黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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43話 神野区事件8

『......大丈夫かい?そっちには精神分析が出来る"個性"持ちはいない?』

 

ある程度時間が経った頃、根津がこちらの様子を尋ねてくる。

電話越しでの呻き声、画面から見える頭を抱え込む"弱き者"の姿。どれも同情をさせる程の痛々しさを感じさせるものだった。

 

根津は心配をして声を掛ける。だが、"弱き者"からの返答は......

 

 

 

「たかが一つの世界が出来ただけで調子に乗るな!」

 

「そ、そうよ!一つの世界が出来ていたからって、私達が屑な訳がないでしょ!」

 

「そうだ!そうだ!お前達のような屑どもと一緒なのは、絶対にあり得ん!」

 

罵倒だった。

今の彼らには何を言っても聞く耳を持っていなかった。そんな彼らを魔法使いは冷めた目付きで睨む。

 

「そう?そのわりにはソウヤのことを決め付けていたね。君達は、君達のことを傷付けた人達と同じことをした。何が違う?他人は駄目で、自分達が言うには問題がないって訳?」

 

魔法使いは怒りで物凄く切れていた。

この世界に来てからというもの、変な言い掛かりで罵倒され、ゴミを投げ付けられ、間違っていると文句を言い続けていれば、第三者であるオアシスの人達が被害に遭う。

それらに加えて、共に戦った大切な仲間を肩書きだけで、勝手に害悪な存在だと思い込んで殺す、倒すべき存在だと言い張る。

 

これらの要素が合わさったことにより、魔法使いの堪忍袋の緒が切れ、被害者である"弱き者"に怒りをぶつけてしまう程だった。

 

「な、何よ!あんたみたいな、魔法と言うデタラメで、強力な力を使える奴に!私達の気持ちなんて分かる訳ないじゃない!!」

 

「そうだ!お前と逆の立場の人間だったら!俺達と同じ意見の筈だ!!」

 

「...逆の立場......」

 

赤毛の女性とコオロギ風の反論に魔法使いは俯く。

その姿に"弱き者"達は一気に畳み掛ける。

 

「そうよ!あ~あ、可哀想に!あんたがどんな所を旅してきたのは知らないけど。魔法を自由自在に使えない人に会っていたら、泣かせていたわよあんた。良かったわね、その様な人に会う前に私達に会って。いい勉強になったでしょ?」

 

「彼女の言う通りですよ。その様な人に会う前に、先に僕達に出会えて良かったですね。貴女の様な人が人を泣かせるのですよ」

 

更にバーテンダー風の男性も加わる。

彼らの反論に魔法使い、ウィズ、根津は答えない。他のヒーロー達は、俯いて小刻みに震えている魔法使いとウィズを心配そうに見詰める。

 

AFOが口を開こうとした、その瞬間......

 

 

 

「にゃははははは!!!」

 

ウィズの笑い声が空高く響き渡る。

あまりの笑いように"弱き者"、他のヒーロー達は面食らう。

 

「ウィズ、笑いすぎだよ」

 

ウィズを注意する魔法使いも笑っていた。

彼女達が俯いていたのは反論が出来ないからではなく、ただ単純に笑いを堪えているだけだった。

 

「何が可笑しい?!!」

 

予想外の反応に"弱き者"達は戸惑う。

誰もが魔法使い達に対して白い目を向ける中、魔法使いは大胆不敵に笑う。

 

「残念だったね、もうそういう人とは、別の世界で友達になっているよ」

 

「そうだにゃ!私達の冒険談、出逢った仲間達を甘くみない方がいいにゃ!君達のように、嫉妬して攻撃をしたりしないにゃ!」

 

『.........本当にさ...相手にも失礼だし、怒られるだけだから、下手なことは言わない方がいい。もう一回言うけど、異世界の人間は君達の考えと大分違う。...丁度彼女の話になったことだし、彼女、リフィルの居る世界の話をしようか。その世界の話が、君達が幸せになれないことを物語っている』

 

根津は怒ることもなく、笑うこともなく、同じ世界の住民として呆れ果てていた。

 

「ほう......。では聞かせて貰おうか。リフィルという人が居る世界の話が、彼ら"弱き者"が幸せになれないと言う証明を。...おっと...その前に......今までの話に嘘はないかね?」

 

「嘘はない」

 

魔法使いは即答をする。

その言い様に、AFOの能面のような顔が少し歪むのであった。

 

 

 

 

『そちらの状態も大丈夫そうだし、話を進めようか』

 

根津が一呼吸を置いて話を始める。

 

『リフィルが居る世界...彼女の居る世界では魔法が失われ...代わりに...ロストメアと言う...かつて誰かが抱いていた夢が、魔物となって暴れている世界...』

 

「かつて誰かが抱いていた夢......それって、どういうこと?」

 

舞梓が皆を代表して尋ねてくる。

舞梓はすっかり質問係りになっていた。

 

『そうだね...簡単に言えば...成りたいものを描いたけど、途中で諦めてしまい、捨ててしまった将来の夢のことさ』

 

「諦めてしまった将来の夢が......ロストメアになって...暴れる......。凄く不思議な世界......」

 

舞梓は思わず率直な感想を呟いてしまう。率直な感想は皆の首を縦に動かす。

暫くの間舞梓はボンヤリしていたが、あることに気が付いて叫び出す。

 

「......うん...?ちょっと...!今気が付いたのだけど!なんで、ロストメアが暴れているの!?暴れさせるくらいなら、叶えさせても良いんじゃないの?それとも...駄目な理由があるの?」

 

「うん、あるよ」

 

魔法使いが返事をし、根津が補足の説明をする。

 

『一度捨てられた夢が、願いを叶えた奇跡の代償として...この世が歪んでしまうんだ』

 

「この世が歪む......?一体何が起きてしまうの?」

 

「歪みはロストメアによって違うにゃ。私が知っている限りでは一つの国を滅ぼしたり、島を沈没させたらしいにゃ」

 

「.........結構凄いことになるのね......」

 

「そりゃあ止めるわな......」

 

皆が事態の重さを把握したところで話を進める。

 

『そのロストメアを止めるのがメアレスさ。メアレスは夢見ざる者と呼ばれ...』

 

「で、その話がリフィルとなんの関係がある?自由に魔法が使えないこともか?」

 

痺れを切らしたAFOが根津の話を遮る。

根津は待っていました、と言わんばかりに語り出す。

 

『リフィルもメアレスの一員なのさ!魔法もロストメアと関係あって。魔法自体は使えるのだけど、魔力はロストメアを倒すか、お金で買わなければいけないんだ』

 

「魔法自体は使えるのか...」

 

『まあね。でも、アストルム一門は、魔法の存在を示し続ける為に、当主となる者の生き方を決めて、縛り付けてきたってんだ。リフィルはそのアストルム一門の末裔なのさ』

 

「ほう......。大体は分かった」

 

一応納得をするAFO。だが、AFOは何故か、意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「しかし......。リフィルという人が君達と仲良くしていても、陰で泣いているかもしれない、嫉妬をして苦しんでいるかもしれない、そこを考えたことはないのかね?」

 

反論点を見付けたAFOはニヤニヤと嗤う。

身構えていたヒーロー達の顔は曇ってしまうが、魔法使いとウィズの自信は揺る切らない。

 

「リフィルはそんな弱い人じゃない!彼女はいつだって、逆境に立ち向かう強い人だ!」

 

「そうだにゃ!」

 

『記憶でしか見たことないけど、僕も、彼女は君達みたいな柔な人間じゃないと思っているよ』

 

根津もAFOの嘲笑いを気にも止めていない。

AFOや"弱き者"達が言い返す前に根津は話し始める。

 

『君達が気付かなくても仕方ないけど...先程のカードの台詞の中に、リフィルが話していたものがあったんだよ。で...あの台詞の中に、泣き言を言っている人はいたのかい?』

 

魔法使いも相手が何か言う前に、カードに魔力を込めてもう一度台詞を流す。

 

「色んな異界に行ったからには、色んな料理を食べてきたんでしょう?思い出深いものはある?…『ダークサンブラッド』?それ、食べ物の名前?」

 

柔らかな口調で語り掛ける少女の声が流れる。

 

『こんなにも優しい口調の人が陰で泣いている?嫉妬で苦しんでいる人が異世界の話を尋ねてくるのかい?僕には...苦しんでいる風には見えないね』

 

「それでも納得できなければ、カードを見てみるといいにゃ」

 

「カード?」

 

ウィズの意見に従って、魔法使いは皆が見えるようにカードを掲げる。

舞梓や天意は近付き、カメラマンはカメラを向け、他の人達も掲げたカードを我先に振り向く。

 

皆が息をはっと呑み込む。

カードに描かれていた絵が衝撃的だったからだ。

 

AFOの思い通りであれば、カードには苦しんでいる少女の絵が描かれている筈だ。けれど、そこには......

 

 

皆で屋根の上に登って沈みいく夕日を眺めている絵。こちら側に優しく微笑みを返す金髪の少女、リフィルの姿が描かれていた。

とても綺麗な絵であった。

 

『こんなにも柔らかな笑みを浮かべている人が、魔法使いさんと仲悪い?冗談にすらならないよ』

 

AFOの嘲りは、たった一枚のカードの台詞と絵で論破される。"弱き者"は歯軋りして悔しがることしか出来なかった。

根津は更に追い討ちを掛ける。

 

『あ、そうそう...。こんなにも柔らかな笑みを浮かべるようになったのは、魔法使いさんと出逢った後からするようになったんだよ。前も笑っているところはあったけど、ここまで柔らかくはなかった』

 

『柔らかな笑顔と丁度いいし...同じ世界の...家業のせいで大切な人をいつの間にか殺されてしまっていた青年の話をしようか。彼もまた、事情を知った後で、柔らかい表情をするようになり、生き生きと生きているならね......』

 

『その青年の名前はレッジ。彼の家では、デュオ・ニトルと呼ばれている巨大な門を守っているんだ。その門をロストメアが通ってしまえば、ロストメアの願いは叶い、世の中に災いが起きる。彼の一族は正しく、世界を守っている、と言っても過言ではなかった』

 

『でも、彼にとっては、門を守る仕事があまり好きではないらしく、心のどこかでは自由になりたいと思っていた』

 

『そんな彼を不憫に思った一人の女性がいた』

 

『けど...彼女は...僕が何度も話した通り...彼の父親の手によって殺されていた』

 

声にも出すのも辛そうに語る根津。

辛い雰囲気が伝わり、舞梓や女性ヒーロー達が涙を流していた。根津も辛い気持ちを抑えて問い掛ける。

 

『ここで皆に質問をするけど......この後、真実を知った彼は、どのような決断を下したと思う?』

 

「......なんでそんなことを聞くんじゃ?答えは分かりきっておるじゃろうに...」

 

今までずっと黙っていたグラントリノが口を開く。誰もが思っていることだった。

根津はゆっくりと深呼吸をする。

 

『.........そうだね......グラントリノの言う通り...いや...君達の考え通り、彼も門の仕事をやめてがっていた。それでもね......』

 

 

『彼はけじめをつけてから決めるって、立ち止まらなかったんだ』

 

「けじめをつけるまで...」

 

「立ち止まらない...」

 

レッジの決意に、事情を知らない人達の口が塞がらなくなる。

 

『因みに......けじめのつけ方も大分きつくてね......彼女の捨てた夢...ロストメアを倒すことに決めたのだけど......』

 

 

『そのロストメアの姿は...声は...』

 

 

『大切な人とそっくりだったんだ』

 

「「「「!!!!?!?」」」」

 

声にならない叫びが一斉に漏れ出す。

そこらじゅうから息を呑む音、鼻をすすり上げる音が聞こえてくる。

 

「なんで......彼はそんな決断を下したんだ?」

 

あのAFOさえも唖然としていた。

 

『それは...彼がロストメアと対峙した時の話......僕の口から語るのも烏滸がましい。魔法使いさん、ウィズさん、どちらでも良い。二人の口から、あの時の彼の言葉を語ってくれないかい?』

 

根津の申し出に魔法使いとウィズは見合わせる。

暫く見詰め合っていると、魔法使いの首が縦に傾き、マイクを口元に近付ける。

 

魔法使いはあの時のレッジの誓いを思い出しながら、目を閉じて深呼吸をする。

皆の視線を受け止めながら、魔法使いはレッジの想いを、決意を言葉にする。

 

「俺が守るのは門じゃないその向こうのある世界。ユイアが愛し、旅してきたすべてだ!」

 

「門の管理者ではなく、メアレス、魔輪匠(ウィールライト)として、おまえを止めるぞ!ラウズメア!」

 

「とりあえず、今の仕事を続けるさ。間違っても、家や親父のためじゃなく......ユイアのために」

 

魔法使いは口許からマイクを離すと、あるカードに魔力を込めて最後の人押しをする。

 

「前は他にないから門の管理者をやっていた。…今はそうすると決めた理由がある」

 

静かに決意を語るレッジの声が響く。レッジの決意に、想いに、誰もが圧倒されていた。

静まり返った空間で根津の声だけが流れ出す。

 

『これが彼の決断。そして...この話が......』

 

 

『君達、"弱き者"が幸せになれない理由さ』

 

根津の発言に呆然としていたAFO、"弱き者"、ヒーロー達のスイッチが入り、大騒ぎとなる。

 

「やはり君もヒーローらしく、人の心を理解していないんだね。大体......」

 

『人の心を理解していない?それはこっちの台詞だよ。君は人の心を見下しているけど、本来の人はとても強いのさ!この世界に住んでいる君には分からないけど!それより...本題に戻ろう...僕の言いたいことはラウズメア、解き放つ夢の話』

 

『彼女はレッジの決断に、夢が叶ったと、とても喜んでいた』

 

『とても不思議な話だよね。この決断だと、囚われる前と、今の彼の環境は、何一つ変わってはいない。なのに、解き放つ夢の彼女は喜んだ。どうしてだと思う?』

 

『それはね......』

 

 

『自分で道を選んだからなんだよ!』

 

「この糞鼠が!お前は一体何が言いたい!!」

 

騒ぎを無視して話し続ける根津に、コオロギ風の男性がヒステリーを起こして怒鳴り散らす。

根津の呆れた、冷めきった溜め息が大っぴらにつく。

 

『僕達に対して怒り続けるのも構わない。怨み続けるのも分かる。けどね......』

 

 

『幸せなのかどうかは、本来、自分で決めるものではないのかい?他人が決めた価値観で決めるものではない筈だ』

 

「ふざけるなああ!!!加害者のくせに!責任転嫁してんじゃねえぇぇ!!!」

 

『だったら、君達の理屈で言えば、リフィルもレッジも、君達と同じく暴れてもいい筈だ。それなのに、リフィルは魔法使いさんのことを知って、自分の環境に嘆くこともなく、荒れて誰かに当たることもなく、自分だけの生き方を探した』

 

『レッジは死ぬ最後まで自分のことを思ってくれた想いを、大切な人の姿をした夢と戦って、門番の仕事を続けることを決意した。......君達とあの二人の違いはなんだろうね』

 

「知るか!!あんな人間性の化け物なんか!!!」

 

「そうよ!普通の人間だったら立ち上がれないわ!!」

 

怒鳴り散らす"弱き者"達を魔法使いとウィズは、ゴミを見るような目付きで睨む。

 

「な、何よ!あんたの知り合いが可笑しいのは当然でしょ!!」

 

『......もう殺されても文句言えなくなってきたよ君達...。じゃあ...作られた人達が、作った人間達と手を取り合った世界の話をしようか......』

 

根津は最早無反応だった。

 

『その世界では、カリプュスと呼ばれる宇宙生物のせいで人類は滅びかけ、カリプュス対策として、ガーディアンという、人造人間が作られた』

 

『作られた彼らは、真実も何も知らず、自警団として、カリプュスの分身体を倒し続ける日常を繰り返していた』

 

『勿論、君達のように、真実を知ったガーディアンが人間に反逆を企て...』

 

「私達と同じ人達がいるじゃない!」

 

『でも暴れているガーディアンを止めたのは、同じガーディアンの人達なんだよ。真実を知って、戸惑いながらも、同胞を止めたんだ。そして...この世界の話が......』

 

 

 

『魔法使いさんとウィズさんが、どんなに頑張っても、僕達の住んでいる世界を変えられなかった理由を物語っている』

 

「それも僕達の責任するのかい?その件ははっきり言って...黒猫の魔法使いとウィズの力不足が原因ではないか。大体、変えたいと言っていたわりには、ただのヒーロー活動をしていただけではないか?それを僕達のせいに......」

 

『うん、今君が文句を言っている方法で、世界を救ってきたのだよ』

 

「ナッ...!!何!!?」

 

今まで以上の驚き顔を醸すAFO。

あまりの驚きぶりに根津は思わず笑ってしまっていた。

 

『......コ,コホン...。細かいところは違うけど、基本的なことは変わっていないんだ』

 

『大まかな流れはこんな感じ』

 

『まず、魔法使いさんとウィズさんが異世界を迷い込んで、ちょっとした事件を解決する』

 

『その結果、良い人、有能な人だと認められ、仲間入りをする』

 

『その後、大きな事件に巻き込まれて、現地の人達と力を合わせて事件を解決する。これが...どの世界にも置ける、世界の救い方だよ』

 

「言い訳?言い訳なら...」

 

『簡単な話......』

 

 

『オールマイトに任せっきりの僕達には無理だってことさ!』

 

AFOの話を遮って根津は語り続ける。その話し方はまるで、"弱き者"達だけではなく、この世界の全ての住民に言い聞かせているようであった。

 

『魔法使いさんが異世界を救った冒険談では、僕達のように一人の人間に任せっきりではなく、皆の力を合わせて事件を解決していくんだ!それこそ、異世界から迷い込んだ魔法使いさんを含めて、協力してくれる人が一人でも欠けたら解決出来ないんだ!全員で力を合わせないと駄目なんだ!!』

 

「だったら...僕らが納得するまで、言葉で説得すれば良いだけの話ではないか?」

 

『あのね......。あんなに嫌がらせを受けているのに...手伝ってなんて言える?あの状態で...上手く事が進むと思っている?それに......』

 

 

『あのガーディアンが居る世界では、作った人間と仲良くしていたけど...魔法使いさんとウィズさんは、人間と仲良くしろと、一言たりとも言ってはいない!これからのことで口出したりなんかしていない!魔法使いさんが帰った後で、自分達で仲良くするって決めたんだよ!!』

 

「...なっ!!?」

 

今日何度目か分からない驚き顔を醸すAFO。他の人達も一緒になって驚き顔を醸していた。

 

『魔法使いさんとウィズさんの役割はあくまでも、大きな事件を解決の手伝いをすること。事件を解決すれば、魔法使いさんとウィズさんはすぐに元の世界に帰される。後は現地の人達が頑張っていくんだ!寧ろ...ああだこうだと口出したのは、この世界が初めてじゃないのかな?ねえ魔法使いさん、ウィズさん』

 

「そうだにゃ!私達がここまで口出したのは、この世界が初めてにゃ!」

 

ウィズは叫んで返事をし、魔法使いは力強く頷いて同意をする。

 

『現地の人達だって、魔法使いさん達に手伝って頼んだり、助けを求めたりすることはよくあるけど...自分達で出来ることは自分達でするのさ!』

 

「自分達で動くって言うが!俺達を見捨てて!ヒーロー活動することと、何が関係あるんだ!!」

 

『見捨ててはいない!ただ...自分達と同じ考えの仲間を探していたんだ。......僕達が手伝わなかったから、仲間探しの状態で止まってしまっていたんだ』

 

「やはり君も!自分達が間違っていることを自覚していたんだね!」

 

悲しそうに、悔しそうに、自分に腹を立てる根津を嬉しそうに責めるAFO。

 

『そうだ!僕も!ここに居るヒーロー達も!皆 も!間違えてしまったから!こんなことになってしまった!だから......』

 

 

『魔法使いさん達の冒険談を語って、君達を止めてみせる!!それで!もう二度と間違いを起こさないように、立ち上がって、魔法使いさんやウィズさん、異世界の人達のように強くなって......』

 

 

『誰かを傷付けないように!』

 

『這い上がれるように!』

 

『誰もが強く生きれるように!』

 

『自分と違うものを認められるように!』

 

『力を正しく使えるように!』

 

『道を誤った人を許せるように!』

 

 

『綺麗事がお花畑と馬鹿にされない、それが当たり前に出来る世の中に、作り変えてみせる!!』

 

根津はAFOの指摘、"弱き者"達の怨みを真っ向から受け止めると、己の過ちを認め、反省をしながら皆の前で決意をする。

 

「誰が望むか!!そんな...」

 

『望む望まない問題ではない!強くならなければ、この手の問題は一生終わらないんだ!』

 

「そうだとしても、差別された者が差別した側と仲良くすることなんて...」

 

『出来る!あの世界の話のしよう!』

 

「まだあるの!?」

 

嫌になってきたのか、バーテンダー風の女性の目に涙が浮かぶ。それでも根津の話は止まらない。

 

『その世界は神にも似た存在、審判獣によって全ての善悪が決められていた』

 

『人類は二つに分けられ、善とみなされた人はサンクチュアと呼ばれ、聖域と言う場所で安全な暮らしを保証された。それに対して、インフェルナと決められてしまった人達は、人が生きることさえも厳しい土地に追いやられ、常に死と隣り合わせだった』

 

『彼らは憎しみ合い、争いが耐えなかった。だけど、戦争を終わらせる為に、インフェルナはサンクチュアと手を取り合って共に戦った。この件は...僕の口から説明するよりも、カードで説明した方が早い。魔法使いさん、該当するカードの台詞を聞かせてあげてくれないか?』

 

魔法使いはカードを取り出す。

その姿は"弱き者"達からすれば、命を狩りに来た死神のような恐ろしい存在になっていた。そのことに魔法使いは気が付いていたが、それでも止まらない、この弱りきった考えを否定する為に。

 

「人間達が手を取り合う。こんな当たり前の事が、どうして出来なかったのかしら」

「理由など無い。お互い、気付くのが遅かったんだ」

 

たった二人の男女の声が、この世界の全てを否定し、AFOと"弱き者"達の正当性を打ち砕くのであった。

 

 

 

 

 

「確かに君達は被害者だにゃ。でも、だからと言って、悪いことはしてはいけないにゃ。どんな理由があったとしても、罪は罪にゃ」

 

"弱き者"達の顔から生気を失い、見るも無惨な姿になっている最中、ウィズは容赦なく諭すように語り出す。

どんな辛い境遇でも、道を間違えなかった人達を知っているから。

 

「今までの君達の話は、私達の冒険談で全て否定出来たにゃ。君達と似たような境遇でも、過去に囚われず、前向きに頑張って生きているにゃ。君達の行動に言い訳なんて出来ないにゃ」

 

「それはそれは...とても強い人間に出会えて良かったね。けどさ...彼らの強さを求めるのは酷なのではないか」

 

AFOが尤もらしいことを言って反論をする。けれども、魔法使いとウィズは怯まない。

 

「出来ないって決め付けている方が可笑しい。他の世界の人達は問題から逃げなかった、諦めなかった!そうやって決め付けて、皆が問題に取り組まなかったから、この世界の問題が終わらなかったんだ!」

 

魔法使いが叫んで指摘をする。

実際に他の異世界も、自分達と異なる種族と交流をすることになって、不安から弱気になってしまったことがあるのだが、はじめから“出来ない”と諦めることはなかった。

 

しかしー

この世界は違う。

 

はじめから出来ないと諦め、自分達と異なる者は排除をしようとし、弱い者には憂さ晴らしに傷付け、強い者にはこれ以上強くならないように足を引っ張り、目に見えている問題を見えないふりをし、問題を誰かに押し付けては解決したことにする。

 

とても弱く......

 

 

歪んだ世界。

そんな世界だから長年の問題が解決しなかった。ただそれだけの話。

 

魔法使いは出したカードを懐にしまって様子を伺う。

"弱き者"達は項垂れて動く気配はなかった。

 

『今だ!今の内に彼らを捕縛するんだ!』

 

根津は無気力なっている"弱き者"達を見逃さずに指示を飛ばす。魔法使い、オールマイト、エンデヴァーの三人は直ぐ様は動き出す。他のヒーロー達も遅れて後に続く。

 

"弱き者"はショックで動くことが出来ず、このまま上手くいけば、捕まえることは容易なことであった。

後一歩、魔法使いが"弱き者"の一人である、赤い髪の女性に触れようとしたその時......

 

「にゃ...にゃあ!」

 

突然、暴風が吹き荒れ、魔法使い達は吹き飛ばされる。

いきなりのことで受け身を取るだけで精一杯な魔法使い達。吹き飛ばした犯人は魔法使い達に目もくれず、必死に叫ぶ。

 

「ま、まだ!!まだ僕達の負けと決まった訳ではない!!」

 

その余裕のない姿は、今まで王者のように自信満々だった人と、同一人物とは思えないものであった。

 

「そ...そうだ!黒猫の魔法使い!君達は今、暴力で解決しようとしているが!君の仲間であれば、暴力で解決しないのではないか!!」

 

AFOの指摘に、"弱き者"達は水を得た魚のように気力を取り戻す。

 

「そ、そうよ!そんなに力強い人達だったら、暴力じゃなくて、言葉で解決する筈だわ!」

 

「そうか...それも...そうだ!!黒猫の魔法使い!お前の心が弱いから!俺達のせいにして!言葉で解決する道を選ばなかったんだ!!!」

 

「諦めてしまったお前が悪いんだ!!」

 

『それは違う!!』

 

魔法使いを非難する声を根津が怒鳴って遮る。

 

「何が違うんだ!!」

 

根津の気迫にも負けずに対抗する"弱き者"。けれど根津は悠然としていた。

 

『そう?そう思うのなら好きにすればいいさ。けど...これだけははっきり言おう......』

 

 

『他の異世界の人達だって、今の君達の状態だったら、力で止めるよ』

 

「な...何!!?」

 

驚いているAFO達を気にも止めず、根津は最後の仕上げとして語り出す。

 

『異世界の人達はどんな人でも認めるし、困っていたら助けてくれる優しさはあるよ。だが、それ以上に......』

 

 

『自分にも他人にも厳しいのさ!今からその厳しい一面を話そうではないか!』

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