最後に残されたもの   作:牛乳拭いた雑巾

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展開早すぎかな?まあサクサク展開の方が読みやすいし書きやすいからいっか。


再会-----そして

「先生、少しよろしいですか?」

 

暗く閉塞感を感じられる部屋。そこにぽつんと置かれたベッドの上で、数多のチューブに繋がれた男が体を起こす。

 

「黒霧か。何か用かい?」

 

そこにいたのは目も鼻もなく、かわりに顔が醜悪な瘢痕で覆われている男だった。誰がどう見ても一目で重症であると分かる身でありながらも、しかしあふれ出る威圧感はいかなるヴィランをも上回るほどの重圧を持っている。

 

AFO---ヴィラン連合の真の黒幕にして、死柄木と東雲を自分の後を継ぐ巨悪へと成長させんともくろむ男。

 

「気になったことがありまして。……本当に死乃を雄英高校襲撃作戦に参加させてもよろしいのでしょうか?」

「と言うと?」

「彼は、かつてはヒーローを目指す普通の子供でした。今はこちら側にいますが、雄英の生徒たちと接触しもし……」

 

ヒーローを目指す自分と同世代の子供たちを見て彼の正義感が感化されてしまい自分たちのことを裏切ってしまうかもしれない。東雲は頭稼ぎのためのチンピラたちとは違い自分や死柄木と並ぶ連合の主要メンバーの一人であるのだから万が一のことを考えて今回は襲撃メンバーから除外するべきではないのか?それが黒霧の抱いた不安だった。

黒霧の不安はもっともなものである。だが…

 

「大丈夫だよ」

 

AFOは黒霧のその不安を静かに、だがはっきりと杞憂であると断言した。

 

「確かに、彼には弔ほど社会を強く憎んだりしているわけではないし社会の転覆を狙っているわけではない。だけど、彼は弔とは違って巨悪にならねばならない理由がある。国が、政府が、自分の言うことを無視できないほどの大きな悪に。その目的が達成されなければ彼は決して裏切ることはないよ。だから安心して連れていくと良い。彼の個性は非常に有用だ、それは黒霧もわかっているだろう?」

 

未だ不安がぬぐえたわけではないが、AFOの言う通り危機察知という彼の個性は今回の襲撃において重要な引き際の判断材料となる。彼本人も非常に強く、十分な戦力にもなる。そして何より先生が連れて行けと言っている以上、連れて行かないという選択肢はもはやない。

 

「わかりました。では失礼します」

 

頭を下げて黒霧はその個性で再びその部屋から姿を消した。

 

 

************************

~~~USJ~~~

 

雄英高校が日本で最高峰のヒーロー育成機関であることの理由の一つに施設の充実さがある。もちろん、オールマイトなどのトップヒーローを多数輩出したというのもそれの一つなのだろうが、そもそもトップヒーローたちが若かりし頃に雄英を選んだのもよりよい環境でヒーローを目指せるからというのもあっただろう。

そして今東雲察危がいる場所もまた、雄英が誇る設備の一つである。火災や水難、倒壊に土砂崩れ果ては台風などの事故・災害を人工的に再現されておりよりリアリティのある状況での人命救助訓練が可能となっている。

そんな場所の名前はウソの災害や事故ルーム…略してUSJ。

 

ウソの災害や事故ルーム(U S J)……ヒーローは自分でヒーローネームを考えたりしているはずだが、そのネーミングセンスは一体どうなんだ?)

 

ヒーローのネーミングセンスにどうでもいい疑いを抱きながら東雲察危はUSJの一角である倒壊エリアの廃ビルの中で待ち続けている。

彼がなぜ死柄木たちとではなく捨て駒であるチンピラ連中と共にここにいるのか。それは今回の襲撃が彼への試験も兼ねているからでもある。

 

 

 

『おい、死乃』

『………』

『おい、聞いてんのか』

『この距離だ、聞こえてるに決まってんだろ』

『ちっ、なら返事をしろよ殺すぞ。…まあいい。お前さあ、人殺せんのか?』

『は?なんだ突然。テメエを殺せばいいのか?』

『これから行くのは雄英高校。前のテメエと同じでヒーローを目指すガキどもがうじゃうじゃいる場所だ。クソみてえな情に絆されて俺らを裏切るんじゃねえのかって思ってな。同世代同士、共感できるとこもたくさんあるだろうしな』

『…………問題ない』

『その言葉を信じるほど俺たちは甘くねえ。だからお前に一つテストを課す』

『テスト?』

『ああ。俺たちの作戦は知っているな?』

『子供たちを黒霧の個性で散らして、残ったオールマイトを脳無で叩くって寸法だろう。それが……ああ、なるほどな』

『そうだ。お前にはガキの相手をしてもらう。そこでガキを一人殺してこい。どこのエリアを受け持つかはお前が決めろ』

『分かった。ならーーー』

 

 

 

そして彼が選んだのは倒壊エリア。もちろん、そこを選んだのにも理由がある。

彼の個性である危険察知には明確な相性がある。彼にとって相性がいいのは、オールマイトのようなパワーとスピードを生かした点での攻撃を行うタイプだ。いかに速かろうと、彼の個性をもってすれば来る方向やタイミングまですべて察知できるから避けることは難しくない。

だからこそ、逆に相性が悪いのは点ではなく面での攻撃を行える範囲攻撃型の個性だ。たとえどれだけ察知できようとも、そもそも避けることが不可能であれば彼の個性は意味をなさない。

だからこそ、倒壊エリアの廃ビルの中を選んだ。いかに相性が悪かろうとも狭い室内であれば仲間への被害を恐れ使用に制限がかかるだろうし、仮に使われようとも一気に距離を詰めて得意の接近戦に持ち込むことができ相性を相殺できる。

できるのだが……

 

 

(ここを選んだんだけど失敗だったかなあ……)

 

二人の生徒相手にチンピラたち一瞬で敗北して行く様を陰に隠れながら見ていた。隠れていたのは単純に、相手の消耗を誘うためと個性を把握するため。天下の雄英生がこの程度のチンピラに負けるはずがないとは思っていたので、自分が手出しする前に決着がついてしまうことは考慮していなかった。そして実際チンピラの敗北で終わったためにその点は問題ない。

ゆえに、彼が失敗と思ったのはそこが理由ではない。

 

 

BOOOOM!!

 

 

爆発音が響く。

 

生徒(おれら)に当てられたのがこんな三下なら大概大丈夫だろ」

 

最後の一人のチンピラがやられた。送られてきた二人の生徒の個性は把握でき、かつ相性も良好。状況としては彼の想定していた理想に近いものではあるのだが……

 

(黒霧の奴、知っていたのか……?だとしたら紳士の振りして相当性格悪いな。戻ったら腹黒って呼んでやろうか)

 

二人の会話を聞くに、どうやらこのまま死柄木たちのいる入口へと向かうらしい。もちろん、それを許すわけにはいかない。

 

(仕方ないか……)

 

彼は静かに二人に向けて歩を進める。

 

 

 

 

コツコツと足音を立てて誰かが近づいてくる。

 

「ちっ、まだいたのかよ。隠れてりゃいいのによ」

「おい、油断すんなよ爆豪」

「こそこそ隠れてるような腰抜けにやられるわけがねえだろうがクソ髪野郎!!」

 

「相変わらずだなあ、勝己」

 

「「は?」」

 

一体どういうわけか、ヴィランが爆豪を下の名で呼んだ。しかもまるで昔から彼のことを知っているかのような口ぶりに苦笑を乗せて。

ヴィランは無論のこと、彼のことを名前で呼ぶものはクラスにはいない。幼馴染みである緑谷だけは苗字ではなかったが、かっちゃんというあだ名で呼んでいた。

では一体だれが?その疑問に答えるように、東雲察危は暗闇からその姿を現した。

 

「久しぶりだな、勝己。とりあえず雄英合格おめでとう」

 

「…………」

「お、おい爆豪。知り合いか?」

 

切島の疑問の声にしかし彼は答えない。ただ唇を震わせて、驚愕に目を見開てそのヴィランを見ていた。

 

ありえない、ありえない。あいつがここにいるなんて、そんなのはあり得るはずがない。

だけどそれ以上に……

 

「どうした?俺のことを忘れたのか?爆豪勝己」

 

忘れない。忘れるわけがない。あの日(・・・)以来、一度として再会したことはなかったが見間違えるわけがなかった。忘れるわけがなかった。

なぜなら彼は、幼き頃の自分にとって初めてできた唯一対等に渡り合える相手。

路傍の石ころでしかなかった幼馴染みではない。有象無象の他の奴らとも違う。

 

『く、そが……。また、負けた……』

『はあっはあっ、俺に、勝とうだなんて、100年早えんだよ』

『次こそ、完膚なきまでにぶっ飛ばしてやる!』

『はっ、やってみろ』

 

挑み続けて負け続けた。通算130戦130敗という敗北を重ねながらも次こそは!と悔しさに心を燃やしながらも互いに切磋琢磨しあって高みを目指してきた、まさに好敵手(ライバル)と呼ぶにふさわしい存在。

もし万が一、いいや億が一自分がNO.1ヒーローになれなかったとしたら、その時はきっとあいつがNO.1(そこ)にいるからだろうと、自尊心の塊である爆豪勝己がそう思うほどに彼のことを認めていた。

 

 

なのにーーーなのになのに!!

 

 

「なんでーーーなんでテメエがそこにいるんだァァァ!察危ィィィィ!!!」

 

血を吐くような叫び。

ヒーローになるんじゃなかったのか!?一緒にそれを目指していたんじゃなかったのか!?なのになぜ、お前は(そちら)側に立っているんだ!?

心の奥底からの憤激と現実を受け入れられない困惑…そして、何かに間違いであってくれという願望を乗せたそれを受けて……

 

「それは……」

 

わずかに生じた言いよどみ。

 

なにがいけなかったのか。

 

どうして俺はこっち側なのか。

 

どうしてお前の隣にいるのは自分ではないのか。

 

どうして俺は、ヒーローじゃないんだ。

 

どうしてどうしてどうしてーーーー

 

一瞬にも満たない間隙に生まれた疑問葛藤躊躇嘆き羨望ーーーそして、後悔。

 

湯水のごとく湧いてくる感情が、口と目からあふれ出しそうになりながらも、東雲察危はそれらすべてを……

 

 

 

『ごめんね、ごめんね察危』

 

 

 

「俺が、ヴィランだからだ」

 

最後に残された自分に、最後に残った役割を果たすために。

闇の中へ、封印した。幼馴染みである自分を。ヒーローを目指した自分を。

 

「ーーーーそうかよ。だったら……遠慮なく、ぶっ殺してやらあァァ!!」

「できるもんならやってみろ。一度も勝てたことないくせに」

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローとヴィラン。共にヒーローを目指した二人は、今ここに最悪の形で再会を果たした。




爆豪勝己→東雲察危
あいつを倒すのはこの俺だ
東雲察危→爆豪勝己
あいつにだけは絶対負けねえ



┌(┌ ^o^)┐ホモォ

(主は腐ってないです。ないったらないです)
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