「何故、ティードがここにいるんだ?」
俺は一夏クウガの前に立っているティードを見ながら困惑する。
彼の手にはもう一つのアナザークウガウォッチが握られているがそれはおかしい。
アナザーライダーは昭和シリーズに登場する戦闘員や再生怪人とが違い基本的に一体しか存在しない。それもオリジナルのライダーの存在を上書きしてしまうことによって誕生するのだからこの世界では「仮面ライダークウガ」が存在していて、ティードがアナザークウガを誕生させてしまったことで上書きしたということになる。
しかし、この設定は原作と一致していない。
俺から少し離れたところにはISの世界に存在しないはずの「仮面ライダービルド」に変身した篠ノ之束がいる。
平成仮面ライダーは第二期を除いて、世界観に統一性がないからクウガと同じ世界にビルドがいるというのはないのだ(ヒーロー大戦とかはともかく)。
そんな俺を他所にティードはアナザークウガウォッチを見ていた。
「・・・・・まさか、この世界に仮面ライダージオウがいたとはな。それと仮面ライダービルドがいたのは計算外だったが・・・・まあ、目的の物が手に入ったし良しとするか。」
ティードはそう言うと自分の持っていたアナザークウガウォッチを一夏クウガから出てきたウォッチと合わせる。すると吸い込まれるかのようにアナザーウォッチはどうかしてしまった。
「ウォッチが一つにっ!?」
原作においてはアナザーフォーゼ戦でアナザーファイズから追加で上書きされたのを見たことがあるがあれはウォッチの効力が無くなりかけていたことがあってのことでウォッチそのものを一体化させたわけではない。
「ウォッチが一つになるのがそんなにおかしいか?」
俺の言葉を聞いて、ティードは俺にアナザークウガウォッチを見せびらかしながら言う。俺は思わず身構えるがその前に束ビルドが彼の後ろから斬りかかろうとしていた。
<忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!>
「はあああ!!」
4コマ忍法刀がティードの首に達そうとした瞬間、彼は手を翳して束ビルドの動きを止めた。
「隠れ蓑術で俺の背後にまで迫っていたか。」
ティードは束ビルドの方を見るとパチンと指を鳴らす。すると空間が歪み、別のアナザーライダーが二体召喚されてきた。
<EX-AID>
<GAIM>
「アナザーエグゼイドにアナザー鎧武!?」
「ん?変だな、こいつらを使ったのはこれが初めてなんだが。」
束ビルドの相手を二体に任せながらティードは、俺が二体のアナザーライダーの名前を知っていたことに疑問を感じていたが過ぎに何か思い当たることがあったような顔になる。
「そうか・・・・お前、常磐ソウゴじゃないな?」
「!?」
ティードの言葉に俺は一瞬ビビった。それを見てティードは面白そうな笑みを浮かべる。
「その様子だとお前はこの世界の人間じゃないようだな。」
「うっ・・・・だ、だったら何だって言うんだよ!?」
「俺も同じ存在だったからな。」
「えっ?」
ティードの感慨深い表情を見て俺は唖然とした。
「よくは思い出せないが俺もお前と同様にライダーの力を与えられ、この世界に転生してきた。全てが思うがままだった・・・・・奪うことも偽善者として周囲から信頼を得ることもな。・・・・・・だが、それも最初のうちだった。」
歯ぎしりをしながらティードは一夏クウガの頭を踏みつける。
「俺の見た織斑一夏は圧倒的な俺を相手に絶望して引き下がるどころか、むしろ俺に挑んできた。そして、周囲もそんな奴を認めていき、篠ノ之束の協力のもと、奴もまた同じ力を手にして俺を倒した。・・・・・・死んだ俺は、意識を完全に消されることもなく怨念のように生かされ・・・・ある時ライダーに代わる新たな力を手にしてこの世界に舞い戻ってきたのだ!」」
「そ、そんなことが・・・・・・」
「俺は新たに手にしたこの力を持って俺にここまでに屈辱を与えたコイツを絶望させることを選んだ。そして、この世界の王として俺が歴史を一から作り直す!」
ティードの狂気の笑みを見て俺は、元は自分と同じ転生者でありながら傲慢で自分勝手な存在だと理解できた。こんな奴を野放しにするわけにはいかない。
「お前が王になろうがこの世界の歴史を作り直そうがそうはさせない!お前を倒して、一夏を元に戻す。」
「変わった奴だな、それだけの力を与えてもらいながら何故自分の力を誇示しようとしない?それだけで臨んだものが手に入るんだぞ?」
「そうかもしれないけどそれは、本当に手にしたものじゃない。それにお前を倒せば・・・・・」
「それは無理だな。俺を倒せたとしても織斑一夏が元の姿に戻ることはない。俺がこのウォッチの力を強力にするために調整したんだからな。」
「何っ!?」
ティードの言葉を聞いて俺は愕然とする。
アナザーライダーの姿から元に戻れない。原作では考えたこともなかったが実際人間の姿に戻れないというのは当の本人にとっては絶望的としか言いようがない。
「元々、このウォッチの力は不完全だった上にこの俺もダメージを受けてしまう危険性があったからな。丁度大会で誘拐されていた一夏にこのウォッチの半身を埋め込み、アナザーライダーとしての力を安定化させると同時に力を強くするように細工した。結果的に誘拐事件後の織斑一夏は、着々にアナザーライダーとしての力をつけ始めた。だが力が目覚めていくにつれ、奴は友人との関わることすら恐れ、初めてアナザーライダーとしての姿に変貌した後、人と会うのを恐れて一時姿を暗ました。」
「ん?でも、おかしいぞ?一夏の話が正しければアナザーライダーとしての力が制御できずにクラスの同級生を食い殺してしまったと言っていたはずだ。それが失踪するなんて・・・・・・・」
「忘れたか?奴のウォッチの半身は俺が持っていることを。」
俺はティードの言葉を聞いて察した。
一夏の友人である五反田弾と御手洗数馬たちを喰い殺したのは恐らく本人ではない。
以前「真・仮面ライダー」で似たようなものを見たことあるけど・・・・・もしかしてアナザークウガウォッチを通じて記憶を共有していたのか?
「まさか・・・・弾たちを襲ったっていうのは・・・・・」
「あぁ、あれのおかげでアナザーライダーの力がさらに強まった。自分が親友を喰い殺していると思い込めば尚更な・・・・ん?」
ティードは軽くジャンプして距離を取る。今まで気を失っていた一夏クウガがようやく目を覚ましたのだ。
「もう目が覚めたか。」
『オ・・・・オマエガ・・・・・・弾ヤ数マタチヲ・・・・・・』
一夏クウガは、戸惑いながらティードを見る。
「途中から聞いていたか。あの時、お前は異変を察した篠ノ之束に保護されていたところだからな。お前の姿を借りた上でやったからアイツら、かなり叫んでたぞ?『やめろ、一夏!』ってな・・・・クックックッ・・・・」
『キサマ!!』
「うわっ!?」
怒り狂った一夏クウガは拳をティードに向かって放つ。ティードは易々と回避するが瓦礫が飛んでくる俺にとってはたまったもんではない。
『ヨクモ!ヨクモォオオオオオ!!』
「何度でも言え。力がこっちの手に入った以上、アナザーライダーでも人間でもないお前は最早用済みだからな。」
<KUUGA>
ティードがアナザークウガウォッチを起動させ、自分の体へと埋め込む。
「クッ・・・・・グウウウウ!!」
同時にティードの周辺に黒煙が舞い始め辺りを闇へと変える。
「まずい!一夏、そいつから離れろ!!」
『シネェエエ!!』
俺はまずいと思い、変身中のティードの攻撃を加えようとしている一夏に叫ぶが怒り狂った彼には届かず、同時に凄まじい衝撃が施設中に響いた。
「えっ?ナニッ!?」
事を察して撤収を開始したアナザーエグゼイドとアナザー鎧武を見て唖然とする束ビルドはその衝撃波に吹き飛ばされる。
深夜を迎えようとしている学園に大きな穴が開き、そこから映画で見たものよりも巨大なアナザーアルティメットクウガが一夏クウガを片手で握りつぶそうとする勢いで握っていた。
『ガ、ガアァアアア!!』
『どうだ?ウォッチを失い、不完全になったお前が俺を倒すことなどできるわけがない。これでわかったか?』
侮辱するかのようにアナザーアルティメットクウガは一夏クウガを見る。
『ん?』
<マイティタイムブレーク!>
「オリャアアアア!!」
俺はそんなアナザーアルティメットクウガに向かってキックを繰り出す。正直言って映画では平成オールライダーのキックでようやく倒せた相手だから倒せるとは思っていない。
でも、このままだと一夏が殺されてしまう。そう思いながら一か八かで繰り出してみた。
「うおっ!?」
『なんだ、貴様か。今更俺にクウガの力など効くと思っているのか?』
アナザーアルティメットクウガは、俺の攻撃を物ともせず、一夏クウガをポイっと捨てて俺を摘まみ上げた。
「くっ!だったら!」
俺は、クウガウォッチを取り外してジカンギレードに装填する。
<フィニッシュタイム!>
<クウガ!>
<ギリギリスラッシュ!!>
「ハアッ!!」
俺は古代文字が浮かび上がらせながらアナザーアルティメットクウガに向かってジカンギレードを振り下ろす。
『・・・・・クックックックッ、効かないと言っているだろう!!』
「グアッ!」
アナザーアルティメットクウガの腕がギレードの攻撃を無視して俺に直撃する。俺は上空で無防備のまま落下を始める。
『このまま死ね!!』
口から黒紫の禍々しい破壊光線が命中し、俺はそのまま吹き飛ばされる。
「ウワアアアアアア!?」
俺は通常形態に戻り、地上へと落ちていく。クウガライドウォッチは俺の手元から離れ何処かへと落ちて行った。
「ガバッ!?」
グランドに激突し、俺は気を失うと同時に変身が解除された。
『ウ、ウゥ・・・・・・弾・・・・カズマ・・・・・・スマナイ・・・・・』
一夏クウガは赤い複眼から涙を流しながら力尽きた。しかし、彼の手元にクウガライドウォッチが落ち、そのまま彼の身体へと吸い込まれて行った。
『ハッハッハッハッハッ!!もう、俺に敵う奴はいない!!このまま究極の闇で世界を包み込んでくれる!!ハッハッハッハッハッハッ!!!』
そんな倒れている二人を見ながらアナザーアルティメットクウガは何処かへと飛び去って行った。
次回は・・・・いかに。