実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編 作:vwview
絢辻詞の言葉に、
そして、目の前で腰に手を当て、ドヤ顔をしている少女をまじまじと見つめながら、金城は考える――という事は何か?この目の前の嗜虐的で毒舌な策士の顔も本当の絢辻詞では無いということか。
要するに絢辻詞は――絢辻家の娘として、理想のお嬢様を演じる清廉可憐な表の顔と、自分の夢を実現させる為に暗躍する冷徹な策士としての裏の顔の二つの顔を使い分けているのだ。おそらく物心つく前から、厳しく社交の場での所作を叩き込まれ、どんなに具合が悪い時でも完璧な礼儀作法で対応する事を
そして、この少女が見ている世界では、他の人も同じような生活を強いられており、みな同じ願望を持っていると思っているのだ。学校で同年代の子供達が語る無邪気な夢は表面的な社交トークで、よもや本音で語っているなどと、絢辻詞は、
「――そ、それは素敵な夢ですね……」
金城は平静を装ってなんとか言葉を絞り出した。絢辻詞は、そうでしょうと言った顔で満足げに頷いた。
絢辻詞は、人は本音で語り合う事など無いと思っているため、これまで誰かに助けを
そして自分が、絢辻詞を
金城は、実の所もう人生を終わりにして、家族の元に
金城は、自分の中に芽生えたこの気持ちが何なのか考えてみる。娘の面影を重ねている訳でもないし、単なる同情とも違う。どちらかといえば境遇といった、自分との
ただ一つ確かな事は、既にかなり歪んでしまっているこの少女は、放っておけば
金城は、絢辻詞を見つめ、意を決して口を開く。
「詞お嬢様。この金城に、お嬢様の手助けをさせては、いただけませんでしょうか」
「でも――あたしには、あなたにあげられるものは何も……」
案の定、少女は怪訝な表情をして金城を見つめ返す。
「夢の話を聞いて、詞お嬢様に賭けてみたくなったのです。是非、金城にも同じ景色を見せてはくれませんでしょうか」
これで、少女が納得してくれればいいが――ベンチャーキャピタルなど所謂、先行投資 案件というやつだ。これなら、絢辻詞の価値観でも理解できる話だと金城は踏んだ。
「成る程――先行投資という訳ね」
「その通りです。いかがでしょう」
絢辻詞に話が通じて、金城は内心安堵した。
「必ずしも、あたしが親より力を付けられるとは限らないわよ。それでもいいの?」
「金城は、詞お嬢様の類い稀なる、
少女は腕を組んで「ふむ」と
「――いいわ。あなたにも、一枚噛ましてあげる」
「ありがとうございます」
「これで契約成立ね」
絢辻詞は、
これで家族に再会するのが遅くなってしまうが、あの妻なら、この寄り道をきっと許してくれるに違いない――ほんの一瞬、垣間見せた、年相応な少女の表情を見ながら、金城は思った。