後...ヒーローに関しての話は書きたいタイミングが見付かりましたので、そのタイミングまで待って頂けると幸いです。
いつ何が起きても可笑しくない、一色触発先とした雰囲気の中で、先に口を開いたのは訳も分からず連れてこられた緑谷だった。
「ねぇ、ねぇ!かっちゃん!何でこんなことをするの!?僕は悩んでいたいんだ!もう時間がないんだよ!」
緑谷は焦っていた。
かつてのトラウマから、少しでも否定されることに敏感になり、いくら考えても踏ん切りがつかない緑谷には一秒たりとも時間を無駄にしたくないからだ。そんな緑谷の心を踏みにじるかのように爆豪が叫ぶ。
「うるせぇデク!!大体───」
「弱い奴が夢を持つな!どうせ捨てるくせに!少し否定されそうになっただけで!落ち込むくらいならさっさと諦めてしまえ!時間の無駄だ!!」
爆豪が言い放った瞬間、爆豪の目の前に緑谷が迫っていた。殴ってくると分かっていたのか、爆豪は落ち着いて対処する。
爆豪の暴言、緑谷の"個性"の使用に生徒達はざわめく。
「爆豪!言い過ぎだぞ!」
「先生!二人を止めないんですが!?」
爆豪を非難したり、"個性の"無断使用や暴言を止める為に相澤に詰め寄っている最中、キキだけは冷静に爆豪の言葉を聞いてあることを思い出していた。
"夢を捨てる"、"弱い"。この単語はメアレス、ミリィが捨てた夢ドレスメアのカードが語っていた。
「あいつが弱かったから、あたしは捨てられた。それで終わりなんて我慢ならない。あいつが諦めたなら、あたしが叶える!」
ミリィのことを怨みながらも、己の夢を叶えると進むことを諦めなかったドレスメア。
爆豪からメアレス、ロストメアのことを語れ、と言われた時は仲間のことを語れるとキキは喜んでいたのだが、まさか悪用されるとは思っていなかったので少し悔やむ。キキが悔やんでいる間にも話は進む。
「元はと言えば、君が!かっちゃんが!否定したのがいけないじゃないか!!」
「ハッ、知らねぇよ!!やんのも、やんねぇのも!テメェの意思だ!一々他人のせいにするなよ!弱虫の木偶の坊が!!」
「弱虫の木偶の坊!?ぼ、僕が弱虫の木偶の坊!?...僕を弱虫の木偶の坊にしたのはお前だろ!!"無個性"と言うだけで僕を虐めた!!お前が言うな!!!」
緑谷のカミングアウトに、驚きすぎて感情が追い付かず、騒いでいた他の生徒達は呆然となり、何も言えなくなって二人の喧嘩を見詰めることしか出来なかった。
「弱虫に弱虫と言って何が悪ぃんだよ!!事実をさっさと認めろ!クソデク!!」
「僕が弱虫ならお前は人のカスだ!!自分が気に食わないだけで他人を虐める!人でなしの碌でなしだ!!!お前があの時言った!来世は"個性"が宿ると信じて、屋上からのワンチャンダイブ!!あれは僕が自殺する気がなかったから良いものも...あれで本当に屋上から飛び降りたら自殺教唆だからな!!!」
「ハッ!どうせお前は臆病もんだからしねぇだろ!」
「僕がするかしないかの問題ではないだろ!!」
言葉を交わす度に苛烈に、過激に、拳や蹴りや"個性"を使った喧嘩の勢いが増していく。
「いつも俺の近くでうろちょろしていてうぜぇし!キモいんだよ!!」
「絡んできたのはお前の方じゃないか!」
「デトロイト...スマッーーーシュ!!」
「榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!!」
感情が昂った二人は"個性"を使った大技を繰り出す。
一撃で天候を変える拳、火薬となる汗が溜まっている状態での爆破。流石にヤバイと感じた相澤は自身の"個性"を使って二人の"個性"を消し、キキは防御障壁を二人の間に展開して止めようとする。
"個性"もなくなり、二人は素の状態のまま防御障壁に衝突をする。
大型トラックどうしで事故を起こしたような衝突音が鳴り響き、耐え難い痛みに悶絶している間に相澤は捕縛布で二人を拘束をする。
「お前らやりすぎだ。緑谷、いくら挑発が酷いからとは言え、オールマイトから貰った"個性"で殺そうとするな。爆豪、お前は言い過ぎだ。元凶であるお前が言っていい言葉ではない。俺は殺し合いをさせる為にこの件を許した訳ではない」
「爆豪ちゃん...貴方言っていい言葉と言って悪い言葉も分からないの?ケロッ。それと...緑谷ちゃんや相澤先生が言っていたことは本当なの?」
蛙吹の言葉に呆然としていたクラスメイト達が我に変える。
「爆豪...それ本当最低なことだよ!やっちゃいけないことだよ!」
「爆豪...お前...普段から口が悪いと思ってはいたが、まさかここまで酷いとは思わなかったぜ...」
「爆豪さん!何か仰って下さい!」
「爆豪...お前...!そんな漢らしくないことはしていないよな!?嘘だよな!?嘘なら嘘と言ってくれよ!!」
普段の緑谷への対応からすぐに信じた人は侮蔑の視線を向けていた。全員がすぐに信じた訳でもなく、中には共に苦難を乗り越えた仲間が、虐めなどと言う最低な行為をしていたことを信じたくなかった人もいて、特に爆豪と仲良かった切島は否定して欲しくて必死になって詰め寄っていた。
みんなの視線を浴びながらも爆豪は応える。
「ああ...そうだよ......」
「デクの言う通り!俺はデクを虐めたんだよ!!"無個性"と発覚した時からな!"個性"がない奴はヒーローになれねぇから!ワンチャンダイブをしろ!!と言った!!ぶつぶつ呟きながら書くノートはうぜぇからノート爆発した!!俺の周りをうろちょろして鬱陶しいから!排除しようとしたんだよぉお!!!」
反論もせず、逃げもせず、言い訳もせず、はっきりと爆豪は肯定をする。
けれど、その姿は開き直っているようにしか見えなくて、彼の心の変化を知っている相澤以外の人達は、心底軽蔑をして物理的に爆豪から距離を取る。
「うわ...最低...。爆豪、今すぐヒーローを目指すのは止めな。あんたにはヒーローを目指す資格はないよ」
「雄英を首席で入学をした君が...まさか...本当に...こんなことをしていたとは...君には真底軽蔑をするよ!今すぐ雄英を出ていきたまえ!」
「爆豪君...どうして人を傷付けておいて!平然とヒーロー目指そうとしているの!?ヒーローは人を傷付ける人ではないんだよ!!人を守る人だよ!人に安心を与える人だよ!そんなことも分からないでなろうとしていたの!?」
「お前みたい奴がいるからこんなことが起きたんだ!!オイラらの平穏な生活を帰せ!!」
「...根津校長はこのことを知っているのだろうか?知っていたらどうのような反応をするんだ?」
「そんなの決まっている。直ちに...」
「呼ばれて飛び出て!校長が登場!猫なのか!熊なのか!犬なのか!何と...その正体は...!驚きの!"個性"を持った鼠なのさ!」
轟の疑問に答えに来たようなタイミングで、大きな音を立てながら扉を開け、いつも以上のテンションの高さで根津が登場をする。
空気を読まなすぎる発言、不適切な程元気で陽気に振る舞おうとする姿は、周りとの差がありすぎて場を凍らせる。激情に駆られていた二人でさえも唖然としていた。
「校長...。いくら防音で話が聞こえないと言えど、もっとましな掛け声を思い付かなかったのですか?校長の頭でしたら現状を察していられるでしょうに...」
「そうだね。このような結果になっていたことは想像していたよ。でも、こうして、奇を衒った行動をすればみんなを落ち着かせることが出来るよね」
「落ち着かせたと言うよりも、面を食らっただけにゃ」
相澤とウィズからの呆れた視線を物ともせずに、傷だらけで拘束されている二人に近付く。
「おやまあ...随分と怪我をしているね。...本当は介入しない方が良いだろけど...ここまで酷い有り様になってしまったら手を出すしかないね...。結果はどうなったのかい?上手く話は進められたのかな?」
見えている肌が全部傷だらけで痛々しい姿を見ても動じず、無遠慮に話を始めようとする根津。二人のことしか見ていない根津を見て、あの二人から直接聞きたいんだと、他の人達は察して応えなくなり成り行きを見守る。
予測が出来る根津がわざと己の口から言わせてくる態度に、爆豪は苛つきながらも説明を吐き捨てる。
「見ての通り!上手くいかなかったんだよ!」
「上手くいかなかった理由に心当たりは?」
爆豪が答える前に、怒りが頂点に達した緑谷が噛み付くように答える。
「かっちゃんが...!こいつが...!こいつが原因なのに!!お前が弱いから夢を捨てたんだ!!とか平気で抜かすからいけないんだ!!!」
「ハンッ...!!事実だろうが!テメェは弱いから言われただけで夢を諦める!!鍛えようともしねぇ!!鍛えていなねぇから!勝手に自滅して迷惑なんだよ!!!」
「僕の何が迷惑なんだ!!僕がいたお陰で救われたこもあったじゃないか!!」
「馬鹿か!!その後動けねぇのがお荷物だと言ってんだよ!!それすらも分からねぇならヒーローを辞めろ!!低能が!!」
「爆豪は言い過ぎだが...その後動けなくなって誰かの手を借りていることについては間違ってはないな」
緑谷と爆豪が口喧嘩を再開している最中、ボソッと相澤が爆豪の意見に同意していた。
誰もが彼らの喧嘩を見届けている中、切りがないと思った根津が本格的に介入することを決める。
「爆豪君...君は言い過ぎた。君が虐めて夢を潰してきた張本人なのに言って良い言葉ではない。緑谷君。君は彼をどうしたい?彼が謝ったとして、その謝罪を受け入れてこのまま学校生活をさせるのか。それとも...謝罪を拒否して退学にさせ、裁判にかけて法的に罪を償わさせるのか...。みんなの前で決めづらいと思うけど、周りの人達の目は気にしなくても良い。相手を許せば優しい人と思われ、許さなくてもやったことを考えれば当然だと思われる。周りの人達は、どんな判断をしても君を責めたりはしない。さあ...どうする?」
いきなり選択権を渡された緑谷は戸惑っていたが、すぐに怒りに支配されて即効答えを出す。
「そんなの決まっている!!かっちゃんを...!爆豪を...!こいつを...!絶対に許したりはしない!今すぐ退学にして......」
異世界での出来事を他人を罵倒する為に使われて、腹が立ったキキは話が終わる前に割り込む。
「ちょっと待って!」
予想外の人物が乱入したことにより、騒ぎは一時的に収まってキキは注目の的になる。
邪魔をされた緑谷は不機嫌を隠さずにキキを怒鳴り付ける。
「今は忙しいから後にしてくれないか!?話なら後でいくらでも出来るだろ!!」
「ボクも勝己に文句を言いたいんだ」
どんなに睨み付けても一歩も引かないキキに、同じ不満を持つ考えもあってか、キキが言い終わるまでは従順になって引き下がる。
「勝己。何でボクの話を悪用をしたの?リフィル達がいる世界の話したのも、出久を傷付ける為に言った訳ではない」
「悪用...?一体何の話をしてるんだい?リフィル達のいる世界って...メアレスがいる世界の話でしょ?彼らは如何なる時も、危険なロストメアが現れることになったとしても、夢を規制しようとする人達に怒ったのだから、夢を捨てろなんて言わない筈さ。言う人がいたとしても.........もしかしてロストメア?」
キキの言葉に疑問を抱いた根津が疑問を抱く。
考え込んでいる内に根津は答えに近付く。キキは返事の代わりに頷いた。
「話に付いていけないのだが...何で爆豪はメアレスの話を緑谷にしたんだ?そもそもロストメアは夢を捨てた張本人に怒る?好きで捨てた訳ではない、怒る相手を間違っているのだろう。夢を捨てるように圧力をかけた人達に怒るべきだ」
「大事に抱かれていた分、捨てられた時、憎悪を感じて人間を憎むらしいよ」
「大切にしてくれた人から、いきなり理由もなく捨てられたら、訳が分からなくなって今までの愛情が裏返り、その人のことを恨んでしまうみたいなものにゃ」
キキとウィズが常闇の疑問に答えても爆豪は無言を貫いていたが、みんなの視線が痛くなる程集まってからやっと爆豪は言い分を言い出す。
「俺が...普段通りに罵倒をしたところで......」
「いつものことだと思って相手にしないだろうが!!!」
「あー...確かに、そりゃそうだ」
瀬呂が呆れながらも爆豪の意見に同意する。
他の人達も納得しており、その様子にキキとウィズは普段、どれだけ口汚いんだ?と呆れていた。みんなが納得している間にも爆豪の感情は、滝のように激しく止めどなく叫ばれる。
「大体!!異世界なら出来る!異世界なら出来る!その言葉を聞く度に!腹が立って!周りを爆破したくなる程!苛立ちが抑えられねぇ程悔しいんだよ!!!俺はどんなことでも一番になる男だ!!!けどよ......」
「もう人間性では敵わねぇ...。俺はデクを...出久を虐めた...どんだけ馬鹿にしようが、どんだけぶん殴っても付いてくる、"無個性"で...弱い存在のくせに...ヒーローになろうとする...何も出来ねぇくせに俺が川に落ちた時に助けに来たデクが...理解出来なくて...気持ち悪くて...屈辱的に感じた俺は虐めて遠ざけようとした......」
「今までごめん」
「悪かった、出久」
あの口悪くて、プライドがエレベストのように高い爆豪がみんなの前で、格下だと思っていた元"無個性"の緑谷に頭を下げる。
あり得ない光景に学生達は大きく口を開き、怒り狂っていた緑谷でさえも今までの暴言を忘れて真顔になっていた。
「か、かっちゃん...」
「過去は変えられねぇ、今までやってきたことが最低なことだと自覚している。お前が許さねぇならそれでも構わない。ここを退学させられても自業自得だと思っている。でもな...俺は──」
ずっと頭を下げていたかと思いきや、今度は何故かキキの方を振り向いて指をし、キキの目から逃げずに面と向かって宣言をする。
「何があっても絶対に諦めねぇ!!!俺は何としてでもヒーローになる!!テメェの仲間、ミリィみたく!俺は諦めたりしない!!!あいつが出来なかったことで俺は上にに行く!!!」
「ミリィ!キキ!ウィズ!異世界の奴ら!今はテメェらの方が上だが!!俺はいつか!テメェらを越えてみせる!!首を洗って待っていろ!!!」
「そう。だとしたらボク、ボク達も、壁として全力で立ちはだかるよ」
「ハッ!!上等だ!壁は高ければ高い程!殺りがいがあるんだよ!!」
「...緑谷君を置いて君達だけで盛り上がらないでくれる」
根津の一言でキキと爆豪は互いに見つめ合うのをやめて、爆豪は緑谷の方を睨み付ける。
話が再開出来そうなところで根津が緑谷に話を振る。
「......で、もう一度問おう。緑谷君、君は、謝ってくれた爆豪君のことを許せるかい?」
「ぼ、僕は......」
爆豪の謝罪により、冷静になれた緑谷は自分が生半可な言葉では反応しないことを自覚した。
彼との思い出は圧倒的に辛い日々だったが楽しいこともあった。嫌な思い出と少ない楽しい思い出が緑谷の頭の中で駆け巡る。みんなの前で答えると言うプレッシャーと、駆け巡っていた思い出のせいで思考がぐちゃぐちゃとなり、答えを差し置いて思わず本音を溢してしまった。
「か...かっちゃんって格好いいなあ...」
「.........はい......?」
緑谷以外の全員が理解不能になって呆然となる。
あの根津でさえも、君は何を言っているんだい?と落ちいて切り返すことが出来なかった。一番先に我に返ったのは格好いいと言われた爆豪だった。
「き、気持ち悪りぃ!!!こっち来んな!!クソデク!!!」
相澤の"個性"の影響が解かれ、自由に"個性"が使えるようになった爆豪は、手を緑谷に向けることが出来なくても本能的に己を守る為に手で小規模の爆発を作っていた。
変な誤解をされた緑谷は大慌てで反論をする。
「ち、違うよ!かっちゃん!!ぼ、ぼ、僕は君のことをそんな目で見ていないよ!ただ!これから困難な目に遭うと分かっているのに!前を向いて挑むところとか!魔法使いさんから異世界の話を聞いて!実力差を感じているのに!正面切って勝負を挑むところとか!何時だって勝利を掴もうとする君の姿が!格好良くて!憧れるんだ!!」
「ああ...そう言うこと...」
キキが納得したことを切っ掛けに、クラスメイト達も正気に戻る。特に麗日は誰よりも安心していた。
「良かったあ...デク君が普通で...」
「てっきり緑谷が...あっちの趣味だと思った...」
話がまた変な方向に行く前に根津が話を戻す。
「結局どうするの?爆豪君を許すの?許さないの?」
「ゆ、許します!だから、もう、終わらせて下さい!」
嫌な奴だと思ってはいたが、そこまで怒りを感じていなかった。そして何よりも、恥ずかしくてこの場から今すぐにでも離れたかった。
話を終わらせたい気持ちからか、大声で早口ですんなりと爆豪の謝罪を受け入れる。
「そう...これにて爆豪君の罰は終わり。被害者が許したから退学の話もなし。...良いね?」
よく分かんない状態になってしまったが、緑谷が許した以上クラスメイト達も認めると言う選択肢しかなかった。爆豪のことが許せなくて渋々首を縦に振った人もいたけど、概ね問題なく解決をする。
クラスメイト達が認めたことを見届けると、恥ずかしくなった緑谷は全速力で自室へと逃げ帰る。
みんなを巻き込んだ大騒動は、いつの間にかみんなを置いてけぼりにして、あっさりと幕を閉じるのだった。
「一体何の為に、勝己は、出久を無理やり連れてきたのにゃ?勝己の始めの発言をどう聞いても...出久に謝る為に言ったものとは思えないにゃ」
ウィズの疑問は後日、"弱き者"達との共同生活の開始日にて、どうしてそのようなことになったのかを知ることになったのであった。
一方その頃......
オールマイトこと八木は英雄から離れたある場所にいた。そこは──
神野区事件の中心地にある慰霊碑の近くに立っていた。
あれから四日後、急ピッチで被害者の名前が掘られた慰霊碑が今も立てられ続け、遺族が絶え間なく花を持ってお参りに来ていた。
人々の泣く声に八木は胸が痛くなって、後悔のあまり自分で自分の頬を全力で殴る。どれだけ自分で痛みを与えても足りなくて、いっそのこと私を殴ってくれ!と遺族に言おうとしたが、見回りに来ていたヒーローに止められ、変なことをしないようにと、時おり他のヒーロー達が八木の様子を見に来るものだから、下手に遺族に関わらないようになっていた。
八木は後悔しながら思う、権威主義のこの世の中で、一般市民の信頼を勝ち取った自分が常に訴えていたら、こんな悲しい事件が大きくならなかったのだろうと。
後悔してももう遅い。人は生き返らないのだから。
八木が後悔しながら見ていると、喪服を着た一人の少年が八木に近付く。鮮血のように赤く染まった瞳が八木を必死に見ていた。
八木はどんな罵倒でも受け入れようとするが、八木の望みとは違い、口をもごもごさせながら何か頼み事をしようとしていた。
「あ、あの...」
「快平(かいへい)。人に話し掛ける時はきちんと挨拶しましょうね」
少年が八木に話し掛ける前に、母親らしき人物が少年の肩に手を置いて注意していた。
老婆のように白いが透き通っていて美しい髪、少年と同じ鮮血のように赤く染まった瞳。母親らしい柔和な笑みを浮かべると、八木ににっこりと笑いかける。罵倒でも暴力でもない対応が八木を苦しめる。
八木が自分の胸を押さえている間に、少年は具合が悪くなってしまい、その場に倒れそうになっていたが、八木が助けなくても母親は慣れた手付きで支えて抱っこをしていた。
「あの事件で夫を喪ってから...快平は...よく体調を崩してしまうのです。私達は夏休みの時期のお陰で海外に旅行に行っていたから助かりましたが...プロヒーローで仕事が忙しかった夫は...あの事件で殉職してしまいました...。父親を喪った悲しみ、自分達が遊んでいたことへの後悔によるストレスと...お医者様から言われ...」
「お、奥様!私への説明は要りません!それよりも息子さんを早く病院へ!他のヒーローを今すぐ呼んで...」
「大丈夫ですわ。ここら辺にはタクシーがいっぱいいますから...」
母親の言う通り、人が多い所には自然とタクシーも集まる。
すぐにでもタクシーが捕まえられるのは明白だ。
「...参拝出来ない私達の代わりに、花を置いてきて下さる?」
「ええ!それは勿論!」
「では、お願いしますね」
倒れそうな息子を支える為に放り投げられた花を八木が拾っている途中に、母親は急いでタクシーが集まっている所に向かう。八木は喪服には似合わない黒いバックを背負った後ろ姿を見ることしか出来なかった。
今日もまた、被害者が泣いて終わる世界が続く。
話の流れ的に有耶無耶になってしまい、答えを出せなくて申し訳ございません。次こそはちゃんと答えを出します。
そうそう...例えが不謹慎になるかも知れませんが、どうしてはじめから聞けなかった理由について改めて考えてみたところ、自分が作品を書く際に影響を受けた終末シリーズの考察動画で言っていた言葉が理由になりそうでした。その言葉を交えて説明させて頂きます。
「やっぱり、古い技術にこだわっていると、基本的にいいことないでしょ。非効率だし、競争には勝てないし、場合によっては危険だったり。それに、新しい技術で、多くの命が救えるかもしれないのに、それを拒んだら、頭おかしいくらいに思われるのでしょ?」
ヒーローは技術ではないし問題点も多い。でも、全うに職務を果たしていれば人を救える仕事。確実に多くの人々がヒーローのお陰で救われていたのでしょう。そんな人々の命と生活を守るヒーローを、真っ向から否定する魔法使いなんて頭おかしい人でしょ。それこそ現実で例えるのであれば、ありもしない陰謀論を信じ、コロナワクチンなどの医療を否定する愚か者くらいに。しかも、ヒロアカの世界は冷たいから、自分とその周りの人達が無事であれば問題が起きていてもないもの扱いされる。
とまあ...こんな感じです。コロナワクチンを否定したら話を聞かないのはデマじゃないから...消されないよね?
因みに...現実でも40年前にポル・ポトの件も被害者の話が聞けなくて事件が大きくなったことがあります。何が起きていたのかは...自分で調べてみて下さい。閲覧注意クラスほどでとても酷かったです。胸糞ものです。
こう言うことを知ると...現実でもどんな突拍子もない話でもきちんと聞いた方が良いですよ。