最後に残されたもの   作:牛乳拭いた雑巾

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二次とはいえ何かを創作するのが得意な身ではありませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
誤字報告してくださった方も本当にありがとうございます!
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幼馴染?幼馴染み?まあどっちでもいっか。


歩む道

7年前、まだ俺がヒーローを目指していた頃。

 

『どうしても、行っちゃうの?』

 

出久がボロボロと涙を流しながらもう何度目になるかもわからないくらいそう聞いてきた。そして俺は、こちらもまた都合何度目かわからない同じ答えを返す。

 

『ああ、もうこの町に俺たちの居場所はないんだ』

『そんなこと!!』

『あるんだよ。本当は母さんには誰にも言うなって言われてんだけど、お前たちにだけは言っておこうと思ってな』

 

勝己や出久など一部の人を除けば、もうこの町に俺たちの味方はいない。

 

『どうした勝己。随分と静かじゃねえか、テメエらしくもねえ』

『……テメエがどこに行こうが、んなこたあどうでもいい』

『かっちゃん!どうしてそんなこと言うのさ!』

『どうでもいいことだろうが!どこにいようが、どうせヒーローを目指すんだからな!』

『かっちゃん……』

『勝己……』

『どこにいようが、どんな道を行こうが俺たちの行きつく先は同じ『ヒーロー』だ。だったらいつか絶対にまたぶつかるだろうが。だからーーー』

 

ビシリと指先を突き付けて声高らかに勝己は俺に宣戦布告する。

 

『次会う時こそ、テメエを完膚なきまでに、徹底的にぶっ飛ばしてやる!覚悟しやがれ!!』

『ーーーなら、返り討ちにしてやるよ』

 

俺の返しに納得したのか、勝己はフンと鼻を鳴らしてどかどかと足早に立ち去った。

 

『さっちゃん。かっちゃんも悪気はないんだよ?だってかっちゃんもーーー』

『ああ、わかってる』

 

最後の方はもうほとんど鼻声になっていたからな。それで気づくなって方が無理だ。

 

『なあに、すぐに戻ってくるさ。家族そろってな』

『うん!うん!僕待ってるから、また三人でヒーロー目指そうね!』

『ああ。だからお前も、周りになんて言われても諦めんなよ。せっかく素質あるんだから。

ーーー悪いな、もう行かないと』

 

そう言うと、出久はごしごしと袖で涙を乱雑にぬぐい、いつもの、どこか人を安心させる笑顔を見せて、

 

『ばいばい、さっちゃん』

『ああ、またな』

 

そう言って俺たちは別れた。いつの日か、お互いにもっと立派になってまた会おうと、そう誓ってーーーー

 

 

 

**************************************

 

「死ねオラア!!」

 

爆発の反動で一気に距離を詰め、相手が行動を起こすよりも早く相手を一撃で沈める。爆豪勝己が最も得意とする先手必勝の右の大振りーーーではなく、爆発の推進力を乗せた回し蹴り。勝己は今かつてないほどに怒り冷静ではない、が彼の天性の才が無意識下での先日のヒーロー基礎学での一件を活かし初手をいつもの拳から蹴りへと移行させた。

 

もっとも……

 

「………」

「なっ!?」

 

彼の必殺の一撃はしかし何もない空を蹴るに終わった。死乃は一歩、いや半歩後ろに下がっただけの最小限の動きでその一撃を回避した。途轍もない勢いで迫り来る蹴りを眼前をかすめるほどすれすれで躱すという、はたから見ればおそるべき胆力と度肝を抜かすことだろう。実際、クラスメイトの豹変に呆然としていた切島がはっと意識を取り戻すほどギリギリの回避だった。

しかし、死乃にとっては何も驚くことはない。一切の焦りを感じさせない声音で告げる

 

「俺の個性を忘れたのか?」

 

危険察知ーーー無論のこと彼はその個性を発動させていた。だからこそ彼はわかっていた。彼が右の大振り(いつもの)ではなく、蹴りを繰り出すのも。それがどこからどのタイミングで来るのかも。

 

「ガハッ!?」

 

返しの鋭い掌底を食らってまるでビデオの逆再生のように彼が飛んできた軌道を逆戻りして切島の足元に転がった。

 

「お、おい爆豪!?大丈夫か!?」

 

勝己の戦闘センスは件のヒーロー基礎学で既に把握している。カメラ越しに見ていただけではあったが、爆破というその強個性に加えてすさまじい戦闘センス。たとえ直接拳を交えずとも彼が紛れもない強者であることはわかっていた。

そんな彼が、容易くあしらわれた。それだけで、目の前にいるヴィランの脅威は推して知るべしという奴だろう。

 

「あのヴィランはさっきまでの奴らとは違げぇ!俺と二人がかりd「うるせえ!」」

 

勝己は自分を助け起こそうとする切島の手を振り払い血の混じった唾を吐き捨てて立ち上がる。

 

「あいつは俺がやる。テメエはとっとと失せろ!」

「爆豪!意地張ってる場合じゃねえだろうが!?」

「黙れや!!察危程度俺一人でぶっ殺せんだよ!テメエは邪魔すんじゃねえ」

 

切島の言っていることは誰の目からも正しい判断であった。だが、この自分がまさに子供の様にあしらわれたことで勝己のプライドは酷く傷つき、普段以上にその冷静さを損なわれ彼の提案を受け入れさせなかった。

 

(だめだぞ爆豪、そういうのは。ヒーローってのは他人(ひと)のために力をふるうんだ。お前そんなんじゃ、(ヴィラン)と変わんねえぞ)

 

「しまっ!?」

「ッ!」

 

二人の言い争いが終わるまで待っているわけもなく、死乃は一気に距離を詰める。完全に意識を外してしまっていた切島は反応しきれずに一瞬硬直し、対して爆豪は一早く反応して掌を彼に向け顔面目掛けて爆破を起こした。

 

 

BOOOOM!!

 

 

「クソが!」

「うわっ!?」

 

しかしそんな攻撃躱すことなど死乃にとっては造作もないこと。爆発の寸前彼は勝己の腕を掴んで切島へと方向をそらした。

無論のこと、硬化の個性を持っている彼は最大火力ならまだしも牽制程度のその火力では傷つくことはない。だが、傷つきはしなくとも目くらまし程度にはなった。

 

そして、死乃(ヴィラン)を前に敵を見失うことは致命的な隙となる。

 

「ぐはっ!」

「えーーーうおおお!?」

 

勝己を殴り飛ばし、勝己が体勢を立て直すまえに切島を窓からビルの外へと投げ飛ばす。

 

切島の硬化の個性は確かに死乃との相性はいいが、だが死乃もまた彼の防御を崩せる決定打を持たない。死乃は肉体的には常人のそれと変わらない。厳しい訓練の果てにかつてとは比べ物にならないくらいの力を手に入れたものの人の範疇を脱してはいない。だからこそ、切島を強制的に戦いの場から退場させた。今彼らがいるのはビルの四階。硬化がどれほどの性能の物かはわからないが、それほどの高さから落とされて少なくとも無傷というわけにはいかないだろう。

 

「……テメエ。本当に変わっちまったなあ」

 

昔の彼ならあんな真似はしなかった。喧嘩をして拳を振るうことはあっても、あんな風にもしかしたら人を殺してしまいかねないような真似は絶対にしなかった。

 

「……いい加減気づけよ。もうお前の知っている、ヒーローに憧れ目指していた東雲察危は死んだんだよ」

 

その目に宿るのは覚悟と狂気。勝己の知っている幼馴染みは確かにもう感じられなくなっていた。

 

「ここにいるのは、自分のために力を振るって他人(ひと)を傷つける。ただのヴィランだ」

 

くだらない昔話はもうそこで終わりだった。

 

「ーーーーおおおおおお!」

「そうだよそれでいい!テメエはヒーローで、俺はヴィランなんだから!」

 

****************************************

そこから先は、かつて二人が毎日のように繰り返してきた喧嘩などではない。一方的なまでの蹂躙だった。

勝己の攻撃は悉く躱されかすり傷一つ付けられない。逆に死乃の暴力は昔とは比べものにならないほど磨け上げられており、確実に勝己の体力をそぎ落としていった。

 

闘いが再開してからわずか数分で決着がついた。

 

「ーーーーー」

 

右腕と左足を折られて血反吐を吐き、地に伏した幼馴染のもとへ死乃はゆっくりと近づいた。

 

「……悪いな、勝己」

 

既に虫の息。意識を失っている幼馴染みへと掛けた言葉は嘲りではなく、謝罪の言葉だった。

 

「……恨んでくれ。憎んでくれ。どんな罵詈雑言でも受け入れよう。俺にはそれだけの罪がある」

 

謝るくらいならば最初からやらなければいいのに。それを自覚しながらも彼は言わずにはいられなかった。そして、その歩みを止めることもできなかった。

 

「それでも俺は、この道を征くって決めたんだ」

 

俺とお前たちの道はもう二度と交わることはない。

 

ついに勝己の下へとたどり着き、せめて苦しまぬよう一撃で止めをさしてやろうと拳を振り上げてーーー

 

「死乃」

 

己の名を呼ばれ、彼はその手を止めた。

 

「何だ腹黒。テメエ、随分と良い性格してるじゃねえか」

「腹……黒……?」

 

突然のそれも身に覚えのない罵倒にワープゲートで転移してきた黒霧は首を傾げた。

 

「しらばっくれてんじゃねえぞ。テメエ知っててこいつを送ってきたんだろうが」

「?ええ、確かにその少年ともう一人だけが生徒たちの中で個性を確認でき、あなたとの相性も悪くないと思いそちらに優先的に送りましたが……なにかまずいことでも?」

「…………」

 

黒霧の言葉に死乃は思わず呆然と立ち尽くした。

 

(は?つまりあれか?これは単純に俺の運が悪かったってこと?……いや、まさかそんなこと)

 

そう思うも、しかし黒霧に嘘を言ってるようには感じられない。最も、死乃はそう言った腹の探り合いは得意分野ではないためド素人の直感での判断ではあるのだが。仮にそれを抜いてもそもそも嘘をつく理由もない。

 

(まじかよ……)

 

「どうしたんですか?」

「いや、こっちの勘違いだったみたいだ。……それで、お前は何の用だ?オールマイトはやったのか?」

「それがーーー」

 

黒霧からの報告を聞いて死乃はがっくりとうなだれた。

 

「……つまり、俺たちの完全敗北ってことじゃねえか」

 

13号とイレイザーヘッドは無力化できたもののこちらがわざわざ集めた戦力の多くはつぶされて、肝心のオールマイトはそもそも不在。今回の一件で雄英は当然警戒レベルを上げるだろうから当然次の機会などそう簡単には訪れない。

 

「…………申し訳ありません」

「まあ、いい。とりあえず、さっさと戻るぞ。いくら脳無がついてるとはいえ死柄木一人では不安が残る」

 

そう言って、死乃は勝己を荷物のように脇へと抱えた。

 

「連れて行くのですか?」

「あ?当たり前だろ。テストだけ受けて解答用紙を出さない馬鹿がどこにいんだよ。いいからさっさとゲートを開け」

 

開かれたゲートに身を沈める直前。

 

「無事か、爆豪!?」

 

至る所から血を流し、全身に打撲を負いながらも這う這うの体で切島が彼らの居る場所へと戻ってきた。損傷は決して軽くはないが、しかしそれは戦闘不能に陥るほどの物でもなかった。

 

(驚いた。あの高さから落ちてその程度の傷かよ。次は気を付けるとしよう)

 

「テメエら!爆豪を離しやがれ!!」

 

抱えられたボロボロのクラスメイトを見つけた彼は死乃へととびかかるもーーー一歩遅い。切島の手はむなしく空を切り、二人はその姿を消した




幼馴染が欲しい人生だった。口では文句言いながらも毎朝起こして朝ごはんを作ってくれるそんな幼馴染が。
せめて夢でくらいそんな幸せを味わえると信じておやすみなさい。
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