「何...?そのような規模の賊がいたのか?」
「はい。数にして、200名。しかし殆ど自衛隊方の鉄砲で、討ち取られております。」
「おお....野盗もかなり厄介な上、此度のそれは数多く。それを容易くのしたのであれば.,.。」
「父上。そればかりではありませぬ。彼の者達がいる村もその輩から救われたのです。これは温情云々ではなく、もはや我々の敵ではないと判断出来るは必定。快く我が陣営へ迎え入れましょう。」
「そうせくな、氏直。」
湯呑みに注がれた茶を一杯啜り、それから一回息を入れてから。氏政はゆっくりと立ち、枯山水の庭を眺める。
「まずは予定通り、家臣を大住へ向かわせ味噌など食料を手配するのじゃ。」
「ははっ。」
「それからの....豊臣方からの上洛の申し出じゃが....。」
勢いよく、氏直に振り向きながら言う。
「たわけが。お主らの為まで京にまで登る労など、しとうはない。...っと。そうお伝えせよ。」
「....はっ。」
ーーーーーー
「村の損害状況は?」
「野盗の襲撃は、村の際に構えた歩哨壕手前で突撃を阻むことに成功しております。故に損害は皆無。」
「設備その他の状況は?」
「有線の切断もなし、車両系にも異常はありません。問題は、やはり弾薬や燃料。」
「やはりか。我々の時代でしか、補給出来ないものは如何ともしがたい。いずれは底をつく..,。」
中隊長の伊庭は、各小隊長を集めて現在の状況から今後の方針を決めかねていた。北条からの支援も確約されている以上は食糧は維持出来る。だが、その中でも最も重要なものはこの村との関係性だ。良好な関係を構築した以上、出来ればこれを維持するためにはここから離れるわけにいかない。それに加えて防備の面でも第1中隊の存在は大きい。伊庭が地図上を指で指し示しながらゆっくりと言う。
「1589年....小田原征伐まで、我々も態勢を整えないと。山中城、滝山城、...八王子城...。中でもこの八王子城は、絶対に力を注がなければ。」
「何故です?」
「ここで皆殺しにするからだ。男だけじゃない、婦女子。みんなだ。誰がなんと言おうと、そんな残虐極まりない非道は...」
「絶対に阻止する!」
業務用天幕の中で声を一際大きく張り上げる伊庭。その声は外を歩く村人達、そして隊員達の耳にも届いていた。これらの山城は小田原城の主要な防御ラインを構築しており、中でも八王子城は難攻不落と言われた山城。豊臣方はそこで見せしめに北条方を撫で切りにし、小田原城に籠城する北条の士気を削ぐ狙いがあった。