ガンダムビルドダイバーズ EXTREAM VS 作:TLS中毒患者
一年前に書いてる場合じゃねぇとなってケジメ案件でアカウント消していましたが、ようやく落ち着いてきたのでぼちぼち復帰する事にしました。
至らない点が多いかもしれませんが、生暖かい目で見守ってやってください。
「あなた達はどうしたいのですか?」
GBNの歴史に名を遺したある大戦の最中、フォース・アヴァロン側に加盟していたとあるフォースに所属していた少女は、フォースネストの一室にて『保護』されていた銀髪の少女ともう一人、金髪の少女に声を掛ける。
「僕は……僕たちは、この世界にいては、いけない。だから……」
「世界なんてどうでもいいです。私は、あなたの、あなた自身の己の意思が聞きたいのですから」
確かに、これ以上この二人が存在し続ければこの世界はバグが広がり続け、滅んでしまうかもしれない。
それでも、彼女は信じたかった。
ブレイクデカールを無効化し、漆黒の宇宙に羽ばたいた光の翼を。
人と手を取り合い、喜びを分かち合ったあの笑顔を。
彼女の、サラが見せたその笑顔は、彼にそう思わせるには十分すぎるほどの輝きに、希望と可能性に満ち溢れていた。今の自分には無い、けれど、いつかは見られるかもしれないその世界。
だから、信じてみようと、思った。
人間を。この世界を――そして、自分自身を。
「僕は……私は……生き、たいっ!!」
「……その言葉が、聞きたかったのですよ」
そう言って彼女が指を鳴らすと、それを皮切りに戦況が変化した。各部隊内に散開して配置された一部の機体が反転を開始、次々と同軍である筈の機体に攻撃を仕掛け始めたのだ。
コントロールルームからの通信から困惑の声が聞こえたのを聞き届けると、彼女はくるりと振り向き、その背後に控えていた人物に頭を下げる。
「そういう訳です、チャンピオン。これよりフォース、アケノミハシラは寝返ります。どうか、私どもの勝手をお許し下さいませ」
「全く、君と言う子は……」
「あなただって結果的には同じような事をしようとした筈ですよ? 私とやり方は違ったかもしれませんが」
そう言って彼女は窓を開け、テラスの外側に自動操縦で浮かんで待機していた愛機の手の平に飛び乗る。禍々しい漆黒の翼を広げながらも、装甲の隙間から除く黄金の機体フレームが神々しささえも感じさせる。相反する二つの要素を纏め上げた、彼女の機体。
そして彼女は宣言通りにビルドダイバーズ側に寝返り、多大な戦果を挙げた。
その光景は、とある少年の目に焼き付く事となる。
◆◇◆
GBNが世に羽ばたくその昔、ガンプラを実際に動かして戦うGPDの他にも、人がモビルスーツを動かして戦うゲームは何種類も存在していた。
戦場の絆、ガンダムオンライン、バトルオペレーション、そしてバーサスシリーズ。
それらはGBNの登場により市場をガンプラに取って代わられ、急速に衰退の一途を辿っていった。今ではそれらの市場規模は全盛期の数分の一にまで縮小し、ゲームセンターの筐体は数を減らし、オンラインサービスのサーバーも閉鎖などが相次いでいる。
そして丁度その頃だろうか。そのGBNに、変わった動きや立ち回りをするダイバーたちが現れたのは。
「今年は何年だぁ?」
「ウッキィィィィィイイッ!! 今年は申年!! アァァアアアイッ!!」
「ジム・コマンドー」
「事故要因のジ・オ・ストーム」
「ハイチンゲール」
「今までの弱い自分とは、お別れをした!!」
「かわしても僕はリボーンズガンダム!!」
「ドレノルン」
忘れ去られつつある当時の代名詞を引っ提げ、彼らはGBNの世界を駆け巡る。
そしてここにもまた一人、その世界へ踏み込もうとしている者がいた。
◆◇◆
「あー……あと少しで10連勝だったんだがなぁ……」
「悪ぃ、欲望のカウンターが決まらんかったわ」
紺色の制服を着た二人の学生が、ゲームセンターを後にそんな事を呟いていた。彼らがやっていたのは、全盛期と比べると稼働数が減っているとは言え、一部の派閥には未だ熱狂的なファンがいる2VS2のガンダムゲーム、EXTREM VS2だ。さっきの戦いでは土壇場でカウンターを出すも、それを見切られて撃破、コストゲージを削り切られて敗北したのだ。
「やっぱ無理有るかなぁ……天とライトニング」
「でも、天はお前が憧れた人の機体なんだろ? ガンプラバトルでだけどさ」
「まぁな」
彼、アマギリ エイジは隣に立つお調子者の友人、ミフネ ソウスケに誘われてその昔少しだけGPDを触ったことがあるのだが、その際にとある大会で見とれた機体こそが、少女の操るアストレイゴールドフレーム天だった。年は自分とそう変わらないくらいで、大人相手にも怯まず戦い抜け、その少女は見事大会を優勝したのだ。
「以来憧れて天に乗ってるけど、上手くやれるのはエクバの時だけなんだよなぁ……」
「だから、エクバの時みたいにひたすらミラコロ格闘差し込めばいいんだってば」
そうは言っても、と言いながらジュースを飲み干してゴミ箱に放り込むエイジ。GPDは触った事はあるのだが、その時に壊された天の修復作業に手一杯で、あまりGBNには触れていなかったのだ。
「そう言えば、お前はもう何部に入るのか決めたのか?」
「そういうソースケはどうなんだよ?」
「俺か? ふふん、聞いて驚け!! 俺が入部を決めたのはなんとあのガンプラバトル部!! 我らがミハシラ学園は中高一貫校、その中等部から所属している有志の情報によれば我が校の模型部はお姉さまから妹系まで美少女揃いと聞く!! これを聞いてこの俺が入らない訳ねぇだろうがァ!!」
どこからか取り出したメモ帳を片手に熱弁するソースケ。彼は人脈が広く、情報収集はお手の物との事だ(ただし美少女に限る)。それと同時にカバンの中に入っていたガンプラケースの蓋が僅かに開き、その中身を覗かせる。ソースケがゲーム中でも使用しているライトニングガンダムフルバーニアンをベースにした機体だ。
「下心見え見えっつーかお前らしいっつーか……部活の登録ってまだ期限まで時間有ったよな? なら、見学くらい行ってみるか」
「よぅし!! 決まりだ!! 善は急げ、いいから今すぐ行くぞぉ!!」
「ちょ、まだ部室開いてるのかよ!?」
「へーきへーき!! 止まるんじゃねぇぞぉ!!」
こうして、エイジはソースケの手によってミハシラ学園高等部に置かれている部室へと強制連行されていった。
エイジの鞄に付けられた小型の日本刀型キーホルダーが、陽光を反射して怪しく光ったような気がした。
◆◇◆
GBN内 トリントン基地周辺
「コイツ……速いぞぉ!?」
「本当に新入生かよ!? 話が違うじゃないか!!」
額に汗を浮かべながら、ジェスタを操るミハシラ学園の男子学生が目の端で追いかけるは、穢れの無い純白の機体。両肩や脚部に増設された大型GNバーニアを駆使した圧倒的な機動力は既に並大抵の人物が追えない速度であり、飛んで跳ねては潜り込んでを繰り返して縦横無尽にフィールドを駆け巡る。
「ぐっ!?」
あっという間に懐に入られ、ビームライフルを左利き仕様に調整されたGNソードで両断された。発光する青いカメラアイにまるで睨み付けられたような気分になり、男子学生はヒイッ、と軽い悲鳴を上げる。
その隙を僚機のヤクトドーガが放つファンネルが付け狙うが、分かっていたかのように純白のアヴァランチエクシアは左足で目の前のジェスタを蹴り飛ばすと両肩からGNビームダガーを正面とやや斜め上に身を捻りながら投擲。その二射は正確にファンネルを撃墜する。
「……初狩りするなら、もっとトラップとか用意するべき」
乗り手に合わせて左利き仕様に調整された純白のアヴァランチエクシアこと、アヴァランチ・ブランシェを駆る少女、カンナギ ユキナは棒付きの飴を咥えながらそう口にするも、どこか拍子抜けしていた。
小学校の頃からガンプラバトルを始めて、早三年。遂にガンプラバトル界、すなわちGBNで名をはせる強豪校・ミハシラ学園の中等部に入学。自身の学力的には少しばかり不釣り合いな学校ではあったが、なんとか夢を叶えた形だ。
そして、ようやく迎えたミハシラ学園ガンプラバトル部、入部の日。
入部届を握ったまま部室を探してうろうろしていた自分を、親切な先輩方がGBNまで連れてきてくれた。
そこまでは良い、問題はその後だ。
入部試験と称して仕掛けられたのは強めのNPCとの連戦の後の3VS1という明らかにこちらが不利な筈の勝負。恐らくは初心者狩りでもして勝利数を稼ぎたかったのだろう。しかし、相手は彼女の実力を見誤っていたのか、逆にこちらが押せている状況だった。
自分の憧れていた世界の住民はこの程度の、卑怯な真似をされても自分が圧倒できる程度の実力しかないのか、と。
小学生の部の大会で二年連続優勝経験のある彼女にとって、それはある種の飢えにも近しかった。
「クッソ……こんなガキに、負けてられねぇんだよぉ!!」
しかし、撃破したと思っていたジェガンが起き上がり、バーニアを吹かしながら抜刀したビームサーベルで切りかかってくる。
しかし、二撃、三撃、力任せに振るうビームサーベルが純白の装甲を焼く事は無く、ユキナは「ウザい」と一言呟くと足の裏に仕込んだGNビームダガーで身を捻りながら踵落としを浴びせて黙らせる。
「今だぁ!! やっちまえぇ!!」
しかし、その一撃は囮だった。墜落したコロニーの破片の隙間から姿を現すジェスタとヤクト・ドーガ。ビームライフルとグレネードを撃ちながら接近してくるが、飛び上がってその奇襲を回避。GNソードによる叩き付けを敢行しようとするが、急に機体がバランスを崩した。
(粒子残量警告……っ。こんな時に……)
両肩と両足に増設されたGNバーニアからの粒子放出が弱まり、バーニアによる強引な加速で振り切ることが出来ない。相次ぐ連戦により、機体のエネルギーが底を尽きかけていたのだ。
GNドライヴ搭載機なのでコンデンサーにチャージが済めば再び動けるようになるが、その間の性能低下は否めない。
「ガス欠かぁ!? やっちまおうぜ!!」
「これでポイントはいただきだ!!」
襲い来るビームサーベル。今の状態では着地時の硬直を消す手段が無く、初撃でシールド代わりにしたGNソードが弾き飛ばされる。出力が下がって踏ん張りがきかないのだ。
襲い掛かる二振りのビームサーベル。走馬灯の一種か、不思議なほど彼女には遅く見えた。背部からGNブレイドを抜刀しようとするが間に合わないのは分かっている。
収束された凶暴なメガ粒子の輝きが、高エネルギーの粒子の塊が今にも振るわれんとする。
今まで孤高に生きて来たユキナには、当然友達と呼べる人物は一人もいない。その友達を、仲間を、きっとこのガンプラバトル部でなら――そう、思っていたのに。
――――――友達でも、仲間でもない自分を助けに来てくれる人なんて、いない。
そう諦めてブレイドに手を伸ばすのを止めそうになるが、
「こんな、奴らに……っ!!」
忌々しげに呟いた彼女の声をかき消すように振るわれるビームサーベル。
しかし、それが彼女に直撃する事は無かった。自分を焼くはずのメガ粒子の塊が来ない事に首を傾げるが、目の前の二機の様子がおかしい。
まるで何かに遮られているかのように、その動作が阻まれているのだ。サーベルを振るおうとしても、何らかの盾に阻まれている。
『その折れない心に尊敬するよ。俺なら諦めていたかもしれない』
「何だぁっ!?」
「ンだ、てめぇはよぉ!?」
「どこ中だオラァ!!」
初心者狩りを仕掛けた三人の怒声が響く中、彼女の目の前の景色に靄が走ったかと思うと、徐々にその姿がはっきりとしていった。
黄金に輝く前面に二本突き出た大型のブレードアンテナとアストレイのフレーム。装甲の形状から天がベースだと分かるが、しかし装甲の色は自分とは対照的な深紅で武装は右腕の巨大な腕部と見紛う形状のトリケロス改と背部簡易バックパックのビームサーベル、後は腰の日本刀のみ。まるで未完成形態のようなシンプルさだ。
トリケロス改を振り払って退け、一度体勢を立て直さんと一度後ろに下がる二機。赤いゴールドフレームはユキナのアヴァランチ・ブランシェが立て直したのを確認すると、鬼の手の様な右腕を向けながら静かに呟く。
「さぁ、踊り明かそうか。このテスタメントアストレイとな!!」
神との契約の名を持つ、レッドフレームとはまた別ベクトルの深紅のアストレイ。
右腕の親指と小指に当たる部位に内蔵された小口径ビームライフルを放ちながら、次の瞬間にはまるで霧の中に消えたかの様に姿を消していた。
機体紹介
機体名:アヴァランチ・ブランシェ
武装:GNソード、GNビームサーベル×4、脚部GNビームダガー×2、腕部GNビームトンファー×2、GNショートブレイド×2
特殊機能:トランザム
乗り手に合わせて左利き仕様に調整された元々赤い部分が青くなっている以外は純白のアヴァランチエクシア。
武装の追加などは最低限度で、全身にサーベル類を内蔵した事により腕や足の一本が無くなったくらいでは戦闘不能にはならないが、乗り手の問題もあって射撃戦はパッとしない。
装甲を削っており、飛んで跳ねて潜ってとひたすら縦横無尽にステージを駆け巡れるだけの機動力を持つが、コンデンサーのGN粒子貯蔵量の関係から戦闘が長引くとトランザムを使用していないにも拘らず性能低下を引き起こす。