実力主義のこの世界では、絢辻詞は拳と策謀で想いをつたえる~アマガミ×エクストリーム(序)絢辻詞編   作:vwview

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第八話

ちょうどその頃、絢辻家の使用人に一人の若い男が新たに加わっていた。使用人で終わるつもりは毛頭なく、(いず)れ上流階級の世界に食い込もうという野心を全身から( みなぎ)らせている男だ。絢辻詞も、何度か直接顔をあわせた事がある。自分に慇懃(いんぎん)な態度をとりつつも、子供とみて(あざけ)りの表情を(にじ)ませている男という印象だった。

 

絢辻詞は早速、その男についての情報収集を開始した。使用人同士の会話を盗み聞いたり、周囲の人々との会話から何気なく情報を引き出す。親が不在にしている間に書斎からプロフィールなどのファイルにも目を通す。学歴などは非常に優秀で、知人のコネだけで採用されただけの男ではないらしい。

 

しかし、人物としてはどうやら、女子供(おんなこども)と見ると見下した態度を取り、権力や権威には()(へつら)うタイプのようで、特に女性の使用人達には(すこぶ)る評判が悪い。何より良くないのは、そういった態度を表にだすのを(はばか)らない点だ。男にとって、女子供は余計な事をして、自分の足を引っ張る程度の存在とでも思っているのかもしれない。別に男尊女卑の思想でも、権力に(おもね)る男でも一向に構わないが、そういった感情を隠せない、隠さない事でのリスクを理解出来ない無能に、絢辻詞は必要性を感じなかった。少なくとも自分の身の周りには。これで絢辻詞のターゲットは決まった。

 

――それから、絢辻詞はその使用人の男に、周到に策を巡らし始めた。

 

いつの頃からか、その使用人の男は、小さな齟齬や思い違いといった「落ち度」とまでは言えないレベルのミスを頻発するようになっていた。おそらく自分でも何故こんなケアレスミスをするのか理解出来ず、首を傾げていたに違いない。絢辻詞の仕業であった。やり方は単純で、変更された業務内容が男に届くのを遅らせたり、複数の違った内容が男に伝わるようにするなど、ちょっとした情報操作をしただけだ。

 

勿論、絢辻詞が手を下した事が分からないよう、複数の人や物を介して操作した事は言うまでもない。

 

「自分は出来る人間」と自認していた男は、自尊心(プライド)が邪魔をし、ケアレスミスを連発する自身を受け入れられないでいた。結果、自分のミスを、「伝達が遅い」、「正しく伝えられてない」など他人に責任転嫁した。絢辻詞が操作しているので実際、男の言い分は正しいのだが、これによってただでさえ少なかった人望はなくなり、結果として情報入手経路を更に狭める悪循環に陥ったのであった。

 

男が新参者で親しい人が身近に居なかった上に、人との馴れ合いを好まない性格であった事が、絢辻詞にとっては幸いした――男にとっては最悪であったのだが。こうして、男のはじめの頃にあった(みなぎ)る野心はすっかり鳴りを潜め、悲壮感すら漂う状態となっていった。

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