この世界は悲しみに満ちている   作:スターダイヤモンド

26 / 30
隠されていた記号

 

 

 

 

花陽 :「…二人とも…『色々してくれて』ありがとう…お陰様でより一層μ'sメンバーへの感謝の念が深まったよ」

 

 

 

モブA :「…へぇ…小泉さんって『皮肉』が言えたりするんだぁ?」

 

モブB :「まさか『ああなる』とは予想外だったけど…喜んで貰えたのなら、結果オーライね」

 

モブA :「小泉さんは…いい先輩と友達を持ってるのね」

 

モブB :「正直羨ましいよ」

 

 

 

花陽 :「自分でもそう思う。入学前は考えてもみなかったことだから」

 

 

 

モブA :「そして…色々運がいい…」

 

 

 

花陽 :「そうだね、否定はしないよ」

 

 

 

モブB :「…ところで…『私たちが作ったおにぎり』は気に入ってくれたかな?」

 

 

 

花陽 :「…みんなから、いっぱいお裾分けしてもらったから…申し訳ないけど…あのおにぎりは、まだ、口にしてないんだ」

 

 

 

モブB :「あら、残念ね」

 

モブA :「あなたの為に精一杯作ったんだけど」

 

モブB :「まさか…捨てたりしてないよね?」

 

 

 

花陽 :「…」

 

 

 

 

 

 

希  :「まず、落書きの件やけど…もう一度あの時の状況を思い出してほしいんよ」

 

 

 

穂乃果:「あの時の状況?」

 

絵里 :「私たちが屋上に行ったときには、すでに書いてあったわ」

 

穂乃果:「凛ちゃんが最初に見つけたんだよね?」

 

 

 

希  :「なんて書いてあったん?」

 

 

 

凛  :「確か…『デブはタヒね!』だったにゃ…読めなかったけど…」

 

 

 

希  :「そうなんよ…実はずっとそこが引っ掛かっててなぁ…あれを『死ね』だと教えてくれたのは誰やったっけ?」

 

 

 

穂乃果:「にこ…ちゃん?」

 

にこ :「!!…そうよ、アタシだけど…」

 

 

 

希  :「そう、にこっちやったね」

 

 

 

にこ :「…」

 

 

 

海未 :「『タヒ』を『死』と読めた…ということは…当然『書ける』ということでもあります」

 

真姫 :「そして意味もわからず『タヒ』なんて書く人はいない…」

 

海未 :「はい」

 

 

 

穂乃果:「えっ?じゃあ…まさかにこちゃんが」

 

絵里 :「うそでしょ?」

 

凛  :「ひどいにゃあ!!」

 

 

 

にこ :「ぬわぁんでよ!!そりゃあ、読んだのはたまたまアタシだけど…他に知ってたけど口にしなかったヤツがいるかも知れないじゃない!」

 

 

 

真姫 :「そうね」

 

 

 

にこ :「疑いたくはないけど…花陽だってかなりヘビーなネットユーザーなんだから、絶対知ってたと思うわ」

 

 

 

海未 :「えぇ…恐らく知っていたでしょう」

 

 

 

絵里 :「花陽が…」

 

穂乃果:「書いたの?」

 

凛  :「そんなハズないにゃ!」

 

 

 

にこ :「もちろん、そう思いたいけど…つまり、それだけのことじゃ、犯人をアタシだって特定できない…ってことよ」

 

 

 

希  :「そうやね…でも、ウチはにこっちが犯人やなんて、一言も言うてへんよ」

 

 

 

にこ :「はぁ?」

 

 

 

海未 :「そして…花陽だとも言っておりません」

 

 

 

穂乃果:「えっ?」

 

 

 

希  :「そやから、あの時のことを、もう一度よ~く思い出してほしいんよ」

 

海未 :「にこ以外にあれを『死』と読んだ人はいませんでしたか?」

 

 

 

凛  :「…誰にゃ?…」

 

絵里 :「…誰だったかしら?…」

 

穂乃果:「…誰だっけ?…」

 

 

 

 

 

 

花陽 :「私ね…μ'sに入って本当に良かったと思ってるんだ…背も低くて、声も小さくて…なんのとりえもなくて…ただアイドルが好き…っていうだけだった私が…あの人たちに出会って…こんなに幸せで充実した時間を送れるようになった…」

 

 

 

モブA :「そういうの、なんて言うか知ってる?『身分不相応』って言うのよ」

 

 

 

花陽 :「えへへ…そうだね…。本当に、本当に…花陽にはもったいないくらい、みんな優しくてあったかくて…だから毎日『私がここにいていいのかな?』って自問自答してるよ」

 

 

 

モブB :「よくわかってるじゃない」

 

 

 

花陽 :「だけど…ううん…だから…かな?…こんな私を受け入れてくれるみんなの期待に、絶対応えなきゃいけない…って」

 

 

 

モブA :「期待?あなたに?」

 

モブB :「それ、勘違いじゃない?」

 

 

 

花陽 :「勘違い?…そうかも…だけど…それをいうなら、二人も花陽のことを勘違いしてると思うよ」

 

 

 

モブA :「えっ?」

 

モブB :「どういうこと?」

 

 

 

花陽 :「花陽は…半年前の花陽じゃないってことかな…」

 

 

 

 

 

 

絵里 :「…ねぇ…そういえば…あの時じゃなかったかしら?…例のことりファンが差し入れを持ってきてくれたのって」

 

穂乃果:「あぁ、そうだね!絵里ちゃんが堅いこと言うから、チーズケーキを食べそびれるとこだった時だ」

 

絵里 :「私はただ、生徒会長として…」

 

にこ :「今はそんなことどうだっていいでしょ!」

 

絵里 :「もう…にこに怒られたじゃない…」

 

穂乃果:「ごめん」

 

凛  :「えっと…そのあと帰り際に二人が落書きに気が付いて、そのことでちょっと話した気がする…」

 

にこ :「デブって誰だ?って話になって…凛が希だって」

 

 

 

希  :「…ウチはデブやないけどな…」

 

 

 

にこ :「あっ!!」

 

 

 

一同 :「!?」

 

 

 

にこ :「そういえば…あの文字になんの疑問も持つことなく『スラッ』と呼んだヤツがいたわね…」

 

 

 

穂乃果:「えっ?」

 

凛  :「いた?」

 

絵里 :「誰なの?」

 

 

 

にこ :「そう…そういうこと?…アイツらが…」

 

 

 

海未 :「やっと思い出しましたか」

 

 

 

にこ :「はぁ…もっと早く気が付くべきだったわ…あんなの読めて当たり前だと思ってたし…あっ!じゃ…じゃあ…あの記号は…」

 

 

 

希  :「そういうことやね」

 

 

 

にこ :「あのバカ!なんで黙ってるのよ!」

 

 

 

真姫 :「そういう娘じゃない…」

 

 

 

絵里 :「記号って何かしら?」

 

穂乃果:「完全に置いていかれてるんだけど」

 

凛  :「凛たちにもわかるように説明してほしいにゃ」

 

 

 

 

 

 

モブA :「勘違いかぁ…そうかもね…ここまであなたがしぶといと思わなかったから…それはそうかもね」

 

モブB :「でも、仲間に迷惑を掛けたくないなら…これ以上続けるのって逆効果じゃない?」

 

モブA :「そうそう、誰がどう考えても『あなたが辞めればすべて丸く収まる』話じゃない」

 

 

 

花陽 :「私は辞めないよ!どんなことがあっても」

 

 

 

モブA :「強情ね」

 

モブB :「それとも…まだ刺激が欲しいの?」

 

モブA :「私たちはμ'sが好きだし、これからも頑張ってほしいと思ってるから、できるだけ事を荒立てたくないと思ってるんだけど」

 

モブB :「警察沙汰なんてことになったら、私たちにもμ'sにもデメリットしかないしね」

 

モブA :「でも…あんまり聞き分けがないようなら…多少手荒なこともしちゃうかも…」

 

 

 

花陽 :「…ふ~ん…」

 

 

 

 

 

 

にこ :「…落書きした犯人は…差し入れを持ってきた二人組よ…」

 

 

 

凛  :「にゃ?」

 

穂乃果:「ことりちゃんファンの?」

 

絵里 :「なんですって?」

 

 

 

にこ :「そして…『死ね』って書かれたのは…花陽…」

 

 

 

凛  :「にゃあ!!」

 

絵里 :「花陽が…」

 

穂乃果:「殺されちゃうの?」

 

 

 

にこ :「アイツらを落書きした犯人とした根拠は、さっき海未たちが説明した通りよ。あの二人、なんの疑問もなく『デブは死ね』って読んでたわ」

 

 

 

絵里 :「たまたま知ってた…ってことは?」

 

 

 

希  :「なくはないやろな…そやけど…」

 

真姫 :「色々と考えると、逆に彼女たちしか有り得ないのよねぇ」

 

海未 :「タヒね…と読んで、知らないフリもできたのでしょうが…どちらかというと私たちの前だったので、思わず口走って、そう言ってしまった可能性があります」

 

 

 

穂乃果:「どういうこと?」

 

 

 

海未 :「あのメッセージは…花陽だけに理解して欲しかったのです」

 

 

 

凛  :「かよちんだけ?」

 

 

 

真姫 :「花陽がネット用語に精通してることを二人が知っていた…っていうことが前提としてあるけど…ここのところずっと付きまとってたし、それくらいの情報は入手してるでしょ」

 

 

 

絵里 :「でも…仮に花陽が見ればわかるのだったら…敢えてあの場に来て、そんなこと言う必要あったのかしら?」

 

 

 

真姫 :「念には念を…ってことじゃない?書いてみたのはいいけれど、私たちがそれに気付かなかったら、まったく意味がないから」

 

希  :「『ここにこんなんありますけど、花陽さん…そしてμ'sのみなさん見てくれましたか』ってね」

 

 

穂乃果:「なんの為に、そんなことしたんだろう」

 

 

 

海未 :「花陽に圧力を与かけるためですよ」

 

 

 

穂乃果:「圧力?」

 

 

 

海未 :「プレッシャーです。なぜ『死ね』と脅されていたかはわかりませんが…精神的には堪えるのではないでしょうか」

 

 

 

凛  :「なにそれ、意味わかんない」

 

 

 

真姫 :「ちょっと凛!こんな時に私のマネは…」

 

 

 

凛  :「わかんない!意味がわかんない!どうして、それがかよちんに向けられたメッセージなの?どうして、かよちんが死ねって言われなきゃいけないの?意味わかんないよ!」

 

 

 

にこ :「凛…落ち着いて聴きなさい…この記号…アンタたちならどういう時に使う?」

 

 

 

絵里 :「『※(アスタリスク)』?」

 

穂乃果:「えっと…注意書きとか…そういう時に使うかな。文章の前に付けて」

 

 

 

にこ :「そう、普通はそう使うわね」

 

希  :「あの落書き…正確には『※デブはタヒね!!』って書いてあったんよ」

 

穂乃果:「あった?」

 

絵里 :「そう言われてみれば、そんな気がするわね…」

 

 

 

真姫 :「その記号が書いてあったことさえ、忘れたでしょ?」

 

海未 :「あの時点でそれに注目していた人はいないと思いますよ…ただひとりを除いては…」

 

 

 

凛  :「ただ…ひとりを除いて?」

 

 

希  :「…あの落書きの『※』には違う意味があったんよ」

 

 

 

凛  :「違う意味…」

 

 

 

海未 :「絵里は先ほど、これをアスタリスクと呼びましたが…もっと一般的な呼び方はありますんか…穂乃果は実家の職業柄、わりと目にするかと思うのですが…」

 

 

 

穂乃果:「一般的な呼び方?…えっ?…あっ!『米印(こめじるし)』!?」

 

 

 

海未 :「正解です」

 

 

 

にこ :「ネット用語じゃ、ただ単に『コメ』とも言うわ」

 

 

 

穂乃果:「あっ!じゃあ…あの落書きは…」

 

 

 

にこ :「…『コメデブは死ね!』…よ」

 

 

 

 

 

~つづく~

 

 

この作品の内容について

  • 面白い
  • 誰が犯人だ?
  • 可もなく不可もなく
  • 犯人がわかった
  • つまらない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。