ぐだおが女性サーヴァントに耳かき奉仕してもらう話。 作:多奈川
「はぁ、エミヤの耳かき気持ち良すぎた」
ホクホクとした顔で食堂を後にする僕こと、藤丸立花。最近の趣味は耳かきをしてもらうこと。ついさっきも食堂にいたエミヤ(弓)に耳かきをしてもらったばかりだ。いい年になって耳かきをしてもらうなど……と少し小言も言われたが、きっちり最後まで綺麗にしてくれた。エミヤって下手な女性よりおかんみがすごい気がする。
「後は部屋に戻ってシャワって寝るかな。明日も素材集めの周回だし、はよ寝よっと」
軽い足取りでマイルームへと戻ると、扉の前に一人のサーヴァントが立っていた。
「あれ、どうしたの? ニトクリス?」
大胆に晒された健康的な褐色の肌が溢れるほどに眩しい。
「やっと戻りましたか、我が同盟者。まったくファラオを待たせるとは不敬ですよっ」
「えっ、ごめん。でも、待ち合わせの約束とかしていなかったし……」
「ま、まぁ、確かにそうですね。……コホン、とりあえず立ち話もなんですし、部屋に入れてもらっても?」
「あ、うん。今開けるね」
カードキーを使いマイルームの扉を解錠する。ニトクリスを中へ入るよう促すと、彼女はぽすんとベッドに腰をかけた。なんかもう若くて綺麗な女性がベッドに腰掛けるとそれだけでちょっと興奮してしまう。
「それで、貴方に話があって待っていたわけですが――。何だか顔が赤くありませんか?」
「ええっ。ううん、さっき走ってきたせいかなー。そのせいだなー。あははは」
「そ、そうですか。トレーニングを怠らないとは良い心がけですね」
何だか良い方に解釈されてしまった。少しの申し訳なさを感じる。
「それで、僕に話っていうのは?」
「その、偶然にも、偶然にですよ? 貴方が耳の掃除をされるのが好きだと聞きまして……。それでその、マスターである貴方が耳の詰まりから戦闘に支障を来してしまうのは私にとっても問題ですから? このニトクリスが貴方の耳の汚れを取ってあげようかと思いまして。ええ、良いのです。同盟者たる貴方だからこそ特別ですよ。頭を垂れ、喜びなさいっ!」
「え、ごめん。さっきエミヤに耳かきしてもらったばかりだから……」
「ふふっ、しょうがないですね我が同盟者は。さぁ、私の膝に頭を乗せ……。えっ、今何と?」
僕の返答が想定していたものと違ったのか、ニトクリスが固まってしまった。
「さっき、耳掃除してもらったばかりで、一日に何度も耳かきをすると耳を傷つけてしまうから、その、ごめん……」
なんでこうもタイミングが悪いのか。気まず過ぎる。
「えっ、えっ、じゃあ、私はどうすれば?」
「それは、耳掃除はまた次回ということで今日はお帰りいただくしか……?」
ニトクリス顔真っ赤じゃん。ぷるぷる震えて泣きそうじゃん。……可愛いじゃん、好きだ。一緒に海辺で水をかけあってイチャイチャしたい。
「えっとその、僕シャワってくるからさ。ニトクリスも明日の周回メンバーだし早く寝た方がいいんじゃないかなって」
「…………。ま、待ちなさい! この私の誘いを断るなんて不敬ですっ! 不敬不敬
っ!!」
子供みたいにだだをこね始めてしまった。どうしたものか。
「じゃ、じゃあ、この前もらったマッサージオイルがあるんだけど、僕がニトクリスにマッサージでもしてあげようか? ……なんて」
「いえ、それは、何だか嫌な予感がするので遠慮しておきます」
これでもマッサージには自信があるのだが本人が嫌なら止めておこう。
そして、少しの間お互い口を開くことができずシーンと気まずい時間が流れる。眉間に皺を寄せて俯いていたニトクリスだが、何か思いついたのか顔を上げて僕にこう言った。
「その、先ほどは耳の内部を掃除されただけなのですね?」
「え、うん。耳掃除といったら耳の中の垢を取るんだから、そういうことになるけど」
そう返答すると、ニトクリスはしめたという顔をする。
「そ、そうですか! ふふふ、耳掃除というのもを勘違いしているようですね、マスター。耳の内部に垢が溜まるのと同様に、耳の外にも汚れがつくのは当然のこと! ましてや常に晒されている外側の方こそ汚れやすいといってもいいでしょう! さぁ、今一度私の膝枕に頭の乗せるのです! さぁ!!」
「ひえっ、は、はい……」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ふふっ、まるで赤子のようですね。可愛いですよ」
子供をあやすように頭を撫でられる。恥ずかしいが何だか気持ちよさもある。
というか、ニトクリスの生足膝枕ヤバイ。マジで。下の服装もほぼ下着みたいなもんだし、雑念を捨てねば不敬を起こしてしまう。
「……思った通り、耳介や耳の裏側に汚れが溜まっていますね。特に裏側の汚れは臭いの元にもなるのですから、我が同盟者としてきちんと清潔を保ってくださいっ」
「そ、そうなんだ。ごめん」
いつもちゃんと洗っていたつもりなのだが十分ではなかったみたいだ。耳の裏の汚れなんて普通は目に見えないもんだし。
「それでは、耳のマッサージも兼ねて化粧水をコットンになじませて拭いていきますからね。じっとしてください?」
どこから取り出したのか化粧水のボトルと取り出し、コットンにぼとぼとっと液をなじませていく。
ぴたっ――っと、ひんやりとした触感が耳に当たり思わずビクリとする。
「もうっ、じっとしてくださいと言ったではありませんか」
「ご、ごめん。少しびっくりして……。もう大丈夫だから続けてもらってもいいかな?」
すっ……。しゅうぅ……。くくっ……。しゅっ……しゅっ……。
耳介に押し当てたコットンを動かすとしゅうっと化粧水が耳に浸透する音だろうか。不意義な音が聞こえる。まずは全体の表面を優しく撫でられ、同時に耳たぶを彼女の綺麗な指先で軽く摘まむようにマッサージされる。まるで赤子が母にされるように、僕はニトクリスに身を委ねる。
「ふふ、気持ちよさそうですね。次は耳の溝を一つ一つなぞって綺麗にしていきます」
ぐっ。ぎゅっ……ぎゅぎゅっ……。きゅうっ……。
先ほどより力を込め、コットンが丁寧に溝のなぞり上げていく。耳の外側が文字通り綺麗になっていくのを感じる。
耳の溝をすべて綺麗にし終わると、最後に耳の穴の入口へコットンを押し当てゆっくりと回転させていく。耳の穴が塞がれ、コットンを動かす音が内部でぞわわっと響いてゾクゾクする。
「はい、仕上げに耳の裏の汚れを拭き取りますよ」
ニトクリスは耳たぶを持って耳を内側に閉じ裏側を拭きやすいように露出させる。
くっ……ぐくっ……。と、コットンで二、三度擦りあげる。
「ほら、見てください。これだけの汚れが貴方の耳についていたのですよ?」
「ひえっ、真っ白だったコットンが薄く黄色に染まっちゃってる……」
「ふ、ふふふ。やはり私の考えていた通りですねっ。さぁ、ごろんと頭の向きをかえませいっ」
ううっ、ニトクリスのむちしっとり太ももヤバイ。ここに住みたい……。頬を押し当てると吸い付いてくるようだ。
「こちらの耳も同じくらい汚れがついていますね。汚れたコットンも変えて、と」
ぽととっと化粧水をこぼす音。これ好きだ。雨音とか水滴が落ちる音って何だかずっと聞いていたくなる。
「まずは表面をさっと拭きますね」
ひたっ……。すっ。しゅっ……しゅっ……。しゅうぅ……。
表面を拭き終えると先ほどと同様の手順で溝をなぞり上げていく。
ぎゅっ……。きゅっ……ぎゅう……。きゅきゅっ……。
途中、慣れない膝枕をしていたせいか、ニトクリスがもぞもぞと足を動かし、ぴたっとくっつけられていた太ももをやや開脚させる。同時に彼女の内側に籠もっていた匂いが鼻腔を刺激した。
「? 耳が赤いですよ、マスター?」
「ご、ごめ……。気持ち良くて、その……」
彼女の汗の匂いが鼻を通して脳を揺さぶってくる。ああ、マズイ。非常にマズイが目を離せないし嗅ぐのを止めることもできない。
少しして、不敬をニトクリスに見つかることになるが、それはまた別のお話だ――。