「あれ!?」
「さっきまでいたのに...。」
野盗の襲撃があり、歩哨壕からの緊急連絡が入ってすぐ、一中隊は戦闘態勢へと移行。駐屯する村に住む住人達に野盗が来たことを伝えて触れ回った。野盗をやっつけるまで、今居る家屋ごとに入ったまま絶対に出るなと。しかしそんな中帰らない者の姿があることを、数人の子供達が声を上げて村長に知らせる。
「何?!誰か来とらん者がいるのか?!誰だそれは!」
「六助!」
「彼奴は、もうどう言っても聞かんのか?!」
あのよく良太と一緒にいる少年は、過ぎたる好奇心の固まりであることは言わばこの村の誰もが知っていることのようだ。闇夜に銃を持ち動き回って警戒する迷彩服姿の自衛官を見れば、少しは物怖じしそうなものを、六助は好奇心が高じて恐怖などどこへやらである。村長が家屋の出入り口に立つ1人の隊員、祐希に向けて尋ねる。
「先の世のお役人さま!どうか、どうかお願いします!貴方様方のお力で、どうか六助を助けてくだされ!」
「村長さん。...安心して待っていて下さい。六助くんは、ちゃんと連れて戻ります。」
村長に下げた頭をどうか上げるように促しながら、白井祐希一等陸士は優しい声でそう伝え念入りに家屋から離れないように伝え、その場を後にした。
....そしてそれから戦闘状況が終わり、平素に戻ると彼は六助を探し回る。家屋の影、付近の雑木林、神社仏閣など見て回った。しかしどこにもいない、息をちょっと整えがてら一応状況が発生した歩哨壕までやってくる。そういえば今の歩哨当番は良太さんと進さんかと思いながら、その場へと足を運ぶ。
「うわぁ....。」
歩哨壕の前方を見れば、明らかな血痕が辺りに散らばっているのが見える。死体の収容はまだ済んでいないらしく、数十名の隊員達が甲冑に身を包んだ死体を2人がかりで運んでいく。脱力した人間の身体はかなり重く、そしてそれに甲冑などが加われば重さは更に増す。かなりの重労働だ。
「起き上がったり...しないよね。」
「するわけないさ。ちゃんとトドメは刺したからな。」
祐希の独り言を拾った進が、念の為に狙撃銃のスコープ越しに野盗がやってきた方向を見通しながらそれに答える。歩哨壕の周りにはそこまで迫って来た野盗の群れの血が確認出来、どれだけ緊迫した状況かを物語る。そしてそれを他所に歩哨壕のすぐ近くには、ある2人の姿が。
「あれって、進さん。良太さん、ですよね?」
「どうしたいきなり。ストレスでタガが外れたか?」
あまり想像出来ない場面に遭遇した時の驚きというものは、誰しも経験をしながらでもないと見当がつかない。それより、歩哨壕の隣には良太と六助の2人が何やら地面に置いた袋を凝視しているではないか。
「良太、さん?」
「祐希じゃないか。..,戦闘糧食、食べてくか一緒に。」
「いや食べないよ!?」