希 :「…と、その前に…あの落書きが誰に向けたものか…って話なんやけど…」
海未 :「十中八九、私たち…つまりμ'sのメンバーに向けられたものかと」
真姫 :「…」
希 :「…どうして、そう思うん?」
海未 :「ここの屋上は、朝、解錠されてから、私たちが帰ったあと施錠されるまで、基本的に出入りは自由です。現に私たちもお昼を食べに行ったりしますし」
真姫 :「そういう意味では、誰でもあれを書き込むことが出来るってことね」
海未 :「はい。ただし、書き込んだ時間は、放課後…ホームルームが終わってから、私たちが練習の為に上がってくるまでの間でしょう」
真姫 :「どうして?」
海未 :「仮に昼休みに書いたとしたら、その姿を誰か見られるリスクがありますし…かといって、授業を抜け出して…というのも現実的ではありません」
真姫 :「それは確かにそうね」
海未 :「では、なぜ、そうする必要があったのしょうか?…それは、あのメッセージが私たちに向けてのものだからです」
真姫 :「だから、どうして断言出来るのよ」
海未 :「はい。まず…メッセージと言うのは、相手に伝わらなくては意味がありません。あれが『本当に何の意味もない落書き』だとしたら『まったく検討違いな話』になってしまいますが…少なくとも、そうでないならば、誰かに伝えたいからこそ、あそこに書いたのだと思います」
真姫 :「その相手が…私たち?」
希 :「…の誰か…ということやろなぁ」
海未 :「先ほども申しましたが、ここの屋上は誰であろうと出入り自由ですので、条件によっては私たちより先に、あの落書きを見つける人もいない…とは言えません。しかし、どうでしょう?それを見たからといって、気にする人がいるでしょうか?」
真姫 :「何か書いてある…とは思っても、気には留めないかも。一読しただけじゃ、意味がわからないから、気持ち悪さは残るけど」
海未 :「はい。では、次に…私たち以外に、毎日、屋上に行く…という人はどれくらいいるでしょうか?」
真姫 :「…お昼を食べに行く人はかなりいると思うけど、毎日必ずってワケじゃないわね」
海未 :「もし、あの落書きに意味があるのであれば、いつ来るかわからない相手に、メッセージを残したことになります。しかも、チョークで書かれたものですので、それほど長くはもちません、すぐに消えてしまいます。つまり、それだとメッセージの意味を持たないのです」
真姫 :「なんらかの手段で呼び出して、見せる…ってことは、考えられない?」
海未 :「なるほど。それは、あるかもしれませんね。ひとつの可能性として残しておきましょう…希、いかがでしょうか?私の推理は…」
希 :「言うことなし!やね…ウチもそう思ってるんよ」
真姫 :「私も薄々そうじゃないかと思ってたけど…どこかで否定したい気持ちがあって」
海未 :「それは私も同じですよ」
希 :「さて…次はウチの出番やね!ターゲットがμ's…の根拠、その2!…や」
海未 :「お願いします」
希 :「それがこのメモなんやけど」
真姫 :「それが根拠なの?」
希 :「よく思い出してほしいんよ、あの時の会話を…。ウチ、凛ちゃんにデブ弄りされたやん?」
海未 :「されてましたね」
真姫 :「してたわね」
希 :「何度も言うけど、胸が大きいだけやのに」
海未 :「何度も言わなくていいですよ」
真姫 :「そうね、余計な一言ね」
希 :「でも、このメモは『デブはウチやない』と書いてあるんよ」
海未 :「そうは書いていませんよ」
真姫 :「『死ぬのはアナタじゃない』とは書いてあるけど、太っていることに対する否定は、どこにもないわね」
希 :「意訳すれば、そういう意味やろ?」
海未 :「…」
真姫 :「…」
希 :「いやいや、黙らんといて…」
海未 :「話を続けて下さい」
希 :「冷たいんやから…」
真姫 :「私たち、暇じゃないもの…」
希 :「ほい、ほい…まぁ、今、言った通りなんやけど…凛ちゃんがウチをデブ弄りした会話を知ってるのって…」
海未 :「!!」
真姫 :「!!」
希 :「なぁ…ウチらしかおらんやろ?…百歩も二百歩も譲って…犯人がウチのことをデブやと思ってたとしても…このメモの意味が本当なら、『それでも死ぬのはウチやない』…そう言うてるんよ。つまり、それは…あの時、あそこにいた人物やないとわからない…って事やないかな?」
海未 :「た、確かに…」
真姫 :「待って!…何かの拍子に、ターゲットがμ'sメンバーだと思われてることを知った犯人は、それを否定する為に書いたものだとは考えられない?」
海未 :「つまり…希ひとりが対象外ではなく、メンバー全員がそうだ、と知らしめるため…ということですか?」
真姫 :「そう」
希 :「それなら、ウチにのみ、このメモが入れられていたことについて、説明がつかないんよ。この文章が『アナタたちではない』なら、そうかも知れんのやけど」
海未 :「そうですね。全員にそれが入っているなら、話は別ですが」
希 :「今、確認できる範囲で、それはないやん」
真姫 :「今の段階ではね。入ってたことを隠している人もいるかも知れないし」
海未 :「何のためにでしょうか…」
真姫 :「それは…」
希 :「真姫ちゃん…あの落書きが誰に向けたものか…って話に戻るんやけど…そもそも、あのメッセージがμ'sに向けたものやったら、でも『死ぬのはアンタたちやないで!」って、おかしいやろ?」
真姫 :「μ'sに向けたメッセージだけど、標的はμ'sじゃない…そうね、それはないわね…」
海未 :「つまり…狙われている人は…希を除く…9分の8…ということですか…」
希 :「このメモを信じるなら」
真姫 :「それ、希が自分で書いたものだとしたら?」
希 :「ふふ…自分で『死ぬのはアナタやない』って書いてるのに、自ら死ぬのは道理が通らないやろ」
海未 :「はい…なので…希は標的から除外して構まないかと思います。…ですが…」
希 :「?」
海未 :「犯人の可能性が少しだけ高まりました」
真姫 :「そうね…確実に死なない人が1名確定したってことだもの…」
希 :「そやなぁ…ウチかも知れんなぁ…」
真姫 :「…」
海未 :「…」
真姫 :「ねぇ…今までの話を纏めると、狙われているのは私たちの…希を除く誰か…ってことはわかったわ…認めたくなけど…。でも、どうしても腑に落ちないことがあるの。自分で言うのもなんだけど…私たちって、あそこに書かれたような体形の人なんていないでしょ?じゃあ、誰が狙われてるの…って話じゃない?」
希 :「にこっち曰く…相手を罵るのに『チビ』『デブ』『ブス』『ハゲ』くらいの単語は普通に使うんやって…『お前のかあさん、でべそ』くらい幼稚な言葉やけどな。そやから…もしかしたら、あの『デブ』にはそこまでの意味がないかもしれんのよ。単なる憎悪の対象物に向けた煽り文句…」
海未 :「なるほど…だとすれば、その言葉だけで誰かを絞り込むことはできませんね」
真姫 :「…」
希 :「…と、ここまでが落書き事件に関する考察や。犯人が実行に移すかどうかは不明やけど、あの言葉はμ’sに向けて書かれもの…そして、それを書いた人物はあの中にいた…盗聴でもされていない限り、ウチがデブ扱いされたことを知ってる人はいないから」
海未 :「盗聴…ですか?」
希 :「なんでアタックしないといかんの!…?登頂やなくて盗聴やって!!」
海未 :「そんなこと言ってませんが」
希 :「条件反射で言うてしもうた…」
海未 :「はぁ…」
希 :「では、ウチは?」
真姫 :「…?…」
海未 :「…?…」
希 :「東條やん!」
真姫 :「…」
海未 :「…」
希 :「いや、そんな目で見んといて…」
真姫 :「それで?」
希 :「?」
真姫 :「希は今回のことと、これまでの一連の事件と、関連性があると思ってるわけ?」
希 :「…ウチはあると思ってる…けど…まだ結びつかんのよ…点と点が…」
真姫 :「海未は?」
海未 :「私も同じです…特に…上履きの件以来、花陽の様子がおかしいのが気になります…アルパカのことは事件とは言えないようですが…」
希 :「それなんやけどな…」
海未 :「はい」
希 :「…花陽ちゃん…ウチらに嘘ついたんよ…」
海未 :「!!…花陽が…嘘…ですか…」
真姫 :「そう、私にまで…ね」
海未 :「真姫…」
真姫 :「あの娘の性格だから、絶対に何か理由があるはずだけど…」
海未 :「理由もなく嘘をつく人などいませんよ」
真姫 :「それはそうだけど…」
海未 :「そうですか…花陽が…」
希 :「海未ちゃん?何か思い当たることがあるん?」
海未 :「…えぇ…いえ…まぁ…その…まずは先にそちらの話を聴きましょうか。私の話は事件と関係ない可能性が高いですし…」
希 :「そうなん?それじゃ…実はな…」
~つづく~
この作品の内容について
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面白い
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誰が犯人だ?
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可もなく不可もなく
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犯人がわかった
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つまらない