結局のところ、武力で解決することとなり、相澤の"個性"で暴走していた生徒達の"個性"を封じ、キキの電撃や香山の"個性"で無力化して何とか事を収める。
事件の後片付けをしなければいけなくなり、始業式はお開きとなった。
午前中いっぱい自習となり、各々と勉強や訓練室を借りて取り組まないといけないのだが...生徒達にはそのような気持ちはなく、"弱き者"の話で持ち切りになっていた。
「話があると言われて来たが...まさか、"弱き者"はここに来るとは思いもしなかったな」
「連れてきても上手くいかへんなのは目に見えておるのに...本当に何で連れて来たのだろう?」
「そうそう!あの赤毛の女性滅茶敵意あったよね!」
「あんなにも敵意丸出しなのに...どのようにして話し合いをすればよろしいのでしょうか...」
「それだよ。しかも、刑務所に入る前に雄英に来るなんて凄く可笑しいし」
「そうだな。来るとしても刑期を終えてからだよなあ...。何でいきなり、刑務所をすっ飛ばして、雄英に来るんだ?いくら訳ありでも刑期を終えてから...」
先に根津の説明を聞いて訳を知っている爆豪は、説明なんか知るか!と言わんばかりに、早々と訓練室に行って籠っていた。
根津達が来るまでの間、爆豪以外の全生徒達は勉強や訓練をせずに"弱き者"達の話に夢中になっていた。
根津や教師達の話し合いは昼まで続き、お昼休みが終わってから根津達は一年A組の生徒達の前に現れる。
自習をせずにお喋りに夢中になっていた生徒達は叱られ、訓練室に籠っていた爆豪は褒められながら教室に呼び出される。飯田を中心とした謝罪が終わるとすぐに説明が始まった。
「納得していないと思うが...これから国の意向により、"弱き者"と共同生活することになった。予め話だけは聞いておこう...何か質問がある人はいるか?中止にはしないが、答えられる質問には全て答える。質問がある人はいるか?」
窓側にキキが少し離れた位置で様子を見ており、そのキキの肩にウィズが乗っていた。教卓の上に根津が立ち、気だるそうな相澤は壁に寄り掛かる。黒板の前にそれぞれ並ぶ。
教師達が前に並ぶと騒いでいた生徒達が静かになる。相澤の話を聞いて飯田が天高く腕を上げて訊ねる。
「はい!」
相澤や根津は声には出さなかったが、頷いて飯田の発言を許可する。
「彼ら、"弱き者"との交流が必要だとしても!先ずは罰して反省してからだと思います!いくら過去や、我々の行動に責任があったとしても!自分の行いには、自分で責任を取る必要があります!どのような理由があろうとも!無罪釈放は可笑しいと思います!」
飯田は力強くハキハキと反対意見を述べる。
飯田の質問の返答に待ちきれない生徒達はそわそわし、根津は彼らを焦らすかのようにゆったりと口を開き、爆豪の時と同じように自信満々に答える。
「うん、飯田君の言い分は正しいよ。でもね...このやり方は間違ってはいないんだ。飯田君。そもそも刑務所はどのような場所であり、また、どのようにして反省を促すかと答えてくれないかい?」
「はい!刑務所とは法令に違反し、裁判の結果、刑罰に服することとなった受刑者を収監し、就職訓練などの処遇を行う刑事施設であります!規則正しい生活や職業訓練をさせたり、罪と向き合うことで反省を促させる場所であります!」
「飯田君。見事な解答だね。素晴らしいよ。でもね...多少僕の意見も付け加えさせてもらうね。刑務所で罪を向き合ったり、規則正しい生活や職業訓練は大事だよ。他にも精神的な苦痛を与えて罰し、あの罰が嫌だから、もう二度と罪を起こさないと決めさせる。そのような役割もあるのさ。ヒーローと、ヒーローの卵が集まるこの場所に"弱き者"を招き入れたら...刑務所以上の苦痛を与えて反省を促せるよね?要は──」
「ここ、雄英を、一時的に、刑務所の役割を担うことになったのさ」
「えーー!!雄英が刑務所になる!!?」
一時的とは言え、まさか雄英が刑務所になると思わなかった爆豪以外の生徒達は叫んだ後、口を大きく開けたまま唖然としていたり、信じられないやマジか...と呟いていた。
唖然としている生徒達を放置して根津は話を進める。
「この話は君達にも悪くない話さ。将来、ヒーローになった時、敵(ヴィラン)を搬送したり、逃げ出さないように監視することになる。君達はその将来の勉強が出来ると言う訳なのさ!」
決めポーズの状態で動かなくなった根津を余所に、相澤が話を纏めて締めようとする。
「まあ...要するに...ここに"弱き者"達を招き入れれば、お前達が望む刑務所以上の罰になり、将来への勉強にもなる。...理解出来たか?」
「そこは分かりました。彼らにとって罰になるのでしたら文句はありません。ですが...ここでは社会奉仕は出来ません!その点はどのようにして解決するのでしょうか!」
真面目な故に融通が利かない面もある飯田が質問を続ける。
その点も事前に考えてあったのか、根津が先程と変わらない様子で答える。
「飯田君が考えているような、清掃活動や職業訓練などはここでは行えない。代わりとして、僕達と交流をすることによって、より良い社会作りの道標として貢献出来るから、それが社会奉仕になるんだよ。...と言うことで納得してくれるかい?」
「分かりました!ご説明ありがとうございます!」
根津の説明により納得をした飯田は、行儀よくお辞儀をすると勢いよく着席をする。
他の生徒達は特に言いたいことはないようで、手を上げたりせずに静かに待っていた。
「納得してくれたようでなりよりだ。早速交流を始めると言いたいところだが...お前達が見ての通り、あの状態では交流は不可能だから明日からにする。で、今日は、明日の交流会に備えて準備をする。お前達入ってこい」
お前達?と言う言葉に疑問を感じた生徒達は質問をしようと口を開くが、言葉が出る前に扉が開いて、他のクラスの生徒達が入ってくる。
金髪で目が特徴的な体格が良い男子生徒、目を輝かせながら辺りを見渡す水色のロングヘアーの女子生徒、目付きが鋭く少し耳が尖っている黒髪の男子生徒、黒髪で目を隠している男子生徒、金髪を縦巻きロールにし異様に睫毛が長い女子生徒、秘色の髪をボブカットにして右目の下に涙ほくろがある女子生徒、体育祭で成績を残した心操と発目が入ってくる。堂々と入ってきたり、逆におどおどしながら入ってきたりと生徒によって態度が違っていた。
「こいつらが、明日からお前達と一緒に"弱き者"と交流をするメンバーだ」
「明日から俺らと一緒に交流をするメンバーって...あの人達は自分のクラスでやらなくて良いんですか?他にもいないんですか?」
切島がみんなの意見を代弁する。
一年A組の生徒達は不思議そうに入ってきた生徒達と相澤の顔を交互に見る。相澤はそんな一年A組の生徒達を見て誇らしく感じる共に、出来ない他の生徒達を思い出して溜め息をつく。反省をしようとせずに、不満だけを喚き散らす生徒達の姿を脳裏に浮かばせてしまった相澤は、疲れはててしまい倒れたくなったが、何とか気を取り直して話を戻す。
「ああ、いない。まともに話せるのは...お前達、一年B組、こいつらと条件付きでなら他にもいる。それでも一部だけだが...。話せない人達と混ざったところで碌に話は出来ないことは分かりきっていて、混ぜたら効率が悪いどころではない。話せる人達だけで集まる方が合理的だ。待たせている一部を入れる前に、お前達の状態を見て三つの分類に分けた。先にその三つの分類を説明をしておく」
「"弱き者"達に暴言を吐くこともなく、危害を加えなかった者。そして冷静に現状を語れる人達をホワイトリスト」
「"弱き者"達に暴言を吐かなかったり、危害を加えなかったが、現状を語りたくない、見たくない、考えたくない者をグレーリスト」
「"弱き者"達に暴言を吐いた、危害を加えようとし、自分達は何も悪くないと反省をしない者をブラックリスト」
「この三つに分けたのだが...もう一つ特殊なリストとして、ホワイト寄りのグレーリストがある。そいつらは"弱き者"達に危害を加えたりはしなかったが、憎悪を抱いている。"弱き者"達との行動は出来ないが、現状が悪い状態であることを理解し、お前達だけとなら話し合いをしたいと思っている人達をホワイト寄りのグレーリスト。今からそいつらを入れる。入ってこい」
再び扉が開いて廊下で待っていた生徒達が入る。ホワイト寄りのグレーリストに判定されたのは僅か五人だけだった。
一人目は長い金髪をツインテールにしたつり目の女子生徒。二人目は頭に触角、背中には紫色の蝶の羽を生やしており、ウェーブロングヘアーの黒髪は腰にまでの届く程長く毛先が薄紫色になっている女子生徒。三人目はヒーロー顔負けの鍛えられた筋肉を持つ、緋色の髪をスポーツ刈りをした男子生徒。四人目は中学生と勘違いされる程背が低く、黄緑色の髪をマッシュヘアにした男子生徒。五人目はアホ毛と八重歯が特徴的なオレンジ色の髪をショートカットにした小柄な女子生徒。それぞれ毅然とした態度で前に立っていた。
「この五人がホワイト寄りのグレーリストと判定された者だ。この中で名前を知っている人もいるだろうが、改めて名乗らせて貰う。先ずは通形からだ」
「俺は三年B組ヒーロー科の通形(とおがた) ミリオ。これから共に、色々なことを話すことになるけれど、笑いとユーモアが溢れる世界を作っていきたいと思っているんだよね!よろしくだよね!」
「初めまして、私は三年A組ヒーロー科の波動(はどう) ねじれ。今日は今後の為の話し合いをみんなと参加して欲しいと頼まれました。けど、しかし─」
「ねぇねぇ、ところで君はマスクを?風邪?おしゃれ?」
「!こ、これは、昔...」
「後、貴方轟君だよね?ね!何でそんなところを大怪我したの!?」
「.........!?それは......」
「あ!貴方は!あの悪名高い爆豪君だよね!?何で爆豪君は人を虐めたの?ヒーローを目指していたのに。人を虐めることは良くないことなんだよ。そんな簡単なことさえも分からなかったの?」
「貴女が噂の黒猫の魔法使い何だよね!?異世界から来たのって本当!?不思議~!こんな不思議なこと初めて~!ねぇねぇ、どんな異世界から来たの?どんな方法でこの世界に来たの?狙って来たの?魔法ってどんなもの?何が出来るの?どうやってそのカードを手に入れたの?何枚あるの?後々、異世界を渡って世界を救ってきたのに、天喰君みたいに弱気なのは何で?」
「一気に質問をされても...」
「異世界って猫さえも話せるの!?異世界って本当に不思議で面白いね!どうして猫なのに人間の言葉が話せるの?どうやって人間の言葉を覚えたの?」
「私は元々人間にゃ!」
「ねぇねぇ、尾白君は尻尾で支えられる?」
「波動さん、質問は他所でやって貰える?後が詰まっているのだけど。後、相手が困るような質問をしかも、聞く気がないような態度を取るのは大分失礼ですよ」
落ち着きもなく、好奇心のままに、あちらこちらに動いて手当たり次第色んな人に質問をしまくる波動。
良く言えば無邪気、悪く言えば無礼気な態度を取り続ける波動に、金髪ツインテールの女子生徒がぴしゃりと注意をして止める。
波動の暴走を止められたものも、場がかなり静かになり、注目の的になった次の人が話しづらくなる。
静かになりすぎて何も言えなくなったのか、黒髪の少し耳が尖った男子生徒は執拗に一年A組の生徒達を睨む。
「ヒッ...」
「何て目付きだ...!」
鋭い目付きに一年A組の生徒達はたぢろがす。
唸り声を上げたかと思いきや、自己紹介はせずに仲が良い人達と会話をし出す。彼の姿を良く見ると震えていた。
「ミリオ、波動さん、因氣...。じゃがいもだと思って挑んでも、頭部以外は人間のまま。依然人間にしか見えない。頭が...真っ白だ...辛い...帰りたい...!」
「俺もだ...」
今度は何故か急に生徒達に背を向けて壁に塞ぎ込む。しかも、隣にいた目元を黒髪で隠した男子生徒も同じ行動をする。
他の生徒達が動揺している最中、波動がまた話し出して彼らの変わりに自己紹介をする。
「あー!聞いて天喰君!根本君!そういうのノミの心臓って言うんだって!人間なのにねぇ、不思議!彼はノミの天喰 環(あまじき たまき)。もう一人のノミの彼は根本 因氣(ねもと いんき)。天喰君は私と同じクラスで一緒にヒーローを目指しているんだよね。で、根本君は私達と同じ三年生だけど、彼はヒーロー科ではなくて、普通科なんだよ」
悪く言われているのに、反論をする余裕がない彼らはずっと塞ぎ込んでいた。
波動がこれ以上騒ぐ前に、止めようかとキキや相澤やツインテールの女子生徒が悩んでいると、次の番である異様に睫毛が長い女子生徒が自己紹介を始める。他の人の自己紹介が始まると、波動は空気を読んで元の立ち位置に戻り大人しく話を聞いていた。
「私の名前は絢爛崎 美々美(けんらんざき びびみ)と申します。三年生で、サポート科に属しております。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
「わ、私の名前は涙石 夏希子(るいせき なきこ)と言います。私は二年生で普通科です。私自身出来ることは少ないけれど、皆さんとの話し合いで良い社会が作れることを願っています...」
「言わなくても知っている人は多いだろうが、俺の名前は心操人使だ。まあ、よろしく」
「発目明です」
「あたしは三年D組の物見(ものみ) ひねりよ」
「妾の名は蝶宮 紫(ちょうみや ゆかり)じゃ。妾は三年生で経営科に所属しておる。御主らとは長く付き合うことになるが、よろしく頼むぞ」
「俺の名前は燈台 光(とうだい ひかる)だ。俺は二年生でサポート科に所属している。ヒーロー科のみんな、もしコスチュームが壊れたりしたら遠慮なく言ってくれ!直してみせるから!これからよろしくな!」
「僕の名前は縮小 集(しゅくしょう しゅう)。僕も光君と同じく二年生でサポート科に所属しています。よろしくお願いします」
「私の名前は声高 木霊(こわだか こだま)です!話すことが大好きな一年生で!クラスはK組で経営科です!複雑な状況であるけれど、好きなお喋りで世界を変えられるなんて嬉しい!一緒に頑張っていこうね!」
教室に入ってきた順番で自己紹介が始まり、途中騒ぎがあったものも無事に終わる。
「明日から一日二回、話し合いをすることになる。物見、蝶宮、燈台、縮小、声高は午前中だけで、通形、波動、天喰、根本、絢爛崎、涙石、心操、発目は午後も参加することになる。彼らはA組だけではなく隣のB組とも話し合うことになる。自由に選んで貰っても構わないが、片方に寄るのであれば注意をする。どうせ今から勉強をしたところで、集中しないことが明らかだから、今と明日の朝で存分に話しをして、勉強に集中出来るようにしろ。席は喧嘩しなければどこでも...いや、波動は駄目だ。魔法使いの近くに座ったら話が逸れる。波動が暴走しても止められるように通形、物見。お前達は波動の近くに座れ」
これで説明が全部終わったようで、説明を終えた相澤は疲れを隠さずに教卓の近くに置いてある椅子に倒れ込むように座る。
いきなり終わって最初は戸惑っていた生徒達も、すぐに正気を取り戻して席をどうするのかを考える。考えた結果、一々移動するのは面倒なので元の立ち位置の場所に椅子を置くことにした。但し、色々なことに興味を持ちすぎて集中力が続かなくなる波動は、発目と場所を入れ換え、人見知りな天喰と因氣も通形の近くの席に移動をする。
他クラス、他学年と交えた第一回目の交流会が始まった。
目的は同じといえども、何を言えば良いのか分からないこともあってか、誰も言葉を発することが出来ずにいた。
そんな言いづらい状態でも、通形は立ち上り率先して話し出す。
「イレイザーヘッドや根津校長が言っていたんだけどさ、一年A組のみんなは誰よりも早く立ち直って話し合っていたんだよね?それってどんな意見が出たんだい?参考にするから俺達にも教えて欲しいんだ」
「教えるのは良いですけど...通形先輩クラスで話し合わなかったのですか?」
「うん、話し合わなかった。体育館での出来事よりは酷くないけど、俺達のクラスは話せる状態ではないんだ」
「そういえば...先程相澤先生が仰っていましたわね、話し合いが出来る状態ではないと...」
八百万の質問に、他のクラスの生徒達は深刻そうな表情を浮かべながら頷く。
尋ねた後に他のクラスは話し合いが始まっていないことを思い出し、事態は自分達が思っている以上に深刻なのだと、悟った八百万ははっきりと聞き逃さないように一語一句丁寧に答える。
「人の話を聞けるようにすること」
「柔軟性、想像力、好奇心、探求心を身に付けること」
「歴史を自分から調べにいくこと」
「自分で考えるようにすること」
「敵(ヴィラン)連合のこともあり、テレビ局を信用しないこと」
「これが...私達が出した意見ですわ」
「説明ありがとう。しかし...実行するには中々難しいね」
通形の言う通り、改善策が思い付いても、実際にそれらを行うとしたら相当難しい。
解決案が出せずに時間だけが過ぎていくかと思いきや、意外にもすぐに話し合いは再開する。
「自分でものを考えることが出来なくなる...民衆を愚民化させる3S政策が上手くいったものね」
「民衆を愚民化させる3S政策!?」
聞き慣れない単語にキキやウィズ、一年A組の生徒達も、合流してきた生徒達も、普段あまり表情を出さない相澤でさえも誰が見ても分かる程驚いていた。驚いていなかったのは根津、紫、光、集、木霊だけだった。
「ねぇねぇ!3S政策って何?3Sって何の略なの?国民が愚民になったら国は困ると思うのに、何で愚民化させるの?国は国民を愚民化させて何がしたいの?」
「ちょ、ちょっと!待ち...」
マシンガントークでひねりに質問をする波動。
波動の勢いに圧倒されたひねりは何も答えられなくなる。言い出したひねりの代わりに木霊が嬉しそうに答える。
「はいはーい!3S政策というものは太平洋戦争終結後、GHQが日本の占領政策として行った政策の一部だよ!3Sの正式名称はscreen(スクリーン)、sport(スポーツ)、sex(セックス)のことだよ!」
「もう一回!!頼む!!後もう一回!!3Sの政策の名称を言ってくれ!!!」
突然の峰田の叫びに教室にいた全員が驚く。
あまりの声量に木霊は引いてしまう。それでも気を取り直して何とか復唱をする。
「うん...良いよ...。3Sの正式名称はscreen(スクリーン)、sport(スポーツ)、sex(セックス)...」
「もう一回だ!!!」
「screen(スクリーン)、sport(スポーツ)、sex(セックス)...」
「女性陣だけで!恥ずかしく!sex(セックス)の部分を唱えてくれ!!」
「峰田(君)(さん)!!!」
聞き逃したから質問をしたのではなく、己の性欲に従って言わせたかっただけだった。
峰田は女子生徒中心に叱られ、話の邪魔したとしてキキがカードを飛ばして口を塞ぐ。話せなくなった峰田はむー!むー!と呻き声を上げてカードを取ろうと必死になっていた。
「なるほど...これが愚民化政策か...。かなり上手くいっているんだな」
「違う、そうじゃない。俺達が言いたい愚民化ということではない」
「俺の生徒が済まない...。あいつは後で指導を行うから、今は話すことに集中してくれないか?」
「わ、分かりました、相澤先生...。3S政策を行う理由としては民衆が感じている社会生活上の様々な不安や、政治への関心を逸らさせることにより、大衆を自由に思うがままに操作し得るとされています。所謂ガス抜きと言われているの。国が好き勝手暴れたい時には重宝されているんだよ。または、国民にとって厳しい政策を行い時に、目剃らしとして3S政策を行うことがあるよ。簡単に言うと...3S政策の3Sは娯楽のことで、みんなが娯楽に夢中になっている間に、国が裏で悪さをして好き勝手するということだと覚えておくと良いよ」
「へぇー!そうなんだ!過去の出来事がここまで悪影響を与えるなんて不思議!ねぇねぇ!物見さんが考える、国が裏で進めたら嫌なことって何?」
「そうねえ......憲法から基本的人権が消されたり...全財産を勝手に没収されたり...徴兵令が復活したり...消費税が十九%に上げること...かしらね?」
「それは俺でも嫌だ!!何でそんなヤバイことを考え付いた!?」
「な、何となくよ!何となく!」
「なるほど...それが愚民化させる3S政策なんだね!説明ありがとう!政治かあ...まさか政治が絡むとは思っていなかったよね。今回の件は政治とは関係ないけど...」
「娯楽に夢中になって政治に興味を無くすように、娯楽に夢中になるあまり、現実で起きていた問題を無視していた。その点は変わらないな」
「俺達がオールマイトに任せきりにしたのが原因だと思っていたけど、...過去の出来事がここまで影響をするとは思いもしなかったな...」
「上鳴が言っていた、時間があると娯楽に嵌まってしまうと...それは本人の気質だけではなく、その3S政策による影響もあるのか...」
「当たったって喜んでいる場合ではないけど...自分達の考えたことが間違っていなかったことが嬉しい!」
「娯楽さえ駄目なのはちょっと...かなりきついんだけど...」
「このストレス社会に娯楽が無かったら俺達死ぬからな」
「娯楽が駄目じゃなくて、娯楽に夢中になりすぎて現実で問題が起きた時にちゃんと向き合えないことが問題なのにゃ。娯楽は上手く付き合えば良いだけの話にゃ」
「そう!その通り!あたしだってさっき娯楽の危険性を語ったけど、娯楽は今でも好きだよ!」
「俺も3Sの存在を知っていても、未だにゲームとか好きだし」
「"個性"がない時代から続く問題なんて...俺達で解決出来ることなのか...」
「俺もだ...自信無くなってきた...」
あまりにも大きな問題に、解決出来ないと自信を無くした天喰と因氣は項垂れる。
そんな二人の姿に腹を立てたのか、ひねりは立ち上がって彼らに指を指して想いを叫ぶ。
「あんた達情けないわね!あんな酷いことを言われたのに!あの屑......"弱き者"どもと会話するって!決めたのでしょ!あたし達みたいに怒りに支配されずに!向き合うって決めたのでしょ!だったら前を向きなさい!特に天喰!あんたはヒーロー科で!この雄英でBIG3と呼ばれている程強いあんたが!そんな弱気な姿でどうするのよ!!」
肩で息をするほど声を荒げて自分の想いをぶつけるひねり。
冷静に話し合いが出来る人達が集まっても、交流会は上手く進まないものだ。