実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編   作:vwview

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第二十九話

「情報はルーレットのチップやパチンコの玉と同じく、単に賭けを遊ぶのに必要なものとして扱っていますが、どうしても、欲しい情報を手に入れたいと言う要望にも個別に対応します。相応(そうおう)の手数料は頂きますが」

 

絢辻詞は、腕を組んで暫し思案(しあん)した後に口を開いた。

 

「二つ質問があるわ」

「なんでしょう」

「初めての客が持ってきた情報の価値が、一つ分のチップすら得られない価値しかなかった場合どうするの。遊べないでしょう?」

「その際は、胴元が足りない分をお貸しします」

 

絢辻詞は、ニヤリとした。

 

「ふふーん。成る程ね。ではもう一つの質問。

持ってきた情報の価値は、正しく評価されるのかしら。提示された価値に納得しない客はいないわけ?」

「そこが、この胴元の腕の見せ所でしてね。

長年、情報屋としてやって来ている此方(こちら)目利(めき)きとしての腕を信頼してもらっとります。この目利きこそ、他では早々真似できないと自負しておりますので」

 

場末でチンケなシノギをしてるだけの小悪党だが、プロとしてなかなかいい顔をすると、絢辻詞は思った。

 

「それでも、納得しない分からず屋も、たまに居るっちゃいますが、そうなったら、ウチの若いもんが力で分からせるだけですわ」

 

がははと、“用務員さん”は破顔する。絢辻詞も一緒に苦笑しながら思った――考えていた以上によく出来ている。

 

お金が無い学生に、元手がタダの情報で一儲(ひともう)け出来るかも知れないと匂わせる所が上手い――さして価値が無いと思っていた情報が高く査定された、などと噂を流せば、ひょっとしたら自分が持っている情報もと思う奴らが、多数釣れるだろう。

 

最後まで一切お金の話しが出てこない所も、罪悪感や賭博の後ろめたさを払拭するのに一役買っている。ちょっとやってみようと思うハードルが低いのだ。

 

実際は、高値が付く情報など早々ないから、大抵の客は、大した数のチップを得ることは出来ない。もしかしたら、持ってきた情報で一枚のチップにも換えられない人が殆どではないだろうか。

 

そこで――「折角来たのだし、足りない分、貸すから、遊んで行きなよ」となる訳だ。お金を借りるのが危険なのは小学生でも理解している。だが、情報の貸し借りなど誰が危険だと思うだろう――それが罠だ。来た客を最初優しくもてなして、抜けられない様にする手口は、闇金と変わらない。

 

無形の「情報」と(いえど)も、借りは借りだ――。貸している分の情報を取立てたり、ガセネタを持ってきた者を脅したり、仕置きをしたりする実働部隊が、先程の部屋にいたゴロツキどもなのだろう。入るは容易く足抜けするのは困難――そうする事によって、情報の流入枯れを防いでいるのだ。

 

“用務員さん”の裏の本業は、この賭場ではない。地域のチンピラや窃盗団といった、同じレベルの小悪党を相手にした情報屋だ。既に学校を(また)いだ地域規模になってはいるものの、学生なんぞから集めた情報など価値は無いと思われがちだが、先程この男が言ったように、情報の価値は受け取る側による。

 

「あの金持ちの家は来週から長期の旅行で家を空ける」「親の事業が軌道に乗って、あの家は最近羽振りがいい」など、学校で交わされる他愛のない情報でさえ、場合によっては充分価値があるものになるのだ。いや。どんな情報が必要となるかは予測出来ない。とにかく膨大な情報が自動的に手元に集まる仕組みをつくったという点が、慧眼と言えるだろう。

 

個別対応もすると言っていたから、重債務者には、依頼された情報を入手してくる様、強要などもしているに違いない。この情報収集システムが、地域一番の情報屋と言われるこの男の、情報の源泉という訳だ。

 

「まぁ、情報云々の方は、地味な裏方の話ですわ。人を呼ぶには、興行がどれだけ人気を博すかが命です。あたしゃこれでも、地域一番の興行をしていると自負しております」

 

などと、情報はオマケの様な口ぶりだが、絢辻詞は誤魔化されない。(いず)れこの男を切る時には、この情報収集システムをどうにかしなければならないが、今は“用務員さん”に話を合わせる。

 

「ええ、そうね。初めて見るから、今から楽しみ」

 

既に二人は、長い廊下の端まで歩いてきていた。そして、右側の壁にある両開きの大きい鉄扉の前で立ち止まる。“用務員さん”は、鉄扉の取っ手に手を掛けて、絢辻詞の方を振り返った。

 

「絢辻さま、こちらです。さあ、どうぞ――」

「うん」

 

二人は、鉄扉を開けて中に入る。絢辻詞は、中の眩しさに一瞬目が[[rb:眩 > くら]]んだ。

 

鉄扉の向こうは、光と歓声の渦だった――。

 

大きな部屋の中央に、明るく照らし出されたリングがあった。リングの周りには大勢の観客が群がって歓声や罵声を浴びせている――リング上では二人の男が闘っていた。ぶつかり合う度に、強いライトに照らされ虹色の汗が飛び散る。

 

「わあ…………」

 

絢辻詞は、思わず我を忘れて、声がもれてしまう。

 

「絢辻さま。お気に召しましたか」

「ええ――。とっても」

 

絢辻詞は、リングから目を離さず、恍惚の表情で答える。

 

これから絢辻詞が仕掛ける策謀によって、ここで多くの人達が熱い闘いを繰り広げる事になるかと思うと、さらに恍惚感が高まる。絢辻詞が満足しているのをみて“用務員さん”は、芝居掛かった大仰な仕草をして言った。

 

「輝日東ファイトクラブへようこそ――」

 

アマガミ×エクストリーム

序章 絢辻詞編(了)

 

 

 

■現在公開可能な情報

絢辻詞

クラス:2年A組

所属:輝日東高校風紀委員会 委員長

血液型:AB型

年齢:17歳

流派:不明

スタイル:不明

得意技:不明

 

 

【挿絵表示】

 

 

輝日東高校の完全掌握を目的に、あえて生徒会長ではなく、風紀委員長に立候補。

裏創設祭摘発事案の際、裏情報網の掌握に成功した。

現生徒会執行部は絢辻詞の傀儡政権なので、表裏共に輝日東高校の実質的な支配者。

表立っては、柔和な面倒見の良い優等生を装っているが、反面、裏の顔は沸点が非常に低く嗜虐性向。

偽らない本当の絢辻詞を、まだ誰も見た事がない。

 

 

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