戦国自衛隊 小田原の戦い   作:佐藤練也

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第14話

朝。相模国大住郡にある、自衛隊一個中隊が駐屯するある村。朝靄が立ち込める中、村の中心で1人の男が佇む。陸士長の、矢野進だ。迷彩服を上下に着込み半長靴を履いた佇まいは立派だ。辺りに人の気配はない。だが、彼は気付いていた。その身のこなしにより朝靄に姿と気配を隠し、音をひとつも立てずに動き回る1人の存在に。

 

 

「(3日ばかり前に野盗が攻めてきた時とおんなじ...やはり1人か。)」

 

 

これは一重に進の勘的なものが働いている。襲って来なさそうというのも、またそれ。ゆっくりと地面へ降り立つそれは進の背後に忍び寄る。

 

 

「!」

 

 

ばっと振り返る、機敏な動きにて反応したつもりがそこには誰もおらず朝靄が広がるばかり。しかしその横から、1人の御仁の声が上がる。

 

 

 

「ここだよ。」

 

 

「....。野盗が来た時、周りの奴は気付いてなかったみたいだが...俺はしっかりわかっていたぜ。忍びか、お前。」

 

 

「まあそんなところかぁ...。どうやら俺の気配に気付いていたのはアンタだけのようだしなあ。そして敵意も感じないから安心して話が出来る。」

 

 

「話しか...。たかだか足軽レベルの人間に話とは....。」

 

 

 

忍装束を身に包んだ、その少年が黒い布で覆われた顔を露わにすれば、やはり声色的にわかっちゃいたが進が思うようにその顔はまだあどけない少年だった。10歳も越えていない、9歳から8歳の幼い子供だった。

 

 

 

「さて、まず名乗ろうか。俺はアンタが言った通り忍び...北条氏直様に仕える忍び...名前は富士丸という....。」

 

 

目を細めて富士丸を見つめる。進はあちこちから観察を入念にし始める。年端もいかぬ少年をあまりじろじろ見るのは感心するものじゃないが、その実態は忍びである。

 

 

 

「おいおい、なんもしねぇって...第一忍びがこうして出て来るなんてそうそうないことだからな?」

 

 

「わかった。どうやらほんとに敵意はないみたいだしな。」

 

 

 

どうやら暗器の類は持ち合わせていないようだ。ひとしきりマジマジと身体の節々まで確認したあと、進も名乗る。

 

 

「陸上自衛隊、陸士長。矢野進。」

 

 

「ほう。アンタらの間で足軽のことを陸士長って言うのか。」

 

 

 

「話がややこしくなる前に、本題だ。俺に話ってなんだ。ただ耳目が利くだけの足軽に。」

 

 

 

軽く周囲を牛歩ほどにゆっくり歩く富士丸に、進は問う。忍びというからには何かしら密命を帯びた者。存在自体が秘匿されるほどの存在、それが容易に姿を見せる筈がない。

 

 

 

「アンタだけが俺を気取れたんだ。それだけのことだよ、どうゆー人間かも確かめたくなったからここまで出向いた。ただそれだけだ。」

 

 

「存外暇なんだな、忍びってのは。...この間はなんで村にやって来た?俺たちの動向を監視するためか?」

 

 

「我が城主の命もあり...監視と経過観察を任されている。それから氏直様の父上、北条氏政様もアンタらに懐疑的な意見を当初は持っていたが、俺の報告で疑念はお捨てになられたようだ。食糧もじきに家臣の連中がここへ届けにくる。ちょっとは感謝しろよ?」

 

 

「そこまで話が....。」

 

 

朝靄の中、静かに話す2人。この乱世もそんなにのんびり事が経過をしているわけでもないようだった。

 

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