実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編   作:vwview

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一章 輝日東高校 旧ボイラー室Ⅰ
第一話


 

 

夜の輝日東高校――

 

下校時間はとっくに過ぎており、本来ならば校舎に残っている生徒は一人もいないはずの時間だ。その夜の学校を旧校舎に向かって歩く制服姿の人影が一つ。月の光に照らされ、地面に長い影を引いている。

 

人影の主、絢辻詞が向かう旧校舎の北側奥には、旧ボイラー室がある。学校が温水プールを増築した際にポンプやボイラーといった施設の一切が、温水プールの地下に移設された為、現在はその空間だけ取り残され何年も使われていない。北向きで薄暗いその周辺は、幽霊が出ると言った噂話も(あい)まって、昼間でも生徒が近寄ることは滅多にない。ただでさえ人気(ひとけ)人気が無くなった夜の学校は薄気味悪い事この上ないはずだが、絢辻詞の足は真っ直ぐに旧ボイラー室の方へ向かっている。その歩みに一切の躊躇も迷いも無い。

 

***

 

絢辻詞は旧ボイラー室の鉄扉の前に立った。少しサビがでたドアノブに手をかけると静かに回し手前に引く。が、鍵が掛かっていて開かない。しかし絢辻詞は特に落胆もせず、さも当然といった所作でポケットから鍵を取り出す。そして辺りを見回し、誰も居ないことを確認した後、覆面がわりに用意してきたガスマスクを顔に被った。そして、ドアノブの鍵穴に鍵を差し込み静かに回す。ロックが外れる乾いた音が鳴った。再び辺りを見回すとドアを少し開き、その隙間に体を滑り込ませた。

 

扉の内側に滑り込んだ絢辻詞は素早く周囲を観察する。

 

旧ボイラー室の中で待っていたものは暗闇と静寂――――ではなく、明るく喧騒に満ちていた。そこは不良のたまり場となっていたのだ。

 

扉から入って直ぐは、狭い踊り場のようになっている。そこから下に数段の短いコンクリートの階段が伸びており、広さ十畳ほどの四角いコンクリートでできた空間が広がっていた。対面の壁には鉄扉があり、さらに奥に続く部屋があるようだ。倉庫としても使われているのか、壁際には不用品や段ボールなどが積まれている。見るからに素行の悪そうな男子が数人ごとにたむろってタバコを吸ったり、雑談や悪ふざけをして、下卑(げび)た笑いを起こしている。

 

(ざっと十人――――ってところね)

 

絢辻詞に気がついたものはまだいない。視線を下に移すと床はタバコの吸い殻やゴミでかなり汚れている。酒の空き瓶らしきものまで転がっていた。絢辻詞はガスマスクの中で眉をひそめた。

 

――――この間数秒ほど。

 

扉の上部にに装着されたスプリングでゆっくり動いていた鉄扉が絢辻詞の背後で音をたてて閉まった。

 

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