戦国自衛隊 小田原の戦い   作:佐藤練也

18 / 30
第17話

「.....この辺りの筈なんだが。」

 

 

夜間。街灯がない、一切の光源が無い暗闇の中。2輌の戦闘車輌が間隔を保ちながら荒れた道を進む。前方に照らされたライトの光だけが、その車列の道先を照らしていた。曇っている為か、夜空に星のまたたきは見えない。

 

 

「まずいぞ、主力と完全に逸れてしまった。...地図だと東海道のどこかの筈だが...。」

 

 

その戦闘車輌の外見は戦車そのもの、先に走る戦車に追従する車輌もまた戦車であった。一つは砲塔が避弾経始を考慮した流線系のデザイン。そしてもう一方の車輌は若干車高が高く、流線系というより丸みを帯びた形状の砲塔を持つ。砲身に差異はないが、些か後者の戦車は古い匂いがする。

 

 

「(勘弁してくれよ。こんなタイミングで...こんな棺桶に入ったまま死ぬなんてごめんだぞ。)」

 

 

 

砲塔ハッチを開けて周囲を確認しながら、1人の男はしかめっ面を浮かべた。その遥か前方には何か松明のようなごく僅かな光が見える。とりあえずそれを頼りに車輌を前進させる。ヘルメットのヘッドセットを介して砲塔ハッチから身を乗り出す隊員。菊池一陸曹長は、自身の指揮する戦車。61式戦車より前方を走る74式戦車へ通信を試みる。

 

 

 

「こちら61、菊池。送れ。」

 

「こちら74、斎藤。感明よし。」

 

「とりあえず前方の光源を目指すぞ。」

 

「了解。」

 

 

 

松明の灯りがどんどん大きくなっていくにつれ、その周辺に動き回る人影があると確認出来る。その服装がやけに妙だ。甲冑を着て動き回っているものが複数、向こうもこちらを認識している様で何やら騒ぎ始めた。

 

 

「敵か?」

 

 

「いや、まだ判断出来ん。とりあえず近付いてみるしかあるまい。」

 

 

 

エンジンを唸らせ、轍を辿りその松明の下へ向かう。そこはどうやら関所の様で旗竿に旗印が掲げられている。菊池は武器を手にして砲塔ハッチを開けて外へと飛び出た。

 

 

 

「何者じゃ!!」

 

 

 

関所の方からこちらへ向けたであろう怒声が飛んでくる。鎧武者の一団が、こちらへ向け弓に矢を番えつつ敵意を菊池達へと向けていた。

 

 

 

「我々は、陸上自衛隊の東部方面隊です!あなた方は!」

 

 

まさかなと思いながら菊池は松明の灯りに灯された旗印を目にし、愕然としつつその状況が恐ろしいものであることに気付く。あの鎧武者が着込む甲冑は全て本物。弓に番えられた矢も、あの一人一人の武者かこちらへ敵意を向けているのが明確なものであるということも。その旗印とは...。

 

 

「ここから先は徳川、豊臣方の領地ぞ!我等はここを御守りする認を任された故、素性の知れん者を通すわけには参らん!!...さては貴様等。逆の方から来たとなれば北条方のものか!」

 

 

「葵の御紋だ.,.!」

 

 

ギチギチと番えた矢を今にも放ちそうな雰囲気だ。直感で危ない状況だと察した菊池は急ぎ砲塔へよじ登り、ハッチを開け車内へ退避する。その攻撃はすぐに始まった。

 

 

 

「放てええ!!!」

 

 

 

足軽大将と思われる武者が一斉に射かけよと号令の下、74と61の2輌に向かい矢の雨が飛来する。カンカンカンカンッ!!!金属に弾かれる音が鳴り響く中、2輌は素早く反転。超信地旋回の後、元来た道を爆速にて戻り始めた。

 

 

 

「なんだ...何が起こっている...!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。