「「はい!」」
「あとは伊庭殿、こやつ等の命はお主に預ける。」
「わかった。」
-----------
時間は明朝を過ぎ、地平線が太陽に照らされる。山々の稜線がクッキリと見え、視界は明瞭だ。小田原城の弁財天曲輪にて、再度徹底した装備品の教育が1中隊の隊員...村田を通して子供達に教育をしている最中であった。彼に関しては築城作業、城内の有線連絡網の構築、障害資材の敷設準備などを伊庭から当てられているのでかなり多忙である筈だが、流石レンジャー有資格者、余裕ある表情である。左胸のダイヤモンドは伊達に付けてはいないというわけだ。現在は夜間装備の教育中であるが、一つの天幕を使って何かをする様である。真田教官の手にはV8...夜間暗視装置が装着された鉄帽が持たれていた。
「今からこの暗い天幕の中に入って、この兜を被ってもらう。」
「ただ入るだけ?」
「そうだ。まずはこの感覚に慣れてもらう、おそらく本来なら絶対に体験することがなかったものだからな。まずは被ってみてくれ。良太、祐希。わからなそうだったら助け舟を出してあげてくれ。」
「はいっ!」
手始めに六助が鉄帽を被り、その感じを身体に染み込ませる。意外とずっしりとした質感が頭と首に伝わり、ちょっと心地が悪そうだ。それを祐希が鉄帽の顎紐を調節することで、程なく解消された。小五郎も同じく鉄帽の調節を良太がゆっくり教えながら実施して次の段階へ。
「業務用天幕に入ってからスイッチを入れてもらう。小さな摘みがあるからそれを探して捻ってみてくれ。」
「わああ...!すごい!」
暗闇の天幕の中で六助が歓声を上げた。今まで見たことのない景色が、目の前に広がる。先程までに目が閉ざされた程の暗闇ばかりの景色とはまるで違う、緑の中に浮き上がった小五郎の顔が見える。それは小五郎も同じことだろう。
「確かに六助から聞いた話通り、天狗に見えなくはないな...。」
「うん。鼻が出てる様に見えたけど、目だったんだ...。良太兄ちゃん!これ欲しい!」
「無茶言うな。」
「ちぇーっ。」
暗闇の天幕の中で一旦暗視眼鏡を外してからスイッチを切って外へ出る。
ー-----------
その同じ頃、小田原の忍びである富士丸と共にいた進は、何故か忍びのイロハを教わることとなり、そして今は手裏剣の投擲要領を富士丸から学んでいる最中であった。
「鉄砲だけが扱えても、敵地じゃけたたましい音は御法度だからなぁ。息を殺しながら敵も殺して目撃者を消しつつ情報を主の下へ持ち帰る。これが基本だ。わかったか、進?」
「なんでレンジャーでもないのに敵地に潜入する前提で訓練してんだよ俺、...はっ!」
言葉を言い切るタイミングで腕を振り切り、クナイを上手投げにて投擲。立てかけられた畳にストンッ、と音を立てて突き立てる。迷彩服の自衛官がクナイを稽古する絵面はシュールな光景...というか中々見れない組み合わせではないだろうか。続いてクナイを二本投げてから、懐に持った暗器。寸鉄で敵の胴を乱打して無力化。
「400年後の人間も筋がいいな。」
「おかげさまでな...この時代にでも来なきゃ出来ないよこんなこと。」