黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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61話 交流会後編

あの話し合いから次の日。

学生寮で朝食を取りながら昨日の交流会の話をする。

 

「昨日は会話が盛り上がったねー!」

 

「そうだな。これを俺達以外のクラスでも出来ていれば良いんだが...」

 

「出来ない所が多いんだよな。俺、昨日の夜、何気無く他校に行った友達にこの話題を出してみたんだけどよ...。忠告をしなかったあいつらが悪い!俺は悪くない!話を聞いて欲しかったらまともな言い方をしろ!今はこんな話をしている場合じゃねぇ!不謹慎だ!今はその話をしないでくれ!と言われて怒られた...」

 

上鳴の報告に一同は落ち込む。

心の中でどこかで雄英が駄目だったから他の所も駄目だと思っていた。それでも、出来ている所があると信じたかった。あくまでも上鳴の友達関係だけだが、多くの人達が出来ていないことは明白だ。先行きがかなり暗くなる。雰囲気を良くする為にも蛙吹が話を変える。

 

「ねえ、ウィズさん、魔法使いさん」

 

「どうしたのにゃ?」

 

一緒に食事を取っていたウィズが返事をする。

本来であればキキもウィズも、職員寮に泊まる筈だったのだが、職員寮だと他の生徒が来る可能性が高く確実に暴動が起きる。一年A組の学生寮で寮の管理人の一人として生活をしていた。来客対応は問題が起きる為出来ないが。

 

「貴女達がやって来た、児童養護施設オアシスは私達より先に注意していた人達の集まりだったでしょ?ケロッ。ウィズさんや魔法使いさん越しに、あの人達と共に話し合いを出来るようにして貰えないのかしら?ケロッ」

 

「それ良いね!やろう!」

 

「俺も蛙吹君の案に賛成だ!俺達だけでは問題を解決出来ないし、色々な立場の人達の話を聞かなければ意見も片寄ってしまう!何よりも、今こそ手を取り合うべきだ!」

 

「そうしたいのは山々なんだけど...実は...」

 

「実は...って、おい、何だよその不穏な間は!?怖いから早く言ってくれ!」

 

蛙吹の提案に乗り気になる生徒達だったが、キキとウィズは暗い表情を浮かべると元の暗い雰囲気に戻る。

怖くなった砂藤の質問にキキが気まずそうに答える。

 

「児童養護施設オアシスと連絡が取れないんだ」

 

キキの言葉にざわめく生徒達。ウィズか言葉を補足して更に詳しく説明をする。

 

「施設の人達が無事なのか気になって、キキに何度も連絡を取って貰っていたのにゃ。それで昨日の夜、やっと刃に連絡が取れて無事だと確認を取ることが出来たのにゃ。一応なんだけどね......。職員が事件に関わったとは言え、施設自体には神野区事件の被害は出ていないにゃ。ただ...」

 

「ただ?」

 

「逆恨みをした人達が施設に押し掛けて、苦情の電話が後を絶たず、嫌がらせが増えてしまったのにゃ。反省もせずに他人のせいにして嫌がらせをしてくる人達に、堪忍袋の緒が切れてあっちも普通に話せなくなっているのにゃ」

 

罪を擦り付ける相手はキキとウィズのみならず、児童養護施設オアシスの人達にも被害が広まっていた。寧ろ、勝てないと思わせる程の強大な力を持たない人達の集まりだからこそ狙われる。しかも、キキとウィズと違ってどこにいるのかが分かっており、住む場所を変えることが出来ないから逃げられない。

 

「何だよそれ!最低じゃねぇか!!」

 

切島を筆頭に他の生徒達も怒り出す。

怒りで騒ぐ生徒達とは対称的にキキは静かに立ち上がる。

 

「だから、彼らを止める為にも動く。自分が動いたら余計な騒ぎが起きるからと気にする状況ではない」

 

AFOは捕まった。だからと言って、平和な世の中が訪れていない。それどころか、治安が悪くなっていく一方だ。

AFOとの戦いで限界を迎えて引退したオールマイト。彼を怖がっていた人達が今まで溜まっていた鬱憤を晴らすかのように、全国各地で大暴れをし、犯罪発生率が三%も上昇した。こんな時こそキキとウィズの出番なのだが...余計な騒ぎが起きて更に混乱するので動けなかった。暴れる人は捕まえてしまえば良いだけの話かもしれないが、刑務所に入れる人数は限られている。それに──

 

 

キキとウィズはいつかいなくなる。

頼ってばっかりではいけない、と思ったヒーロー達が頑張ることになった......訳でもあるが、残念なことに、ヒーローの中にももっと忠告をしてくれたら良かったのではないか!と逆切れをしている人達もいる。その人達のせいで戦いに支障が出てしまう可能性がある。事件が大きくなるだけではなく、味方にも足を引っ張る人がいる。そのような状況では動いても酷くなるのは誰にでも見えていた。なのでキキとウィズはヒーロー活動には参加出来なくなった。その代わり、これまでの経験を活かして、次世代を担う生徒達を強くする為のアドバイザーとして働くことになった。

 

立ち上がったキキは食べ終わっていたので、食器を持ってそのまま片しに行く。

 

「今日の当番は...範太だよね。後片付けよろしく。これからすぐに出掛けるように準備をしないといけないんだ」

 

「あ、はい、分かりました。適当に置いておいて下さい」

 

「大丈夫なの?魔法使いさんが強いのは分かるけど...。味方も人によっては敵になる人もいると言っておったし...」

 

「心配しなくても大丈夫」

 

「そうだにゃ。私達のことは大丈夫だにゃ。それよりも...今度君達が行う、仮免試験がかなり難しいと消太が言っていたにゃ。私達の心配よりも仮免試験対策を考えておいた方が良いにゃ」

 

仮免試験。

仮免試験とは緊急の時だけ限定で公の場でも"個性"が使えるようになる、ヒーロー活動に必要な資格を取得する為の試験である。毎年六月と九月に行なわれ、ヒーロー科がある高校に所属する二年生以上の生徒達が参加していたのだが...オールマイトが引退したことにより、治安が悪化して人手が足りなくなったので今年に限っては一年生も参加することになった。

その言葉を聞いて一部の生徒達の顔が曇る。特に一時期普通科に移動していた芦戸、蛙吹、麗日、耳朗、峰田、八百万の顔は一段と曇っていた。

 

「そうですわね...。特に私は一時期とは言え、ヒーロー科を離れておりましたし...皆様よりも遅れてしまって不安ですわ」

 

「ウチも。こんな時に限って難しくなるなんてついていないなあ...」

 

「相澤先生が何時もよりも強く言っていたから怖くない?」

 

仮免試験のことで盛り上がっている生徒達を横目に、キキは部屋を出る際、少し離れた位置で食べている爆豪と神野区事件が起きてからずっと静かにしている青山の様子を伺っていた。

 

 

 

朝食が終わるとすぐに片付けをし、根津、相澤、他クラスの生徒達と共に一年A組の教室に集まる。

朝早く行った影響で眠くなる生徒達が出てても可笑しくないのに、眠気などどこかに消えたかのようにみんな真剣に話し合いを行おうとしていた。それ程までに現状を変えたい気持ちを強いのだ。話し合いを行う前に、昨日のある出来事が気になった蛙吹がひねりに質問をする。

 

「物見先輩、話し合いを行う前に質問をしても良いかしら?ケロッ」

 

「今じゃないといけないの?後で駄目なの?その質問はこれからの話し合いと関係ある訳?」

 

「ええ、関係ある質問よ。それと...私のことは梅雨ちゃんと呼んで」

 

「つ...梅雨ちゃん?それ今じゃないといけない?と言うか...いきなり渾名で呼べって、ふざけている?」

 

また、話し合いからずれると勘違いをしたひねりは眉を

顰めていたが、関係あると言ってから真面目に向き合う。真面目に向き合っていたぶん、蛙吹のお茶目なお願いに面食らってきょとんとしていた。

 

「いいえ、ふざけていないわ。私達はこれから、手を取り合ってこの大きな問題を解決しないといけないでしょ、ケロッ。だったら、少しでも仲良く出来るように渾名でも呼んで親しくなりたかったのよ。それに...私、物見先輩とも友達になりたいのよ。ケロッ。勿論、通形先輩、波動先輩、天喰先輩、根元先輩、絢爛崎先輩、蝶宮先輩、涙石先輩、燈台先輩、縮小先輩、心操ちゃん、発明ちゃん、声高ちゃん、みんなとも仲良くなりたいわ」

 

蛙吹の真剣な眼差しに釣られてひねりも真摯な対応で話を聞いていた。

 

「この話し合いは大事ではあるが、職場で話す時のように、ずっと敬語で話し合いといけない訳ではないよ。話し易くなるのであれば、砕けた口調で話し合いをすることを推奨するよ。真面目に取り組んでくれれば良いだけのことさ」

 

「つ...梅雨ちゃん...。言いづらいから話し合いの時は名字呼びで良い?」

 

「ええ、それで良いわ。これからよろしくね」

 

根津からの許可もあり断ることが出来る状態ではなくなった。

恥ずかしそうに渾名で呼ぶことを決めるひねり。仲良くなりたいと言う蛙吹の発言に場は和み、話しやすくなる雰囲気となる。そこまでは良かった。恥ずかしくなったひねりはあろうことか、蛙吹に大して悪口を言ってしまう。

 

「しかし...。こんな口が悪くて性格がひねくれているあたしと仲良くなりたいなんて...。あんた、よく変わっていると言われていない?」

 

「何を考えているのかは分からないと言われたことはあるけれど...そこまで言われたことはないわ、ケロッ。その言い方だと私だけじゃなくて、蝶宮先輩にも失礼だわ」

 

「何で?」

 

「だって、蝶宮先輩とはお友達なんでしょ?」

 

「どうしてそう思ったの?」

 

紫のことを拒絶している訳ではなく、本当に何を言っているのかが分からないと首を傾げる。

 

「蝶宮先輩だけはきちんと話をしていたと、熱烈に語っていたからよ、ケロッ。魔法使いさんもウィズさんも、話を聞いて貰えなかったけれど、語っていたのに、物見先輩からしてみれば話をしていない扱いをしていたことが気になってね。その点に関して話し合いが始まる前に聞きたかったのよ。ケロッ」

 

「ああ...その話ね...。確かに関係ある話...いえ、関係ある話どころか、これからのことに関わる大事な話よ。指摘してくれてありがとう。お陰で語りやすくなったわ。そうね...確かにあの人達も話してくれていたことは知っている。だけど...言い方が悪すぎる!あんな言い方をするくらいなら黙っていた方がましよ!...何?言いたいことがあったら、はっきりと言ったらどう?緑谷さん」

 

「えっ!?えっ!?ええっと...!僕が言うのは何だけど...ほら、あの、その...常識に背くことをかなり難しいし、勇気が要ることだから...殆んどの人は言えなくて、物見さんや蝶宮さんのように真っ向から歯向かえる人は少ないから、言える人は多くて越したことはないと思う。言わないと何も始まらないと思うから...」

 

意気揚々と語り出すひねりに対して、慣れない主張と苦手な女性にしどろもどろになる緑谷。二人の会話が切っ掛けに話し合いは開始する。

 

「あのね、緑谷さん。ただ問題点を言えば話を聞いて貰える訳ではないのよ。そんな簡単に話を聞いて貰えるのならば、問題なんてここまで大きくなることなんてなかったわ。話を聞いて貰うのには冷静に語り、要点をまとめて短く分かりやすく話すようにし、被害が大きくなっていることを示す、確実で確かな場所が出したデータを提出して、肩書きがある人が話をしないと聞いて貰えないのよ。それらが出来なかったら話を聞こうとする以前に馬鹿にされて終わり。まあ...あいつらは馬鹿で!屑だから!それらが出来たとしても、自分や自分の周りに被害が出なければ他人事なんだけどね!」

 

「けれどもよ。緑谷の言う通り、言わなければ始まらないだろ」

 

「それは相手が自分で物事を考えられる知能があったらの話よ!あいつらは話の中身じゃなくて、言った人の肩書きでしか話を聞かないから駄目なのよ!魔法使いさんの魔法は、ヒーロー向きだから話を聞かれやすかった方だけど怒鳴る言い方が問題だったわ。炎を操る敵(ヴィラン)が現れたら、他の関係のない炎系の"個性"を持った人達が敵(ヴィラン)扱いされるように、あの言い方のせいで現状に疑問視を感じる者=上から目線の嫌な奴と認識されてしまったのよ!そう思われてしまったらもう話は聞かれなくなるの!」

 

「それは...一理あるな」

 

「このやり方はよくある手法の一つで、信じたくない情報を流された場合、それを信じる人達は低学歴、ぼっちなどと悪いイメージを流すことしたり、敢えて信じる者の振りをして明らかに変なことを言ったり、わざと暴れたりして、愚か者とレッテルを貼って話を聞かせなくなる方法がある。隠謀論者には認知されているよ。魔法使いさんとウィズさんとしてはそういうことをする気は全くもってなかったけど、結果的に現状を危惧する者に悪いイメージを与えてしまったね」

 

「そうそう、よくあるよねぇ~。ただみんなの前で言ってくれただけで嬉しかった人と、言い方に不満がある人で意見が分かれているんだよねぇ~」

 

「そ...!!そんなの酷くねぇのか!!?例え!目の前で被害者がいなかったとしても!被害者が声を上げていたら認めるもんじゃないのかよ!!?」

 

「だから言ったでしょ、あいつらは馬鹿で屑だと!何度だって言うわ。それが出来ていたらこんな風にならなかったわよ!」

 

「魔法使いさんも、ウィズさんも、大変じゃったのう。あの人達からしてみれば偶々迷い込んだ世界で、衝撃的な光景を目の当たりにして叫んでしまっただけだから。とは言え...他の世界でもこうなることもあり得るから、今後の為にも、これを機会に言い方を気を付ける必要があるのう。あの二人が悪い訳ではないが。ところで...あの二人はここにいないのか?」

 

緑谷の意見に擁護する轟、ひねりの意見に"個性"のことで色々と言われたことがある心操が納得をし、話を聞かなくなる理由をついて語る集と木霊。話を聞かない人達に切島が憤りを感じていた。

様々な反応を見せる話し合いの最中に、キキとウィズがいないことに気が付いた紫が確信を得る為に訊ねる。

 

「魔法使いさんとウィズさんなら、他の生徒達に見付かる前に出掛けたよ。元々いた児童養護施設オアシスが逆恨みで酷い目に遭っているから助けに行った」

 

出掛けた理由を知った生徒達は呆れすぎて口をぽかーんと開けてしまっていたが、すぐに正気を取り戻して話題は暴れている人達への文句に変わる。

 

「ねぇねぇ、あの人達は、そんなことをしていても意味ないことが分からないのかな?それどころか暴れたら捕まる可能性があるのに、暴れるなんて不思議だよねぇ。私でも分かることなのに~」

 

「だから!あいつらは馬鹿で屑なのよ!そんなことが分かってくれるのなら!ここまで苦労しないわ!」

 

「全く...美しくないですこと」

 

「本当に...こんなんで...問題解決が出来るのか...。もう嫌だ...」

 

「俺もだ環...。諦めたくなってきた...」

 

「まあまあ二人とも落ち着いて。まだ始まったばかりじゃないか。今は駄目だけど諦めたらいけないと思うんだよね。ところで...みんなもさ、愚痴をしたい気持ちも分かるよ。俺だって文句を言いたい。でも、こんなことを場合ではないと思うんだよね。今は対策を考えることを最優先するべきなんだよね。物見さんはずっと言っても無駄だと言っているけど、俺的にも言わないと何も始まらないと思っているし、物見さんだって一応条件に当てはまっていたら話を聞いてくれると言っていたと思うんだよね。だったら!その条件を広げる方法をみんなで考えようじゃないか!」

 

「おお!良いねその案!乗ろうじゃないか!!と...言いたいところだが...やっぱ難しいんだよな。一番手っ取り早く聞いて貰える方法はテレビで言うことだし、そんなことは素人には出来ないし」

 

各々と文句で悪い方向に盛り上がっていたが、天喰と因氣を宥めていた通形が案を考えていこう!と場を良い方向に変えようとし、それに光が乗っかっても自分が出した案が実現をするのは難しくてまた暗くなる。

暗くなった雰囲気の中、波動が何時もの調子で光に質問をする。

 

「ねぇねぇ、何でテレビだと話を聞いてくれるようになるの?私達と同じ意見でも聞いてくれる?でも、どうして?」

 

「そうだな...。テレビだと専門家を呼んで確証だと示そうとしたり、放送する際にはルールが決まっていたり、情報を流す前にその情報を流して良いものかと審議をしたりと...細やかなルールと歴史があるから信じて貰えるかもな。ネットのように誰でもすぐに言える訳ではない。まあ...今回のように"弱き者"の奴らが乗っ取っていたら意味ないけどな!その信頼を利用して、気に食わない意見を言う人は敵だ!と民衆に攻撃するように促し、自分達に取って都合の良い情報だけを流して洗脳をしたりして社会を壊す!!本当に厄介な代物になるんだ!!」

 

「成る程そうなのですね...いや、私達も嘗ては...。では...今のテレビの様子からして...物見さんの仰る通りに"弱き者"の残党がいるのでしょうか...。でも、いらっしゃったらどうやって逃げていたのでしょうか?」

 

「丁度神野区の事件が夏休みの時期に被ったからね。海外旅行に行ったことにして海外に逃げたんじゃない?ねえ、根津先生、今年は海外旅行にどれくらいの人達が行ったのか知っていますか?」

 

「そうだね...僕も詳しくは知らないけど、例年の十倍は海外に行っているよ。けれど、行った人達が全員"弱き者"達とは限らない。しかも、狙ってやったかどうかは分からないけど、神野区の事件で家や建物が燃やされているから証拠を見付けられない。携帯電話などの電子機器でやり取りの有無を調べているが時間はかなり掛かる。テレビの件は"弱き者"達が変わらずに報道をしているのか、それとも、"弱き者"達とは関係はないけど八つ当たりであのように報道をしているのかは現在調査中。何とも言えないんだ」

 

「そうなんだ...。結局時間は掛かっちゃうんだね...」

 

「残念ながらそう上手くはいかないよ。...もう時間だ。今日の朝の話し合いはこれで終わり。次の話し合いは午後だ。授業に集中して頑張ってね。特に一年A組は仮免試験があるからね」

 

話し合いは大いに盛り上がったが、解決策は見付からずに愚痴や暗くなる場面が多かった。

 

 

 

ある程度話し合いをしたお陰か、授業も集中して取り組むことが出来た生徒達。

午後の交流会に、あの敵意だらけの赤毛の女性が加わることを知った生徒達に緊張が走る。怖がりな因氣だけではなく、夏希子も波動の近くに隠れていた。みんなが扉を固唾に見守っている最中彼女は現れる。

 

長い赤毛は碌に手入れされていないのかボサボサで、首には特殊な首輪を付けており、オレンジ色の囚人服を着ていた。

不満げな様子を隠すどころか堂々と態度に出しており、武器でも与えれば今にも暴れ出す気が満々だった。付き添っていた相澤も常に紐を握っており何が起きても対応出来るようにしていた。

 

「では、話し合いを始める。こいつの名前は...それは本人に言って貰おうか」

 

罵倒の時は勢い良く出ていた口も、ここでは役割を果たさずに沈黙を貫いていた。

少し待ってみたが、それでも話そうとせず、時間の無駄だと感じた相澤が勝手に教えた。

 

「この人の名前は無常 紅音(むじょう あかね)だ」

 

名前を知ったところで威圧されていては話し合いは出来ない。

生徒達が口を開くことを躊躇った時、ある一人の生徒が目をキラキラと輝かせながら意気揚々と彼女に近付いた。

 

 

「貴女があのベイビーを作った人ですか!?」

 

「ベ......ベイビー!?何を言っているのお前は!?」

 

紅音に近付いたのは発目明だった。

あまりにも関係のない話題、罵倒ではなかったので目を白黒させて何も言えなくる紅音。話し合うことは出来なくても、先程までの近寄っただけで食らい付く獣のような威圧感はなくなっていた。

そんな発目に生徒達は心の中で賞賛をし、絢爛崎は何時も通りの発目にちょっとだけ呆れながらも、敵(ヴィラン)であっても変わらない態度に、まるで自分自身が褒められたかのように誇らしげになっていた。

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