黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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44話 神野区事件9

「優しさ以上に厳しい一面...?」

 

違う展開に戸惑う一同。

根津は一回の咳払いをして切り替える。

 

『そう、彼らは優しい。けれど、それ以上に厳しい。悪さをする者には勿論のこと、時には辛い決断をさせることもある。しかも人によっては、君達の過去を聞いても、そんなこと知るか!と、撥ね付ける人も居る。まあ...全員が全員、そういうタイプでもないけどさ...。とにかく、どんな理由があるにせよ、どんな事情があるにせよ、今の君達を見過ごす人達は居ないってことさ』

 

「だから何?苦しんでいる彼らをもっと苦しめるのかい?」

 

『そうだね。苦しめることになるだろうね。けどね、彼らにとっては関係ないんだ。必要なことであれば事情、年齢関係なく、結構辛い決断をさせるよ。具体的には......怪物になってしまった兄の成れの果てを実の妹にとどめを刺させたり、皆で力を合わせても手も足も出なかった敵だから、要求を呑んで穏便に済ませようとしたら怒鳴って罵倒されたり、要らないものを押し付けたり、実の娘が母親を殺すことになったり、共に戦った仲間を倒すことになってしまったり...と。このように、心を抉ることになっても決断を迫るよ』

 

あっさりと認めたことよりも、衝撃的な内容に事情を知らない人達の頭がついていけなくなる。十秒間黙っていたままだったが、舞梓がおずおずと手を上げる。

 

「色々と...言いたいことはあるけれど......。取り敢えず...“要らないものを押し付けたり”って......一体何を押し付けたの?」

 

話の中でも一番突っ込みやすい内容に触れる。

 

『要らないものを押し付ける...。丁度、その世界の話が...今の君達のような人を止める為に、戦う道を選んだ少女が居るのだから』

 

 

 

 

『さて......本題に入る為にも、質問に答えようか。その要らないものとは...感情ことなのさ!』

 

「か...感情!?また突拍子もないことになっている!」

 

想定していた考えよりも、遥かにぶっ飛んだ内容に塞がれた口がまた開く。

 

『気持ちは分かるよ。僕だって、どんな理屈を通せば感情を奪えるか知りたいものだからね。まあ...彼女の境遇を考えれば、感情を捨てたいと思うことも、当然なんだけどね』

 

「彼女の...境遇?一体何が合ったの?」

 

『それは......自分の力のせいで母親を殺してしまったことさ』

 

「自分の力のせいで...殺してしまった......。それって...ユリカのこと?」

 

根津はワンテンポ遅らせて同意の形を取る。

 

『いくら、ソウヤが必死に宥めていたとしても、母親を殺してしまった罪悪感なんて一生消えはしない。どの年齢層でも辛いのに、ユリカは見た目的に...五、六歳頃なんだ。そんな幼い少女の心には罪悪感に耐えられなかった』

 

雰囲気がまた悲壮なものに戻る。

 

『だから、ユリカはスニェグーラチカは感情を奪うように頼んだ。スニェグーラチカもまた、ユリカの悲しみに気が付いて現れ、ユリカの願い通りに感情を奪った。けどこれが......更に彼女の心を抉ることになったんだ』

 

「心を抉ることになった...どうして?」

 

『事情を知らないソウヤ達がスニェグーラチカとの戦闘を始めてしまったんだ。事情を万が一話せたとしても、表向きの理由は出産による出血死になっているから、信じて貰えず、止めることは出来ない』

 

『目の前でボロボロになる父親を見ることになったり、何が心当たりはないかって尋ねられたり、願いを叶えてくれた妖精は父親の手によって斬り倒される。と...まあ...結構酷いことが遭ったんだ。今は......詳しい話は置いておいて、先に話を進めるよ』

 

『最終的には、ユリカの感情についての話になるのだけど...それがまた厄介なんだ』

 

「厄介?」

 

『まー...なんて言うか......。どうやら吸血鬼の力と感情が繋がっているみたいで...感情を取り戻すのと同時に、吸血鬼の力が復活してしまうんだ』

 

どのような言葉で表現していいのか分からない根津は言葉を濁す。

 

『しかも、吸血鬼の力は戦っているソウヤよりも強いらしい。で...ここから本題に入るけど......彼女の感情をどうするかの話になったんだ。本人も、世界的にも、感情を捨てることが正しかった。だけど、それを待った、と一人の少女、リレイが異議を申した。またよろしくね』

 

根津の言いたいことが直ぐ様伝わり、魔法使いはマイクを握る。

 

「だからって、心の音を凍らせちゃったら......どんなぬくもりも、喜びも、感じられない。得られない」

 

「今、彼女の感じている辛さに......寒さに。それを勝るぬくもりや喜びが得られると?そんな保証があるのというのか?」

 

ウィズはスニェグーラチカの言葉を語って問題を提示する。

 

「あるよ。絶対」

 

「だって、紅鬼先生がお父さんなんだから」

 

「こんな素敵なお父さんがいてくれるなら、きっと乗り越えられる。辛くても、寒くても。あったかい喜びを、きっともらえる」

 

「私たちもいる」

 

「ユリカちゃんの音が強すぎるっていうなら、乗りこなすやり方とか、いろいろ教えてあげられると思う」

 

「もちろん、あたしたち妖精も手助けできるわ。この子はみんなの人気者だし、放っておいても志願者が殺到するでしょうね」

 

「相談くらいは乗ってやってもいい。俺も、今の身体で龍の音を制御するのに、少しは苦労してきたからな」

 

「ハビィも、解析を手伝うって言っています。オリバーくんの力を借りたら、制御用の機械だってつくれるかも!」

 

「え?なに、これなんかいいこと言う流れ?じゃ、その子がもし人の音を食べまくっちゃったら、あたしがまるっと食べてあげる!とかどう?」

 

リレイ、ルミスフィレス、タツマ、ミホロ、ティギィの言葉を魔法使いは語っていく。

 

『と...まあ...こんな感じに...スニェグーラチカが唱えた問題点を皆で否定した......』

 

「だからなんだって言うんだ!!ただの自慢大会かあぁ!!!!」

 

根津の話を遮ってきたのは、ユリカの話を聞いて発狂したカメラマンの男性。怒りで我を取り戻したようだ。

 

『そうだね...彼女は人間関係にとても恵まれているね。それでも...母親を殺してしまった罪悪感と罪は一生消えることはないし、力は制御出来るようにしないといけないし、フェアリーコードを破壊しようとする輩に狙われることになる』

 

「だからどうした!!!認めてくれる人がいてくれるだけで良いじゃないか!!俺なんか......俺なんか!!少し腕を怪我をさせただけで!化け物扱いされたんだぞ!!...畜生!世界を滅ぼす怪物親子が許されて!俺は許されない...!!一体、何が違うって言うんだ!!!」

 

言いたいことを言い切った男性は泣き崩れる。

"弱き者"達は泣き崩れた男性を慰めていたが、他の人達は呆れていた。ソウヤ達と仲の良い魔法使いとウィズでさえも、呆れすぎてなんの感情も湧かなかった。

 

「お前さん......」

 

「お前...!今、自分が何を言っているのか分かっているのか?!」

 

「ねえ......本当に...差別のない世の中を作りたいの?」

 

「僕達の苦労を知らない人達は黙ってろ!!」

 

本当に分かっていない。

増悪に囚われた彼らには、言い逃れが出来ない程の矛盾を犯し、同じ過ちを繰り返していることに。

 

「こんな不愉快になる話よりも!私達を止めようとする人物の話をしなさいよ!」

 

『うん、そうだね。そろそろ本題に戻ろうか。......君達の矛盾点も後でたっぷりと指摘するから』

 

"弱き者"の要望に応えながらも、小声で釘を刺して逃げ道を塞いでいく。

 

『スニェグーラチカに最初に楯突いた少女...リレイを、戦う切っ掛けを作ったルミスフィレスこそが、今の君達のような人を止める為に戦う道を選んだんだ』

 

『彼女は元々、とある村でシェダという妖精と共に、歌ったり踊ったり、イタズラとかで遊んだりして楽しく暮らしていたのさ。けれども...そんな幸せな日々は長くは続かなかった』

 

『ある日、イタズラで村人を怒らせてしまったシェダは、翅音(はね)を傷付けられてしまって...怒りのあまりに...暴走してしまうんだ。ルミスフィレスも言葉で止めようとしたけれど...シェダには届かなかった』

 

『その結果......』

 

 

『村人全員が殺されることになった。翅音を傷つけた大人達も、仲良く遊んでいた子供達も、皆、感情のままに殺してしまったんだ。丁度......今の君達みたいに...ね!!!』

 

印象を残す為、わざと口調を強く大きく叫ぶ。

この話が一番重要なのだから。

 

「うるさいわね!いきなり何!?鼓膜が破れるとこだったじゃない!!」

 

『いきなりうるさくして申し訳ないと思っているよ。でも...この話が物凄く重要なんだ』

 

「物凄く重要?」

 

鬱陶しそうに耳を塞いでいた者、真剣に耳を傾ける者、面白くなそうにしている者、成り行きを見守る者。

それぞれの想いが交差する。

 

『その事件のせいでシェダは、普通の妖精から暴走妖精、最後には悪魔になって戻れなくなり...ルミスフィレスによって倒された...。シェダの最後の言葉が、鍵になっているんだ』

 

「シェダの最後の言葉...?」

 

『そう最後の言葉さ。魔法使いさん、彼女の最後の言葉と、憎しみの言葉を語ってくれないか?』

 

魔法使いは頷きの代わりに息を吸い込み、自分が出せる限界まで出せるようにし、あの時見たままのシェダの想いを再現する。

 

「わたしーーあんなこと、したくなかった......。したくなかったのーールミス......」

 

強い後悔と悲しみの後、憎しみと怒りの声をカードで届ける。

 

「絶対に許さない」

 

「奴らを皆殺しにしてやる」

 

「許さない…!」

 

「殺してやる!」

 

「まだ…まだいるはずよ……隠れたって探し出してやる…ひとり残らず…息の根を止めてやる!」

 

「みんな!みんな殺してやる!」

 

「みんな殺してやるわ…」

 

"弱き者"達の恨み、憎しみに負けない程の怨念のこもった声が響く。

魔法使いは胸元にあったカードとマイクを天高く掲げる。自分の声だけではなく、シェダ本人の声が皆に届くように、他の場所にいる"弱き者"達にも聞こえるように腕を伸ばす。

 

「あの子たち…みんな好きだったのに…」

 

「どうしてこんな…」

 

「どうして…こんなことをしてしまったの…?」

 

「どうしてーー止めてくれなかったの!ルミスフィレスッ!」

 

先程よりも魔力を込め、語る声量も大きく、どこにいても、嫌でも耳に入るように、シェダの相反とした想いをどこまでも飛ばす。

殺意にまみれた憎しみがこもっていた声とは思えない程の深い悲しみ、強い後悔が響き渡る。

 

「えっ......?どういうこと......?」

 

「......はい?」

 

「なんなんだ?!!その変わりようは!!」

 

シェダの気持ちの落差にヒーロー達の口があんぐりと開き、"弱き者"達の毒気が抜かれる。

 

「後悔...してくれているの......?じゃあ...!あたし達がやっていることは無駄ではないってこと?!!」

 

「やはり止めるのが正しいだな!」

 

自分達がしてきたことが無駄ではないと知り、事件が終わっていないのにも関わらず、舞梓と天意はテンションを上げてしまう。

 

「何、勝手に勝った気になっているんだい?それに...止めてほしければ、今みたく暴れまわったりはしない。君達のやっていることは無駄であることは変わりない」

 

『いや、無駄ではないよ。止めてほしかったシェダでさえも、どうして、どうして、と叫びながら、ルミスフィレスに斬りかかっていたんだよ』

 

味方の士気が下がる前に根津は言い返す。

 

「仮にシェダという妖精がそうだとしても、僕達は人間。妖精の話が人間に通用する訳はないね」

 

『確かに妖精は人間と違う存在だ。人間は生き物、妖精は感情できたもの。でも、だからこそ、感情のままに暴れている今の君達にはぴったりではないか』

 

「救いを望んでいなくても?」

 

『そうだね。だけどね、案外、シェダの音と波長があった人でさえ、自分の気持ちに気が付いていなかったからね』

 

「波長が...合う......」

 

『ここは説明難しいから省くよ。救いを望んでいないと言うけどさ...それなら...なんで......』

 

 

『自殺の道を選んだのかい?』

 

これまで散々やった話題に戻る。

今までの話を理解していないような内容により、"弱き者"達の逆鱗に触れ、言葉に表すことが出来ない罵倒が飛び交う。

 

『追いつめられた人が取る行動は二つ、一つは周りに危害を加えるか、自分だけに止めるか、この二つだ。で...君達は...自分だけに止めた。この行動が鍵となる。本当は君達......』

 

 

『この世界を壊したくはないんじゃないのかい?』

 

怒り狂った"弱き者"は聞いていない。それでも根津は話を続ける。

 

『本当に世界を壊したかったら、一度目の時に自殺の道を選ぶのではなく、自分もろとも周囲の人を殺す筈だ。それに...ヒーローを育てている身として...こんな発言は不謹慎だろう...。それでも......言わせてもらうと......』

 

『人は簡単に殺せる。"個性"持ちは勿論、"無個性"だって、武器...いや...身近にある包丁、ガソリンを使えば簡単に殺せる。しかも、君達が恨みを持った相手は大概素人だ。素人同士、不意を突けば簡単に殺せる。いやプロヒーロー相手でも、狙いを一人に絞れば、殺すことは出来なくても重傷を負わせることは出来る』

 

『それでも君達はしなかった。それは...どうして?』

 

「追いつめられすぎて、そのような発想が思い付かなかっただけなのでは?」

 

『そうかな?国民性の違いにもよるけど...海外だと、この手の事件で銃乱射事件はよくあるし、日本だって少ないけど、嘗て通っていた学校や職場に復讐をする事件はあるよ。そういった事件がある以上、その言い訳は通用しない』

 

『だからこそ......』

 

 

『最後まで他人を傷付けなかった君達には、こんなことは望んでいない、後で後悔をするかもしれないと思うんだ』

 

「はぁあ!!?私達の気持ちを勝手に決め付けないで!!」

 

「俺達は好きでやっている!お前が決めることではない!」

 

シェダの話を知っていた根津は、淡く期待を寄せてみるが無意味であった。

 

『別に決め付けてはいないよ。ただ...僕の希望的観測だ。そもそも、君達のことは何も知らないからね。けど...自殺を選んだということは、楽しい思い出があったのではないか?誰か、傷付けたくない人が人が居たのではないか?』

 

「そんなこと!お前達のような屑に話す義理はない!大体!俺達が自殺したのも!憎い奴らを殺せるだけの力がなかっただけだからだ!けど!今は違う!この力を使って理想郷を作るのだ!!!」

 

『そう....。で...君達の考えている理想郷は...一体...どんなものなんだい?』

 

「そんなもん簡単だ!お前達が作れなかった、差別のない!生きやすい!理想的な世の中を作り上げる!」

 

分かりきった答えをあえて聞く根津。その質問は最終確認をするものであり、間違いを正す為のものだ。

 

『ふーん......そっか......。じゃあ、僕から言わせてもらうと......』

 

 

 

『君達にそんな理想郷は一生作れやしないね』

 

また大騒ぎになる前にAFOが話を進める。

 

「まともな社会が作れなかった君が言うことではない筈だ。負け惜しみはよした方がいいよ」

 

『別に負け惜しみではないよ。本当のことを言っただけだからね』

 

「何を根拠にそんなことが言えるのかな?君の自慢の"個性"で出た答えなのかね?」

 

『こんな結論、僕のハイスペックを使わなくても分かるよ。だって...君達は......』

 

 

 

『人に優しくないないからね』

 

「はぁああ!!?散々私達を傷付けたくせに!自分達のことは棚に置いて、私達には人に優しくしろ!!?ふざけるのもいい加減にして!!!」

 

「そうだ!お前達だけには言われてたくもない!!」

 

『別に僕達に優しくしろとは言わないよ。僕達は君達の加害者だからね。でも、君達も、関係のない人を傷付けた。君達は被害者であり加害者だ』

 

「何が俺達が加害者だ!!俺達は被害者だ!!ふざけたことを言ってんじゃねえよ!!!!」

 

「そうよ!!私達は被害者よ!!!あんた達と一緒にしないで!!そもそも...!!この世界に関係のない人なんて存在しないわよ!!!」

 

顔を真っ赤に染め上げて反論をする"弱き者"達。彼らの怒りを気にも止めずに根津は溜め息を吐いた。

 

『君達は......今までの話を忘れてしまったのかい?自分達の言ってしまった言葉を忘れてしまったのかい?関係のない人達に暴言を吐いてしまったんだよ』

 

「はあ!?私達が誰に暴言を吐いたって言うのよ!!」

 

『.........魔法使いさんの友達だよ』

 

「......はい......?」

 

根津の台詞についていけない"弱き者"達は呆けてしまうが、魔法使い、ウィズ、ヒーロー達は呆れ果てていた。

 

『ソウヤ、ユリカ、リフィル、レッジに対して怪物、化け物だと罵った。彼ら彼女らは異世界人で、どう頑張っても傷付けることは疎か、会うことさえも出来ない。君達はそんな関係のない人達を言葉で傷付けた。例え、言葉が届くことがなくても』

 

「それは......!!お前達が関係のない人達の話をするからだ!!」

 

『だったら、はじめからそうやって、自分達には関係ない、知らないって言えばよかったじゃないか、けれど君達は怪物親子だと、人間性の化け物とか言って罵った。それは問題ないのか?自分達が嫌がらせを受けて痛みを知っているのに他人は罵る。...自分達は良くて他人は駄目なのか?だから魔法使いさんやウィズさんに怒られてしまうんだよ!君達の理論では、人間と言う生き物は痛みを知って初めて、他人に優しく出来る生き物だ、と言っていたけど...痛みを知っている割には、なんにも関係ない異世界人に暴言を吐いた...。これってどういうこと?説明をしてくれないか?』

 

「お前が...お前が...!!関係ない奴の話をするからだ!!!」

 

『この話が関係ない?いや、この話は関係あるよ。だって...この話は...君達が掲げた問題に、解決出来るかの話なんだからね。後...君達は差別のない世界を作ろうとしているけど...今の君達には......』

 

 

『住みにくい世界だ。そもそも平等がどんなものか、君達はちゃんと分かっているのかい?』

 

「平等?そんなもん簡単だ!俺達のような弱者をきちんと扱うことだ!!」

 

『そうだね、合ってはいるよ。ただ少し足りない』

 

「足りないだと!?」

 

『うん、足りないね。君達の言う通り、危ない力を持っていても、犯罪者であっても、その犯罪者の親や子供だとしても、気弱な性格だとしても、障害を持っていても、見た目が化け物だとしても、一人の人間として扱うこと。けど...平等に一人の人間として扱うからこそ......』

 

『可哀想な過去を持っていても、悪さをしてしまう本能だとしても、自分の親だとしても、友達だとしても、大切な人だとしても...事情に関係なく、悪いことをしたら裁かれる。それが、平等というものなんだ。...今の君達も間違いなくアウトだね』

 

「それは!お前達が俺達を追いつめたからだろうが!!お前達を殺した後で平等にする!」

 

『それが出来ない人が説得力はないね』

 

「お前に言われる筋合いは...」

 

『まあ、僕の口からはないね。だけどさ...君達は出来る?自分達を苦しめた存在を生み出した人に対して無関係って言える?敵と似た姿で身構えてしまう自分に嫌気がさせる?自分の人生を滅茶苦茶にした戦争を起こした父親の息子と娘に対して、普通に接することは出来る?悪さをしている母親を申し訳なそうにしている娘に対して慰めることは出来る?平等に接するということはそういうこと。けど、今の君達は出来ていない』

 

「お前だって!!言える立場じゃねえだろうがあ!!!」

 

『僕の立場では言えないかもね。だから......』

 

 

『魔法使いさん、ウィズさん、後は頼んだよ。君達なら何を言われても反論出来る立場だから......』

 

そう言って根津の電話が切れる。

全ては魔法使いとウィズに託された。

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