相模国、北条の屋敷にて
「忍びからの報を待つとは言うが...。やはり合点がゆかぬ。何ゆえ我が領内へ突然現れたというのだ。」
「天のみぞ知ると言う他...何も...。」
北条氏政。居城していた小田原城の城主であったこの男は、現在城を息子の氏直へと譲り自ら身を引き隠居の身となったが、此度の急な事態の発生を受けた後、氏直が言う"先の世"から来た者達について考えていた。現在は1589年、豊臣方との大きな戦が始まる約1年前の出来事であった。氏直は父の隠居先にて、今後の相模国の未来について氏政と面と向かい話し合っていた。
「領民の命を救うというのはありがたいことではある。しかしいきなり現れた者を、味方と判断するのは早計というものよ。」
「なので、今彼の者達の下に忍びを向けさせた次第。我が忍びの情報は的確。今しばしお待ち下さい。」
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「くそっ!多勢に無勢だ!」
「出来る限りここで倒すしかないな..,!」
迫り来る野盗の集団、その攻撃に晒された良太と進はその場に踏み止まって持ち堪える。迫り来る刀や槍で武装した野盗を手前から少しずつ小銃の射撃にて撃ち伏していく良太、それを狙撃銃による射撃で進が良太をカバーする。軽快な射撃音が辺りに響き、そして先程良太が入れた有線連絡により中隊主力が続々とその場へ到着し射撃を開始する。
「ご苦労様、よくやった!あとは奴等を蹴散らすぞ!」
歩哨壕へ滑り込むように入ってきた1人の男は、佐藤浩二。手に持った弾倉を89式小銃へ装填しながら、迫り来る1人の野盗に睨みながら銃口を向けた。土に汚れた肌色の額から鮮血を流し、野盗は倒れた。
続いて進が手近にあった手榴弾を放り、続け様に野盗へ攻撃を浴びせる。手榴弾の炸裂により、地飛沫と共に野盗数名が派手に地から数m浮き上がり吹き飛ばされた。
「っ!」
その炸裂に恐れ慄いた野盗が逃げ帰り、また1人、また1人と逃げ帰る者が出始める。思いもよらない手酷い反撃を喰らった野盗、小銃や機関銃の雨霰、手榴弾の爆発には堪えたようだ。彼等の前にはもはや敵はなく、それらの屍が辺りに存在するのみとなっていた。
「.....。」
森林に潜んでいた忍び装束を纏う、1人の者。それはまだ若い少年と呼べる顔立ちだ。その顔は、驚きの表情を露わに。そしてその目を自衛隊へ向けた後に、軽い身のこなしにて木から木へと飛び移りつつ北条の屋敷へと向かうのであった。その気配、その姿を一瞬だが捉えていた進は、その気配が消え去った方角へ視線を送っていた。
「....。」
「どうした?」
「1人...いた気がする。野盗じゃない誰かがな...。」
そう言いながら、進は64式の弾倉をゆっくり抜き取り新たに弾倉を装填した。