この世界は悲しみに満ちている   作:スターダイヤモンド

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季節外れの怪談話

 

 

 

 

絵里 :「ゆ、幽霊の仕業?夏でも無いのに、おかしなこと言わないでよ…」

 

凛  :「音ノ木坂に、そんな怪談話なんてあったかな?」

 

海未 :「非化学的ですね」

 

真姫 :「馬鹿馬鹿しい」

 

 

 

希  :「待った!待った!誰もそんなん、言ってないやん。早とちりしたらいかんよ…」

 

 

 

絵里 :「幽霊の話じゃないのね?」

 

穂乃果:「あ、ごめん」

 

凛  :「そうだよね…」

 

 

 

希  :「え~…それは100年位い前のドイツで起きたことやった…」

 

 

 

にこ :「突然始まったわね…」

 

絵里 :「それも、落語なの?」

 

海未 :「違うと思いますが…」

 

 

 

希  :「雪山の登山で起きたことなんやけど…」

 

 

 

一同 :ばっ!

 

 

 

海未 :「なっ!?なぜ一斉に私を見るのですか!?」

 

 

 

凛  :「登山と聴いたら…」

 

穂乃果:「海未ちゃん」

 

絵里 :「条件反射っていうのかしら?」

 

にこ :「自業自得ね」

 

 

 

海未 :「自業自得ってなんですか!」

 

 

 

真姫 :「それで…登山がどうしたの?」

 

 

 

希  :「男の人2人のパーティーが、途中、吹雪いて…遭難してしまったらしいんよ」

 

 

 

海未 :「そうなんですか…」

 

 

 

一同 :「ん?」

 

 

 

希  :「海未ちゃん、なかなか、やるやん!」

 

 

 

海未 :「!!…い、いえ…決してそのようなつもりでは…」

 

 

 

希  :「ふふふ」

 

 

 

海未 :「は、話を続けてください…」

 

 

 

希  :「ほい、ほい…そんでな…緊急避難的に岩陰でビバークしたんやけど…」

 

穂乃果:「ビバーク?」

 

海未 :「簡単に言えば、テントも張れず一時避難することです」

 

穂乃果:「あぁ…」

 

希  :「ところが…運悪く…ひとりが死んでしまった…」

 

 

 

絵里 :「…」

 

 

 

希  :「幸い、吹雪はやがて収まって…生き残ったもうひとりは、亡くなった男性の遺体をシュラフに入れて、引きづりながら登山を続け…なんとか中腹にある山小屋に辿り着いたんよ」

 

 

 

絵里 :「ごくっ…」

 

 

 

希  :「山小屋で一息ついたAさんは…亡くなったBさんを雪中に埋め、ピッケルを突き刺し、墓標を建てた。ひとりでの頂上アタックは難しいと、下山することを決めたAさん。この山小屋で一晩、過ごすこととした」

 

海未 :「はい、登山は『やめる勇気がもっとも大事』と言いますから」

 

希  :「次の日…朝、目覚めると…再び外は吹雪いていた。これはちょっと出られへんなぁ…と思っていたところ、彼はある異変に気が付いたんよ」

 

穂乃果:「なにかあったの?」

 

 

 

希  :「それがなぁ…昨日、埋めたはずの遺体が…山小屋の前におったんよ!!」

 

 

 

絵里 :「ひぃ!!」

 

 

 

希  :「正確に言えば、入口の前で倒れてたんやけど」

 

 

 

真姫 :「ちょっと絵里!抱きついてこないで…」

 

絵里 :「希…その話…今ここで話す必要あるのかしら」

 

 

 

海未 :「あの~よろしいでしょうか?遺体を雪の中に埋めたのでしたら、夜のうちに強風で表面の雪が飛ばされて、ついでにそれも動いただけ…ということではないですか?」

 

希  :「さすが海未ちゃんやね。Aさんも一瞬そうかと思ったらしいんやけど…遺体はシュラフに入れたまま、雪の中に埋めたんよ」

 

 

 

海未 :「!!」

 

 

 

穂乃果:「だとすると…遺体がそこから這い出てきたことになるよね?」

 

にこ :「断定はできないわ。その…ファスナーっていうの?…の締め方が余ったとか…条件が揃えば、そんなのどうだって理由がつくわ」

 

希  :「にこっちの言う通りやね。Aさんも疑問に思いつつ、そういうことがあるかもしれない…ともう一度、彼を雪中に埋葬したんやって…今度は風で飛ばされないよう、重石(おもし)を付けてな」

 

 

 

絵里 :「…」

 

 

 

希  :「吹雪は止まず、Aさんはもう一晩、様子を見ることとした。その明くる日…」

 

 

 

絵里 :「きゃあ!」

 

 

 

希  :「いや、まだ何も言ってないんやけど…」

 

絵里 :「でも…いたんでしょ?そこに遺体が…」

 

希  :「正解!」

 

絵里 :「ほ、ほらぁ…」

 

 

 

海未 :「確かにホラーですね」

 

 

 

一同 :「…」

 

 

 

海未 :「えっ?絵里は今、そう意味で言ったのではないのですか?」

 

 

 

希  :「これからが面白いとこやのに…えりちと海未ちゃんに全部持ってかれたわぁ」

 

 

 

絵里 :「面白いとか、面白くないとか…どうでもいいわ」

 

希  :「つれないなぁ…」

 

海未 :「私も狙って放ったギャグではありませんが…」

 

 

 

穂乃果:「それで、それで?」

 

希  :「実は次の日も、その次の日も、AさんはBさんを雪中に埋めたんやけどな…翌朝になると必ず遺体が山小屋の前におって…」

 

穂乃果:「うわぁ!」

 

にこ :「それはさすがに恐いわね!」

 

希  :「ついにはAさんは気が触れてしもうて…自ら命を絶ってしまったそうな…」

 

凛  :「ど、どうして、それがわかったにゃ」

 

希  :「Aさんが書いた日誌やね。そこに全て記されておったんよ。あとから来たパーティーがそれを見つけた…ってワケやね」

 

絵里 :「それでこの話は終わり?」

 

希  :「おしまい」

 

絵里 :「そ、そう…思ったより大したことは無かったわね」

 

 

 

一同 :「…」

 

 

 

絵里 :「どうして、みんな怪訝そうな顔をしているの?」

 

 

 

 

 

~つづく~

 

この作品の内容について

  • 面白い
  • 誰が犯人だ?
  • 可もなく不可もなく
  • 犯人がわかった
  • つまらない

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