれずに口元が引きつっていた。
二人ともヒーローが大嫌いなようで、険しい顔付きでヒーロー達を睨んでいた。
溢れ出る威圧感を無視して、オールマイトが代表して話を掛ける。
「君達が...案内人なのか...?」
「ええ、そうですよ。私達が貴方達をアジトに案内をする案内人でございます」
「僕達に着いてきて下さい」
案内人を信用出来ないヒーロー達は、その場でこそこそと話し合いをしていたのだが...
「早く着いてこないと、置いていきますよ」
男性の案内人が急かす。
ヒーロー達は作戦会議を碌に出来ないまま、現場に向かわなければならなくなったのであった。
「なんで君達は敵(ヴィラン)になったのにゃ」
魔法使いの肩に乗っているウィズが尋ねる。
案内人二人は答えることもなく黙って歩き続ける。猫だからといっても警戒心は消えないようだ。ヒーローと同じ行動を共にしている時点でウィズも同罪であった。
何も答えないと思いきや、女性の案内人が意外にも後ろを振り返って答えてくれる。
「私が敵(ヴィラン)になった理由ですか?それは.........後で嫌になる程分かりますよ」
女性が嬉しそうににこやかに笑う。
「後で分かる?これから一体...何をする気なんだ?」
女性は魔法使いの問い掛けには無視をする。
不気味な雰囲気のままアジトに辿り着くのであった。
「さあ...」
「ここが...敵(ヴィラン)連合のアジトですよ...」
案内人二人が扉の前で立ち止まり振り返る。
そこはどこにでもあるお洒落なバーであった。バーは表向きには営業中と偽っており、窓から明かりが漏れ出して人影が見える。
ヒーロー達は誰も扉を開けようとしない。
さっさと入れ、と文句を言われると思ったが、今回は文句を言われることはなかった。その隙にヒーロー達は円陣となって作戦会議を始める。
「本当に...このまま入るのか...敵(ヴィラン)を信用しても良いのか...?」
「はっきり言って信用出来ないわねぇ...。本当に彼らを信用をしても良いのかしら?」
「俺は反対だ。敵(ヴィラン)なんかの話を信じられるか!きっとこれは罠だ!」
「けど!このままだと勝己が助けられないにゃ!」
敵(ヴィラン)の行動を信用出来ないヒーロー達とウィズが言い争う。
その様子にグラントリノは呆れて怒鳴る。
「いつまでも立ち止まっておっても意味は無いだろう!」
「そうだ!ここでくだらない言い争いをしている暇があったら、少しはまともなことを言え!時間の無駄だ!」
エンデヴァーにも怒鳴られる。
黙ったところを見計らってエンデヴァーが指示を出す。
「おい!オールマイト!」
「なんだ!?」
急に声を掛けられたオールマイトは吃驚をする。
オールマイトの様子にエンデヴァーは苛つく。
「仕事中何ぼうっとしている!貴様はそれでもNo.1か!」
「す、済まない!エンデヴァー!...実は......この敵(ヴィラン)連合の長という者は...因縁があって...きっと戦いは避けられないのだろうと、色々考えていたら...」
「始めから戦うことが分かっていたら!ちゃんと指示をしろ!それでも貴様はヒーローか!!お前みたいな腰抜けはいらん!!俺が指示を出す!戦うのなら、まずはここら一体の住民を...」
過去を感傷的に思い出していたオールマイト。
そんなオールマイトにエンデヴァーは激怒をし、エンデヴァーが代わりに指示を出そうとするが...
「どのような行動を取るのかは構いません。ですが...オールマイト、黒猫の魔法使い。貴方方二人は必ず来てください。でなければ、そちらの自由行動を認めません」
案内人の男性が釘を刺す。
案内人の意見を聞き入れた話し合いの結果...
因縁のあるオールマイトとグラントリノ、会うように指示された黒猫の魔法使い、拘束系のシンリンカムイがアジトの中に入り、それ以外のヒーロー達は戦っても問題が出ないように住民の避難活動を行う。
アジトに入る組は覚悟を決めて、それぞれの想いを乗せてアジトに中に入っていく。
爆豪を助ける為に─
因縁の決着をつける為に─
バーの扉が今開く。
「やあ...待っていたよ。随分と遅かったのではないか...」
車椅子の男性が悠然と待ち構えていた。
その周りには赤毛と赤い瞳の特徴的な若い女性、可愛らしいエプロンを付けた四十代の女性、コオロギが擬人化したような男性、くたびれて弱々しいサラリーマン風の三十代の男性。どの人達もどこにでもいそうな一般人だ。
誘拐されていた爆豪は中央の椅子に座っており、特に拘束などはされていないが眠らされていた。
「オール...フォーー・ワーーーン!!!」
「オールマイト!やめんか!!!」
「グッ!!」
感情的になったオールマイトは飛び掛かろうとするが、グラントリノに蹴られて強制的に止められる。
親しげにこちらに話し掛ける車椅子の男性。
顔の半分は抉れ、生命装置らしきものをつけて、体は傷だらけで見るだけでも痛々しく感じさせる。だけど......
見た目で惑わされてはいけない。
禍々しい雰囲気が絶え間なく溢れ出ており、痛々しい怪我は古兵のような強さの証になっていた。
「オールマイト、そう怒らないでくれたまえ...。彼は話の邪魔になるから眠って貰っているだけだ...」
AFOは我が儘な子供に語り掛けるかのように話し出す。
「僕の目的が達成次第、彼を君達の元に帰そうではないか。目的は......僕の話と僕の可愛い者達の不満を世界中に届けることさ。というわけで君達ヒーローは...話が終わるまで...黙っていて貰おうか...」
パチッン
AFOが指を鳴らす。
「「「「!?!?!?」」」」
"個性"によって口を塞がれ、石像のように固まってしまうヒーロー組。
必死にもがいて口や体を動かそうとする。
「呼吸は出来るから大丈夫だ。話が終わったら、"個性"を解除してあげよう。勝負は正々堂々としなければ...皆を納得させることは出来ないからね...。終わった後に色々と言われるのは面倒くさいから...この場で白黒はっきりとつけようではないか!さて...では...僕の愛すべき"弱き者"達よ!」
部屋の奥からテレビカメラを持ってきた五人の男女が現れる。
金髪に金色の瞳、何かスポーツをやっていそうな程がたいの良い男性にAFOは話を掛ける。
「準備は終えたかね?」
「はい...先生の指示で今すぐ始められます」
「そうか...では始めよう!マイクの準備は良いかい?」
「人数分以上揃えています」
金色の男性は皆にマイクを受け渡す。
「マイクの調子は大丈夫か?」
「ええ...バッチリよ!」
「大丈夫です」
「こちらも...大丈夫そうです...」
「平気だ」
「大丈夫ですわ...。...これで...私達の悲願がやっと...!!達成出来るのですわ!!」
「ああ...この日がどれ程待ち遠しいかったか...!!」
それぞれマイクの調子を確認していく。
案内人二人はマイクの確認を終えると、まだ始まってもいないのに感慨深くなる。そんな彼らにAFOは我が子に向けるような微笑みを向ける。
「君達にとっても...この日、この時を...!どれ程待ち遠しいことであったか!さあ...!始めようようではないか!姿見!準備は良いかい?」
「勿論です」
「では.........」
「君達の不満でこの世界を壊そうではないか!!」
AFOが力強く宣言をする。
テレビカメラを持ってきた人達がAFOにカメラを向け、マイクを持った人達がAFOの元に集まる。
この世界が
この社会が
弱者により
壊されることになり、長年の付けとして、平穏な日常が崩れ去ることが決定した瞬間であった。
雄英高校の記者会見から、敵(ヴィラン)連合のアジトの映像に切り替わる。
テレビを観ていた人達が驚き戸惑う。戸惑う彼らを構うこと無く話は進んでいく。
『やあ、テレビをご覧の皆様こんばんは。僕の名前はAFO。敵(ヴィラン)連合の長で、この雄英高校に襲撃事件を起こし、緑谷君と爆豪君を誘拐した犯人だ。君達に大事な話があるので、テレビはそのままつけといてね。チャンネルは...どこのでも良いよ。どのチャンネルも僕のことを映しているからね。あ...そうそう、テレビ局は襲撃していないよ。僕のことを慕ってくれる人達が、自分達の意思で、行ってくれているからね...』
『では...早速...本題に入ろうか。答えが返ってくる訳でもないが...君達に一つ、質問をしよう。敵(ヴィラン)の僕が言うのもなんだが......』
『君達はこの世界が合っていると思うかい?』
『答えが出ないことは当然さ。例え、僕と対面をしていて話が出来る状態でも、すぐには答えは出ないだろうからね。...でも、もう、僕達の中では答えは出ているよ。僕の答えは...』
『間違っていると思う。敵(ヴィラン)の僕が言っても説得力が無いのも分かる。けど...証明は出来る。その証明は...僕のことを慕ってくれる、愛おしい人達がしてくれるさ...』
赤毛と赤い瞳の特徴的な若い女性に変わる。
一番手に赤毛の女性はきょどって戸惑う。
『え、え!?一番始めは私で良いの!?...本当に良いの?ありがとう...。コホン...さて...私が言いたいことは一つ......』
『いい加減にしろよ!糞やろうども!!』
罵倒であった。
仲間達と話す時と打って変わって憎悪に染まる。
『人が"無個性"だからって、よってたかって集まって虐めやがって!あんた達は良いでゅちねぇ~~。"個性"があることが、そんなに素晴らしいの?だとしたら...お前らみたいな奴ら!全員死んでしまえ!!...えっ?いきなり暴言を吐くお前の方が悪いからだろ?いやいや...こんなことをさせたのはあんた達よ!私がせっかくマンションの屋上から飛び降りてやったのに...でも、まあ、こうして生き残ってしまったからには、きっと、復讐の神様が生き返って復讐をしろと、言っているに違いないわね!』
『...ということで、私は憎きあんた達を殺す!この腐った社会を壊す!...真っ当に生けていけないようにしてやるよ!!』
所々おちゃらけた言い方だけども悪意を吐き捨てる。
終わると次は、コオロギを擬人化したような男性の番になる。
『次は俺ですね...。俺もまあ...先程の女性と同じ意見ですよ。ただ俺は..."無個性"としての苦しみというよりも、異形型の"個性"として虐められてきました。学生の時なんかは、殺虫剤をよくかけられたり、メスのコオロギを捕まえてきては、お前の好きなタイプだろ!と、虫籠の中に頭を突っ込まれたした...。しかも俺は"個性"のせいで俺は、好きな人を見たり、家に知らない人や嫌いな奴が来ると音を鳴らしてしまう...。ここでお前達に質問をする』
『"個性"という、生まれながらの身体能力で虐めるのは何故なんだ?!お前達だって、顔やら身長やら体重とか言われるのが嫌なくせに!何故嫌がらせをする?!自分は駄目で!他人なら良いのか?!と言っても...俺のことを虐めてきた奴なんかはもう忘れているだろうな...。...それとも、俺の見た目が悪いから仕方ないことなのか?だったら......』
『この昆虫が!人間様を駆逐してやるよ!!』
男性は終始"個性"や見た目についての愚痴を溢す。
次の番は可愛らしいエプロンを付けた四十代の主婦。
『............いざ言う時が来ましたのに...私はなんて言うべきなのでしょうか......けど...言わなければ、動かなければ...あの子は...死んでしまったあの子は...報われない!!』
『お話を繋げるのならば、私は先程のお二人のように酷い目に遭ったことはありません。ですが...私の愛しい息子が虐めで自殺をしました......』
『私の息子は"無個性"でも"異形型の個性"ではありません。どこにでもある普通の"個性"でした...。ですが...息子は...とても気の弱い子でした...』
『怪我をしていたことに気をかければ、転んで怪我をしたと言い、落ち込んでいたところを気にかけても、なんでもない、と言って笑顔で無理をする。私は...ずっと...気にかけるだけで碌に行動を取っておりませんでした...。ごめんね...ごめんね...湊...。気付いてあげられなくて...無理させて...何も出来なくて...。そんな...息子に無理をさせていた生活が六年程続き...』
『息子は自室で首を吊って死んでおりました...』
『息子の死を悲しむのと同時に、自分の無力さに腹を立てていました。私は虐めの証拠を掴んで学校に乗り込みました...。だけども、学校や保護者は認めなかったので、警察に被害届を出しました。だけど......』
『未成年だから厳重注意となりました』
『.........未成年だから......厳重注意...?ふざけないで!!人を殺した奴が未成年だから罪に問われない!?だったら私の息子はなんなのよ?!死者はどうでもよくて、生きている殺人犯が大事!?それが世の中の答えでしたら......』
『私が敵(ヴィラン)になったとしても!この社会を壊す!!』
『この手がいくら血に濡らすことに構わない!地獄に落ちても良い!だから......!!!』
『私の愛しい息子を...湊を...返してよ!!』
泣きながら訴えていた主婦は、泣き崩れて何も話せなくなる。
サラリーマン風の三十代の男性の番になる。
『...私は...この三人とは違って虐めではありません。私の不満は皆様とは少し違います』
『私は少し自慢となりますが、順風満帆に生きておりました。虐めに遭うこともなく大学まで通い、卒業後は大手企業に就職をしました。働いてから数年後、妻となる女性と出逢い、気が合った私達は結婚をし、翌年には可愛い娘に恵まれました。順風満帆だった私の人生...ですが...幸せは長くは持ちませんでした...』
『妻と娘は敵(ヴィラン)に襲われて亡くなりました』
『そのことを知った私はその場で泣き崩れました。妻と娘を殺した敵(ヴィラン)を恨みました。喪った悲しみに私は、何度も自殺をしようと思いましたが、それでは死んでしまった妻と娘に顔向けが出来ないので、私は頑張って生きることにしました。そんなある日のこと...』
『会社帰りの私はヒーロー達とすれ違いました。その時の私は特に何も思わず、ヒーロー達の側を通り抜けようとしたその時...』
『あの事件は"個性"の相性が悪くて戦えなかったな』
『私は呆然と立ち止まりました。今、こいつらはなんて言ったんだ?私は直ぐ様、ヒーロー達に詰め寄りました。ヒーロー達は私のことを面倒くさかったのか、相手にする気はなかったようです。ですが...私の顔を見たヒーローが急に、慌てて謝り出したのです。そして...彼は...こう言いました...』
『君の妻と娘を守れなくて、本当に済まなかった!これには...訳が合ってだな!"個性"の相性が悪い相手には仕方ないことなんだ!』
『そう言って彼は、私から逃げるように立ち去りました......仕方ない...!?!?妻と娘が死んでしまったのに!?仕方ない!?相性が悪い相手だから戦わないのか!?はあぁぁ!!?』
『怒りに身を任せた私はヒーローに殴り掛かりました。ええ、これも、妻と娘が死んで、相性で戦わないヒーローには仕方のないことですね。ええ、本気で殺すつもりで殴りました。仕方のないことですよ、怒らせるようなことをするからですよ。...そして私は...ヒーローを殴ったことで、仕事をクビになりました』
『仕事がなくなり、一日中暇になった私は...あることをいつも考えておりました。それは......』
『どうしたら、"個性"の相性で戦わないヒーローがいなくなるのか。どんなに考えても私には思い付きませんでした...。そんな時、ある人の動画を拝見しました。その人の...動画はそう!ヒーロー殺しのステイン!あの人の考えに、私は感銘を受けました!そうか!戦わないヒーローは殺してしまうと良い!というわけで...私は...』
『ヒーローを殺して、この社会を壊すことにしました。仕方のないことですね。だって、私の愛する妻と娘を、"個性"の相性なんかで見殺しにするから』
丁寧な話し方で終わらせるサラリーマン風の男性。
次は案内人の女性の番になる。
『はじめまして...こんばんは。どうもレッテル貼りが好きなくそったれども。私は敵(ヴィラン)です。それもそのはず、私の両親は敵(ヴィラン)ですから。皆様が望む通りに敵(ヴィラン)に成りました。皆様はいつも、私の両親の正体を知ると、敵(ヴィラン)だ、敵(ヴィラン)だと、石を投げてきましたね。暴言を吐いてきましたね。ヒーロー見習いの子にはいつも、敵(ヴィラン)退治の練習だ、と数の暴力を振るってきましたね。大人も見て見ぬ振りをしてきましたね。私の育ての親も、いつも、お前は敵(ヴィラン)になる、と躾と言い訳をして、暴力を振るいましたね。傷を見ても誰も助けてはくれませんでしたね。とても痛かったのですよ、ですから......』
『敵(ヴィラン)として、私が受けてきた痛みを貴方達に返してあげます。覚悟をしておいてください』
長年の痛みを変わらぬ表情で言い終える。
男性案内人の番となる。
『僕はヒーローの一家に生まれ、いつも他人からは羨ましがられながら生きておりました。ヒーローに成るため、常に厳しい訓練をさせられてきました。しかし...僕は...一言もヒーローに成りたいなどは言っておりません。僕がどれだけ嫌だ、と言っても止まらず、他の人達より少し良い"個性"のせいで、嫉妬の対象となりました。...そんなにヒーローに成りたいのですか?でしたら......』
『僕と代わってください。訓練でできた傷を見ても、ヒーローに成るのだから仕方ない。逃げたいという気持ちは我が儘、ヒーローに成れない弱小"個性"持ちに失礼だろと......成りたくもないのに...我慢しろと...?』
『アホですか!?僕はヒーローに成りたくないのですよ!!僕は平凡に生きていたかった!それに......』
『嫉妬で嫌がらせをする馬鹿どもを!僕がなんで守らないといけないのですか!!?』
かつての呪縛を言い終えた案内人の男性。
最後はAFOの番に戻る。
『テレビは消していないよね?話は最後までちゃんと聞けたかな?』
『これが...僕達が...この世界を間違っていると、思っている理由さ。...きっと...関係ない人達は面を食らい、関係ある人達はばつが悪くてテレビを消したか...自分が該当者だと思っていないのか...それとも...そんなことはすっかりと忘れてしまっているのか...。今となってはどうでも良いことかな...。まあ、話を戻そう...』
『この話を聞いた君達はどう思ったのかな?』
『許せない?最低な話?虐めた人が悪い?敵(ヴィラン)が悪い?よくあること?仕方ないこと?...で...君達は...悪い人、原因を叩いて終り?それじゃあ...。一生この手の問題は終わらないよ。だって......』
『君達の生き方、考え方が、被害者を生むんだ』
『君達はいつになったら気が付くのかな?原因を叩いても終わらないことを。いや...気付いていたとしても...』
『直せることは出来ないだろうね。君達...人間というのは......』
『誰かを傷付けることが、叩くことが、大好きな生き物だからね』
『今頃、画面の向こう側の君達は怒って怒鳴っているだろうね。けどね...証拠はちゃんとあるのだよ』
『ねえ、覚えている?雄英の記者会見で、記者が雄英にしていた質問の内容を』
『今回生徒に被害が出るまで、各ご家庭にはどのような説明をされていたのか』
『具体的にどのような対策を行ってきたのか』
『生徒に戦いの指示を許可したことについて』
『想定した最悪な状況とは』
『拐われた緑谷君と爆豪君についても』
『爆豪君が悪の道に染まってしまったら』
『これらが...記者が質問をした内容だが...君達の本性が表れているよ。君達はさあ......』
『今も誘拐されている爆豪君の心配はしないの?死んでいないか?酷い目に遭ってはいないか?怪我はしていないか?君達が心配をしていることは...爆豪君が敵(ヴィラン)になってしまわないか?それだけだ。結局...誰も...心配をしていないではないか!』
『それに...君達は...雄英のことばかり叩いているけど...僕達敵(ヴィラン)連合のことは叩かないのか?犯人は僕達だよ。...君達はいつだってそうだよね。弱い者、反撃が出来ない者を狙うよね。君達はいつも、誰かのことを叩きたいのだけど、弱くて臆病だから、自分よりも弱い者を狙うよね』
『そう、君達は、君達が大嫌いな敵(ヴィラン)にしかすぎない』
『僕達は許されない敵(ヴィラン)で。君達は許された、罪に問われない敵(ヴィラン)だ』
『本当に狡くて羨ましいよ。君達が吐いた暴言は、誹謗中傷は許され、更に若ければ、金を奪っても暴力を振るっても、虐めとして終わらせることが出来る。僕達も...君達のようなやり方に変えようかな?』
『君達の考えはずる賢くて素晴らしい!気の弱そうな人、自分よりも立場を弱い人を集団で囲んで、相手がいなくなるまで、死ぬまで追い詰めて、空気すらも味方にして、自分達の行いを正当化にして...』
『僕には真似出来ない程、狡くて賢くて滑稽だよ』
『ずっと僕の話はつまらないだろう。君達も耳の痛い話であろう。だから......』
『今度は君達の意見を言う番だ』