小田原城を含む北条方の城では、来る豊臣方との決戦を前に準備は着々と進められていた。各曲輪の防備状況を視察する氏直と伊庭。氏直にはとある案じていることがあった。
「伊庭...軍議での話は、誠か。」
「ああ...。豊臣方には絶対にあの八王子城は落とさせん。」
「豊臣方は勝つ為に手段を問わぬというのか...。それに加えて、我等の軍勢の4倍の兵を差し向け完全に城を取り囲むとは...。」
「それの定めを俺たちは変えに来た。」
元々この小田原城は総構えの構築がされて以降、堅牢堅固な城となる。豊臣方に対抗する為の城郭として作られ、八幡山から海側に至るまで小田原の町全体を総延長9キロメートルの土塁と空堀で取り囲んだ、まさに守りにおいて隙のない構造だ。兵糧の備蓄も御用米曲輪などで補るし、持久戦に持ち堪えられるのがまさに小田原城の強みと言えるだろう。
「俺たちは自衛隊。400余年先の日の本の防人だ。その防人の目から、この戦国の世がこれからどう目に映るかはわからん。だが...。」
「なんじゃ。」
二ノ丸辺りで伊庭が立ち止まり、ゆっくりと氏直に語る。
「見せしめがどのような心理的効果を及ぼす有効な手だとしても、俺はそれを絶対に許さん。」
「....。」
「この小田原で合戦が始まる前に、豊臣方の先鋒が来る筈だ。まずはそいつ等を徹底的に叩く。」
「話にあった...徳川の軍勢か。手立てはあるのか。」
「まずは、空から一方的に鉄砲を撃ち込む。それに当たり、何人か戦力を借りたい。」
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「お殿様!全員揃いました!」
「俺たちにしか出来ない仕事って聞いて来たよ!一体どんな仕事なんだ?!」
先程の貸してもらいたい戦力という話で、なぜ子供が。というか89背負ってるし、なんかちょっとだけ手慣れてるような感じがするし、...佐々木のヤツ、村から去る前に一段と元気だったのはこれが一部原因としてあるんじゃないかと、伊庭は六助や小五郎達の所作を1人ずつ注意深く観察しながら考えていた。
「....。」
「.....。」
9歳から10歳の子供達、ましてや戦国時代育ちとは思えないほど89式の手回しが上手い。弾倉交換にモタつかない、安全装置もちゃんとかける、射撃時以外に用心金には絶対指を入れない、チャンバーチェックも怠らない。銃口と味方の位置関係、マズルコントロール。なんと物覚えの良い子達なのだろう、そもそもこの子達の身の上を知った上でならば、身につけれるモノはどんどん吸収したいとも思うのだろうと、伊庭は納得した。
「見事だな。佐々木士長。」
「...まさか。村を守るために教えたことですけど...一役出てくれるなんて。」
「あまりの熱意に小田原の殿様もタジタジだったらしいぜ。」
「ごほんっ...。」
咳払いをしてごまかす氏直。呼び出された良太に進、そして弾抜け安全点検をした小銃を持った子供達が氏直と伊庭の下へ集まってくる。
「此度は、お主等の力を以て宿敵の豊臣勢へ先手を打ってもらいたい。伊庭殿の配下の鉄の鳥に乗り、敵地へ赴くのじゃ。...時間はとらせる。伊庭に十分面倒を見てもらえ。」