啓蒙99の狩人が発狂しているのは間違っているだろうか 作:ケツに腕を突っ込んで魔石を引き抜く変態
あなたが続きを書かなかったら誰も書かないのよ? あなたしか書けないの。あなたしか。
分かってるの? ねえ、ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ。
そしてこっちの続きが書けたのであった。南無三(テー→テー↑テー↓)。
路地裏を歩いていたリリルカ・アーデは横たわる【狩人】を見つけてしまった。
「ひっ……!」
思わず出かけた叫びを噛み殺せたのは僥倖だったろう。なにせ【狩人】は刺激するとロクなことにならない。
冒険者の新人歓迎、あるいは度胸試しに【狩人】が使われるのはそのせいだ。【狩人】という理不尽かつ困難な存在は、ある意味ダンジョンの恐ろしさと紙一重なのである。
ある新人は線の細い消え入りそうな女性の【狩人】と出会った。一目惚れした新人は【狩人】の許に通い、女性がいつの間にか椅子に固定され、頭が肥大し、最後には頭だけになる末路を見た。
以来その新人はどんな『迷宮の悪意』にも動じない精神を培ったという。その代わり決して女性と目を合わせなくなったそうだ。
彼にはもう全ての女性の顔が肥大化した頭部に見えてしまっていた。
あまりにも憐れだ。そんな目にリリは遭いたくない。だからすぐにでも立ち去ろうとし――リリの右手が掴まれた。
「えっ」
「――死体漁りとは、感心しないな」
「はっ!?」
何ヲ言ッテルンダコイツハ。硬直したリリはゆっくり手を放されても
立ち上がった【狩人】は、ぞっとするほど美しい長身の女になっていた。
「だが、分かるよ。秘密は甘いものだ」
言いながら、【狩人】はどこからか両刃の剣を取り出し。
「だからこそ、恐ろしい死が必要なのさ」
ガキイイイイイインッ!! と恐ろしすぎる音を響かせ。
「……愚かな好奇を、忘れるようなね」
怯える少女を見下ろしながら、そんなことをのたまった。
リリは全力で逃げ出した。
「なんで追っかけて来るんですかああああああああああああああああああああああっ!?」
憐れな
はっ、と【狩人】は目を覚ました。
目玉とフジツボに満ちた前衛建築、血塗れの路地に佇む【狩人】は手に持った《落葉》を見て首を傾げる。
はて、なぜ《落葉》を手にしているのか。今は時計塔の死者のつもりではない【狩人】は虚空に尋ねる。マリア様、どうして私が《落葉》を? ねえ、マリア様? マリア様? ねえ、ねえ。
肉壁が喋るはずもなく、辺りは獣の声ばかり。変形した《落葉》をしまうためパキンッと変形前に戻した【狩人】は――とても不満気な顔でもう一度《落葉》を変形させる。
違う、この音ではない。
血走った目をかっ開き《落葉》を凝視した【狩人】は、やがてガキイイイイインッ! と変形機構をブチ鳴らし、満足そうにどこかへしまった。
なんてことはない。《落葉》は純技術武器だが、筋力で強引に変形させればいいのだ。つまり
秘匿はまた一つ破られた。見よ、青ざめた血の空だ。宇宙は空にある。
記憶に眠る無数の
感応する精神とはいえ、【狩人】は今も夢を見る。日の光は【狩人】に似合わない。だから昼間はよく眠る。だが眠りと悪夢は切っても切れず、体が闘争を求めるのも致し方ない。
ふと目を覚ましたら臓物風呂で軟体生物たちにボコボコにされていたこともある【狩人】は、やがて来る夜の気配に口角を引き裂いた。
また、獣狩りの夜が来る。《獣狩りの斧》を手に、【狩人】は塔へ走り出した。
誰かの叫び声が洞窟に響いた。ダンジョン上層に潜る冒険者パーティの一つは顔を見合わせ、一応声の主を確かめる。
角を曲がってそこにいたのは、しかして血塗れの【狩人】だった。
右手を横に、左手を上に広げる【狩人】は膝をガクガクと上下させながら定期的に叫び声を上げていた。ときおり両手を伸ばす向きをスイッチし、スッと元に戻している。
見なきゃよかった。パーティはげんなりと肩を落とし、足早に去っていく。【狩人】は冒険者にとって縁起が悪い存在だった。悪い夢のようなものだ。今日は帰って風呂入って寝よう。
そんな冒険者パーティなど気に止めず、【狩人】は【交信】と【叫び】を繰り返す。今日こそは空に、宇宙に遺志が届くかもしれない。美しい娘よ、泣いているのだろうか。
地上と天界の神々が強烈な毒電波に頭を痛めているとも知らず、【狩人】はしばらく奇怪なジェスチャーを続け、やがて落胆した様子で【交信】を切った。
やはり遺志を返す者はいない。【狩人】は己以外の上位者をこの世界で見たことがない。己はずっと一人なのだろうか。
たまには上位者を狩りたいと寂しがりつつ、新たに湧き出た名状し難い怪物たちに【狩人】は仕掛け武器を振るう。
血肉が飛び、今日も怪物の断末魔が響く。やがて狩りが終わり、灰と死体が散らばる中、【狩人】は武器を振って血糊を飛ばした。
死闘の後、なお一人立つ。【狩人】ならば、やはりそうあるべきだろう。
「……」
しかし、だ。やはり物足りない。
《ノコギリ鉈》をガシャガシャと変形させながら【狩人】は不満を表す。
足りないのだ。おぞましい悲鳴が、身に降りかかる肉片の熱さが。何より血の甘やかさが足りない。
《ノコギリ鉈》では駄目だ。良くも悪くもスタンダードなこの武器では血の奥底より湧き上がる狩りの衝動が抑えきれない。
「つまらないものは、それだけでよい武器ではあり得ない」
かつて
武器が不満だ、ならばどうする? 決まっている、作ればいい。
いざ行かん、狩人の工房へ。【狩人】はおもむろに《メンシスの檻》を被ると、無限ダッシュを可能とするミコラ神拳交信走法を駆使して地上へ突っ走った。
「ギルド長!? 【狩人】が『
「ええいまたかっ! さっさと【ガネーシャ・ファミリア】を動員して対処に当たらせろ! 絶対にモンスターを地上に進出させるな!!」
それが地上で日常的大騒動を起こしているなど、笑いながら疾走する【狩人】の知ったことじゃなかった。
「来たぞー! てめえら、ありったけの武器を構えろ!」
「絶対に【狩人】を中に入れるな!」
「
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」
数分後。
炎のような紅い館の前には、ナメクジ入り上位者ミルクをぶっかけられた憐れな鍛冶師たちが転がっていた。
「……で、結局こうなったのね。だから止めなさいって言ったのに」
死屍累々に呻く光景に頭を痛めるのはヘファイストスだ。嘆息する隻眼の女神は、ギュインギュインガガガと気違いじみた金属音のする背後へ振り返る。
そこには何本もの触手を駆使して大量の火花を散らすブロッコリーの化身がいた。
「……」
否、否である。それは【狩人】だ。頭に理解してはいけない類の植物が生えた触手人間である。
いや、それも否だ。【狩人】は人間ではない。神々の子どもたちではない。そこは全ての神々の見識が一致するところだ。
ならば【狩人】とは何なのか。ある神は『招かれざる異界からの来訪者』と笑い、ある神は『悪意と冗談と宇宙的ホテップに手足が生えた魔物』と嘆き、ある神は『いあ! いあ! ちょぼらうにょぽみ ふたぐん!』と
ヘファイストスはすでに考えるのをやめた。彼女は【狩人】出現最初期に初手で己の工房に突撃され、あれよあれよと改造された挙句に今日まで利用されている。
神々の中でも善神かつ被害の大きいヘファイストスの心労は計り知れない。だから無となって【狩人】をやり過ごさねば胃痛で常時寝込んでしまう。
抵抗という抵抗はすでにやり尽くしており、なおも【狩人】に立ち向かう眷族たちには憐憫を向けつつも理解し無理に止めなかった。
自分の工房、自分の城をここまで残酷に台無しにされては、どんな鍛冶師でも自己崩壊を起こしてしまうだろう。時折飛んでくる粘液だけは俊敏に避けながら、ヘファイストスは書類仕事をすることにした。
「邪魔するぞー、主神殿。っと、【狩人】も来ておったか」
ヘファイストスが机に腰掛けたタイミングで現れたのは椿・コルブランドだった。
【ヘファイストス・ファミリア】団長、Lv.5の第一級冒険者、【
『
理由は一つ。彼女が
「今日は何を造っておるのだ? おお、これはまたエラく複雑怪奇よな。どれ、手前にも一つイジらせてくれ」
冒涜的な動きで鍛造を進める【狩人】に近寄った椿は遠慮なしに並べられた部品を手に取る。
それをペシッと【狩人】ははたき落とし、手についた粘液を拭う椿にペイッと適当に《パイルハンマー》を投げ渡した。
それを興味深そうに解体して弄くり回す椿を視界の端に捉えながら、「今日は【火薬庫】の日なのね」とヘファイストスは無意識に思った。
【狩人】にとって椿やヘファイストスがどのような位置づけなのか定かではない。しかし元ヘファイストスの工房にいる間に限っては、どうやら同じ工房仲間と【狩人】は見ているらしかった。
だからか、【狩人】は鋳造過程を隠さないし技術は全て公開している。聞けばまともに答える確率も1%くらいはあるし、語らずとも互いの分野を模倣・昇華することで言葉なき鍛冶師の交流を営んでいた。
特にヘファイストスは長年の経験から一目でその時々の【狩人】の傾向が分かってしまうくらいだ。【火薬庫】の他にも【アーチボルド】【教会】【カインハースト】【古狩人】など、【狩人】の工房にはある種の派閥があるようだった。
まあ、それが何の役に立つかといえば、【狩人】に話が通じるか否かのちょっとした指標程度でしかないが。
そして今日は全く通じない日であるとヘファイストスは判断した。
「……むう、ここに仕込まれた小さな刃は全て『魔剣』か? よくもまあこんな褒めて良いのか呆れて良いのか区別のつかんことをする。これを仕込んだ意味はなんだ?」
「つまらないものは、それだけでよい武器ではあり得ない」
「おお、今日はそのパターンか。これでは話はできんなあ。手前で勘繰るしかないか。
うーむ、うーむ……ここがそれでこうなって……ああ、成程。やはりと言うべきか、火力の底上げに使っておるのだな。しかし『魔剣』など仕込まずとも元より馬鹿げた火力であろうに……」
「つまらないものは、それだけでよい武器ではあり得ない」
「ああ、ああ、分かっておるとも。意味の分からんほど精密な機構も、手入れの難儀さを度外視した湯水のような金と素材のかけ方も、汎用性なんぞ投げ捨てた使い手が武器に合わせろと言わんばかりの使いにくさも、すべてはそのためであろう?」
「つまらないものは、それだけでよい武器ではあり得ない」
「お主がそういうものだと理解してはやるが……手前には分からん! 全く分からん!
『至高』の前に『浪漫』を是とするなど、いまだ届き得ぬ手前には分かってやれん。その気になればいくらでも辿り着けるだろうに、そこだけは残念な奴よ。
……いや、訂正する。そこ以外もお主は残念だったな。特に頭が」
話が通じたのかはしらないが、急に触手プレイを強要してきた【狩人】に椿は長嘆した。肌や鍛冶に邪魔な胸にぬめる触手を剥がして「興が削がれた、風呂に入ってくる」と椿は退室する。
それを追わず、椿の置いた《パイルハンマー》を絡め取った【狩人】は、超小型『魔剣』や希少素材をつぎ込んだ小型炉を《パイルハンマー》に取り付け始めた。
ギャルリンギャルリンと鳴り響く音を背景に、ヘファイストスは「また市場が荒れるわ……」と遠い目をしながら書類を片付けるのだった。
【狩人】
寝ぼけてマリア様になる人。Q:リリは逃げられましたか? A:頑張ってボス部屋から脱出しました。
きゅーちゃんとかきゅーけーとかは今のところベル君たちしか呼ばないのであまり出番はない。せっかくの聖杯文字が名前の【狩人】という希少価値が台無しである。
オラリオに来た当初、ヘファイストスの工房を見て「ほーん、ええやん」と奪い取った。ゴブニュのとこも同じように奪い取ってる。善神ほど被害を与えてしまうのは【狩人】の性なのか。
このあと完成した《ヒートパイル》は意気揚々と地下に潜った【狩人】の前にちょうど現れた『ゴライアス』君を一撃で壁のシミに変えた。『嘆きの大壁』とは『ゴライアス』の涙のことだろうか。
ちょっと強すぎない? そう思われるだろうが、【狩人】は工房主なので血晶石を詰め込めるだけ詰め込む魔改造をしている。チートやチート! 地底人に謝れ!
リリルカ・アーデ
可哀想な
はやくベル君救ってあげてくれ。そしてそのままキャッキャウフフのラブロマンスであなたと私の二人っきりなウエディング☆ベルへ一直線ですよコノヤロー!(あざとい叫び)
そんなことボクが許すと思うなよバカヤロー!(紐神の叫び)
一目惚れした新人
初恋の【狩人】の頭が肥大化して発狂寸前に至るも当時は低啓蒙だったのでからくも逃れる。しかし「お願い、私を見捨てないで……私まだ、役に立てるのだから……」とCV花澤○菜で囁かれ最後まで突っ走ってしまった。
その後、彼は人格こそ保ったもののどんな時でも動じなくなってしまい、先輩や【ファミリア】上層部は大いに反省し、新人団員を【狩人】に接触させないようにした。
同期の女性はそんな彼を頼りにしつつも、目を合わせてくれないことに少しだけやきもきしてるとかなんとか。
本来の世界線では【
ヘファイストス
憐れな女神。【狩人】に奪われた工房はどんな手段でも奪い返せなかったので別に新しい工房を新設した。
このことについて永遠に許す気はないが、【狩人】に構うだけ無駄なので放置している。
【狩人】は作った武器や【狩人】由来のアイテムを製法込みで大量に残している。それをヘファイストスは死蔵したかったが周囲の神々の圧力によって泣く泣く売りさばいている。
今回の《ヒートパイル》も【狩人】が量産して在庫を積み上げるのは目に見えているので今から胃が痛い。
椿・コルブランド
究極的に鍛冶の『至高』に辿り着くこと以外眼中にないので【狩人】を受け入れてしまえる人。主神への忠義や鍛冶師の矜持をぶっちぎるほどに【狩人】のもたらす技術、見識を貪欲に求めている。
【狩人】と一番話が通じるのは【アーチボルド】の時。意外に思われるかもしれないが、彼女は極めてビルゲンワース的な鍛冶師である。
ゴブニュ
【狩人】を絶対に許しはしない。そう、絶対にだ。来たら必ず【狩人】の頭を叩き割っている。
しかし【狩人】は動じない。むしろ頭をほじくっても瞳なんぞ見つからないのになぜ止めないんだろう、頭がおかしいのかな? と筋違いの心配を【狩人】にされている。
それがゴブニュに知られる日こそ、【狩人】とゴブニュの
私の中の私が私をなじり私の怠惰を私が嘆き私が私で私を私し私私私私私私私私私。
そして私(エージェント・スミス並感)。