緑谷と爆豪の喧嘩が終わり、"弱き者"達が雄英にやって来る間の四日、爆豪への態度が大きく変わっていた。
女性陣と青山と峰田からはほぼ無視され、常闇、障子、口田、上鳴、尾白、瀬呂、砂藤からは腫れ物を扱うかのように余所余所しくなっていた。飯田と切島は色々と思うところがあってか、かなりぎこちなさを残しており、それでも何とか普通を目指して話しをしようとしていた。緑谷、轟、キキ、ウィズ、相澤や根津を含めた教職員は前と変わらずに通常通りに接していた。
あの後、爆豪が緑谷を呼び出した理由について気になっていたウィズが、爆豪に訊ねても理由は答えてもらえなかった。どうやらあの時の緑谷の格好いい発言が今でも引きずっているらしく、気持ち悪がって話をしてくれなかった。
一年A組の中で大きな変化が起こっている中、大幅に遅れていた始業式が始まろうとしていた。
「何平然とここにいるのよ!私達を見殺しにした黒猫の魔法使い!!」
「お前がもっと言っていれば!!こんなことにはならなかったんだよ!!責任を取ってよ!!!」
「責任は俺達だけではない!お前も同罪だ!!」
「雄英にお前のような屑がいるな!!ここはヒーロー!最高峰のヒーローを目指す場所に!テメェが気に食わないからって!他の世界は助けて!!この世界の住民は見殺しにした!!気分で助けなくなる屑がいていい場所ではない!!!」
体育館に向かっていたキキとウィズは学生達に捕まっていた。
面倒なことが起きると分かっていながらも、堂々と歩いていたのには理由がある。それは"弱き者"が雄英高校に生活するにあたって、絶対に問題を起こすことが目に見えていたからだ。問題を起こした際に雄英の教職員だけでは手が足りず、キキも手伝わないといけない程大きな問題が起きるのは明白で、どうせいつかバレると分かっているのならば、逃げも隠れもせずに真っ向から立ち向かうことにした。
思っていたよりも早く、生徒達に囲まれたキキは反論をしようと思ったが、何を言っても無駄だと思って反省を踏まえて過去を振り返る。
話を聞いてもらえないから、話すことを諦めて、オールマイトのようなヒーローになれば聞いてもらえると思い、一生懸命ヒーロー活動をして少しでも印象を良くしようとした。でもそれは無意味だった。児童養護施設オアシスの人達や、オールマイトにも手伝ってもらっても結果は変わりなかった。証拠もなく、ありもしないと思われている危険を訴えるキキの姿では、説得力が皆無なのも頷けるだろう。
だとしても──
証拠は出せなかったが確実に被害は出ていた。
この冷たい世界では、被害者が続出しても、原因を解明しようとしないで放置をし、自分とその周りに被害が出ていなければ他者の悲しみなんて関係ない。無関係だと思い込む。それどころか、自分の身には何も起きないと、よく分からない根拠のない自信を持っている。何なら自分が間違っていたことを認めたくないから、指摘してきた相手を罵倒して違うものを原因として決め付ける。そんな冷たくて、愚かな人達が多い世界。
キキとウィズに責任を擦り付けてくる学生達に、キキの怒りが頂点に達しよう時、ある世界での会話をふと思い出す。
「言っておくけど、人間のためじゃないわよ。あたしたち妖精は、自分たちが生まれた世界を守りたいだけなんだから。妖精は、世界に流れる音から生まれる。だから、世界は自分の一部みたいなものだし、自分は世界の一部でもあるの」
「あたしたちにとって世界を守るのは、自分を守るのと同じくらい当たり前のことなのよ」
「彼らも、そう言っていたわ」
「あたしたち人間は違う。自分は自分、世界は世界。だから、大事なのは自分と、その周囲のものだけ。そこが人と妖精の違いかもしれないわ」
「確かに......世界って、なんかフワッとしてて、大きすぎて遠いっていうか。世界を守るなんて、考えもしなかったなぁ」
「あたしからしたら、その感覚が不思議ね。自分の手にケガをしたら包帯を巻くでしょ?世界を守るって、そのくらい当然のことよ」
フェアリーコードがある世界での話。
フェアリーコードの乱れを止める為、乱れの中心である東京タワーへ向かう途中でバスに乗っていた時ルミス、ギン、リレイがしていた会話。
町中で大騒ぎになった時、助け合った人達でさえも冷たい人達と評価されていたこともあった。
住んでいる世界や価値観は違うが、同じ一般市民なのに、どうしてこんなにも差があるのだろう?と民苛立ちで回らなくなった頭を必死に動かそうとするキキ。
考えれば考える程疑問は膨れ上がり、その疑問は怒りを越えて、自然と平静に溢れ出ていた。
「何て言ったら、話を聞いてくれたの?」
キキの疑問に罵倒を投げ掛けていた学生達が何も言えなくなる。
沈黙は少しの間しか保たず、また怒りに支配された学生達はキキに八つ当たりしようとした時、教師の一人である、長い黒髪のグラマラスな体型をした若い女性、香山 睡(かやま ねむり)が間に入って止める。
「貴方達!いい加減にしなさい!これ以上魔法使いさん達に迷惑を掛けるのなら...痛い目見るわよ」
仕事道具の鞭を振りかざして黙らせる。
怒りで狂っていると言えども、流石に教師に歯向かう訳にはいかず、蜘蛛の子を散らすように慌ててキキから離れていく。生徒達が離れるのを見届けると香山はキキとウィズに対して頭を下げる。
「本当にごめんなさい。貴女達は何も悪くないのに...代表をして謝るわ。でも......」
「本当に、どうしたら話を聞いてくれるのかしらね?」
香山の誰も答えられない疑問は、生徒達から発せられる喧騒で掻き消されていった。
教師と一緒にキキとウィズはステージに立つ。
他の生徒達は視線だけで殺すような目付きで睨んでおり、爆豪、轟以外の一年A組のクラスメイト達はハラハラした様子で見守っていた。教師が見張っているので暴動は起きなかったが、切っ掛けがあればすぐにでも暴動が起きるのは一目瞭然だ。誰かが不満を言い出して雰囲気を悪くする前に、根津がマイクを持って中央に立つ。
「みんな!今日は大事な話があるよ!」
おはようとか、夏休みはどうでした?とか、神野区事件のことではなく、何事もなかったかのように本題に入る根津に生徒達は驚いて怒りを忘れる。大人しくなっている隙に根津は一気に畳み掛ける。
「互いを理解し合う為にも!何とここで!二人の"弱き者"が生活することになったよ!仲良くしてね!」
落ち着いていたのは束の間だけだった。
キキとウィズよりも大嫌いな、事件を起こした張本人達と生活をするのは何よりも我慢らなくて、理性がなくなって感情のままにひたすらと文句を叫ぶ。
「ふざけんじゃねぇよ!!人殺しと生活出来るか!!!」
「何で牢屋じゃなくて!ここに来るんだよ!雄英が穢れるだろ!!!あいつら牢屋...いいや!タルタロス行きだ!!!」
「私達は人殺しとの生活は出来ません!!」
「何で刑務所に行かないの!!?人を殺した...人達が...平然と歩けるなんて可笑しいよ!!」
「その通りだ!!悪いことをした人間は裁きを受ける!!!この国で一番、ヒーローを目指すのを適した学校で!悪事をした人を放っておくとか!いかがなものです!!!」
わざと明るく振る舞っていたのも、生徒達に意表をつく為ではなく、こうなることが分かっていたから根津は自棄糞になっていた。
言われたい放題の根津。互いへの理解が必要だと結論に至った根津の考えであり、国からの要望でもある。国からの命令であると言っても納得しないのは分かりきっていたことで、香山の"個性"を借りて力ずくでその場を収めても、目覚めた後に暴れるのも明りょう。どうしてもこの場で納得させないと言う、無理難題に頭を抱えていた時だった──
「さっきから、ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせぇなあ!」
"弱き者"の一人であった赤毛の女性が、勝手に拝借したマイクを持って反論をしながらステージに上がって来ていた。
ヒーローではない職員の人が止めようとしていたが、それなり戦える彼女を止めることは出来ず、ステージの中央まで行かせることになってしまった。
「おい!待て!まだお前の話の番では...」
「どうせ話になっていないのだから、割り込んだって良いんでしょ。それとも何か、自分達が気に入らない存在はいくらでも罵倒されてもいいって訳?流石!暴力で解決することしか出来ないヒーローですね!」
「管君...もういいよ。何やっても喧嘩になるだけだから、好きなだけ言わせよう。これだけの教師がいれば止められると思うからね...」
イラっとした管が赤毛の女性を止めようとしたが、"個性"ハイスペックを持ってしても返られない結末に、疲れきった根津はもうどうにでもなれと、思考停止状態になっていた。
ずかずかと我が物顔で上がり込んで来た赤毛の女性を、解決策が思い付かない教師達はストレスで痛くなる胃や頭を手で押さえ、体調不良に苛まれながらも様子を見ることしか出来なかった。
視点は緑谷達へと変わる。
時は巻き戻り、朝、ろくに説明をされないまま体育館に行くように言われ、体育館に着いた時には一年A組の生徒以外ほぼ集まっていた。
「あ!見てみて!ステージの上に魔法使いさんがいる!」
「えっ!?嘘!?あ...本当じゃん!酷いこと言われるのに何で立っているの?私達の前だけ出ていれば良いのにね」
「マジで立っているなぁ。俺だったらこんな状態で前に立ちたくねぇわ...」
「オイラも...。離れているのによぉ...他のクラスから出る殺気がびんびんにこっちまで伝わってくるぜ...」
「何で集まることになったんやろ?」
「まあ、普通に考えれば...始業式を始める為の集会だろう」
「だったら普通に始業式を始まるから集まれと言えばいいじゃねぇか。ただ集まれとしか言わねぇのは何でだよ?」
「それは俺に聞かれても...」
「まあまあ、待っていれば次第に分かりますので、ここは大人しく待っていませんか?」
八百万が宥めていると、根津がステージの中央に立って話し始める。
「みんな!今日は大事な話があるよ!」
呼び出された理由を知りたい生徒達は静になり、一斉にステージの中央に立っている根津に目を向ける。
訳を知りたい生徒達は今か今かと待ち構え、根津も生徒達の気持ちを読んでいたかのようにいきなり本題に入る。
「互いを理解し合う為にも!何とここで!二人の"弱き者"が生活することになったよ!仲良くしてね!」
最初は理解出来なくて黙っていた生徒達。
根津の言葉が生徒達の頭が追い付いた途端、相手が教師だとか、この学園で一番偉い人に逆らってはいけないとか、理性が一瞬で消え去り、キキとウィズが現れた時以上の怒りに支配されて後先考えずに、まるで知性のない獣のように怒鳴り散らす。一年A組の生徒達の中からは罵倒は出ていなかったが、"弱き者"と共同生活をすることに疑問の声を上げていた。
「マジで..."弱き者"達がここに来るのか...。流石にタルタロスに行けとは言わないが、まだ刑期は終わっていないだろ。何で雄英にいるんだ?こう言うのは刑期を終えてから来るもんだろ」
「切島の言う通り、まだ来るのは早いと思うぜ。だって...あいつらは...湖井さんの話によると...敵(ヴィラン)連合に入る時に憎き相手を殺したんだろ?いくら事情があったとしても、刑期を終えずにここに来るのは違うぜ」
「そうだな。それに...こんな状態では話にならないだろう。ところで...緑谷、爆豪。お前達は驚いていないようだが、ここに"弱き者"達が来ることを知っていたのか?」
会話をしていた轟が緑谷と爆豪が驚いていないことに気が付く。
轟の言葉に気になったクラスメイト達は、他のクラスに邪魔にならない程度に緑谷と爆豪を取り囲む。
「お前ら...轟が言ったことは当たっているのか?」
「うん...当たっているよ...。ほら...僕の...」
「その先は言わなくていい。大体分かった。だが...あいつらは緑谷の...秘密を知っているのか?」
「上が知っているから、"弱き者"と呼ばれている人達も知っていると思うよ...。何時どこかで暴露されるのかは分からないから用心しておくってね...」
「それでか。で...緑谷はともかく、爆豪は何で知っている...あっ!もしかして!あの時誘拐されたから気を付けろ!ってことか!?」
「違ぇわ!俺の過去が必ずばらされるから覚悟しとけって言われたんだよ!」
「お前の過去、ヒーロー側の汚点になるもんな」
緑谷と爆豪が説明している間に、元"弱き者"である赤毛の女性が現れて一年A組の生徒達はざわつく。
クラスメイト達が話し合っている間にも罵倒が続き、あまりの罵倒に関係のない青山がストレスで腹痛を感じていた。
「ううぅ......ちょっとお腹が痛くなってきた...」
「大丈夫か?青山」
「全然平気...あぅ☆」
「こんな状態じゃ、先生の許可取れないだろうし、集会もろくに進まないから行ってこいよ。もしサボり扱いをされたら俺から相澤先生に説明しておくからさ」
「そうさせてもらうよ...」
切島が説明してくれると聞いて青山は、ぎこちない動きをしながらも急いでトイレに向かう。
そのタイミングを待っていたかのように、元"弱き者"の女性が報復と口撃を兼ねた言い返しが始まる。今まで募らせてきた憎しみ、痛み、苦しみは饒舌に語らせる。
「何被害者ぶっているのよ!先に手を出したのはお前達の方でしょうが!!!」
「何が私が殺人者よ!!そもそもお前達のような屑が!!"無個性"だからと虐めたから!"個性"が敵(ヴィラン)向けだから!親が敵(ヴィラン)だったから!そんな感じでお前達が決め付けて!我々を傷付けたことが悪いんだよ!!!」
「せっかく、黒猫の魔法使いが忠告してくれたのに、馬鹿で、プライドが高過ぎて自分が犯した間違いを認められない、先入観でしか物事を見ることが出来ない、考える為の脳みそがないお前達には理解なんて愚か、いつも見下す私達の声もテレビ越しなら聞いてくれて、私達敵(ヴィラン)連合と一緒になって問題を大きくする。本当にありがとう!私達の手駒になってくれて!愚かなお前達のお陰で憎き!黒猫の魔法使いの心を痛め付けることが出来たわ!それだけ感謝してあげる!お礼の意味を込めて、真実を語ってあげる。その汚い耳をかっぽじってよく聞きなさい...」
「お前達はな!淘汰されるべき羊なんだよ!!!」
全身で出す声は体育館を響かせ、彼女から発せられる苦しみは幸か不幸か、怒りで支配されていたと言えど、無意識の内に、ヒーローを目指している生徒達は苦しんでいた人の声を無視することが出来なくて最後まで話を聞くことになった。
けれども、最後まで話を聞いたせいで堪忍袋の緒が切れ、彼女に直接手を出そうとする人が多くなってステージに上がろうとしたり、"個性"を使ったりして彼女を殺そうとするが、キキと教師達が魔法や"個性"を使って暴動をする生徒達を止めていた。
「あーあ...こりゃ駄目だな。思っていたよりも酷ぇことになった...あ、今、電撃で動き止められているわ。...こういうの見ると羨ましいなあ。俺の"個性"による電撃は、敵味方関係なく周りに無差別に攻撃してしちまう...どうしたんだ?轟」
上鳴が暴動していた生徒達をのんびりと見詰めていたのだが、轟が近くにいた一年B組の生徒達の方をじっと見ていたことに気が付き轟に声をかける。
「あ、いや...あいつの角...羊じゃないだろ」
「何故俺達を羊に例えたのかは分からないが...頭に角が生えているとか、絶対そういった意味で言ってはいないぞ」
轟の天然気味のボケに暴動に怯えていたクラスメイト達でさえも思わず笑ってしまう。
轟の発言と一年A組の生徒達の笑い声が聞こえたのか、自覚のある女子生徒がA組に近付く。その女子生徒の名は角取(つのとり)ポニー。角取の頭には牛のような立派な角を生やしていた。誰よりも大きくて円らな瞳で見据えながら文句を言う。
「違いマース!私の角は羊ではありません!」
側で話を聞いていた、角取と同じクラスメイトである茨のようなツルが髪の毛になっている女子生徒塩崎 茨(しおさき いばら)が説明に入る。
「羊...人で例えるとしたら、キリスト教の用語で、キリスト教を信じてくれる、言わば信者のことですわ。敬遠なるキリスト教徒のことを馬鹿にするなんて...なんて罰当たりなんでしょうか!人は誰しも間違えることは当たり前です!いくら辛い過去があったとしても、あの人も敵(ヴィラン)になったと言う過去があります!他者を否定する資格なんてありません!そもそも宗教とは、私達やあの人のように、道を踏み外さないように導いて下さる、大切な存在ですわ!」
塩崎が嘆いていると、キキや教師達には敵わないと悟った生徒達が攻撃を止めて言葉で相手を精神的に痛め付けようとする。
「俺達がお前以下だと!?はぁ!!ふざけるなあ!!!お前が人殺しで!俺達は被害者だ!!直接手を出したお前が一番悪い!!!」
「そうよ!!私達が原因ではない!!!悪いのはあんた達だけよ!!!」
「"無個性"だからでは!!悪いことは全て他人のせいにし!何も反省をしない!他人を傷付ける!お前がそんなんだから虐められたんだよ!!!あの時本当に死んでいれば良かったんだ!!!」
あの時本当に死んでいれば良かった、その言葉にかちんと来た赤毛の女性は有らん限りの声量である人の過去で指摘をする。
「ヒーローが"無個性"だからって虐めない!?そんなの嘘よ!!!都合の悪いことは信じられないあんた達でも!分かりやすく教えてあげる!!でも、私の言葉は聞いてくれないから、そうねえ......」
「一年A組、出席番号十七番、爆豪勝己。"無個性"に対してワンチャンダイブなどと、相手を自殺するように促した彼にでも話を聞いてみたらどう!!」
完全にとばっちりで流れ弾を食らう爆豪。
疑問と殺意が混じった視線が爆豪の方に集まる。本当のことを言えば酷い目に遭うのは確実で、下手に黙ってしまうと無言の肯定とみなされて同様に酷い目に遭う。キキや教師達は距離や赤毛の女性を護衛もあって助けられないだけではなく、助けようと動けばまた肯定とみなされる。爆豪が対応に悩んでいる間にも変化は起きていた。
「爆豪...お前...。何でお前の周りから人が離れているんだ?」
自業自得、怖くて巻き込まれたくないと感じた一部のクラスメイトが爆豪から離れる。
口で言わなくても、他の人達の態度でバレてしまい、怒りの矛先が一気に爆豪に変わる。
「ああ...そうだよなあ!!お前はその派手でヒーロー向きな"個性"だから!他人のことをモブ扱いをしていたよな!!!」
「そうそう!体育祭の時には踏み台になれ!と言っていた!あんたみたいな屑がいるから!ヒーロー全部悪者に見えるのよ!!今すぐ消えて!!この人間の屑が!!!」
「体育祭の選手宣誓の時だけではなかったよこいつ!A組に視察に行った時も!モブは退いてろ!と言っていたし!」
「この件も全部...お前のせいだ!!お前みたい奴が生きているからこんなことになるんだよ!!!」
言葉だけでは収まらず、終には"個性"を使って爆豪を危害を加える人が現れる。
キキや教師達が助けに行けない中、ある人一人の少年が暴走する生徒と爆豪の間に割り込んで止めに入る。
「こ...!これ以上!止めないか!!!」
止めに入ったのは緑谷だった。
事件の元凶を生み出した人物を庇う人が現れると思ってもいなかった生徒達はたじろぐが、それでも少しだけですぐに怒りが戻って理性がなくなる。
「そいつの味方をするとか...お前も!そいつと一緒になって!"無個性"を虐めていた屑なんだな!!!」
「ち、違う!!虐められていたのは僕なんだ!」
「は......はぁあああ!!?性格も終わっているかと思いきや!頭も終わっているのかよ!!頭も悪いのだからお前も雄英を辞めてしまえ!!」
「嘘じゃない!僕の"個性"は普通の人よりも遥かに遅咲きで!中学三年の時に目覚めたんだ!それでずっと僕は!"無個性"と勘違いされて虐められたきたんだ!ねえ!そうだよね!かっちゃん!!」
「...あ、おう...そうだが......」
庇ったかと思えば、全くもってフォローになっていない緑谷の問に驚いた爆豪はあの時の嫌悪感を忘れて素で同意した。
みんなの前で自白させて追い詰めるような行動をしたかと思っていきや、いつ襲われても可笑しくない状況でも逃げないで立ち続ける緑谷の姿は、怒り狂った生徒達でさえも困惑をさせて騒ぎを沈静化させる。
全員の動きが止まっている姿を確認すると、緑谷はステージの上に立っている赤毛の女性に聞こえるように腹の底から大声を出して反論をする。
「確かに...かっちゃんは...僕を"無個性"だからと言って虐めた、世間一般的に酷い人だと思う。それでも僕は──」
「かっちゃんのような、過去の行いを素直に反省出来るヒーローに成りたい!君は人は、"プライドが高過ぎて自分が犯した間違いを認められない"と言っていたけど!かっちゃんは違う!!かっちゃんは自分の罪を認め!みんなの前で謝ってくれた!君が言う、愚かな人間ならそんなことは出来ない筈だ!!」
緑谷の叫びを聞いても赤毛の女性は詰まらなそうにしていた。
「ふーん......それで?謝ったから何?お前は自殺をしろと言われた過去は変わらないけど」
「確かに過去は変わらないけど!謝ってくれたから僕はそれで良い!!それに...かっちゃんはお前を虐めた訳ではない!部外者は口出しをするな!!僕はお前のように過去に囚われて!前に進もうとする人の足を引っ張らないぞ!!!」
「......過去に囚われない......ふざけるなあ!!!糞野郎が!!!!」
表情一つ変えなかった赤毛の女性が激情に駆られて吠える。
間近で見ていたキキや教師が一歩下がりそうになる程恐ろしい形相をしていた。
「過去に囚われるなあ!?ふざけるなあ!!!私はお前と違って繊細だから!傷みに耐えられなくて死のうとしたんだよ!!元"無個性"のくせに!あたしと同じ昔虐められていたくせに!これだから...!これだから...!ヒーローを目指す屑は嫌い!!!大体......」
「少し否定されただけで、夢を諦めるような弱虫が!ヒーローに成れる訳がないんだよ!!!お前のような人の痛みが分からない!屑の弱虫が!ヒーローに...いや!屑の弱虫だからヒーローにお似合いなんだろうね!!!」
痛いところを突かれて黙ることしか出来なくなる緑谷。
俯いてしまえば、相手に隙を作り、最悪の場合暴動がまた起きて幼馴染が酷い目に遭うと思い至った緑谷は顔を上げて宣言をする。
「そうだね...僕は...君の言う通り...人から否定されて夢を諦めるような弱い人物だ...それでも──」
「僕のことを誰よりもヒーローだった!と認めてくれた人がいたから!今度こそ諦めない!!」
幼馴染を助けたいと言う想いから生まれた宣言。
緑谷の宣言と共に、誰がどう見ても上手くいかない、不穏だらけの共同生活が始まった。
ここまで読んでくれた方に何でこの場で言うの?荒れるのに、と思った方も多いと思いますが、落ち着いて事件のこととか話せるようになったとしても反対が出て荒れるの明白だから、もういっそのこと、どのタイミングでも良いやと自棄糞になったからです。後、隠れて連れてきても、弱き者を嫌っている生徒がどこかで弱き者を見かけたら危害を加える可能性が高い。だったら目の前で暴れさせた方がブラックリストとして把握出来るかなと思って。
羊はキリスト教徒の用語ですが、意味合い的にはこの二つの動画"ヒトとキジンシリーズ考察 第05週の2【ウソの中の真実】"、"ヒトとキジンシリーズ考察 第05週の3【幻想の虎】"で言われた意味合いの方が強いです。因みに...その動画の中でオリ主や忠告者であるオリキャラ達の気持ちを書いてある歌詞がある。