実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編   作:vwview

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第十四話

ある日の午後――金城(かねしろ)は、裏庭で日課である格闘術の自己修練を終え、調息をしていた。

 

近年の要人警護は、ハイテク化した通信・位置情報システム連携などにより、襲撃タイミングやアンブッシュの予測など、相手の動きを先回りするといった、事前の分析や経験則が物をいう部分が多くなってきている。とは言え、最後の最後は自らが盾となって、要人を守る瞬発力が不可欠との考えから、金城はプロとして咄嗟(とっさ)に素早い行動が出来るよう、日々の鍛錬を(おろそ)かにしない。特に日本のような、銃を携帯出来ない国では尚更(なおさら)である。

 

金城は調息しながら、

 

(――また見に来ているな)

 

努めて少女に無関心を装い、金城は独りごちた。

 

その長い黒髪の少女は、屋敷から庭にでる為の短い階段にちょこんと座って興味深そうにこちらを見ている。服装は清楚な薄青色のワンピースだ。一見(いっけん)簡素な服装にみえるが、良く見れば、最上級な素材と随所に凝った刺繍やレースがふんだんに使われているのが見てとれる。一般家庭で「普段着」として着るなど、とても叶わぬ代物だと容易に想像できた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

少女はこの屋敷の次女、絢辻詞である。現在、金城が警護を担当しているのは彼女の姉の方であったので、この「詞お嬢様」と接する機会は無いに等しい。それが何故か、金城はこの次女に興味を持たれてしまったようだった。

 

金城はこの屋敷に、海外での要人警護の実績を買われてスカウトされた。いざ来てみると、警護対象は屋敷の(あるじ)ではなく、その娘に配置された。恐らくは、金城の技量と人間性をみて、信用がおけると判断した(のち)、主の警護を任せるつもりなのだろう。言うなれば、現在は試用期間中という事だ。

 

その処遇について金城は特に気にしていなかった。逆に慎重でリスクに対する意識が高い点は高評価だ。これまでの金城の経験から、そういったクライアントの方が仕事はしやすい。

 

長女の警護を担当して最初に変更を進言したのは、毎日同じルート、規則正しい時間で行っていた送り迎えを、ランダムにする事だった。襲撃する側は、()ず手はじめに標的の日常生活を観察し、毎日、あるいは毎週といった、定期的なリズムで行う習慣――ルーティン行動から襲撃ポイントを探す。ルーティン行動を少なくする事は警護上、非常に有効な手段なのだが、金城は当初、自分の進言には難色を示すだろうと想定していた。

 

過去に金城の妻であった人は日本人だった。その為、日本人は規則正しい生活や、時間を重視する事をよく理解していたのだ。なので、あっさり進言が通った時は、逆に拍子抜けしたのと同時に、利に(さと)い主の日本人離れした現実主義(リアリスト)な一面を垣間見た気がした。

 

そういった訳で、当の金城の日常生活も、修練など日課としている事はいくつかあるが、(いず)れも意識的に決まった時間には行っていない。にも関わらず、その少女、絢辻詞は修練をしていると何処で聞きつけてくるのか現れ、興味津々といった面持ちで金城の修練を見ていくのだった。

 

 

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