「希楽 與家 の 恢輝譚(かいきたん)」   作:魔性/ALL

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お久しぶりでございます。投稿者の魔性/ALLです。

最近忙しく、中々に手をつけることが出来なかった為に随分と投稿が遅れてしまいました。それ故に色々とハーメルン事態も変わっているみたいで、悩みながら作りました、、はい。

多分また、投稿するのは先のことになりそうですが、ゆっくりと御付き合いして頂けたら幸いです。

では、どうぞ。


赤い悪魔のmurderHell③

 今自分は、自身にこれまで起きてきた事柄を、嘘偽りなくとある人物に話している。その人物というのが、この赤い館の主である「レミリア・スカーレット」本人だ。

 

 彼女は、自分の話に耳を傾けることを約束した。だから、自分は彼女から信頼を勝ち取る為、本来ならあまり話さない事まで話している。それは、幻想郷の外である自分がいた世界のことの記憶から、こちら側に来てまでの覚えていること全てだ。

 

 だが、やっぱり自分は信じて貰えていない。

 

 話している最中、ずっと恐怖されているように自分は感じていた。それは、あからさまに目を逸らしたり、言葉が籠ってしまったのか上手く聞き取れない部分が多数あったりしたからだ。

 

 ___やっぱり、難しい。

 

 人から信頼を得ることが、簡単な話ではないのは分かっているつもりだった。それも、見ず知らずの人間の男。突然現れては、レミリア・スカーレットの情報を、他人には知られてはいない彼女自身の情報を一方的に知っているかのように話す。

 

 しかも、自らの事を話すからそちらも話せと言わんばかりに、自身の縄張りへと入って来て語り始めたのだから。

 

 そんなこと、誰だって少しでも考えたら恐怖する事だった。実際、我々がその行為を行われて、不快感を抱かないと言われたら嘘にならないか? 

 

 確かにそういった感情や主観を抱かない人もいるだろうが、特に彼女らはそういった事柄に置いては酷く恐怖を抱く。それは、ルーミアの件で良く分かっているつもりだった。それなのに、自分はそこまで考えが及んでいなかった。

 

 いや、考えてはいたのかもしれない。けれど、自分は「そんなことない」と自身の考えを否定した。その点において自分はとことん甘かったのだと認めざるを得ない。

 

 後悔先に立たず。とは、この事なのだろう。

 

「...ふむ。なるほどね、じゃあ貴方は外来人と言って、この幻想郷の元々の住民では無かったのね」

「そして、私の事を知っているのは噂話とかではなく『外の人間だから』ということで間違いはないかしら?」

「はい。間違いはありません。私が貴方の事を知っていたのは外で貴方の名前と存在が描かれたモノを見ていたからです」

 

 彼女は、座っている1人用のソファーの上で体重を背もたれに預ける。そして、徐ろに交差するよう左足を上に組み、頭を捻って考え始めた。目も一緒にゆっくりと閉じて、多分だが思考を巡らせているのだろう。

 

 自分自身も結構長く、いや本当に長く話していたような気がする。自分も思考の整理をするとしようか...

 

 そしてこれ以上、自分が彼女に話せることは無い。あとの事は彼女に信じて貰えるかどうかで、この先の全てが変わってしまう。

 

 自分に出来ることは、もう全てやった。最後は彼女の言葉を待つのみ、それくらいしか出来ることはない。

 

 しかし、本当に時間というのはときに...ゆっくりと進む。

 

 それは、時間感覚が無くなるといった表現があっているのか、それともズレてしまったという方が正しいのかは分からないが、何分が何十分も経ったかのように感じてくる。相変わらず彼女は、目を瞑って考えたまま言葉を発さない。

 

 そうしていると、ぽつりぽつりと雨音が鳴り始めた。本当にこのタイミングでの雨は、良いものでは無い気がする。考え方にもよるのは確かだが、静かな空間で自分の考え方を変えさせられるような気がするからだ。

 

 雨が降る音がする窓の外。その音に気を取られては、思考を巡らせていたものの止まってしまう。雨で整理していたものを断ち切られたせいなのか、判断力が徐々に鈍くなっていくのを感じた。

 

 あぁ...憂鬱になる。

 

 そうやって考えていると、自分はどうやら俯いて居たのか、目を開けると紅い色の絨毯が映りこむ。

 

 どうやら雨は、どんどんと酷くなっている。そして、何よりも雷の音が鳴り始めた。

 

 ピカっと雷が光る度に、彼女の姿が映し出されている。そんな彼女の顔はまだ、目を閉じて難しい表情をこちらへと向けていた。

 

 まだ、この時間が続くのかと思っていると。

 

「ねぇ...質問があるのだけれど」

 

 声をかけられた。

 

「はい。なんでしょうか...?」

 

「貴方は、多分ここまで順調にやっているつもりだった。ルーミアを引き連れて、夜にわざわざ血を届けた。そうこの私から信頼を得る為に。他人の想いを勝手に背負い込んで身勝手に動きだした...間違ってないわね?」

「...はい。間違っていません」

 

 ルーミアに対して、自分が言った言葉は伝えたかった事は本当だし、本物だ。手を差し伸べ続けて、傷付けられている人を見過ごすなんてことはしたくない。だからこそ、自分はこうやって危険だと知っていても全てを伝えてきた。他に間違いは、無いと思う。

 

「やっぱり、貴方って結構なバカなのかしら?」

「...え? はい?」

「貴方は、確かに誠実な行いをしたわ。誰からも信頼を得ようとしたならば、嘘偽りで塗り固められた言葉を使ってボロを出すよりも、真実を伝えた方がいい。それはなんら、間違ってはいないわね」

「それが、一体どうかしたんですか?」

「はぁ...けれどね。貴方の言ってる事をこちら側が信じるか信じないかはまた別の話、貴方がどれだけ誠実な対応をしても話の受け取り手側が悪かったら意味が無いのよ」

「はい」

「つまり、貴方がやったことは戦略としては最悪。賭けにしても、余りにも部が悪すぎるもの。館の主である私に信じられたいと思うのは結構、だけど、それに対して時間をかけたわけでもなければ、全て私に任せきりな所もあるわ。例えば、私の能力を知っているから私に『運命』を見てもらえればいい?。そんなの貴方が勝手に思い込んでいるって言ってしまえば全部終わりなのよ」

「それに、馬鹿正直に伝えて相手に不信感や、思い上がらせて貴方に生命の危機を与える可能性があることは考えなかったのかしら?」

「貴方は『人が優しすぎる』のよ。本当にバカみたいに、相手を信じていた。そして、メリットが私こと『レミリア・スカーレット』にそこまで無いことや、自分の危機の事をしっかりと考えていなかった」

「一言で言ってしまえば『愚策』だわ」

 

 強く圧をかけるように、彼女はそう言った。自分は、その言われた内容にただただ黙ることしか出来なかった。ほぼ全てを、今までやってきた事を否定されているというのに。多分、心の何処か納得してしまったのだろう。だから、声を発することが出来ないのだ。

 

 実際、間違ってはいないんだろう。

 

 自分は勢いに任せて、確かにここまで来た所があった。もしかしたら、自分は自分の知識だけを信じていたのかもしれない。『レミリア・スカーレット』という人物は、運命を操れる。だから、自分を信じて貰えると思い込んで。見てもらえれば、分かってもらえすれば、力を貸してもらえると。

 

 甘いとか、そういう以前の問題だったのかもしれない。自分こそ、本当に彼女を信じていたのか。それすらも怪しくなってきている自分がいた。

 

 だけど、同時に多少の憤りを感じている自分もいる。そこまで言わなくても、良いんじゃないかと。

 

 自分が相手の気持ちを先越して、自分勝手な行動をしたのは分かっている。だが、それも助けたい一心でという気持ちでやっているのに何故なんだって。

 

 固く握りこぶしを作る。それは、憤りも勿論あったが、悔しくて仕方ない気持ちもあった。自分は、相手に響かせる大層な言葉なんて持っていない。話していたのだから、その間の言葉だとするとわからなくはないが、その様な反応はなかった。それに、どれかなんて自分は分かってない。

 

 この先、どうすれば良いのだろうか。

 ずっと黙って、彼女の話を聞くことなんて無理だろう。しかし、ピリピリとした酷く重苦しく、荒んだ空気が流れている。言葉1つ捻り出す、その行為をするのに勇気が必要な程の雰囲気。そんな状況、慣れていない自分が耐え切れるはずがなかった。

 

 冷や汗が止まらない。ずっと考えてはいるものの、纏まらない。何か言葉を返さなきゃいけないというのに、その言葉が見つからなかった。

 

 落ち着け。深呼吸して落ち着くんだ。

 

 活路を見い出せ。それができれば、この状況から覆れるかもしれない。

 

「私は、そう言われたとしてもこの行為を辞めるつもりはありません」

「...何故? さっきも言った通り、私が信じなければ終わりなのわかっているのかしら」

「確かに、信じられていなければ私は終わりです。殺されているかもしれません」

「ええ、そうね」

 

 自分は深く息を吐く。落ち着かせて、思考を全力で巡らせるために。

 

「ですが、本当にもし何も信じられていないのであれば、私はもう死んでいたはずなんです。それこそ、話している途中に殺されているかもしれません」

「...」

「レミリア・スカーレットさん。紅魔館の主である貴方なら、すぐに排除出来るほどの力を持っていたはずです。私のような非力な人間なんて、いとも簡単に殺せる筈なんですよ。一瞬で、肉や骨を塵にできるほどの」

「つまり、貴方は何が言いたいのかしら?」

「すみません。端的に言えば『何故』忠告をしてくれたんですか? 私が本当に信用に値する人間ではないのなら、この先の心配なんて必要ありませんよね。死ぬ前の人間に、心配なんて必要なのでしょうか」

「疑問に思って居たんです。お人好しだと言ってくれた時、私は怒られていると感じていた。もし、本当に私を殺すのならもっと違う感情が湧き出ているはずです。憎しみや、嫌悪と呼ばれる黒い感情」

「でも、あの時に感じたのは嫌な感じでは無く、別の感情でした。そう、優しさを感じていたんです。だから、疑問に思っていました」

「最終的に、私が思い付いたある答え。もしかして本当は『信じてくれているんじゃないんですか?』いや、正確には『心を許してくれているんじゃないんでしょうか?』」

 

 自分は早口になりながらも、考えを述べていく。考えを述べるとはいえ、相手を煽っているようになってしまっていた。咄嗟に言われた事を対処するのに慣れていないとはいったものの、これは最早賭けである。

 

 もしも負ければ、は無い。自分にとって最後になるかもしれない思い切った行動。レミリア・スカーレットに言われ、自分なりに考えた発言を伝える。

 

 ...お願いだ。想いよ、届いてくれ。

 

 彼女は難しい顔を浮かべ、指を机に対してゆっくりとテンポよく小突いていく。少しその行動を続けたかと思うと、彼女はソファーから立ち上がり、カーテンのある大きな窓まで歩いていった。

 

 自分は、それについて行く。彼女がずっと窓の外を眺めていると、こちらに振り返り口を開いて話し始めた。

 

「...考えたわね。私が本当に信じていなかったら、とっくのとうに殺しているわ」

 

 彼女は窓に手を当てて、こちら側にゆっくりと振り替える。その目は、しっかりと自分に向けられていた。

 

「もしも、中途半端に信じていたのだとしても、私は館にすら入れてないでしょうね。あと、私は中途半端に都合の良い部分だけ信じる外道ではない。レミリア・スカーレットの名が穢れてしまうもの」

 

 紅く、鋭い眼光。けれど、その目に映っているのは自分という存在ではなく、違う誰かを見ているようにも感じる虚ろな目。優しくて、悲しげを残した表情だった。

 

「まぁ...でも及第点といったところかしらね」

 

 彼女も、ふぅとため息をつく。そして、こちら側に近付いてきた。先程と同じような距離まで近付くと、彼女は自分に対して目を見据えては話を続ける。

 

「一つだけ、警告をしてあげる。貴方は、人を疑うことを忘れては行けない。この幻想郷にいるなら尚更。聞くか聞かないかは別だけれどね」

 

 あの時、憤りを感じていたのは、自分の焦りだったのだろう。思考して口に出してやっと自分は、彼女の言葉の意味を理解した。

 

 諦められていなかった。彼女は、最後まで話を聞いてくれていたのだ。待っていて貰えていたのかは分からないが、自分は彼女に対して感謝の想いしか湧かなかった。先程までの、憤りはどこにも無い。

 

「ありがとうございます。話を聞いてくださって、そして、煽るような言い方をして申し訳ございません」

 

「別にいいわよ。けれど、えぇ...私はまだ貴方を信じきっていない。だから、私は一つ貴方に提案を持ちかけることにしたわ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、彼女は自身の手を胸に当てる。

 

「それは、一体...?」

 

突然の笑みに困惑し、自分は彼女に質問を問いかけた。何をやるというのだろうか。

 

「私、レミリア・スカーレットと希楽與家という人間と契りを交わす。即ち...

 

『悪魔との契約よ』」

 

 To.be.continued...




お疲れ様です。

今回はイベント前の閑話として、書かして頂きました。多分調整は入ると思いますが、忘れていたらそのままになると思われます。

少し急ぎめに書いてしまったため、最後の方は文がおかしくなってしまっているかも知れません、、申し訳ない。

自分も精進していけるよう努力していきたいと思います。皆様は、コロナにお気を付けて毎日をお過ごしくださいませ。

では、また。

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