初投稿なのでとてもつたなく、読みづらいと思います・・・申し訳ございません。
面白いと思っていただければ幸いです。
これからよろしくお願いします。
始:1 全てが終わる日の3ヶ月ほど前。
この世全ての人間を、二種類に分けるなんて行為をいとも容易く行ってしまうのは、おそらくそんなに善い行いでは無いと思うのだが、
今は善悪という概念という言葉を頭の中から消して考えて頂きたい。
この世には、ざっくり分けて二種類の人間がいると思っている。
必要な人間と、要らない人間だ。
何を持って必要かどうかを決めるのは、完全に個人の意見なので、明確にそうだと言い切れるわけでは無いのだが、
何処にでもいるような高校生である僕ー小林 佑介は、その事について社会的価値が高いものが必要な人間だと考えていた。
そして高校三年目に突入した僕は、何処ぞの主人公のようにありきたりに自分は不必要だと考えていた。
僕を愛すことをやめた母、基本家にいない父、超天才的な兄を持っているという、外堀だけ見れば濃い設定のある僕だが、
肝心の自分については、さほど語るべきことも無い。
それが小林 佑介という人間だった。
だからこそ、僕は自分に希望が持てなくなったし、そんな人間が
学校帰りに、マンションの屋上から飛び降りようとしても、特に不可思議な点はないはずだ。
地上20階。そこの縁に僕は立っている。
周りには誰もいない。
無機質なコンクリートが一面に広がっていた。
真下を見れば車が駆け巡り、言いようのない恐怖感を僕に伝えてきた。
怖い。
よくある少年漫画とかだと簡単に自殺したりするので案外怖くないように思ってしまう。
が、実際にこうやって立ってみるとなんとも怖い。
だが、ここで飛び降りなければ、この先死より大きな苦しみを味わってしまうに違いない。
目をつぶる。視界がゼロになり、僕には音と匂い、肌に伝わる感覚だけが残る。
身体が、震えている。
大丈夫。
あとはこのまま、体重を傾けていけばいい。
傾ける。傾ける。
三半規管が、重力の推移を伝えてくる。
傾ける。傾ける。傾ける。
落ちる。
これでいいのだ。きっと。
・・・これでいいのだって、バカボンかよ。
そんなことを思ったのを最後に、僕の人生は---
終わらなかった。
情けない。飛ぶ直前で友人からのラインの通知音がなった、ただそれだけなのに。
思い留まってしまった。(因みに、友人からのラインは「後テストまで一週間DAZE⭐︎」というただ現実を突きつけるためだけに送られたものであった。)
縁の内側にもたれかけ、はぁーっと深い溜息をつく。
完全にさっきまでの覚悟は何処かへ行ってしまっていた・・・。
なんの気なしに空を見上げる。
雲ひとつない青空だった。
あー死ねなかったか、と現実を受け止める。
案外難しい。死ぬというのは。
というか、今回のことで僕はよっぽどのことでない限り死ねないのだと何となく察してしまった。
「・・・帰るか。」
そう諦め、僕は帰路につく。
もう夕日も沈み、街灯だけが道を照らす裏道を機械的に歩く。
言葉では表現できないような感情が胸の中に渦巻いている。
嫌な感情?
いや、安心感?
辛い?
落ち着いている?
まるで自分がわからなくなるかのよう。
思うのだが、この世で一番わからない存在は自分自身ではないのだろうか。
よく「自分のことなんだから自分が一番わかってる」なんていうが、
確かに自分の中でこれはこうだろうという確信を持って自分に確証をつかめる所があるとは思う。
だが自分の中で確証をつかめる部分など1割も満たしておらず、残りの9割はさっぱり何もつかめないように思うので、
もしかすると他人の方が自分のことをわかっているのではないか・・・?と、考えてしまう。
自分のことを一番わかってるのは他人なのではないかと。
僕には僕がわからない。
誰か、自分を教えてくれ。
僕は、どうしたいのだろう。
自殺を試みた時、確かに生きたいと思った。生きたいのだ。
でも死にたくもあるし、こんな世界が嫌で、自分以外の人間を殺したくなった時もある。
結局、自分は何がしたいのか。
自分は何を考えているのか。
さっぱりわからないというのが答えであった。
道すがら、少し古びた本屋に入る。
まっすぐ家に帰りたくなかった。
この暗い気持ちを少しでも晴らしたかったのだ。
なんとなく、少し奥の漫画コーナへ。
もとより目的なし。
流すように漫画の背表紙を見る。
4等分の花嫁・・・アニメ化決定か。
進撃の達人は最近話が大きくなってきて面白いらしい。(友人情報)
通常攻撃がカンストしていて、ターン制無視のお母さんは好きですか・・・滅茶苦茶だな。
こうしているだけでも、少し気分は晴れてきた。
そうやって眺めていると、一つのタイトルが目に入る。
「東方鈴菜庵」というタイトルに、ツインテールの女の子が"KOSUZU"
と書かれたエプロンを着ていた。
角川発行。
・・・東方見聞録のパロディか何かだろうか。
ちなみに東方見聞録というのは、マルコポーロがアジア諸国で見たり聞いたりしたことを記録した、旅の日記のようなものだ。
この読み方をしているのは日本や韓国だけで、他国では世界の記述とか呼ばれてたりするのだけれども。
少し気になったので、手に取り値段を確認。
800円ちょっと。
財布の中身を確認。1200円。
買えぬこともない・・・。
僕は手を頭に当て、長考する。
月のお小遣いは5000円。(父親寄付。ありがとうお父さん。)
今日の日付。6月27日。
「行ける!」
僕は脳内で「チーン」とレジ音を鳴らし、レジへ向かったのだった。
小林佑介の家は、ありふれた一軒家であった。
普通の瓦屋根の一軒家である。
だが、僕にとってのこの家は他人が見た時とは全く違う感情を持つ家だ。
軽くため息をつき、引き戸を自然に開ける。
「ただいま。」
返事はない。
いつも通りのことなので気にせず靴を脱いでリビングへ向かう。
リビングでは母が椅子に座ってテレビを見ていた。
僕に気づいていないわけではない。無視しているだけだ。
ただ、ありがたいことにご飯だけは作ってくれている。
テーブルの上に用意された一人分のご飯を食べる。
白米、玉ねぎとワカメの味噌汁、野菜炒め。
そこそこ美味しいのが僕の母親のご飯である。
兄さんはもう食べて自室にこもって何かを作っているのだろう。
先述した通り、僕の兄は天才である。
天才発明家である。
齢21。
にして同時並行多世界の観測に成功。
異世界存在の証明者。
そんなことが科学雑誌に書いてあった。
僕の兄、すでに科学雑誌に載っている。
簡単に説明すると、どうやら僕の兄は最近はやりの異世界とかいうものを発見してしまったらしかった。
以降、兄は部屋にこもりっぱなしで何やらやっている。
兄は、僕と普通に接してくれているし、優しいので嫌いではないのだが、その頭脳にはやはり負い目を感じてしまい、僕は全く普通に接せずにいる。
母が僕を愛さないのには大体そこが関係していたりする。
別に僕の兄に対する対応が悪いとかではない。
下線部の指示語が指す言葉は、”その頭脳”である。
母は、兄に対してはきちんと愛情を向けている。
なぜなら、兄は天才であるからだ。
子供の時から恐るべき才能を発揮し、学年トップなど当然のように走り抜けてきた兄を、母は誇りとし、愛したようだ。
なので、僕が生まれた時、母は相当な期待を僕に抱いていた。
きっとこの子は天才であると思っていたらしい。
「生まれた子供が全員天才だと、母さん鼻が高いわ♡」みたいな。
ところがそんなうまい話、そうそうあるわけないのだ。
残念なことに、いや全然僕は残念ではないし多分そうなるだろうと子供ながらに察していたのだけれども、僕は至極平凡であった。
そんな僕を見て、母は大層失望したそうな。
いわゆる「君には失望したよ」というやつである。
いつそう悟ったのかは詳しく知らないが、ともかく僕はそれ以降母には愛されなくなった。
父は僕のことを愛してはくれている。
けれどなかなか帰ってこない。
仕事柄、全国を飛び回っているからだ。
でも月のお小遣いを送ってくれたりもするし、たまには電話もする。
いい父親だとは思う。
だが肝心の僕自身は、僕のことが嫌いだ。
それに、自分の存在意義も感じない。
死んだ方が自分のためにまし、とかではなく死ななければいけない。
そんな気がした。
この世のために死ななければ。
生きるべきは僕の兄のような社会貢献のできる人間なのだ。
偉業を成せる人間なのだ。
人は多すぎるから、死ななければ。
それゆえの自殺だった。できなかったけれど。
しかも、きっと自分は自殺できないと理解してしまったし。
きっとなんだかんだで、僕は生き続けてしまうのだろう。
考えていてもしょうがない。
とりあえず今はご飯に集中することにした。
と、ふと机の上に置かれていた一枚の写真に目がいった。
箸を置いて、手に取ってみる。
右下に書かれた撮影日は6月26日。
昨日だ。
写真の裏には"No.1 屋敷?"と書かれていた。
文字的に、兄さんのものだろう。
その写真には、洋風の赤みを帯びた建物が写っていた。
荘厳とした門が屋敷の前に立っており、緑色の服を着た門番らしき影も写り込んでいる。
屋敷の中心部屋根付近にはローマ数字の時計盤があり、日本ではなかなか見れないような佇まいをしていた。
ただ、屋敷の周りの風景は(少ししか写ってないので絶対そうとも言い切れないのだが)日本のような・・・
なんというか・・・空気を感じた。
どこで撮影したんだこんな写真。
兄さんに聞いてみようか?
けれど作業中に聞くと邪魔だろうな。
明日の朝聞くことにしよう。
そうしてご飯を食べ終わった僕は、自室に入って先ほど購入した漫画を読むことにした。
ベッドにゴロンと身を預け、漫画を開く。
その漫画は東方見聞録とは一切関係なく、主人公(多分)である本居小鈴が妖魔本という本を解読する力に目覚め、幻想郷という不思議な世界で妖怪がらみの事件に巻き込まれるというストーリーだった。
いわゆる妖怪物語である。
と言ってしまえば容易いのだけれども、魔法使いや吸血鬼もいるようで、
どうやらこの幻想郷という世界はファンタジーと日本文化をごった混ぜにしてしまったような世界らしかった。
しかしながらこの主人公、好奇心が旺盛で周りに多大な迷惑をかけてしまっているのである。
妖怪退治屋の家などでボヤ騒ぎを起こしてしまう妖怪の封印を解いてしまったり。
まあ、変な力に目覚めてしまうと仕様がないのかもしれない。
中二病的な力が実際に使えてしまうのだから。
特別な人間だと思ってしまうだろう。
この幻想郷という世界もどうやら一言で説明できる世界ではないらしのだ。
なにやら色々と難しいシステムが構築されているようだ。
・・・割と面白い。
軽そうな話に見えて、実は奥が深そうなところが特に。
読み込みがいがありそうな話だった。
つい熱中して最後まで読み込んでしまった。
気がつけば時間はもうすぐ日をまたごうとしていた。
まだ風呂にも入っていない。
本を閉じ、風呂に入って寝ることにした。
結論から言うと、僕はこの「東方」と言う作品にハマってしまい、これからのお小遣いをこの漫画に溶かしていったのだった。
いかがでしたでしょうか。
当初の予定よりか少し長くなってしまったので、少しプロローグを分けます。
幻想郷に行くまでが長くてごめんなさい・・・。申し訳ないです。