実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編 作:vwview
第二十六話
「
タンクトップの咆哮に、絢辻詞を囲む男達も一斉に罵声を上げ、旧ボイラー室は一気にヒートアップする。
部屋の中央に移動する際に、
彼女は、考えただけでゾクゾクする衝動に全身が包まれるのを感じた。「今日はもうここまででいいや――」考えるのが面倒になった絢辻詞は、リビドーに身を任せる事に決めた。手加減せずに暴れまわれるなんて、いつ以来だろう――マスクの中で舌舐めずりをする。
「帰ったら、また金城に小言を言われちゃうわね」などと、他愛もない事を考えながら、周りの男達に気が付かれぬよう、彼女はゆっくりと跳躍のために膝を沈めていく。タンクトップがあともう一歩近付いたら、絢辻詞の射程距離だ。そして彼女が飛び出そうとした、まさにその瞬間――野太い男の声が、旧ボイラー室にひびいた。
「そこまで!」
タンクトップが声の方を振り向き
「お、おやっさん……」
旧ボイラー室の奥の壁にある鉄扉の前に、小柄な年配男性が立っていた。
「お前が居ながら、何だこの騒ぎは。馬鹿者が!」
「しかし、このアマ、ここの秘密を……」
男は、タンクトップをひと
「――お前達は、命拾いをしたのだぞ」
「…………」
男は、
「詞ちゃん。ウチの若いもんをあんまり
「あら、いやだわ。名前を言ってしまっては、顔を隠して来た意味が無くなるじゃないですか――用務員さん」
近くにいたタンクトップが、二人の会話に気付いてはっとする。
「ま、まさか――風紀委員長……」
絢辻詞は顔の前に人差し指を立ててタンクトップに「内緒」の意思を示す。年配の男―― “用務員さん”は「話は奥でしましょう」と、絢辻詞を奥の鉄扉へと
入り口で早々に倒された、茶髪だった。失神していた為に、状況が飲み込めていなかったのか、ただ単に腹に据えかねての行動だったのかもしれない。茶髪の右フックが、絢辻詞の右顔面を捉えたと誰もが思った、その瞬間――茶髪の
絢辻詞は、瞬時に膝を落として茶髪の拳を
茶髪が、床に横たわる事を許された時には、顔面は真っ赤に染まり、ボールのように丸く膨れ上がっていた。茶髪の意識は最初の連打を食らった時点で無くなっていた事がせめてもの救いだった。突然
「いいところで止められちゃったから、欲求不満をどう解消しょうかと思って居たけれど、手間が
絢辻詞は、意識無く横たわる茶髪に向けて、平然と語りかける。そして、血が滴るトンファーを勢いよく振って、周りに血を飛び散らせながら、男達に言い放った。
「か弱い女子が、むつくけき男達の巣窟に、まさか、
彼女は、せせら笑う。
「さあ、他に何を
旧ボイラー室は、再び水を打ったように静まり返る。絢辻詞にこれ以上暴れられては堪らないと、“用務員さん”は慌てて「ささ、もう行きましょう」と、絢辻詞を急き立て奥の鉄扉に誘った。男達は、それを無言で見送る事しか出来なかった。