実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編 作:vwview
階段のすぐ近くでたむろしていた三人が、鉄扉の閉まる音に気付き、一斉にこちらに目を向けた。絢辻詞の顔を覆っているガスマスクに一瞬、ぎょっとしたそぶりを見せたが、女子だと分かると、余裕を取り戻したのか立ち上がって階段に近づいてきた。
「ンだてめぇ、ガスマスクなんか被りやがって」
向かって右側の茶髪がヤンキー特有の巻き舌で
(どうしてこの手の
クラスや委員会などでの彼女は、誰にでも柔和に接する面倒見の良い優等生を装っている。だが、裏の顔の絢辻詞は沸点が非常に低い。しかし、今日は
「……貴方達のボスに話があって来たの。取り次いでくれるかしら?」
左側にいたロン毛が、
「くれるかしらぁ~だとょぉー!!」
と、突然叫んで爆笑しはじめた。何が面白いのかわからない。酔っているのか。もしかしたらヤバいクスリでもキメているのかもしれない。 右側の茶髪といえば、どこからココを聞きつけてきた、顔みせろやぁと、終始喧嘩腰だ。絢辻詞はイライラし始めた。
(面倒くさいなぁ……。やっちゃうか。)
それまで黙って見ていた真ん中のスキンヘッドが他の二人を制して口を開いた。
「取り次いでやってもいいぜ。だが、ここを通る前に身体検査が必要だ。」
「…………」
「ムネや股に何か隠してねぇとも限らねぇからなぁ」
今度は三人全員が、爆笑する。スキンヘッドは下卑た笑いを浮かべ正面に向けた両手の指をいやらしく動かしながら、階段の一段目に足をかけた。
その刹那――――。
絢辻詞はスキンヘッドの脳天に強烈な
絢辻詞はすぐさま踊り場から階段を駆け降りる。その勢いを使って、茶髪の顎に膝蹴りを叩き込んだ。ここでようやく我にかえったロン毛が奇声を上げて彼女の背後に迫る。
絢辻詞は振り返りざま足刀蹴りを放つ。ロン毛は部屋の真ん中に向かって2メートルほど吹っ飛んだ。そこにあった物や人を巻き込んで派手な音を立てて転がり、そのまま動かなくなった。
旧ボイラー室は先程までの喧騒が嘘のように、水を打ったように静まり返った。
(まいったなぁ……やり過ぎた。自分が思っていた以上にあの三人にイラついていたようね。)
さて、どうしたものかと絢辻詞は思案を巡らせる。今日は荒事を避ける予定だったが、こうなっては仕方がない。失敗をいつまでも引きずらず、切り替えが早いのがリアリストである彼女の持ち味だ。
「はい。今、皆さんが静かになるまで三分かかりました」
朝礼あるあるネタを言ってはみたものの、誰一人反応しない。
「あれ?おかしいなぁ。橘くんは鉄板ネタと言ってい……」
突然、顔の前に何かが飛来する。絢辻詞は咄嗟に体を引いて回避した。飛んできたのはパイプ椅子だった。派手な音を立てて彼女の後方に転がっていく。
「ふざけるなよ女」
ドスの利いた声が、静まり返った部屋に響いた。