実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編 作:vwview
「その代わり……今、あなたがいる日常をあたしにちょうだい」
「…………」
「詞お嬢様――。
「え……でも」
少女は言っている意味がよくわからないといった感じで小首を
これだけの豪邸に住まい、多くの使用人に
もちろん、社交的なコミュニケーションを円滑にする配慮としての表面的な優しさや親切心は理解している。しかしながら、
だから自分の価値観に当て嵌め、世の中の人たちも皆、何かしらの対価――
「いったい、どうしたらいいのかしら……。残念ながら、あたしには自分しかあなたにあげられるものはないの」
絢辻詞は
逆に裏があるのではと猜疑心を強め、最悪の場合、金城との交渉を断念――悲鳴を上げて、人を呼ぶかもしれない。今は絢辻詞の
「詞お嬢様は体術を修得して、自分を守れる様に強くなった後はどうされますか」
「あなた馬鹿なの? 体術を修得したくらいで、強くなった気になんて、なる訳ないじゃない」
「はあ……」
金城は、少女の毒舌に苦笑した。実現した未来を夢想させて、少女の気分を変えさせようとしたが、それ程甘くはなかったようだ。
「体術の修得は、夢の実現に向けたほんの一歩に過ぎないわ。あたしは、絶対に姉さんのようにはならない――いつの日か必ず、親に対抗できる力を手に入れてみせる。今は何もないけれど……」
絢辻詞の言葉には固い決意が込められていた。その台詞は反抗期の娘が親に対してよく口にするような言葉だが、絢辻家において、この言葉の意味する所は遥かに重い。
絢辻家の現当主は、上流社会における地位を着実に上げている。裏で日本を真に動かしている「五人会議」の次期最有力候補と目されている人物だ。この親に「対抗」するという事は、比喩ではなく世界を敵にまわす事に等しい。
それでも、少女らしい「夢」という単語が絢辻詞の口からて出来た事に金城は安堵した。金城は、微笑みを浮かべて会話を繋ぐ。
「夢ですか――詞お嬢様はどの様な夢をお持ちなのですか」
「そんなの決まってるじゃない」
絢辻詞は、聞くまでもないでしょうと、いう顔をして言った。
「本当の自分で居られる場所を手に入れるのよ」