実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編   作:vwview

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第七話

事件があってから暫くの間、少女 絢辻詞は荒れた。

 

それが、当時を知る周辺関係者の総じての印象だった。老人はちょっと脅かしすぎただけだと、何をしたのかについては言及を避けていたし、当の絢辻詞もこの件を語ることはなかったので、表向きは何もなかった事になっている。相手が相手でなければ、通報案件の出来事があったことは間違いないと誰もが分かっていたが、老人の持つ権力と絢辻家との関係性、体面からこの事は公然の秘となっていた。ともかくも、絢辻詞のその後の様子から大事に至らなかった事は明白なので、周辺関係者はひと先ず胸を撫で下ろした。

 

そうした訳で、「純真無垢な(つかさ)お嬢様」が受けたであろう心の傷に、使用人含め関係者は皆、自分の事のように胸を痛めていた。

 

これまでの絢辻詞は、小さな頃から使用人が手を焼くような行動は一度たりとも取ったことがない。それどころか、誰にでも礼を(わきま)え、大概(たいがい)の事は自分でしてしまうので、手がかからな過ぎて使用人としては困る程であった。そんな彼女が突然、使用人達をわざと転ばせたり、わざと物を落としたり、拾ろおうとした手を踏むなどといった、迷惑行動をし始めた際も、周囲は「あの詞お嬢様が」「お(いたわ)しい」と、事件による心の影響を(おもんばか)りどちらかと言えば同情的に受け止められたのだった。

 

絢辻詞からするとその時、別に(すさ)んでいた訳ではなかった。被害に遭った使用人達には申し訳ないが、事件の際に自分の中で生じた感情が何なのか、何が原因で発露するものなのか理解を試みていただけだ。(しばら)くして、絢辻詞の迷惑行動はパタリと止み、これまで通りの「詞お嬢様」に戻ったのをみて使用人達は一様に安堵した。

 

しかし、絢辻詞の中では収まったどころか(むし)ろ、エスカレートしていた。ただ単に人目に付かないようなやり方に変えただけであった。

 

ある日の昼下がり――第二次性徴もまだだというのに、嗜虐性向が開花するなんてと、 裏庭の片隅でトカゲを虐待しながら、少女 絢辻詞は独り自嘲する。

 

自分の中に芽生えた嗜虐性向を理解した後、当時の絢辻詞は努めてその事を秘匿するようにしていた。そして、もっぱら庭の虫などを密かなリビドーの吐け口としていた。元々虫は嫌いなので罪悪感は皆無であった。しかし最近の問題は、始めアリくらいで済んでいた対象が、徐々に大きくなってきている事だ。

 

この頃、絢辻家の内庭には、(うさぎ)が飼われていた。どこぞの男が絢辻家に取り入ろうとして、「お嬢様に」と持ってきたものだ。普段は使用人が世話をしており、昼間は「詞お嬢様が遊べるように」と内庭に放している。その兎に特段の愛着はなかった。名前などもついていない。ごくたまに、勉強や習い事の気晴らしに、その白くフワフワした温かいものを触りに内庭に出向くことがあるくらいだ。

 

絢辻詞はそれに目を付けたが、さすがに兎となると話は簡単ではない。彼女は一計を案じた。

 

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