ガンダムビルドダイバーズ EXTREAM VS   作:TLS中毒患者

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Stage1-3 エクバ民、参戦

 ――――遠い記憶

 

 

 『ぼ、僕のガンプラ……』

 

 ゲームセンターから出て来た少年は、各部が破損したアストレイを眺めて愕然としていた。彼が今しがた挑戦していたのはGPDと呼ばれる実際にガンプラを動かして戦うもので、当然実際にガンプラを動かすことから破損も起こりうる。先程試合に負けた彼の手の中には、相手の持つ日本刀で両断された右腕と破壊された頭部、そして傷だらけの本体が握られていた。

 

 友達に勧められてやっては見たのだが、自分には彼の様に上手くは出来なかった。

 

 このアストレイは親に手伝って貰いながらではあるが、そこそこ手間暇かけて作ったガンプラ故に愛着がある。

 損壊具合からもう自分の腕では元通りに戻せないと分かり、少年は階段にうずくまった。

 

 『大の男の子が泣くんじゃありません!!』

 

 そう言って彼の顔を持ち上げた少女がいた。年は自分とそう変わらないか少し上くらいの、白いワンピースを着た黒髪と碧眼が綺麗な少女だ。

 その少女も腰にガンプラを持ち運ぶ用のケースを身に着けており、ファイターの一人であることが分かる。

 

 『だって……っ、僕のガンプラが……』

 

 『メソメソ泣いている暇があるのならバトルの腕を磨きなさいな!! あなたもファイターの端くれなのでしょうに』

 

 『僕は君みたいに本気でやっている訳じゃない!! ただ、面白そうだからやってみただけなのに……っ!!』

 

 意気込みの差から起きた食い違い。片やプロを目指すべくして英才教育を施された文字通りのプロの卵。そしてもう一人は一般通過民間人。そのレベルの差がこの二人にはあった。

 子供の喧嘩に倫理性などは無い。ただお互いの主張をぶつけるだけの稚拙な口喧嘩。

 

 『-----お嬢様、どうなされたのですか?』

 

 そこに割り込んできたのは、この炎天下の真夏の空の下で汗一つ掻かずに黒のスーツを着こなす老紳士だった。

 お嬢様と呼ばれた白いワンピースの少女はその老紳士に状況を説明するが、状況を聞き終えると彼は「成る程」と呟き、

 

 『それはお嬢様が悪いですね』

 

 『何故なのですか!?』

 

 『人は皆、貴方と同じような考えで生きている訳では無いのです。人の意思は十人十色、それはサイコフレームの輝きの様に虹色でなければならない物なのです。こう言った方が、お嬢様には分かりやすいでしょう?』

 

 ガンダムネタを交えた老紳士の言葉にワンピースの少女はある程度クールダウンしたのか、老紳士のその言葉を聞き届けると頭を振り、少年に手を差し伸べる。

 

 『貸しなさい、そのガンプラを』

 

 『え? でも……』

 

 『私なりのケジメです。そのガンプラを最高の状態に直して差し上げましょう。イオリ・セイもびっくりの出来にして差し上げますわ』

 

 少し迷った後に、少年はボロボロになったアストレイを彼女に差し出した。彼女はそれを老紳士がどこからか取り出したソフトケースの中に保管すると、代わりにHGのガンプラサイズの鞘に納められた日本刀を少年に差し出す。

 

 『これは?』

 

 『それを肌身離さず身に付けておきなさい。修理を終えたら、私がそれを目印にして貴方にガンプラを返しますから』

 

 少女がそう言うと、老紳士が彼女をやんわりと急かし、彼女はいつの間にか近くに止まっていた黒塗りの高級車の中にへと姿を消した。

 以来、少年はその少女と出会う事は無かったが、それでも少年はその日本刀を持ち続けた。

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 「あの一年生、アケノ様のガンプラとは言え本当に勝っちまいやがった……っ!!」

 

 「しかも何あの動き? 凄い癖のある動きだけど」

 

 「これはうちのリーダーに報告しなくちゃ……っ!!」

 

 「そのような事を口にしている場合ですか!? 愚か者!!」

 

 モニターの前で固唾を呑んで見守っていた部員たちは口々に呟くが、アケノはその部員達を一喝した。先程エイジにガンプラを手渡した時の女神の様な微笑みはどこへやら、一瞬にして鬼の形相となったアケノは肩と黒髪を怒らせながら続ける。

 

 「あなた方もこのミハシラ学園に来た以上、ここが『ガンプラバトル界の学戦都市』と呼ばれている所以は知っているでしょう? どのような条件であれ、勝負に負けて各自所有のポイントが無くなれば、部室はおろか最悪部活動の参加すら出来なくなるのですよ? そのような事を、まだ入部も定かではない新入生に味合わせようと言うのですか?」

 

 「し、しかしアケノ様……アイツらあれでも結構強くて、僕たちの腕じゃ逆に返り討ちと言うか……」

 

 「そ、そうですよ!! それにあの娘、結構強かったから私たち居なくても大丈夫かなーって……」

 

 「メソメソ弱音と言い訳を吐いている暇があるのなら腕を磨きなさいな。あなた方もファイターの一人なのでしょう?」

 

 アケノはそう言い張ると踵を返し、未だパソコンの前に釘付けになっているエイジと、そのデバイスの傍で膝をついたエルダイバーであるヤチヨのボディに視線を向け、ポツリと呟く。

 

 「とは言え、人の思いは千差万別。目指す志が同じでもその強さには違いがあります。私の考えを押し付けるだけでは……駄目なのでしょうけれども」

 

 その直後、パソコンの画面に変化が生じ、エイジとヤチヨが現実世界に帰って来た。ヘッドギアを外すと、エイジはテスタメントアストレイをアケノに差し出した。

 

 「あの、ありがとう、ございました!! お陰であの新入生の子を助けられました」

 

 「こちらこそありがとうございました。後の処理は既に向かっている先生方が何とかしてくれるでしょう。それと、お礼と言う訳ではありませんが、そのガンプラなら差し上げますわ。と言うよりは……お返し致しますわ」

 

 その衝撃の発言に、部員一同といつの間に帰って来ていたソースケまでもが思わず口をあんぐりと開けた。エイジもその発言には戸惑っており、あたふたとするがそれをフォローするかのようにいつの間にかエイジの肩の上に登っていた橙色の着物を着た金髪のエルダイバー、ヤチヨが付け加える。

 

 「エイジ……いや、前回PDFで八位の最年少のゴールドフレーム使い、∀GE、と呼んだ方が良いかな?」

 

 「何で、君がその名前を……?」

 

 ∀GEと言うのは彼がエクストリームバーサス2で名乗っているプレイヤーネームだ。昨年の全国大会ではソースケとはまた別の相方と共に出場し、最年少でその序列八位に名を連ねたのだ。

 以前GPDやGBNで見た、やたらと強いゴールドフレーム天に憧れ、それらの代わりにエクバシリーズで使い続けて早数年。気が付けばここまで使える様になってしまったのだ。

 

 「と言うのも、この機体は元々君に合わせて調整してあるんだ。だからあの操作法もスムーズにできたんだよ」

 

 「言われてみれば、プログラミングされている物に妙にどこかで見た事ある攻撃モーションが多かったと言うか……」

 

 「その刀……ずっと持っていてくれていたのですね、と言えば思い出していただけるでしょうか?」

 

 テスタメントアストレイの腰に装備されている、エイジが以前からずっと持っていた経年劣化で鞘がボロボロになったガンプラサイズの日本刀を見つめながら、アケノは懐かしむように告げる。

 エイジはそのガンプラ用の刀と彼女をじっくりと見比べて考え込むこと数十秒、ようやく閃いた。

 

 「もしかして、あの時の!?」

 

 「はい。ようやく思い出して頂けました―――――――」

 

 「貴ぃぃ様ぁあああああああああああああああっ!!」

 

 刹那、アケノの言葉を遮ってソースケがエイジの両肩を掴み、嫉妬のあまりブンブンと振り回した。ちなみにヤチヨはいつの間にかアケノの肩に飛び乗って避難している。

 

 「ちょ、ソースケっ!?」

 

 「お前ええええっ!! ミハシラ学園の四天王が一人、フォース、アケノミハシラを率いる『鏡月の剣』のミカガミ アケノ様と知り合いたぁどういう事だぁ!? このお方はミハシラ学園昨年度彼女にしたい生徒ランキング上位入賞にして模試も全国トップレベル、更に更にGPD時代にも当時小学生でいくつかの大会のファイナリストに名を連ねている才色兼備を体現した貴様には勿体無さ過ぎるお方だぞ!! それを機様と言う奴はぁ!!」

 

 その間もブンブンとソースケにひたすら体を揺すられ続けるエイジ。ちなみに彼は編入生であるにも関わらず、持ち前のキャラで爆発的に人脈を拡大し、故に美少女限定で情報を集めきると言う偉業を成し遂げており、一部男子生徒からは英雄視されている。振り回されているエイジの気がだんだんと遠くなってきた所で、

 

 「そこまでにしておきなさいな」

 

 ソースケがアケノのデコピンを食らい、パチンッと小気味良い音が部室内に鳴り響く。

 それを契機にソースケはエイジを手放すが、同時に恍惚とした表情で両手で額を押さえる。

 

 「うっひょう、アケノさんにデコピンされちまったぜ!! 俺、今日死んでもいい……」

 

 「さて、自己紹介が遅れました。大方は先程彼が言ってくれた通りです。ミカガミ アケノ、一応ですが四人いるガンプラバトル部の部長の一人を務めさせて頂いています。今後ともお見知りおきを」

 

 「あの時は、自己紹介出来なかったけど……俺、アマギリ エイジです!! 宜しくお願いします!!」

 

 「はい、こちらこそ。先程申し上げた通り、そのガンプラは貴方にお返しします。刀の方も選別だと思ってお受け取り下さい。あとは――――――」

 

 そこで丁度チャイムが鳴り響いた。現在の時間は午後五時半、部活動の終了を告げるチャイムだ。まだ説明が終わっていないので名残惜しかったが、アケノはそれを耳にすると手を打ち鳴らして部室に残っている他の部員達に退室を促した。

 

 「どうやら、時間のようですね。今日の所はこの辺りにしておきましょう。正式な勧誘と手続きは、また追って後程。この部活には四人の部長がいますから、誰の下に着くかは今すぐ決める必要はありませんよ」

 

 別れ際にそう告げると、アケノはヤチヨを肩に乗せたまま踵を返し、部室の鍵を返すべく職員室へと向かっていった。

 

 「……やべぇ、アケノさんも勿論だけど、他のチームも美少女多いんだよなぁこの学園!!『核の女王(ニュークリア・クイーン)』のアマノ先輩に『地這い魔女(デザート・ウィザード)』のクウジョウ先輩、他にも薙刀部と兼部しているナギサちゃんにそれからそれから--------」

 

 「……見つけた」

 

 ソースケがメモ帳を片手に興奮冷め止まぬと言った調子でエイジと並んで歩くと、校門を丁度出た辺りで声を掛けられた。

 紺と青をベースにした制服は自分たちの物と同じだが、形が少し違う事から中等部の生徒である事が分かる。

 背は低いが、顔立ちは整っており、艶のある空色の髪も相まって人形のような愛くるしさがあるが、目つきがやや鋭くその口には棒付きの飴が加えられている。

 

 「えーと……君は?」

 

 「このガンプラを見れば、分かる?」

 

 そう言って彼女が腰のケースから取り出したのは、純白のアヴァランチエクシアだった。

 彼女は先程上級生に襲われていた生徒だったのだ。

 ソースケはすぐさまメモ帳をパラパラと捲ると、彼女の項目を見つけたのか興奮気味に読み上げる。

 

 「こ、この娘は中等部一年生のカンナギ ユキナちゃんだ!! ガンプラバトル部に入部している中では最年少にして小学生大会で二年連続優勝の経験がある、天性の勘だけで戦うスピードスター……っ!!」

 

 「小学生の部二年連続優勝者……」

 

 「赤いアストレイに乗ってたのは、どっち?」

 

 ユキナはガンプラをケースにしまうと、二人に歩み寄り品定めするような目で二人を見定める。

 二人の胸の部分までしかない低身長故に自然と上目遣いになり、幾らか気まずい気分になるが、彼女はそんな事には御構い無しに二人を品定めする。

 

 「……こっちの方か」

 

 ユキナはエイジを見定めると、彼に向けて軽く頭を下げた。

 

 「さっきはありがとう。粒子さえ残ってれば、私一人でやれたけど」

 

 「アハハ……けど確かに、途中からしか見ていないけど凄い操縦技術だった」

 

 「あなたも筋は悪くない。だけど……パターン化された動きを組み合わせているのが、凄い気になる」

 

 エイジの機体に施されたアケコン制御システムは、ゲームと同じくいくつかの動きをパターン化して入力したものだ。しかし、同じ条件下ならともかく、自由自在に動かせるGBNではそれが通じるのにも限界がある。あの時はヤチヨが細かい制御や防御などを行っていたから良かったが、自在に機体を動かせるようにならなければ、この先は厳しいだろう。

 

 「お礼って訳じゃないけど……見てあげよっか? ガンプラバトル」

 

 「俺は……」

 

 エイジがこの学園に来たのは、このガンプラバトルが盛んな学園でなら、あの刀の持ち主と出会えるのではないかと考えていたからだ。元の持ち主が持っていた方が良いに決まっていると思ったのだが、まさか本人から受け取り拒否されるとは思っていなかった。

 特にガンプラバトルに興味があった訳では無かったのだが……

 先輩部員から手渡された腰のガンプラバトルケースを見やる。その中に入っているのは、元々自分の物だったが、彼女が手を加えて出来上がった深紅のアストレイと、彼女に手渡された軟鉄製の刀。それらを見て、

 

 「初めてみるのも、良いかもしれないな」

 

 「後輩の私が言うのも変だけど……ようこそ、ガンプラバトルへ」

 

 そう言って、ユキナから差し出された手を取るエイジ。その光景を見て嫉妬に狂ったソースケは、また彼の両肩を掴んでブンブンと振り回すのであった。

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