実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編   作:vwview

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第五話

「肌も透き通るように美しいねぇ」

 

さらに老人は絢辻詞のほおに指をのばしてくる。少女は硬直し、されるがままとなっていた。この期に及んで自分がどんな目に合うかわからない程、絢辻詞は世間知らずではなかった。どちらかといえば聡い方だ。だからこそ身動きができなかった――この老人を怒らせるような事をした時の絢辻家の立場を考えてしまい、行動を躊躇してしまったのだ。

 

「どうだね?私の養子にならないかね」

 

老人は耳元で囁き、ソフアーに押し倒そうとする。その段になって、絢辻詞は多少の抵抗を試みるが、老人は急に強い力で彼女の両肩を掴み「私を怒らせると、君の御父上の立場が困ったことになるぞ」と恫喝した。現在の絢辻詞と違い、この時の彼女は親の命令に絶対の服従を叩き込まれていた。当時の絢辻詞にとって、親の立場が悪くなる行動をとるなど論外であった。老人の恫喝にびくっとした後、少女は身体から力を抜いて抵抗を諦めた。老人はそれを見て、存外簡単に落ちたなと内心ほくそ笑んだ。

 

「聞きわけの良い娘だ。私の言う通りにすれば、悪いようにはしない。君や君のご家族もね」

 

絢辻詞はもはや老人の話など聞いていなかった。姉のように何も見えていない、なにも知らないフリをして生きていくしかないんだ。そう諦観(ていかん)し、自分に覆い被さる老人の爬虫類のような目を無感情で見上げていた。

 

「これで完全に掌握した」と確信した老人は、早速行為に及ぼうと少女のスカートの中に手を差し入れる。その時、奇しくも絢辻詞の諦観(ていかん)の念を断ち切ったのは、自分をまさぐる老人の骨ばった指への、強烈な嫌悪感だった。服の中に虫が入り込んでしまった時のようなどうにもならない不快感で、少女は正気を取り戻した。いや、正気に戻ったのではなく、諦観より嫌悪感によるパニックが上回ってしまったという方が正しいかもしれない。強烈な感情の濁流に、自分の立場や状況は完全に頭の隅に追いやられた。老人を力任せに横に押しやる。油断していた老人はバランスを崩してそソファーの下に転がり落ちた。

 

「このっ!小娘……」

 

と、激昂して起き上がろうとした老人の顔に飛んできたのは、少女の足だった――絢辻詞は、ソファーの上に立ち上がり、四つん這いになっている老人の顔を踏み付けたのだった。

 

「このっ!このっ!このぅっ!」

 

あまりの嫌悪感に我を忘れ、少女は顔を真っ赤にして、老人の顔を何度も何度も踏み付けた。こんなにも感情のままに行動したのは物心ついて初めてかもしれない。突然の反撃に四つん這いのまま茫然自失してる老人を置いて、絢辻詞は書斎を飛び出した。

 

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