「手入れ手入れ...。」
中隊本部にて今後の方針をどうするかミーティングが実施されているその頃、村人の許可を得て家屋の中に武器を持ち込みそこで武器手入れをする良太の姿があった。そこへ六助もやって来ては、武器の分解結合の様子を食い入るように見ている。
「やや?お役人様、鉄砲の手入れですかな?」
村長が数人の子供達を連れて、家に戻って来た。今良太がいる場所はまさに村長の家。そして村長は自分だけではなく、子供達と共に此処で寝食を共にしているようだ。聞けば此処にいる子供達の親は、病気か戦で亡くなり、はたまた先刻あったように野盗、野武士の類いに殺されてしまった。それで身寄りのない子供達を、村長が面倒を見ていると言うわけだ。
「村長さん。すみません、また使わせてもらってます。」
「いえいえ。そんな離れていないで、ささ。もそっと囲炉裏の近くまで。そんな暗い場所にいて部品を無くしたら大変だ。」
「ありがとうございます。...では。」
再び89式を組み立てて、村長や子供達に促されるまま囲炉裏の前へ。夕闇の中ボゥっと灯される囲炉裏の灯りがなんとも心地よく、眠気を感じる程だ。迷彩柄の服を興味ありげに子供達は、その裾や襟、袖口などを引っ張る。それをやられても、悪い気はしない。まさに団欒という状況に、良太は村の住人達とも心を通わせるようになっていた。
「鉄砲の中には汚れがたっぷり溜まってるから、掃除しないと...。」
「でもすげぇ鉄砲だなぁ。全部鉄で出来てるなんて...。触ってみていい?」
六助の友達、小五郎という少年が興味を示した良太の89式小銃を両手に取り、持ち上げる。元々日本人向けに作られた銃であるとはいえ、まだ9歳という年齢の少年には持ちにくいものだろう。だがこの小五郎も賢い子だった。
「ちょっと持ちにくいな....。...ん?」
被筒部の後端まで伸びてる89式の脚に気付いた小五郎は、ゆっくりと脚を動かせる方向を確認してから脚を前方へ向けて開放した。
「これ...このまま置けて狙えるんじゃ?」
「その通りだ。」
小五郎の言うように一旦その場で射撃姿勢をとる良太。その姿勢を子供達に見せて、それを楽しく周りで見る子供達。それを見守る村長の顔もどこか嬉しそうだ。小五郎や六助、他の子供達も順番に銃を手にしてその質感を確かめる。小五郎と六助が、良太へ真剣な面持ちで言葉を放つ。
「兄ちゃん。...この鉄砲、...俺達にも使わせて欲しいんだ!」
「どうした、突然。」
「兄ちゃん...、あのね。...みんな死んじゃったんだ、オラ達の親。野盗に殺されたヤツも大勢いる...。」
2人以外の子供達も、皆真剣な顔になっている。良太もこれには出来る限り、応えたいと思っていた。
「...ちょっと待っていてくれ。」