ぐだおが女性サーヴァントに耳かき奉仕してもらう話。   作:多奈川

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沖田さんに膝枕で耳かきされる話。

「あれ、ダヴィンチちゃん。これって……」

 

人類最後のマスター、僕こと藤丸立花は、夕食後に暇つぶしがてらダヴィンチちゃんの工房へ顔を出していた。

 

「おや、見つけてしまったかい。ダヴィンチちゃんの素敵なショップの新商品を……!」

「いや、見つけたというか、すごい目につくところに置いてあるからさ。しかもご丁寧に手書きPOPまでつけて」

 

それは、先端がへら状になった細長い棒状の道具。江戸時代、享保年間に日本で開発された、耳の穴の中を掃除するためのもの。そう、耳かきだ。

 

「でも、何で耳かきなんて急に置くようになったの?」

「それはだね、最近、日本出身のサーヴァントがカルデアに増えているだろう? 今回、耳かき棒をショップに置くようになったんのは彼らのリクエストによるところが大きいね」

「ん? 日本出身のサーヴァントと耳かきにどういう関係が?」

「そもそも耳かきというのはだね、東アジアの人に多い乾いた耳垢の除去には向いているが、欧米人の粘性の多い湿った耳垢の除去には不向きなのさ。というか、欧米では耳かきという道具そのものがないんだよね」

「へぇー、初めて知ったよ。日本では当たり前にあるものだからさ」

 

そう言い、おもむろに耳かき棒を手に取る。

そういえばカルデアに来てからというもの、耳かきをした覚えがない。今まで気にならなかったが、急に耳の奥がむずむずとこそばゆくなってくる。

 

「お、やはり君も興味あるかい? 今回は初回特別サービスで10万QPと、大変お得になっているよ?」

 

うーん、この商売上手。というか、10万QPって安いな。クエスト一周すればすぐ手に入るし。え、感覚が麻痺している? ははは、まさかまさか。

 

「うん、買うよ。これください」

「はーい、お買い上げどうもありがとう~。これからも是非贔屓にしてくれたまえ」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「さて、では早速……」

 

マイルームに戻り、先ほど購入した耳かき棒を取り出す。竹製の片方がへら状に、反対側には梵天(ふわふわとした白い羽毛)がついたオーソドックスなタイプの耳かきだ。

そろりと、耳かき棒を耳穴へやる。しょりしょりと、細かい耳垢が耳かき棒に当たる音が心地よい。

耳の内側に傷をつけないよう、優しく撫でるように動かしてやる。気持ちよい感触だ。

 

その調子で耳かきを続け、少し奥に耳かき棒をやると、コツンと先端に何かがぶつかる。……遂に来たか、ボス級(の耳垢)が。

これまでは怪我を恐れて最小限の力で進めていたが、ここからはそうもいかないだろう。ぐっと指先に力を込める。……むっ、硬い。ぱきっと僅かに耳垢が浮く感触はあるが、それ以上動く気配がない。むむむ、どうしたものか。

大きな耳垢に苦戦していると、コンコンと誰かがマイルームの戸を叩いた。

 

「マスター、いますかー? 沖田さんです。今度の編成のことで少し相談したいことがあるんですけれど」

「お、沖田さん? うん、大丈夫だよ。入って」

 

そう促すと、いつもの新撰組の羽織を脱ぎ、ノースリーブの着物を着た沖田総司が元気よく部屋へ入ってくる。

 

「お邪魔しますね~。おや、何か用事の最中でしたか?」

「ああ、いや、少し耳かきをしていたんだけど、中々うまくいかなくて……」

「え゛っ!? 耳かき、ですかッ!!?」

 

うわずった声を上げ、ぐわっと沖田さんが顔を寄せてくる。白く透き通った肌、済んだ瞳。……可愛い、好きだ。結婚したい。

 

「お、沖田さんも、耳かきに興味あるの?」

「興味があるか、ですって? そんなのあるに決まってるじゃないですか!! 耳かきといえば沖田総司、沖田総司といえば耳かき! 歴史の教科書にも書いてある常識ですよ!!」

 

それでいいのか新撰組一番隊隊長……。というか、それが本当だとしても教科書にはそんなこと書いてないよ。

 

「さぁ、沖田さんの前で耳かきと口にしたからにはもう逃げられませんよ! マスターの耳の掃除、この沖田総司にお任せください!!」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「さぁ、こちらへどうぞ。マスター」

 

ベッドの上で正座した沖田さんが、自身の膝をぽんっと軽く叩く。

 

「え、膝枕! いいの!?」

 

思わず心の声に正直になっていた。だって沖田さんのニーハイ(?)生足膝枕だぜ?

 

「いいですとも! ささっ、早く沖田さんにマスターのお耳掃除をさせてください」

「で、では、失礼して……」

 

自身の頭を、柔らかく、そして、やや筋肉質な沖田さんの膝枕へと埋める。右耳を上にし、沖田さんへ背を向ける形になる。

 

「では、まずは耳の中を拝見しますね。……こ、これは! マスター!!」

「え、何……?」

「耳垢貯めすぎですよ! さては随分ほったらかしにしていましたね? これもう少しで耳穴埋まるくらいの大変な量ですよ」

「ひえっ、確かにカルデアに来てからは耳かきしてなかったけど、そんなに……?」

 

なんかもうすごい恥ずかしい気分だった。

 

「鼓膜の近くなんか山盛りですよ。……あ、興奮してきました」

 

今、何かとんでもない言葉が聞こえたような。

 

「それじゃ、耳かきしていきますよ。もし痛かったりしたら手をあげてくださいね」

 

まるで歯医者みたいだと思った。

沖田さんは、すっと慣れた手つきで耳かき棒を耳穴へと挿入する。

先ほどと動揺にしゃりしゃりと細か耳垢の粒が耳かき棒へと当たる。そして、沖田さんはそのまま奥へ耳かき棒を進入させていく。その道中で、軽くマッサージするように耳の内部の壁を擦るのがとても気持ちいい。

 

「ふふっ、気持ちいいですか、マスター? 大物を退治しますので、姿勢はそのままでお願いしますね」

 

自分が先ほど敗戦を喫した耳垢への攻撃を開始する。

こつっこつっと、まずは様子をみるように。そして、ぐーっと、耳垢ではなく、耳の壁をへらの裏側で押し当て始めた。それにより耳垢と壁の間にわずかに隙間ができる。沖田さんはそれを見逃さないようにへらを滑り込ませ、ぐぐっと、今度はテコの要領で一気に耳垢を浮き上がらせる――!

さくっ……。みしっ……。くっぐくっ……。ぐっぐぅううっ……。ぽとっ。

 

「……ふぅ、まずは第一関門突破といったところですね。無明三段突き、炸裂です!」

 

一旦耳かき棒を抜き、取れた耳垢を脇に広げたティッシュの上でこんこんと落とす。

 

「うわっ、でか! こんなのが耳の中に!?」

 

ティッシュの上には1センチ正方ほどの耳垢があった。

 

「中々の大物でしたね。2wave目の単体エネミーくらいの強さでしたが、この沖田さんにかかればどうってことはありませんでしたね」

 

うーん、メタい。膝枕してるので彼女の表情を窺うことはできないが、おそらくドヤ顔しているのだろう。

 

「よーし、どんどんいきますよー!」

 

再び耳かき棒が耳内部へ挿入される。

すりっすりっ……ぞりぞり……。するっ……すぅーっ。……とんとん。

溜まった耳垢が一つ一つ処理されていく。マイルーム内では耳かき音の他には、沖田さんの静かな息づかいが聞こえるのみだ。

他人に耳かきをしてもらうなんて小学校の頃に母親にやってもらったきりだったが、久しぶりにしてもらうと自分でするよりも遙かに気持ちがいい。何だろう、自分でやるときと違って次はどこにくるか予想がつかないからだろうか。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「ふぅ、これで右耳は大体綺麗になりましたね。最後に梵天で細かい耳垢を取っていきますよ~」

「は、はい……」

 

くるくると回転しながら梵天を上下させていく。かりかりと残った細かい耳垢が羽毛に絡まっていくのが音だけで分かる。へら部分と違う、梵天は耳穴全体をくすぐるように移動する。そのため、気持ちよさが先ほどまでよりも高い。ん、ふぅ……と思わず声がもれてしまう。

 

「くすっ。マスターは梵天がお気に入りなんですね。沖田さん、覚えましたよ。……こんなところでしょうか、梵天抜きますね」

 

名残惜しいが、しゅぽっと梵天で引き抜かれる。白い梵天に黄色い細かい耳垢がたくさん付着している。

 

「どうです、マスター? これだけ耳垢を掻き出せば聞こえ方も変わってくるんじゃないですか?」

「……確かに、いつもと違ってなんだか新鮮な感じがする。沖田さん、ありがとう」

「いえいえ、いいんですよ! それに、まだ半分ってところですしね。次は左耳いきますね。頭の向きを反対にさせてください、マスター」

 

そう言われ、体を沖田さんと向き合うように寝返りをうつ。

寝返りをうつと、そこは、黒色だった。

 

「――ッ!!」

「? どうかしました、マスター?」

「う、ううん。何でもない。何でもない。本当何でもないから……!!」

 

いや、そりゃ少し考えれば分かったはずでしょ。だって沖田さんの丈の短い着物で膝枕とかされれば、そりゃあそうなりますよ。……しかし、幸い沖田さんは耳かきに夢中で気づいていないようだし、この束の間のエデンを堪能させてもらうとしよう。誰だってそうする。人類最後のマスターだってそうする、間違いない。

 

「おや、左耳の汚れは右耳ほどではないですね。残念です……」

 

と、ややテンションを下げながらもさくさくっと耳垢を掃除していく沖田さん。正座を続けていることや耳かきに集中しているためか、うっすらと汗をかき、肌がやや湿り気を帯びてきている。ほんのりと汗の香りが鼻に届く。ややツンとしたでももっと嗅いでいたいような、そんな独特な芳しさがある。

太ももでこれなら、もっと蒸れているであろうあの黒色はさぞ……。あっ、ダメだ。僕は腰を隠すように膝をくの字に曲げる。

 

「あれ、どこか痛かったですか?」

「いや、ううん、大丈夫。そのまま続けて……。もう少しゆっくりでもいいよ」

「? 分かりました。ゆっくりお耳を綺麗にしていきますねっ」

 

しょりしょり……。さくっ。ぐぐっ……。ぐっ。くくっ。すぅ……。

そうして、沖田さんとの耳かきの夜は更けていくのだった――。

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