最後に残されたもの   作:牛乳拭いた雑巾

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サブタイトル決めるのまじ難しい

前半デクくんパート


緑谷出久

僕らが戻ってきたとき、USJのエントランスはまさしく地獄と化していた。黒霧と呼ば多ワープゲートのヴィランの機転によってプロヒーロー13号先生は戦闘不能に陥り、もう一人のプロヒーロー相澤先生はヴィラン連合の切り札脳無によってずたずたにされていた。

水難ゾーンで見事ヴィランを撃退し、僕らの力は奴らに通用する。これなら勝てるかもしれないとわずかばかりの希望の光を感じ始めていたところだった僕ら三人はその惨状に愕然としていた。

 

(な、なんだあの化け物は…。抹消の個性の相澤先生をあんな風にできるってことは異形系の個性か、素の力であれだとうことだ。どっちにしろまずい!先生ですらあんな風に一方的にやられて僕たちで勝てるのか……)

 

「や、やべえよ緑谷!早く逃げようぜ!」

 

(でも、あのワープの個性の奴がどういうわけかいなくなってる。手を付けてるやつはあの化け物に比べればあまり強そうには見えない。あいつだけなら隙をつけばーーー)

 

そう思い、個性を発動しようと意識した瞬間ーーー

 

「死柄木弔、死乃を連れてきました」

「遅いぞ黒霧、これ以上ここにいてもメリットはない。さっさとずらかるぞ」

 

どこかへ姿を消していた黒霧が再び誰かを連れて戻ってきてしまった。そしてそれ以上に、気になったことがあった。

 

(ずらかる?こいつら、何考えてるんだ?オールマイトを殺すって言ってたくせにこんなあっさりーーー)

「やったあ!俺たち助かったんだあ!」

「気味が悪いわ、緑谷ちゃん」

「うん…これだけのことをしといてこんなあっさり……」

 

峰田君は喜んでいたが、僕と蛙吹さんは用意周到さに比べてあまりにもよすぎる諦めになんとも不安を抱き始めたその時にーーー

 

「ほらよ」

 

どさりと、まるで荷物のように放り投げられたそれを見て、僕らの思考が止まった。いいや、思考だけではない。呼吸すらも止まり、完全に無防備な姿をヴィランの前でさらしてしまった。本来なら決して目の前にいる男たちからそらしてはいけない意識を完全にそれへと集中させてしまったのだから。

 

「かっ……ちゃん?」

「え、う、嘘だろ爆豪なのかよ!?」

「そんな、まさか爆豪ちゃんが!?」

 

放り投げられたそれは無残な姿となった幼馴染み爆豪勝己の姿だった。右腕と左足があらぬ方向に折れ曲がっており、他にも多くの傷が見受けられた。生きているのか死んでいるのかここからでは判別できないが、少なくとも意識があったところでまともな戦力とはなりえないだろう。

 

「お、おいあれまさか爆豪か!?」

「そんな、あの爆豪が負けたっていうのかよ!?」

 

そして、影響はただこちらの戦力が減ったというだけではすまない。かっちゃんは僕らのクラスの中でもずば抜けた戦闘センスをもっていた。轟くんとかっちゃん。今のA組で最強は誰かと聞かれたら必ずこの二人に二分されるだろう。そのうちの一人が、ボロボロの姿でヴィランに連れてこられたのだから、ただでさえ弱っていたみんなの心が圧迫される。

 

(一体誰がかっちゃんをーーー)

 

隙を見てかっちゃんを奪還すべく死乃と呼ばれたヴィランを確認しーーー僕のすべてが再び静止した。

 

「さ……さっちゃん?」

 

数年ぶりの再会。だが、見間違えるわけもなかった

無意識のうちにつぶやかれた懐かしいその名前に彼が反応し、怪訝そうな表情をこちらに向け、今度は相手が驚愕に動きを止めた。

 

「あ?なっ……出久!?」

 

彼はまるで信じられない者でも見るように僕の名前を呼んだ。

『出久』。今まで無個性だった僕のことを、何もできない木偶の坊のデクという蔑称で呼んでる中、彼だけはずっとそう呼んでくれていた。彼だけは、僕のヒーローになるという夢を笑わずに応援してくれていた。僕はヒーローになれるって言ってくれた。

なのにーーー

 

「は、はは。な、なんで君がそこにいるのさ」

 

まるで現実を拒絶するように乾いた笑いが思わず漏れた。隣にいる峰田君と蛙吹さんが怪訝な表情で僕を見ているがそんなことを気にしている余裕なんてなかった。

 

「なんで君が、そんな連中と一緒にいるのさ」

 

まるで仲間みたいに当たり前のように会話を交わしているのさ。なんでヴィランを伴って現れるのさ。なんでーーー

 

「なんで、かっちゃんがそんなボロボロになってるのさ」

 

「…………」

「おい、どういうことだ死乃」

「死乃の知り合いなのですか?」

 

驚愕に見開かれていたさっちゃんの目がゆっくりと閉ざされて、心を落ち着かせるかのように小さく一つ息を吐き、彼は告げた。

 

「今の状況が分かんねえのなら、テメエはヒーローをやめた方がいい」

「ーーーーー」

「俺がヴィランで、勝己(こいつ)をやった。そんなの一目瞭然だろうが」

 

目の前が真っ暗になった。彼の言ってる通り、今の状況を理解できない僕はヒーロー失格なのかもしれない。でも、理解したくなかった。僕がずっと追いかけてきた二つの背中、そのうちの一つが暗闇へと消えて行ってしまったのだから。

 

「おい、こっちの質問にも答えろよ」

「別に、ただの昔馴染みだよ。今は何も関係ない」

 

さっちゃんが、完全に僕たちから意識をそらした。まるで眼中にないという態度だった。

 

「ふ~ん。で、こいつは生きてんのか?」

「一応な。止めを刺そうとしたときに黒霧が来たんでな」

「彼の言う通りです死柄木弔。私があと数舜遅れて現れていたならば、彼は間違いなく死んでいたでしょう」

「……そうか。なら、合格点はくれてやるよ」

「……そりゃどーも」

「んじゃあ、殺すか」

 

そう言って、まるで握手でも交わすかの気軽さで触れたものを崩壊させるヴィラン死柄木がかっちゃんの頭に触れた。

 

「………おいおい、本っ当かっこいいなあイレイザーヘッド」

 

だけど、かっちゃんの頭が崩れることはなかった。なぜなら、相澤先生が脳無と呼ばれた化け物に頭を押さえられ、血を流しながらもその目でヴィランをにらんでいたから。

 

「みど……りや……!」

「は、はい!」

 

先生が僕の名を呼んだ。入学して出会ってからわずかな期間とはいえ、刷り込まれた恐怖が思わず沈んでいた意識を引きずり上げて反応させる。

 

「ぼさっと、してんな!お前は、ヒーローだろうが!!」

「ーーーーー!」

「がっ」

 

そこまでいて、相澤先生は再びたたきつけられて意識を失った。だけど、それだけで僕の戦意を取り戻すには十分な叱責だった。

そうだ、僕はヒーローになるために雄英に入ったんだ!わかんないことをごちゃごちゃ考えてる場合じゃない!今やるべきことはただ一つ。

 

「手っ…放せぇ!!」

 

かっちゃんを取り返すこと。さっちゃんのこととかいろいろ考えんのはそのあとだ。

 

「脳無」

「SMASSH!!」

 

幸可不幸か、力の調整ができスマッシュもうまく決まった。そう思ったがーーー

 

「なっ!?」

 

いつの間にか、死柄木と僕の間を隔てるようにして脳無が現れていた。

 

「お友達が死ぬのをそこで見てなよ」

「けろっ!」

 

脳無によって凄まじい怪力で腕を掴まれ動きが封じられ、蛙吹さんが慌てて舌を伸ばして死柄木の腕を止めようとするがこのままでは間に合わない。

 

(かっちゃん!)

「はは、ははははは!!」

 

狂笑を上げる死柄木の腕が再度かっちゃんの頭部に触れる寸前ーーー思いもよらないところからストップがかかった。

 

「死柄木」

「あ?」

 

良いところで名を呼ばれた死柄木は不機嫌そうに返事をし、さっちゃんがそれに短く答えた。

 

「来てるぞ、何かが」

 

何かとはいったい何だ?抱かれたその疑問の答えはすぐに姿を現した。

 

「もう大丈夫。私が来た!!」

 

オールマイト。僕らの希望の星にして、ヴィランたちの狙い。

 

「ああ、コンティニューだ」

 

死柄木弔がうれしそうにそうつぶやいた。

 

*********************************************

今回の標的、オールマイトがようやくお出ましだ。危機が遠く、かつ直接的な脅威ではなかったため俺の個性は嫌な感じがするというレベルにとどまっており、誰が来るかまではわからなかったが幸いなことに来たのはどうやらオールマイトただ一人だったらしい。

 

「………」

 

俺は無言で体をそらすとほんの一瞬前まで俺がいたところを拳が通り、ふと気づいた時には勝己も出久もいなくなっていた。

 

「あああああだめだ、ごめんなさい……お父さん」

 

俺とは違って一撃食らった死柄木は顔についた腕を落としいつもの病気を発病させていたが、拾った腕をつけると再び落ち着いた。

 

「相澤くん、爆豪少年……君たち、ただで済むと思うなよ」

 

ギロリと、憤怒の形相でこちらをにらみつけるオールマイト。だが俺たちはそれに臆することなく死柄木は笑い、俺は静かに答える。

 

「はっ、そんなことより自分の心配をしたらどうだ」

「覚悟の上だ」

 

そして死柄木の指示により動き出した脳無とオールマイトの戦いが始まった。その戦いは、まさにNO.1ヒーローの名に恥じぬすさまじいものだった。

 

序盤は対オールマイト用の超再生とショック吸収の個性によってオールマイトの攻撃を無効化し、それに対抗すべく地面に突き刺そうとしたオールマイトを黒霧の協力によって逆に拘束し、存外あっけないななどと俺が考えていた時、散らされていた生徒が戻って来て頭が赤と白の二色に分かれた少年ーーー轟というらしいーーーの個性で生み出された氷によって脳無の半身が氷漬けにされてしまいその隙にオールマイトは脱出。それにイラついた死柄木が脳無で轟を襲わせたが寸前でオールマイトがかばった。それによってさらに消耗したオールマイトに次こそ止めを刺さんと動き出した俺たちだったが、オールマイトの拳が作り出した風圧で押し返され、さらには脳無の個性を上からねじ伏せるほどのすさまじいラッシュによってショックの吸収上限を超えた脳無は場外へと吹き飛ばされていった。

 

(ヒーローは常にピンチをぶち壊していくもの、ね。|知ってるよ、そんなこと。俺はよく知っている)

 

「さてとヴィラン、お互い早めに決着をつけたいね」

「クソがあ、チートが」

「クリアとかなんとか言っていたが、できるものならしてみろよ」

 

がりがりと苛立たし気に首筋を引っかく死柄木とは対照的にすさまじい圧を放つオールマイト。しかし脳無に受けたダメージは決して少なくはないはず、黒霧もまたそこを突き自分たちが連携すればチャンスはあると提案した。死柄木はそれに乗ったが、

 

「却下だ二人とも」

「はあ?」

「それはどういう……なるほど」

 

聡い黒霧はすぐに感づいた。

 

「ああ、来てるぞ。もうすぐそこまでな」

 

ついさっき、オールマイトが来た時同様に何か脅威が近づいてきてる。オールマイトが既にここにいる以上、もはやそれは一つしかない。

 

「ちっ。黒霧、ゲート」

「………」

 

舌打ちしつつも納得した死柄木の指示を受け黒霧が俺たちのアジトまでゲートを開く。そこを通る直前、

 

「今度は殺すぞ、平和の象徴オールマイト」

 

死柄木はそう言い残し姿を消した。そして、俺もまたゲート通ろうとしたその時、

 

「待ってよさっちゃん」

「………」

 

出久が俺の名を呼んだ。そこにあるのは、出久らしくない激しい怒りだった。

だが昔の俺ならいざ知らず、今の俺に足を止める理由はない。そのまま無視して歩を進めるとーーー

 

「待てって、言ってるだろォ!!」

 

聞いたこともない怒鳴り声と共にすさまじい速度で俺のもとへ突っ込んできた。

 

「!!」

 

黒霧の驚愕に伴ってゲートが揺らめく。

さっきも思ったが、このスピードは明らかに無個性のそれではない。たまたま遅れて発現するタイプだったのか、先生のように誰かからもらったのかもしれない。

 

「なっ!?」

 

だがいかに早かろうと俺の敵ではない。事も無げに出久の一撃を交わして交叉法でその顔面に拳を叩きこむとまるでゴムボールのように跳ねながらお友達のもとへと戻っていった。

 

「待ってよ、さっちゃん……」

 

未だ力のセーブがうまくいかないのか両足は明らかに折れてしまっており、鼻からだらだらと血を流しながらも痛みとは異なる何かに声を震わせながらまた俺の名を呼んだ。

 

「なんで、なんで君がそっちにいるんだよおお!」

 

出久の悲痛な叫びを背に受けながら、俺は黒霧のゲートへ身を沈めていった。




ようやく緑谷君と再会。覚悟自体は爆豪の時に決めてるので雄英に受かってることに驚きはしたけど動揺は大したことなし。なので前半は緑谷君視点で話を進めました。

教科書忘れた隣の席の女子と席をくっつけて授業受けてみたかった。
おはよう!!

USJ編は次回で終わると思う。多分きっとおそらくメイビー。
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