ガンダムビルドダイバーズ EXTREAM VS   作:TLS中毒患者

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Stage2-1 ウッキー!! アイツは申年!!

 ミハシラ学園の所有する専用サーバー区画には広大な敷地が用意されている。その大元はコズミック・イラ時代の砂時計型をした新世代コロニーだ。

 太陽粒子・宇宙放射線遮断フィールド発生システムを外壁側に有する円錐状構造物の底面に位置する直径10キロ相当の面積が居住区であり、支点となるセンターハブを軸に回転する事で擬似重力を生み出し、地球上とほとんど変わらない環境を確立しており、気候は亜熱帯に近い物に設定されている。側面は元より多層超弾性偏光&自己修復ガラスで覆われているが、そこから更に独自の改良が加えられ、少なくともアグニ数発で致命傷になる様な事は無い。

 

  「~~~~~~~~っ!!」

 

 その中の自然公園地区、MSの全長より大きい木々がそびえ立つこの森林の中に、機体のスピーカーを通じて最早人の物とは思えない叫び声が響き渡る。時刻はまだ昼間だと言うのに森林特有の視界の悪さもあって、その不気味具合は尋常ではない。奇声を上げながら密林を駆け巡る謎のMS。その調査を特殊ミッションとして受け、来たのは良いが、

 

 「ね、ねぇ、ナギサちゃん。やっぱり帰ろうよ……」

 

 「何言ってやがる、サトシュウ!! テメェがポイント欲しいっていうからここまで来たんだろうが!! たった敵一体倒すだけで降格危機から昇格モノなんだろ?」

 

 背部に1/550のデンドロビウムのコンテナを装備し、リボルビングランチャー付きのビームライフルを構えたステイメンを操る気弱な少年は、フェダーインライフルを構えて近接戦闘に備える深紅のペイルライダーを操る勝気な少女に柄で小突かれる。

 

 この学園のガンプラバトル部ではGBNが設定したものとは別口でランク制度が設けられており、学園側から出されたミッションには難易度に応じて追加ボーナスが入る仕組みとなっている。ランクが上がれば高性能のパソコンが使える部室や道具の揃うビルダールームでの活動が許可されるが、一定数の敗北を重ねるなどしてポイントが規定値を下回ると権利を取り上げられ、しまいには事実上の退部にまで追い込まれてしまう。

 

 GBNが競技としてプロ認定されるようになって早数年、この様なランク付けすることで各自の奮起と競争を煽るというのは大きな組織では割とよくある事だったりする。この学園もまた、その大きな組織の一つなのだ。

 

 「ウッキー」

 

 「っ!? 何か聞こえた!! そこかっ!!」

 

 深紅のペイルライダー、ブラスレイター・イザナギは密林戦用に切り詰めた短砲身ガトリングガンを音の聞こえた九時方向に向けて掃射。秒間数百発と言う暴力的なレートで吐き出される徹甲弾が森林の木々を薙ぎ倒す。続いてサトシュウの駆る重武装型のステイメン・グロリオーザが背部のコンテナに収まっていた拡散焼夷ミサイルコンテナを二機射出。MSにダメージを与えるには適しない焼夷弾だが、邪魔な密林を焼き払うのには十分な燃料を積んだ大量の子弾が親機から離れて降り注ぎ、視界内の木々を焼き払う。

 

 「ウッキー」

 

 「ちっ、まだ生きてやがる!!」

 

 「レーダー反応……後ろ!?」

 

 しかし、それらの攻撃に手応えは一切なかった。

 代わりに事前に頭上に放っていたプロペラ対空式レーダーポッドがようやく敵機の反応を捉える。数は一。しかしこの木々が密生した密林の中を信じられないくらいのスピードで駆け巡っている。

 

 「ウッキー!!」

 

 どんどん近づいてくる反応。デブリの宇宙ならともかく、MSが移動するには宇宙よりも障害であろう木々を抜けて三倍以上のスピードで迫ってくる。

 ブラスレイターは近接戦闘に備えてフェダーインライフルを持ち替えビーム刃を発振させる。ビームザンバーが組み込まれたそれは、さながら薙刀の様だ。

 グロリオーザもシールドを前面に構えてリボルビングランチャーから瞬光式徹甲榴弾をいつでも発射できるように備える。

 

 「ウッキー!!」

 

 木々の隙間から、何かが飛び出してくる。

 森林の一部を焼き払った事により視界が開けたため、頭上から差し込むシャフトからの反射光による逆光のせいで相手の正確な姿が視認できない。

 ただ見えたのは、赤く光るモノアイと、両手両足に搭載された四本のヒートソードのみ。

 

 「ウッキー!!」

 

 次の瞬間には、目にも止まらぬ連撃により二人の機体が両断されていた。

 それが、記録映像の最後だった。

 

 『EXSARU System Stand by……』

 

 

 ◆◇◆

 

 

 「知ってる? 奇声上げながら森林に出没する悪魔の噂」

 

 「俺も聞いたぜ。あのナギサが瞬殺されたって話だぞ」

 

 「一年の有力候補で駄目とかどんだけ手強いんだよ……そのミッションよく運営の許可が下りたな」

 

 放課後、アケノが率いるフォース『アケノミハシラ』の使用するビルダールームに招かれていたエイジとソースケは、入部届の紙を手にしつつその部室へと向かっていた。

 そんな中聞こえてくるのは、妙なミッションの噂ばかりである。

 

 「なぁ、みんな何の話してんだ?」

 

 「ふーむ、俺もあまり情報は入っていないんだが、何かやばいミッションがガッコ側から配布されたらしいぞ」

 

 「どんな奴が相手なんだか……」

 

 情報通のソースケを持ってしても、その問題のミッションの全容は把握できていないらしい。内容は気になるところだが、今はとりあえず先を急ぎたかったので足早にビルダールームへと足を進める。

 扉をノックして開けると、そこには……

 

 「えぇ……」

 

 積み重ねられたガンプラの箱で作られた、迷路空間が広がっていた。SDから1/60、大小様々なガンプラの箱や塗料の棚で作り上げられたまるで迷路の様な空間が広がっていたのだ。パッと見ただけでもデンドロビウムやネオジオング、果てはディープストライカーまで確認できる。

 

 「何じゃこりゃあ……?」 

 

 「えーと……アケノミハシラはこの学園にある四つのフォースの中では最も自由人が多いフォースだ。平常時は各々が好き勝手に動いているイメージがあるけど、いざと言う時の団結力には定評がある……ってとこかな?」

 

 その好き勝手具合がこの部室の惨状に現れていると言うのだろうか。

 

 「あら、ようこそいらっしゃいました。こちらにお上がりなさいな」

 

 奥の方からアケノの声が聞こえて来た。二人がその方向に向けてガンプラの箱の山の間をすり抜けていくと、ようやく広い場所へと辿り付く。

 そこでは、何故か畳の上で正座をしながらお茶を啜る黒髪長身の美少女、ミカガミ アケノの姿があった。隣に置かれた膳の上には銀色の狼と、その横で正座している金髪のエルダイバー、ヤチヨの姿が見える。

 

 「……何で茶道?」

 

 「機体の案や戦術を練る際に落ち着ける場所が欲しいと思いまして、丁度隣にあった茶道部の部室と壁を壊して融合させたのがこの部室なんです」

 

 「元茶道部の生徒たちもこの機会にガンプラバトルに興味を持ってくれたからね、かなりの人数が僕たちのフォースに合流しているよ」

 

 「私立校って自由なんだな~」

 

 「そう言う事じゃねぇと思うぞ……おっ? それがアケノ先輩のガンプラですか?」

 

 ソースケがエイジに突っ込みを入れると、そこでようやく彼女の傍に置かれた膳の上に置かれた桜色の装甲と紫色のフレームを持つ異形のアストレイの姿に気づいた。いや、果たしてこれはMS形態と呼べるのだろうか。

 脚部装甲や剥き出しのフレームは確かにアストレイシリーズ特有の物だが、機体の状態が四足歩行形態なのだ。

 肩部は後方に突き出たフィン上のパーツと一体化し、その部分は複数の刀剣状のパーツが寄り合わさって出来ている。

 背部にはアームで日本刀が装備されており、どう見ても日本刀の使用に適さないこの形態でも使用可能のようだ。

 咆哮するように口を開いた頭部はまるで狼の様で、四肢の爪状のパーツや尾部の毛飾りの存在もあり、まるで本物の獣の様な風格さえ漂わせる。

 

 「まるで狼みたいですね」

 

 「アストレイ桜花狼(オウカロウ)、と私は呼んでいます。基本的にはこの形態でいる事が多いですね、私の場合は」

 

 「アストレイはビルダーの数だけ姿を変えるって言うが、まさかミラージュフレームが原形機だとはな……」

 

 「それよりも、その入部届の紙を持っているという事は、本当に私の所で良かったのですか? 他の三つの部室の方はもう見て回られたのですか?」

 

 「いや、実を言うとですね……」

 

 ソースケとエイジは既にここに来る前に他の三つの部室も見て回っていたのだ。

 その事の顛末は長くなるのでまた別の話。

 

 「-----それで、全部を見て回った結果、俺達はここでいいかな~って……」

 

 「ふふっ、この学園のフォースは少々風変りが多いですからね。ですが、加わって頂けると言うのなら幸いです。ようこそ、アケノミハシラへ」

 

 アケノは二人から入部届を快く受理すると、標準的なHGのガンプラと大してサイズが変わらないヤチヨがやや苦労して持ち上げていた大型のハンコを受け取り、書類に判を押す。

 

 「現実での手続きはこれで終わりです。次はGBN内にて手続きを行いましょう」

 

 そう言って彼女が立ち上がると、元茶道部側の入り口である扉が開かれた。(この時二人は、現在のアケノミハシラのビルダールーム兼レストルームが元茶道部部室側の扉が正規の入り口である事を知らなかった)入り口から入って来たのは、二人の少女だった。一人は先日も会った事がある中等部のカンナギ ユキナ、もう一人は。何やら細長い何かが入ったケースを担いだ勝気な少女だった。ブレザーを腰に巻き、雑に束ねられたポニーテールが本人の活発さを示している。

 

 「おっ、いたいた。ぶちょー、あたしも新入り連れて来たぜ~」

 

 「勧誘ご苦労様でした、ナギサ。あら、あなたは確か……」

 

 「あの赤いアストレイ……作ったのは、貴方?」

 

 ユキナは彼女の隣に置いてあるアストレイ桜花狼の造形を見て、一発でテスタメントアストレイの作成者を当てて見せた。昼寝とお菓子のつまみ食いが日課の彼女だが、こう言った感覚の鋭さには目を見張るものがある。

 アケノは少し意外そうな表情を浮かべるが、一呼吸置くとすぐさま笑みを浮かべる。

 

 「はい。操縦は彼ですし、彼もヤチヨの補佐があっての事ですけども」

 

 「それでも、あの時は貴方の機体に助けられた。ありがとう……ございます」

 

 不愛想且つタメ口で済まそうとするユキナを彼女の幼馴染であるナギサが小突き、訂正させる。二人は三つも年が離れているが、お互い姉妹の様に認識しているのでこれぐらいの事は日常茶飯事だ。何か武術でも嗜んでいるのか小突きにしては威力があったらしく、ユキナは突かれた側頭部を押さえる。

 

 「……ちょっと、痛い」

 

 「ったく、初対面のぶちょーぐらいには敬語使いなよ。ユキナももう中学生なんだからさ」

 

 「まぁまぁ、ナギサさんもその辺りにして。丁度新入部員が集まった事ですし、そろそろGBNに向かいましょうか」 

 

 アケノが手を打ち鳴らし、ヤチヨを肩に乗せて立ち上がると四人を伴ってパソコンルームへと向かった。

 

 

 ◆◇◆

 

 GBN フォース アケノミハシラ管轄下宇宙ステーション 『アケノミハシラ』

 

 「-----で、早々に模擬戦とはなぁ!!」

 

 着崩した青の学ランを来たソースケは、機体を側転しながら変形させ、更に慣性で進んだ所で変形解除しながらブースターポッドからミサイルを射出して牽制をしつつ着地保護をする。 

 パッと見はホワイトを中心に赤のアクセントが光るライトニングガンダムの改造機、ヴォルテックスガンダムだが、バックウェポンシステムを中心に各部に手が入れられており、AGE-2の様な翼の形状でありながら、フルバーニアンの様にミサイル内蔵のブースターポッドを持ち、それ単体でも切り離してSFSとして利用できるなど、今までのライトニングBWSの集大成とも呼べるヴォルテックスBWSを持つ。

 

 新入部員同士でのレクリエーションという事でエイジとユキナを含む三人対、部長であるアケノの駆るアストレイ桜花狼との模擬戦を行う事になったのだが、とにかくこちらの攻撃が当たらない。しかも、二人は瞬く間に瞬殺されてしまった。残るは自分一人のみのタイマン勝負。

 草原を駆ける銀色の狼は口に咥えたMS用の日本刀を振りかざし、岩場を蹴ってソースケに向かって襲い掛かる。 

 

 「食らいやがれ!! 波動裂帛ボム!!」

 

 腰部フロントアーマーに搭載されていたハンドグレネードを投擲、地面に着弾すると直線状に次々と火柱が発生し、銀狼の装甲を焼く。トライバーニングガンダムが劇中で披露し、ゲームでも要となる技、次元覇王流奥義 波動裂帛拳を使い捨ての手投げ弾として使えるようになった物で、威力こそ本家と遜色ないが腰部フロントアーマーに二発しか携行出来ないのが弱点ではある。

 

 「こいつで少しは……何っ!!」

 

 しかし、アケノはその程度でやられてあげる程お人好しでは無かった。爪の先から一瞬だけ発生する粒子状の足場を駆使してジグザグに動き、雷鳥を今にも食い殺さんと牙を剥く。アストレイ系である故の装甲の低さを、人型の常識を外れた圧倒的な機動力を持って補っているのだ。

 

 「ならこいつはどうだぁ!! プラフスキー・パワーゲートォ!!」

 

 ヴォルテックスBWSに搭載された四基のビットが起動し、ビーム刃を展開して正面に円形に配置、プラフスキー粒子の膜を展開させ、主兵装である大型ハイビームライフルを構えてその砲身を開き、最大出力でそこに向けて照射する。

 ゲートを潜り抜けたピンク色の照射ビームはそこでさらに増幅され、青白い極太のビームとなって銀狼に降り注ぐ。

 

 「トライファイターズの武装の全部乗せ……面白い機体ですね。ですが――――――」

 

 刹那、銀狼が口に咥える日本刀の刀身の色が無機質な鈍色から、ソースケの放ったハイバーストモードと同じ青色に()()した。

 刀身を体の左側に構えたまま身を捻りつつ一閃、その一撃はビームを切り裂き、プラフスキーパワーゲートを切り裂き、ヴォルテックスガンダムの両腕をも切り裂いていた。即座に身を捻らなければ正面からハイネエエエエエエエされる事になっていただろう。

 

 「まだアケノミハシラ首領として、新入部員に後れを取るわけには参りませんので♪」

 

 「つ、つえぇ……」

  

 三対一で挑んでも、各個撃破に持ち込まれて敵わなかった。圧倒的な技量、そして高いガンプラの完成度。それらが合わさっているからこそ、四人の部長の中では唯一の二年生にして、この地位に立てている事は伊達では無いと、この身で実感した。

 ソースケは自身のメモ帳に追記を加えつつ、切り落とされた両腕を上げてお手上げのポーズをとるのであった。

 




 私事ですが、大阪でエクバのイベントやるらしいので参加しようと思っています。

 自分東海勢なので旅費が掛かりますが、全国大会出られる腕無いのでこう言った初心者、中級者向けの公式イベントには参加していきたいですね。

 交流戦の際はS覚ゴールドフレーム一択で行くつもりなので対面したら宜しくお願いします。

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