「う、うぅう・・・・・」
俺が目を覚まして最初に見たのは両腕を組んで仁王像の如く見ていた織斑先生の顔だった。
「目が覚めだようだな。」
「お、織斑先生・・・・・・」
見た限りここはIS学園の保健室のようだ。アナザーアルティメットクウガの攻撃で変身が溶けた後、破壊を免れた保健室へと運び込まれたらしい。手を挙げてみると包帯が巻かれて手当てがされてあった。
「痛・・・いててて・・・・」
俺は痛みにこらえながら上半身を起こしてみるとそこには保健室の椅子に座った顔にシップを貼った束さん、その後ろのベッドでは気を失ったアナザークウガこと一夏クウガが寝かされていて彼の手を箒がしっかりと握っていた。
「常間、目を覚ましたばかりで悪いがお前にはいろいろ聞きたいことがある。」
「・・・・・そうなりますよね。」
織斑先生の言葉に対して俺はしぶしぶ返事をする。
そりゃあ、ジオウの姿を監視カメラとか見られた上に一夏クウガに攻撃を加えたんだからな。ある意味でティード以上に得体のしれない奴だと思われているんだろうな・・・・・・全部正直に言っても信じてくれないだろうけど。っていうかジクウドライバーに関しては原作でも詳しい描写がないからわからないよ。
「えっと・・・・・どの辺から話した方がいいでしょうか?」
「まずは、お前が身に付けていたあの強化服についてだ。束のビルドに近いとも考えてみたが外見の特徴からしても明らかに別物だ。あれはなんだ?」
とりあえず、ライドウォッチとアナザーライダーの話はしておいた方がいいな。
「あれはジオウ、仮面ライダージオウという戦闘用の強化服って言うか・・・・ISに近いものです。詳しいことは俺にもわからないんですけど・・・・・」
「『ジオウ』か・・・・・・じゃあ、次にカメラで見た限り、お前は一夏に対して何か海中時計のようなものを使って形態を変えていたな?あれはISで言う形態移行か?」
「ジオウの特殊能力である『アーマータイム』という機能です。さっき使ったのは・・・・・・あれ?」
手元にクウガライドウォッチがないことに気づく。
「な、ない!?クウガライドウォッチが!?」
俺は質問中なのにもかかわらずベッドの下や部屋を見まわしながらクウガウォッチを探し始める。
あれがないとティードのアナザーアルティメットクウガに対抗できない。
「ない、ない!クウガウォッチはどこへ行ったんだぁ!?」
「おい、常間。何をそんなに慌てて探している?お前の部屋を確認させてもらったがウォッチというものはまだ・・・・・・」
「あれがないとアナザーアルティメットクウガを倒せないんだぁ!」
「あなざーあるてぃめっと?もしかして、学園から飛び去って行った黒い一夏に似た化け物のことか?」
「アナザーライダーは同じライダーの力を使わないと倒せない!仮に力づくで倒しても時間が経てば復活してしまうんだ!!」
俺がパニック状態で叫んでいる中、束さんが持ち込んだものなのかラジオからニュースが流れていた。
<緊急ニュース速報です。 本日の〇時〇〇分、市街地に突如巨大な生物が飛来、口部からまき散らしたガスによって人的被害があったとの情報が入りました。尚、現地のスタッフの話によればガスを吸ってしまった住民は怪物に変貌したとのことで、その姿は過去に放送されていたテレビ番組『仮面ライダー』に登場する怪人と非常に酷似していると・・・・・・現地からの追加情報が届きました!飛来した巨大生物が姿を消したことによるガスによる被害は収まりましたが怪人たちによる被害が拡大しているとのことです!現地の警察部隊が対応しているようですが・・・・・・>
そのニュースを聞いて俺の顔色は真っ蒼になった。
「アイツ・・・・・本当に究極の闇をやろうとしているのか?」
“究極の闇”
原作の仮面ライダークウガでは最後に残ったン・ダグバ・ゼバにより引き起こされる殺戮劇、もう一つの仮面ライダーディケイドではン・ガミオ・ゼダが発する黒い煙のようなものに触れ続け意識を失った人間をグロンギに変えるものであるが恐らくニュースを聞く限りでは後者だと思う。
「究極の闇?どういうことだ、常間。」
無意識に体を震わせている俺を見て織斑先生は、落ち着かせるように聞く。
「・・・・・人間を・・・・人間をさっきの怪物・・・・アナザーアルティメットクウガは怪人へと変えてしまう恐ろしいものです。おそらく、このままだと・・・・」
「人間を?それは本当なのか!?」
「・・・はい。」
俺の言葉を聞いて織斑先生は束さんと顔を合わせる。
「束、お前はあの怪物・・・・・アルティメットクウガとか言うのに対してどう思う?」
「さあね、私だって万能じゃないんだからこれと決まったことは言えないよ。・・・・・ただ、ISじゃ奴を倒せないというのは間違いないだろうね。おそらく、ビルドでも。」
「何?ビルドでも勝てないのか?」
「トライアルだろうがベストマッチだろうが今の私じゃ、倒せるとは思えないからね。さっき、えっと・・・・壮ちゃんでいいかな?壮ちゃんの言うクウガライドウォッチとかがないと勝てないって言うことだろうね。」
束は隠すことなく堂々と言い張る。
「だが、常間はさっきの戦闘でそのウォッチとか言うものを紛失してしまっている。っとなると、奴への対抗手段がない・・・・・・」
織斑先生は困惑している俺を見ながら束さんに再び視線を向ける。
「・・・・・と、とりあえず怪人たちを何とかしないと・・・・・」
「おい、常間!まだ、話は・・・・・・」
俺は、その場から逃げ出すかのように保健室から出て行った。
「くっ・・・・まだ、話が終わっていないというのに・・・・束、連れ戻すのを手伝ってくれないか?」
「そうだね、どのみち完全とはいかなくても一時的に倒せるのなら時間は稼げるはずだし。その間に打開策を考えればいいことだよ。」
そう言うと二人は箒と一夏クウガを残して部屋から去って行った。
・・・・・・う、動けない・・・・・。
俺は、結局何もできなかった。
弾も・・・・・数馬も・・・・・みんな、俺が殺したようなものだ。
そして・・・・・あの変な奴も俺みたいな化け物になってなんの太刀打ちできなかった。
俺は、何をやっても所詮は千冬姉のお荷物にしかならないのか?
「・・・・・・・・ん?」
俺は体に冷たいものがかかったことで目を覚ました。目を開けてみるとそこには青い空が見え、体を上げてみると海が目の前に広がっていた。
「海?・・・・ん!?」
俺は自分の手を見て普通の人間の手になっていたことに驚く。体の方を見まわすとあの恐ろしい化け物の姿ではなく、以前の俺 織斑一夏としての身体に戻っていた。
「どうなっているんだ?俺は・・・・・化け物に・・・・・」
俺は戸惑いながら辺りを見回す。周囲は建物は一切なくどう見てもどこかの海辺だということぐらいしかわからない。
「困ったな・・・・・ん?」
俺は自分のいるところから少し離れたところにどうやら地元の子供と思われる子たちが集まって何かを見ているのに気が付く。恐る恐る近づいてみるとそこには俺と同じ日本人と思われる男の人がジャグリングを披露していた。子供たちは興味津々にその男の技を見ており、終わると男はニコッと笑顔でサムズアップをした。
俺とその人は偶然目が合った。
「・・・・・・・そっか、それで一夏君はそんなに暗い顔をしていたんだね。」
「・・・・はい。」
その男 五代雄介は実に不思議な人だった。
会ってからすぐ『君、もしかして日本人?こんなところで会うなんて奇遇だね!』と言われて自己紹介とばかりに「夢を追う男 2000の技を持つ男 五代雄介」とか言う名刺を渡された時は正直ビビった。
俺が何かを抱えていることをすぐ察し、素直に聞いてくれた。
俺が千冬姉を見ながら「誰かを守りたい」と思うようになったこと。
誘拐事件後の俺の身体の異変。
そして・・・・かけがえのない友達を助けることができなかったことを全部吐き出すかのように話し続けていた。
「俺は、弾や数馬たちに何も話すことができなかった。避けられるんじゃないかって怖かったんだ。でも・・・・・そのせいで殺されてしまった。」
「・・・・・」
「俺は、みんなを殺したその男が憎いと思った!・・・・けど、全く敵わなかった。」
俺は顔を伏せながら言う。
「悔しかった!俺を怪物に変えた上に、かけがえのない親友を殺したあの男に敵わなかったことが!!もし、俺にもっと力があれば・・・・・・」
「・・・・・そっか。許せないね、それは・・・・・」
俺の話を聞いて五代さんは言う。
「・・・・でも、だからってそんな気持ちでいちゃいけないと思うんだ。」
「えっ?」
俺は顔を上げる。五代さんは握り拳を作って俺に見せる。
「俺はこれを使ってすごく嫌な気持ちになったんだ。大事なのは『復讐しよう』とかじゃなくて『もう同じことはさせない』っていう気持ちなんじゃないかな?」
「でも・・・・」
「例えばさ、俺が君にこうしたら、君はこう来るかもしれないだろ?そしたら、またこう!こう!って繰り返しならない?」
五代さんは自分の拳で打ち付け合いながら例えようとする。
確かに暴力を暴力でやり返すのはよくないことだ。
でも・・・・・・
「だったら・・・・・だったらどうすればいいんだよ!!」
俺は五代さんを見ながら思わず叫んでしまった。
「そんなことはわかってるさ!でも・・・・・人間じゃ無い化け物にされて、同じクラスのみんなを殺されて・・・・・アンタに俺の気持ちがわかるかよ!!」
俺はしまったと思って口を噤む。でも、五代さんは少し驚いただけですぐに落ち着くを取り戻してはっきり言った。
「・・・・うん、そうだよ。俺は君にはなれないし、君の気持になることもできない。でも、思いやることはできるよ。」
「・・・・俺はどうしたらいいんだ。」
俺は、再び腰を掛けて落ち込む。
「・・・・いいんだよ、悩むときはとことん悩んで。」
「・・・・・・・」
俺はIS学園を出てからずっとライドストライカーを走らせていた。
「アナザーアルティメットクウガを止めなくちゃ・・・・・でも・・・・・・」
飛び出したのはいいが対策なんて何もなかった。
正直言ってテレビではソウゴは対応するウォッチがない時はないなりに戦っていたが俺にはそんな考えは浮かばなかった。
クウガウォッチを無くしたのは致命的だ。
後、倒せる可能性があるのは今はまだ持っていないジオウライドウォッチⅡで変身するジオウⅡ。
もう一方は、持ってきてあるディケイドライドウォッチだがライドヘイセイバーでクウガの力を使えば僅かながら倒せる可能性はある。
でも、こればかりは確証が持てない。
ディケイドアーマーでアナザーライダーを倒していたのはゴーストとRIDER TIME龍騎ぐらいでどちらも対応したウォッチを所持していた。
しかも今回の相手はアナザークウガの強化版だ。
「俺は・・・・・・どうしたら・・・・・・・」
不安に煽られて俺はマシンを止める。
気が付けば雨が降っていて俺の身体を濡らしていく。
「このまま逃げた方がいいんじゃないかな?」
神様は時期が来たらジオウライドウォッチⅡとかを渡すって言っていた。
だったら、それまでの間どこかで隠れていた方が身のためではないのだろうか?
態々勝てない戦いに挑むなんて馬鹿馬鹿しい。今はどっかで隠れて時を待った方がいい。
そう思っていた時だ。
「よぉ、こんなところで何してんだ?」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。振り向くとそこには見覚えのある男が傘をさして立っていた。
「アンタは・・・・・いや、そんなわけ・・・・・」
「正義の味方がこんなところで油を売っててもいいのか?アナザーライダーがいるのはここじゃないぜ。」
「えっ!?」
「なんだ?せっかく死んだお前に二度目のチャンスを与えてこの世界に転生させた俺の顔を忘れちまったのか?」
聞き覚えのある口調と胡散臭いおじさん面。
その男はまさに俺をこの世界へ転生した上にジオウの力をくれた神様そのものだった。
「も、もしかしてあの時の神様!?」
「他にお前のことを詳しく知っている奴がいるか?それとも証拠として前世でお前がこっそりノートに書いていたオリジナルライダーと必殺技とかをこの場で言ってやろうか?」
「・・・・・いや、マジで信じるよ。」
人は見当たらないけどこんなところで言われたら恥ずかしいので信じる。
っていうか神様がこんなところに来てくれるとは好都合だ。
「何しに来たかはわからないけど丁度良かった!ジオウライドウォッチⅡをくれよ!」
「何?」
「クウガライドウォッチを無くしちゃったんだ!ティードを倒すにはあのウォッチしかない!だから・・・・・・・」
「お前さ・・・・・・何かすごい勘違いをしていないか?」
「えっ?」
ジオウライドウォッチⅡを渡してもらおうとした束の間、神様は不機嫌そうな顔で俺を見る。
「お前そもそも変身して間もないって言うのに強化形態欲しがるなんて都合がよすぎると思わないか?普通なら、もっと先になるはずだろ?」
「そ、それはそうだけど・・・・・・・でも、このままだと世界が・・・・・」
「世界が滅んじゃう・・・・・ってか?それはお前が原因なんだぞ?」
「はっ?」
神様が言っていることがよくわからなかった。
「まだ、わかっていないようだな。よく考えてみろ。一つの世界に元々在りもしない物が流れ込んでくるんだ。そうしたらどうなると思う?」
「そんなに不味いことなの?」
「お前はラーメンとシチューを混ぜてうまいと思うか?まずいだろ?世界だって同じさ、その世界にないはずの代物が流れ込んだことによって世界のバランスが崩れる。そうした時点で原作も何も関係なくなるんだよ。」
「でも・・・・・神様転生って・・・・・」
「その世界でチート無双とかできると考えていたのか?思い違いだな、世界はそんなに甘いもんじゃない。世界っていうものは無意識にその均衡を保とうとするんだ。例えば、ガンダムをISとして出せば世界はガンダムに合わせて変化する。そして、別の作品のキャラの能力をもらって転生すれば、その世界にもその能力を持つものが生まれるようになる。わかるか?織斑一夏がアナザークウガになったのもお前が原因なんだよ。」
「そ・・・・そんな・・・・・」
「ドードー鳥って知っているか?その昔、インド洋の島に住んでいたって言われているが人間が発見してから約80年後に全滅したって言われている。原因は人間と一緒に島に上陸したネズミとかの害獣に喰い殺されたりしたからだ。お前たち転生者はいわゆるこの世界を食い荒らすために連れ込まれた害獣みたいなものなんだよ。」
神様は冷徹に言い放つ。それを聞いて俺はあまりのショックに膝を付いてしまった。
「・・・・・だったら・・・・・なんで転生なんてさせてくれたんだよ。」
「神様としてのルールだからさ。不幸な事故で死んだ奴には一時的にでも理想の夢を見させるためにってね。その世界の均衡を保てるかどうかはその転生者の力量次第ってわけなんだよ。つまり、俺はお前たちのような奴に夢を提供してやっただけに過ぎない。そこから先はお前らの責任、最も途中で放棄して勝手に自滅した後は俺が世界をリセットするんだけどな。」
「・・・・・ちなみにうまくいった奴は?」
「・・・・・ゼロだ。全員、自分が奪った役割の重荷に耐え切れず自滅して行った。ティードもその成れの果ての一つだ。執念の強い奴は稀にああいう形で残るんだよ、困ったね~。」
「・・・・・どうすればいいんだよ・・・・俺が・・・・俺がこの世界をおかしくしたって言うのかよ!!」
俺は雨に打たれながら叫ぶ。神様は、そんな俺の姿を見ながらしゃがみ込む。
「お前がこの世界に絶望して諦めるのは勝手だ。だがな、そうなった場合誰がお前の代わりにこの世界を守るんだ?」
「・・・・・・・」
「篠ノ之束だ。彼女に関しては驚かされたもんだ。俺がリセットした時に消し忘れたビルドドライバーと残ったフルボトルを基にビルドとしての力を持っちまったんだからな。お前が動かないとなると恐らく彼女がティードと戦うことになるだろう。自分の夢のためにな。けど、彼女じゃ奴には勝てない。もし敗れればISの生みの親である束すら勝てないのだからもう諦めるしかないと世界中が絶望するだろう・・・・・」
「・・・・・・・」
「お前が戦うしかないんだよ!時の王者である『仮面ライダージオウ』の力を持ったお前が!そう思って学園から抜け出してここまで来たんだろ!それとも奴と同じ道を歩むのか!」
「うるせえ!!」
俺は、神様に向かって泣き叫んだ。
「うるせえ!うるせえうるせえうるせえうるせえ!!俺にそんなことできるわけねえじゃねえか!!」
「やる前に諦めるのか?あこがれたからなりたいって願ったんじゃないのか?」
「俺は常磐ソウゴじゃねえんだ!王様になる気もないし、オーマジオウにもならねえ・・・・・そんな俺に・・・・できるわけないじゃないか・・・・・」
「お前は大事なことを忘れている。言っただろ?何でもかんでも原作通りじゃないってな。この世界にライダーの力が混ざった時から関係なくなっちまっているんだ。」
そう言うと神様は立ち上がり、俺の前から去って行く。
「話はしておいたぞ、やるかどうかはお前次第だ。もし、お前にこの世界を変える気があるなら最後まで戦え!俺はまだやる仕事が残っているからな。」
俺はポケットからジオウライドウォッチを取り出す。
この力が欲しいと望んだからこの世界はおかしくなってしまった。でも、同時にそれを修正できるというようなことを彼は言い残して行った。
「・・・・・・俺がやるしかないってか。」
濡れた顔を拭いながら俺はジクウドライバーを装着し、ジオウライドウォッチを作動させた。
<ジオウ!>
「・・・・俺たち転生者がこの世界の罪だというなら・・・・・」
ドライバーを回転させて仮面ライダージオウへと変身する。
<ライダータイム!>
<仮面ライダージオウ!>
「俺が変えてみせる!!」
仮面ライダージオウへと変身をした俺は再びライドストライカーに乗り込んで現場へと向かった。
次回は・・・いつ?