ガンダムビルドダイバーズ EXTREAM VS   作:TLS中毒患者

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Stage2-3 ウッキー!! アイツは申年!!

 「さぁ、反撃開始と行こうかぁ!!」

 

 ようやく一機撃破出来た事により上がるエイジの士気。しかし、ゲームと違い部位損傷の存在するこのGBNでは先程の戦い方は向いていなかったらしく、同じ動作で片手で日本刀を振り続けた事により左腕の各関節に無視できないダメージが蓄積されている。適切な得物の振り方をしないと肉体に負担が掛かるのと同じく、適切な扱い方をしなかった故のダメージは同じ人型であるモビルスーツにも伝わってしまっていた。

 

 「森から更に二機、三機……まだまだ来ますぅ!?」

 

 「けれど左腕は今のでほぼ使えない。さっきの戦い方は無理だよ」

 

 「エイジが出来なくても俺達がいらぁ!! ユキナちゃん!!」

 

 「……分かってる」

 

 左腕にスパークが走っているテスタメントアストレイは日本刀を鞘に戻すと、上空から飛びかかって来たイフリート改の攻撃をミラージュコロイドで姿を消しつつ後退してかわし、トリケロスTを構え直して二連装ビームガンで牽制を加える。

 両足すらも腕部になっているイフリート改は、モビルスーツの全長を遥かに超える木々の枝をまるで猿の様に腕で交互に掴んで移動し、スラスターも無しに信じられない速度で攻撃をかわすが、飛び上がったところにバックラーシールドからビームソードを発生させたソースケのヴォルテックスが待ち構える。

 

 「ごり押しっつたらコイツだ!! 次元覇王流ウェポン、流星螺旋剣っ!!」

 

 左腕から発生したビームソードはやがて渦を巻き、ビームドリルを形成する。そのまま高い推進力を生かして突撃、ヒートソードをクロスさせて防御するイフリート改だが、ゲームの様にガード動作を取れば必ず防げると言う訳でもない。ソースケの流星螺旋剣はヒートソードを砕き、胴体に突き刺さった。

 明滅するモノアイを他所にそのまま前進して木に叩き付け、止めとばかりに両肩のビームキャノンを撃ち込む。

 

 「考えず、直感で、最速で、最短に」

 

 牽制射撃を続けるエイジの動きを封じようと現れるイフリート改に対して余計な小手先を使う事を止めたユキナのアヴァランチブランシェが両肩のスラスターユニットを全開で吹かして突撃、突き出したGNソードの切っ先が相手の反応速度よりも早く捉え、その胴体を真横から串刺しにし、切り払いながら一閃、イフリート改はポリゴンの臓物をばら撒いて爆発四散する。

 

 「二機撃破確認!! けど、森からまだまだ反応増えてますぅ!!」

 

 「どんだけいるんだよ!? ガンダム無双じゃねぇんだぞ!!」

 

 「私も……少し休憩欲しいかも……」

 

 ダッシュに継ぐダッシュで粒子の息切れが発生するユキナ、そしてソースケも遠距離武装の残弾が底を尽き、内蔵火器は全てリチャージ待ち、エイジもランサーダートを超高速射出させて一機を撃破するが、先ほどのゼロ距離発射がいけなかったのか反動のダメージで右腕までもがスパークを起こす。

 

 「右腕ダメージ、甚大」

 

 「くそっ!! 腕が上がらねぇ!!」

 

 「金枠はすぐ腕が使えなくなるジンクスでもあるのかよ!? 取りあえずこれを使え!!」

 

 ショートを起こし、火花を散らす右腕を肩から切り離して地面に突き刺し、即席の防護壁と化したトリケロスの陰でソースケがハイパービームライフルから分解したビームハンドガンを手渡す。

 その間にもどんどん増えるイフリート改の反応。それが計八機。

 両手両足で地面を付き、集団でまるでゴリラの様に迫ってくるその姿にはある種の恐怖があった。 

 

 「クソッタレ!! 初ミッションから死んでたまるか!!」

 

 「あわわわわ……り、離脱しましょう!! ミッション放棄すれば安全圏まで離脱は可能ですよ!!」

 

 「冗談じゃない。けど……」

 

 こちらは三機とも既に満身創痍。遠距離武装もエイジが持っているビームハンドガンが数発分のエネルギーを残すのみ。ユキナが再ダッシュ可能になるまでには数分を要す。

 8機のイフリート改はこちらの抵抗が弱まったのを確認してか、ジリジリと迫り歩く様子から一転。猛ダッシュで詰め寄り、背部に追加されていたミサイルランチャーが火を噴く。

 周囲に逃げ道を塞ぐ様にして爆発が起きるミサイル、爆風で機体の姿勢が崩れ、離脱するタイミングを失う三機。

 四機が一斉に飛び上がり、ヒートソードを振りかざす。このままでは、やられる。一人が気絶し、三人が諦めかけた時だった。

 

 『------アハッ』

 

 通信にかすかに聞こえた少女の笑い声。どこか狂気じみた笑みと共に放たれた何かは地上から迫りくる四機のイフリートの中心で爆ぜた。発生した青白い爆風が、超高速で飛翔した何らかの砲弾が発生したソニックブームが、イフリート改を構成するあらゆる要素をずたずたに引き裂き、焦がし、消滅させる。爆発に巻き込まれたエイジたちはそのまま吹っ飛ぶが、結果として上空から来たイフリート改の攻撃をくらう事は無かった。

 

 「何だ今の馬鹿げた攻撃は!?」

 

 「タダの実弾があんな破壊力を出せる訳がねぇ……あの機体は、まさか!!」

 

 ジェネレイトドラグーンのセンサーで周囲を捜査したソースケは、遠くの岩場から狙撃していたであろう機影を確認した。黄色の塗装とワンポイントの藤紫が映えるドレッドノートガンダムだ。本来ドラグーンシステムがあったであろう箇所には複合兵装ユニットが取り付けられており、その更に背部にはMSの半身程はあろうサイズの大型ジェネレーターとMSの全長を超えかねない程の超大型多薬室砲塔が接続されている。複数接続の核動力に破壊力の全てを任せた、暴力の権化。

 

 『はーっ、スッキリしたぁ……アケノの頼みだからって休憩中に仕事先のサーバーから来てるけど、こりゃ想像以上に酷いわね。そこの子、大丈夫~?』

 

 そんな物騒な機体に乗っている人物とは思えない程明朗な声が通信に聞こえて来た。エイジは訳が分からず生返事になってしまうが、ソースケは機体と武装を見てデジタル版「美少女事典 著ソースケ」を検索し、一瞬でその人物を当てて見せた。

 

 「あれは……その美貌から読者モデルもこなす『核の女王(ニュークリア・クイーン)』、アマノ キョウカ先輩の、ドレッドノート・ヴェールヌイ……!?」

 

 『おっ、君がアケノの言ってた情報通の子かな? そーだよ。高等部二年生、ヴァリアント騎士団戦線、序列二位の女王のアマノ キョウカとはこのあたしのこと!! あたしは仕事あるから手伝えるのはここまでだけど、今二人がそっち向かってるから』

 

 じゃ、あたしはこの辺で~、と手をヒラヒラさせてからログアウトしたのかポリゴンとなって消える黄色のドレッドノートガンダム。彼女が消えると同時に、入れ替わりで通信が聞こえてくる。同時に姿を現したのは、日本刀を口に咥えた我らが群れを束ねる紫銀の狼。

 

 「遅ればせながら、参戦致しますよ」

 

 「アケノさん!!」

 

 「まさかここまでの事態だとはこちらも想定外でした。申し訳ありません、このような形の初ミッションを言い渡してしまうなんて、統領失格ですね」

 

 コックピットの中で肩を竦めるアケノは、その頭部を振りイフリート改の二本同時に叩き付けられたヒートソードを機体の右側に構えた日本刀の刃で受け止める。工芸用品ともとれる繊細な刃でその様な使い方をすれば通常なら良くて刃こぼれ、でなければ刀身が折れていただろう。しかし、彼女の刀は折れる事は無く、その色を銀色から黒ずませる。そして色が変色したその直後だった、先ほどまで拮抗していたはずのヒートソードの方が斬られていくのだ。

 

 「!?!?!?!?!?」

 

 「理解できない、と言った表情ですね。この『月夜ノ羽ケ斬(ツクヨノハバキリ)』はVPS装甲製、相手に応じて最適な切れ味に変化する変幻自在の刀なんですよ。つまり――――――」

 

 ヒートソードを手放して何とか直撃を避けたイフリート改だったが、次の瞬間にはそこに狼はいなかった。僅か1秒足らずの間に空中で身を捻りながら、両手両足を人型のそれに戻し、狼の頭部がバックパックに下がるとその下から烏帽子の様な大型の角型センサーを持つ一つ目のアストレイの頭部が姿を現す。この姿こそがアストレイ桜花狼、そのMSモード。

 狼の口から手放された日本刀を身を捻りながら振りかざす。それを見たイフリートは脚部のヒートソードを使って防御しようとするが……

 

 「一度目はあっても二度目はありません!!」

 

 抜き放たれる上段一閃。その黒ずんだ刃が放つ一撃は先程と同様ヒートソードと拮抗することなく一方的にその得物を本体ごと袈裟切りに切り裂いた。爆発に怯えず息を吐き、残身。その一連の洗練された動作には美しさすら感じる。背後からもう一機のイフリート改が襲い掛かるが、上空から舞い降りた何かが巨大な得物でそれを叩き潰す。爆炎から姿を現した黒銀の機体は、機体の全長ほどある大型ランスメイスを肩に構えた。露出したフレーム形状から鉄血のオルフェンズに登場するガンダムフレームタイプの機体だと分かるが、相違点はスラスターから噴き出しているのがGN粒子だという事だ。

 

 「全く、少し油断し過ぎじゃないか? アケノ君」

 

 「騎士団戦線統領である先輩の腕、信じていましたから」

 

 「これはまた上手い事を言う……では、ガンダムテュルフィング。先輩らしく少々暴れさせて頂く!!」

 

 バルバトス第六形態の物がベースであろう灰銀の装甲を装備し、頭部と背部に突き出た剣の様なパーツを持つ機体は、身の丈を超えんほどの大型ランスメイスを振りかざし、スラスターからGN粒子を吹かして急速接近。そのまま身軽故の機動力を生かし、質量を生かした打突と叩き付けのみで残り二機のイフリートを相手に手玉取る。鈍器を使うと言う面を除いて、その戦い方はあまりにも目の前の少女のそれに似ていた。

 

 「GNフレーム……エイハブリアクターの代わりにGNドライブを搭載した、新機軸」

 

 「え? ユキナちゃんあの機体知ってんの?」

 

 「だって、あれは……」

 

 ユキナの言葉は途中で爆発に遮られる。信じられない膂力で振り回された大型ランスメイスのエッジが効いた石突きが、叩き裂く様な形でイフリート二体を纏めて両断していたのだ。地面に突き刺さった得物を引き抜き、再び肩に構え直すガンダムテュルフィングはこちらを一瞥する。 

 

 「自己紹介と援護が遅れて申し訳ない。僕は三年生 ヴァリアント騎士団戦線の序列一位、つまりはフォースマスターを務めているカンナギ アキトだ。今回の件なんだが詳細を説明すると……」

 

 そこで彼は、左利き仕様の純白に調整されたアヴァランチエクシアの存在に気が付いた。全身の所々に傷がついているが、見間違う筈もない純白、その白も通常の白では無く、ガンプラの塗装前に施すサーフェイスの下地故の、無機質な白。

 

 「久しぶりだね、ユキナ」

 

 「……気安く話しかけるな、クソ兄貴」

 

 ユキナはアキトに伸ばされた手を払い除け、素早く展開した左腕のGNソードを振り払ってからテュルフィングの頭部目掛けて突き立てる。難なくそれを回避するアキトだが、並みの反応速度の機体では左腕が両断されていただろう。日頃は常に無表情な彼女だが、その言葉の端々には刺々しさが伝わって来た。まるで、心の底から憎み、拒むかのように。

 

 

 「私は、アンタを倒すためにここにいる。それを忘れないで」

 

 

 ようやく気絶から復活したシイナには、ちんぷんかんぷんの状況が繰り広げられていた。

 

 ◆◇◆

 

 ミハシラ学園高等部 ヴァリアント騎士団戦線 部室

 

 「……つまり、今回の事件の原因は猿にVRゲームをやらせたらどうなるかの実験が原因だった、と」

 

 後日、客人としてヴァリアント騎士団戦線の部室に招かれていたエイジとソースケ、そしてシイナはそのフォースマスターである空色のショートカットが特徴の気優しそうな高等部三年生生徒、カンナギ アキトから今回の事件の要因について説明を受けていた。

 何でも、どこぞの研究機関が猿の知能研究の実験の一環であろうことかチンパンジーにGBNをさせていたのだと言う。

 騎士団戦線のメンバーの一部は合宿と称してその施設に赴き、その実験に見張り兼敵役(アグレッサー)として協力していたのだが、何者かが隔離サーバーにハッキングを仕掛け、学園のサーバーと接続して猿たちを放流したのだと言う。

 下手に強制ログアウトすればどのような影響が出るか分かった物で無かったため、数日ほど放置されていた様だ。

 

 「まさかあんな実験の協力を引き受けさせられるとは思っていなかったよ。サーバーをハッキングした犯人については目下調査中だ。僕の方から学校側に進言も出してある」

 

 「あの、カンナギ先輩って、もしかして……」

 

 「……あぁ、そうだった。君達は妹と同じフォースだったね。あんな不愛想な奴だが、どうか仲良くしてやってほしい。僕と妹の問題についてはまたいずれ話そう。今日はもう時間だしね」

 

 少し言葉に詰まった後、はぐらかすようにそう言ったアキトは壁に掛かっているジオン公国のマークが施された壁時計に目を向けた。時刻は既に五時半を回ろうとしている。これ以上話せる時間も無いので、三人はソファから立ち上がると礼をして部室を去った。

 

 「それにしても、まさか俺達が戦っていたのが猿だったなんてなぁ」

 

 「私も驚きました。でも、お陰でポイント大量ゲットですね!!」

 

 

 

 GBNのデバイスに表示されたランクポイントの数字を見て嬉々とした表情で喜ぶ黒縁メガネが特徴の小動物系後輩、シイナ。気弱でパニックに弱いが、何回か組んだ所電子戦の才能が高い事にエイジは気づいた。しかし、MS戦闘はからっきしだったらしく、それで最近オペレーターに転向したのだと言う。

 

 「パーツデータも貰えたしな、俺はヴォルテックスの追加装備でも考えるかね……」

 

 「エイジ先輩は貰ったポイントで何します? これだけのポイントなら半期分の最上級製作室の利用権利とか……」

 

 シイナがタブレット端末で現在のポイントとそれを消費して得られる学園側から得られる援助の項目を照らし合わせる。

 今回の初ミッションで得た報酬は、お詫びも含めて高難易度ミッションに匹敵しかねる程のポイントだった。援助の内容は施設の利用権の他にもパーツデータのガシャや塗料、工具単体など、様々な物が揃っている。

 

 「取りあえず、コイツを強化する為に使おうかな……」

 

 前回の戦闘では思ったように動けなかった愛機、テスタメントアストレイの入ったケースを見ながら、エイジはそう呟いたのだった。




以上、第二話でした。
先日発表きましたね、ダイバーズ続編。主人公期の換装システム見て思ったのが「あれ? これエクストリームじゃね?」でした。あっちはアーマー単体では動きませんが……

今回は部長の一人、ミカガミ アケノの機体を紹介!!

 機体名:アストレイ桜花狼

 武装:イーゲルシュテルン、ビームライフル、ビームサーベル×2、VPS製日本刀月夜羽々斬(ツクヨノハバキリ)、CソードBタイプ×2、CソードAタイプ×2、サーベルファング、ソードドラグーン×6

 特殊装備:衝撃拡散繊維

 特殊機能:ミラージュコロイド、四足歩行形態に変形可能

 アケノミハシラの首領を務める少女、ミカガミアケノの操る桜色のミラージュフレーム。
 頭部は指揮官機用として探索能力が極限まで高められたコンプリートセンサー型であり、それ故にモノアイ仕様。一定範囲内なら並大抵のステルスは見破ることが出来るほか、高い通信能力を持つ。
 腰部リアアーマーや両肩部付け根に搭載された銀色の毛飾りは衝撃を吸収する追加装甲の役割を持ち、防御範囲こそ限定されるが機体重量を余り増加させずにアストレイの弱点である低防御力を補っている。
 四足歩行形態ではより狼の頭部らしい形となった専用バックパックにVPS製日本刀月夜羽々斬(ツクヨノハバキリ)を咥え、悪路やデブリ帯を物ともせず走破して対象への接近が可能。適格に戦況を把握し、共に敵陣へと駆け抜けるその姿はまさしく狼の長と呼べるだろう。
 
 
 
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