黒猫の魔法使いと個性社会   作:オタクさん

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68話仮免試験 その六

雄英生の心強い加勢に受験達は一安心しそうになるが、彼らの登場だけではヒーロー達を倒すことは出来ない。一瞬にして安心感は消え去り、ヒーロー達を倒そうとするが、ヒーロー達の方が遥かに動きが早い。

大きく割れた地割れなどあまり障害にはならないようで、直ぐに地割れを飛び越えて受験達に強襲しようとする。

 

「ネビルビュフェ☆レーザー!」

 

何時もの決め顔と共に、青白く輝くビームを散弾銃のように周囲にいるヒーロー達に狙いを定めて小刻みに発射する。

だがしかし、青山の自慢のビームも、ギャングオルカの超音波によって消されてしまう。ほんの少し気落ちをしてしまっていた青山の代わりに、今度は常闇がリベンジを果たそうと相棒のような存在であるダークシャドウでギャングオルカに突撃をする。

 

「ダークシャドウ!」

 

「アイヨッ!」

 

「そうはさせないわ!」

 

ダークシャドウが迫ってきてもギャングオルカは動かず、すっと、音もなく、まるで影武者のようにVRゴーグルのような物を着けた女性がギャングオルカの盾になるように前に立つ。"個性"によって生み出された光の矢でダークシャドウに迎撃をする。大の苦手な光にダークシャドウは手も足も出させずに逃げ出してしまう。

ダークシャドウの隙だらけの背中に隠れて、電気を纏わせた女性ヒーローが青山に殴り込む。"個性"の反動でお腹が痛くなって動けなくなっていた青山が殴られる寸前に、瀬呂がセロテープが青山の体に巻き付かせて攻撃を避けさせようとするが、セロテープが完全に巻き付く前に青山は殴られてしまった。

 

「アウ!!」

 

小さな呻き声と共に吹き飛ばされてしまったが、当たるのと同時に瀬呂が引っ張ってくれたお陰でダメージは最小限に抑えられていた。だがしかし、纏っていた電気のせいで痺れてしまい、助けてくれた瀬呂にお礼を言うことも、立ち上がることも出来なくなっていた。

 

「ハートビートファズ!」

 

まとめて吹き飛ばそうと耳郎が、地割れを起こす程の強力な技を再度繰り出す。

電気を纏っていた女性ヒーローと足を豹に変化させていた男性ヒーローにはあっさりと逃げられ、耳郎が繰り出した強力な必殺技はギャングオルカの超音波攻撃に負けてしまう。ギャングオルカの超音波攻撃が受験達に届く前に、咄嗟に轟が氷の巨大な壁を作り出して攻撃を防ぐ。

 

攻撃が通じず、押され気味の雄英生。

攻撃をしても簡単に防がれてしまう力の差に、受験達は心が折れそうにるが、ヒーローオタクである緑谷だけはと敵(ヴィラン)役のヒーロー達を見詰めながら独り言を言い出す。

 

「ギャングオルカの超音波攻撃だけでもかなり強力で、生半可な攻撃だと今みたく打ち消されてしまうだけでも厄介なのに、鯱の特徴を引き継いでいるから肉体も普通の人間よりも遥かに強く、視覚も聴覚も優れているところも厄介だ。フォーゼは一部だけとはいえ、実在する動物なら何でも変身することが出来るのが強力だ。でも、相当エネルギーを使うから頻繁には変身出来ない筈。月詠が放つ光の弓矢は一㎞先まで届き、コンクリートの壁さえも容易く打ち砕く程強烈であり、また、目から光を吸収しているからか葉隠さんが光を使った目眩ましは効かない。電気を吸収して纏う電光石火は上鳴君のように電気に耐性がある上、電気を吸収をすればする程英雄動きが速くなる。しなやかなで鍛えられた筋肉は柔軟な動きを得意とし、水を操ることを出来る"個性"を持っている水流連打。水を一から生み出すことは出来ないけど、周囲半径三十m内にある水及び、液体状態であればなんでも操れる。黒猫の魔法使いは"個性"ではなく、魔法を操ることが出来ることはみんな知っていると思うけど、効果は多種多様で、攻撃、防御、回復、強化など最大一度に五つ同時に放つことが出来る上、パッと見ただけでは判らず、効果呪文名を聞いただけでも判明することが難しい。発動するのには時間が黒猫の魔法使いを倒す方法はとにかく、接近戦で倒すこと。主に攻撃で使うと魔法は火、水、雷、光、闇...」

 

ブツブツと語る緑谷の姿に恐怖を覚えたものも、有益な情報に素直に耳を傾ける。

ずっと呟き続ける緑谷を嘲笑をする。

 

「フン...知識をつけているようだが、お前達が俺達を倒すことは不可能だ。だが、無駄につけたその知識で...お前達が俺達を倒せるかどうか試させてやろう!」

 

ギャングオルカの挑発と共にヒーロー達が動き出す。

フォーゼと電光石火が駆け出し、その後ろから月詠が光の矢、黒猫の魔法使いが水球と電撃で受験生を狙いながら援護をする。ギャングオルカと水流連打は黒猫の魔法使いと月詠を援護する為か動かなかった。

 

フォーゼと電光石火が飛び掛かるのと同時に光の矢、水球、電撃が土砂降りのように受験生達に降り注ぐ。

降り注いだ攻撃は受験生達を容赦なく襲い掛かる。攻撃で相殺をしたり、盾で防いでいたが、それらが出来なかった者は気を失って倒れたり、痺れて動けなくなって戦闘不能になった者が多く、中にはマネキンや人形を守る為に庇って倒れた者もいた。また、水球による攻撃を耐えられたとしても水浸しになって動きづらくなってしまっていた。黒猫の魔法使いと月詠の攻撃に苦戦しており、対応することしか出来ない最中、着々とヒーロー側が有利になるよう動きが始まっていた。

避けられて地面に落ちた水球で作られた水溜まりは、水流連打により操られ、蛇の形をした泥水は受験生達の動きを阻害しようと足元を狙う。

 

「轟君!」

 

「ああ」

 

緑谷の一言だけで全てを察した轟は蛇のようにうねり、絡み付く泥水を一瞬にして凍り付かせる。凍り付いた泥水は彫像のように固まる。

飯田や他の受験生達が、彫像のように固まった泥水を攻撃で飛ばしながらヒーロー達に当てようとする。だが、光の矢などの攻撃によって砕かれて当たることはなく、その間にも距離は詰められてしまう。足場を悪くして受験生達の動きが悪くなる一方で、精霊強化の魔法で強くなったフォーゼと電光石火は水溜まり程度では障害にもならず、まるで丁寧に舗装された道を歩くように、簡単に飛び越えられて近くにいた受験生を殴ったり、蹴り掛かる。印照を慕っているとかいなと毛原が伸びた腕と毛で拘束しようとするが、力付くで振り払ったり、電撃によって焦がされて拘束を解かれてしまっていた。

 

「スマッシュ!!」

 

指を二本犠牲にして空気を砲を放つが、簡単に避けられてしまう。避けられることは理解していたとしても、痛みと焦りによりしかめっ面になってしまっていた。そろそろ支障が出る頃合いだが、それでも覚悟を決めて他の受験生達を守る為に"個性"を連続で使用する。緑色の閃光が緑谷の体に走った時には、既にフォーゼの前に近付いており渾身の蹴りを入れる。フォーゼは避けることもなく右腕で受け止める。"個性"を使った緑谷、受け止めたフォーゼ、どちらにもダメージはある。けれども、回復して貰える貰えない差は大きい。

受け止めた後、蹴りを入れてきた緑谷に羽虫を追い払うかの如く軽く蹴り返すフォーゼ。軽く蹴るとはいえ、精霊強化の魔法によって強くなっている上、"個性"で豹に変化して時速五十八㎞で走れるようになった足から繰り出される蹴り技は凶器になっていた。

対して緑谷もOFAによって身体は強化されており、目は普段よりも速い動きを捉えられるようになっている。また、ヒーローの行動をノートに書き留める程観察をしているので動きを把握している。だがしかし、フォーゼの軽い筈の蹴りが緑谷の目には見えていなかった。緑谷の体に容赦なく突き刺さる前に、毛原が再び毛を伸ばして助け出す。間一髪で救われた緑谷は直ぐに体勢を整えて次の攻撃に移す。緑谷が体勢を整えている間にも、飯田の自慢の蹴りでフォーゼの胴体を狙い、印照のことを慕っていた人の一人、相がスナイパーで掩護射撃をしてフォーゼの動きを止めようとしていた。それでも、フォーゼは避ける必要はないと言わんばかりに、攻撃に当たりながら飯田にも軽い勢いの蹴り技で迎撃をする。緑谷の結果を見て飯田は、蹴る動作が見えた瞬間直ぐ様防御しようと腕で胴体を守ってはいたが、それでも盛大に吹き飛ばされてしまった。

 

「みんな!離れて!解除!」

 

麗日が集めて浮かせていた瓦礫をフォーゼと電光石火に向かって落とす。瓦礫の方に意識を向けられて隙が出来たところを轟が炎で道を塞ぐ。

ほんの少しでも有効打を与えられたら良い、時間稼ぎが出来れば良い、そんな思いは通用しなかった。精霊強化の魔法には炎、水、雷、光、闇といった特定の属性によるダメージを軽減させる効果がある。回復と合わさって轟が放った炎が無効化され、瓦礫は避けられてあっという間に突破されてしまう。

 

「炎が駄目なら!これならどう!」

 

轟と入れ替わった芦戸は"個性"酸を手から放出して、フォーゼと電光石火が受験生達の下に行かせないようにする。人の肌を簡単に溶かす溶解液はどうやら駄目らしく、溶解液は道は避けていたが、それでも少しの時間稼ぎにしかならなかった。芦戸の溶解液が鬱陶しく感じたのか、月詠の光の矢と黒猫の魔法使いの水球と電撃が再び受験生に襲い掛かる。

 

「オラ!」

 

爆豪が掌で爆発を起こしながら飛び上がり、飛んできた攻撃を爆発で相殺をする。爆発で相殺出来ななかった攻撃は青山のビーム、芦戸の酸、轟の炎や氷、耳郎の音の攻撃、他校の生徒も遠距離攻撃が出来る者は加勢していた。月詠と黒猫の魔法使いの攻撃を対処してから爆豪を中心に、纏っている電気による感電対策として触れられなくても攻撃出来る者は電光石火を、切島や砂藤のような肉弾戦が得意な受験生達はフォーゼに挑む。八百万や相のように銃で攻撃出来る人は臨機応変で対応していた。

圧倒的な差があっても、どんな目に遭っても、如何なる状況でも、諦めずに一般市民を守るのがヒーローだ。

 

 

「終了!!」

 

「え......ええぇぇーーーー!?!?」

 

誰かの呆然した呟き声を皮切りに、受験生達の叫び声が木霊する。

殴られ、蹴られ、攻撃はほぼ効かなく、血反吐を吐きながら、必死に食らい付いた仮免試験は呆気なく終わってしまっていた。

 

 

終わった理由は単純だった。フックの人達や人形とマネキンの救出するのが終わったからだ。

ヒーローの本質は人助けであり、また、受験生達が現役のヒーロー達に敵わないことから終了条件として敵(ヴィラン)撃破は含まれていなかった。納得はいかなくてもここで大人しくしなければ失格となってしまう。とはいえ、現役ヒーローとの戦いは辛くて疑問を投げ掛ける体力はなかった。雄英体育祭で結果に納得出来なくて暴れていたあの爆豪でさえも大人しかった。黒猫の魔法使いから回復魔法を受けた受験生達は試験官の目良の登場を待つ。

 

受験生達が待たされて五分後、目良が眠たそうに登場をする。眠たそうにしていた目良が少しだけ嬉しそうに笑う。

はじめは喧嘩ばかりで仮免試験が上手く進行しなかったが、今では戦いを通じて仲良くなり普通に話せるようになっていた。それだけでも嬉しくはなるが、笑顔を浮かべている場合ではない。心を無にして結果を淡々と述べる。

 

「えー......貴方達の結果ですが──」

 

目良の言葉を固唾を飲む受験生達。

目良は常にダルそうとしている為か、わざとらしいと感じる程ゆっくりと伝え始める。

 

 

「本来は全員不合格でした」

 

不合格という言葉に全員がざわめく。

膝から崩れ落ちる者、泣きわめく者、怒鳴って文句を言う者、呆然として何も言えなくなった者。様々な反応をする最中、印照が一番先に冷静になってみんなを諭す。

 

「ちょっと皆様お待ちになって下さいませ。本来はと仰っておりましたから、もしかしたら今回は違いと思います。ですので、文句などは最後まで話を聞いてから言って下さい」

 

印照の言葉に受験生達は正気を取り戻して次第に静かになっていく。

静かになったところで目良が語り始める。

 

「オールマイトによりAFOは捕まりましたが、捕まったとはいえども、完全に彼の驚異が消えた訳ではありません。また、今後彼のような存在、彼よりも凶悪な存在が現れても可笑しくはありません」

 

「その際、ヒーロー達は手を取り合って協力しなければいけません。それなのに、先程までのは君達は喧嘩ばかりで話にはなりません。雄英生を拒絶した人達は勿論、拒絶された雄英生の皆さんも一度も協力し合うと言えなかった。もしもの時、ああやって気に入らない人を拒絶をして戦力を減らすのですか?拒絶された程度で諦めるのですか?」

 

「とはいえ、今回は仮免試験。最終的には普通に戦えていたので、最後まで喧嘩をせずに戦えていた者は合格とします。ですが──」

 

 

「救助と戦闘を同時に行った影響で、戦闘しか行えなかった者、救助しか行えなかった者が出てしまいました。あの時の状況で自分が出来る最善の行動をしたのですから、偏っても仕方がありませんが、偏った行動を取った方達は後で補習を受けてもらいます。補習を受けてもらうことになりますが、こちらのやり方が悪いのですので不合格にはなりません」

 

「そ、そんな...」

 

戦っていない、救助もあまりしていなかったと自覚していた印照は思わずがっくりとしてしまう。

合格してもお零れ、仮免試験を合格しても補習がある。項垂れながらも受験生達は目良の言葉を深く胸に刻まれることとなった。




口田の個性を使ってウィズを操り、黒猫の魔法使いの隙を作る作戦を考えていましたが、ギャングオルカの超音波攻撃って、よくよく考えてみたらプレゼントマイクの時みたく声届かないよねと思っていました。
また、格上である現役ヒーロー相手に、喧嘩だらけで上手く手を取り合えない学生達が勝てる訳がないと思ったからです。やっぱり、格上の相手に勝つには手を取り合う必要がありますし。
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